入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「春」(46)

2022年05月04日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 本当に、すっかり天気が回復した。一昨夜、そして昨夜と、美しい星空を久しぶりに眺めることができた。この写真では分からないが、あれこそ眉月というのだろう、溶暗しつつある西の空に薄く染まった夕焼けと一緒に見えていた。



 大型連休も後半、covid-19の終息には程遠いながらも、各地の行楽地や繁華街は人出で賑わっているらしい。入笠の周辺も、富士見側はかなりの人が来ているようで、それなりに小屋の営業も盛況のように聞いている。
 そこへいくと伊那側は平穏、いつもと変わらない。通行止めなどの道路標識がそのままになっていたりして、あれではここへ上がってくることを諦めてしまう人も多いだろう。
 昨日から来ていた人の話で、ここのキャンプ場の評価は他の場所と比較してもかなり高いことを知り、有難く、悪い気はしなかった。確かに20年以上も毎年、それも複数回来てくれている海老名出丸さんのような常連の人々がいて、それも年配者、家族連れが多い。特別な場合を省いて、今後もキャンプの受け付けは10組という原則を守っていきたいと考えている。
 もしかしたら、ぬれ落ち葉化した亭主をもてあます日々の奥方各位も、ここで自然に囲まれ静かに幾日かを過ごせば、冷めかけた夫婦愛が復活するかも知れない。そういう夫婦も確かにいたし、若い人たちの中にはめでたく結婚に至った例もある。

 きょうも鳥の声がよく聞こえる。ウグイスらしき鳴き声も聞いたが、いまはしてない。薄い霞がかかっていて、そのせいで、やわらかな五月の光りが森にも草原にも降り注いでいる。これから気温は上がる予報だから、これで落葉松や白樺の新緑はまた一段と進むだろう。
 もうどこへ行ってみても、山桜の木はその清楚可憐な花を咲かせていて、贔屓にしている雷電様の老木も残雪に輝く空木岳や駒ヶ岳を背景にして見頃を迎えつつあるようだ。今のここの牧場の雰囲気を現すには「平和」という言葉が一番合っていると思う。
 あっ、いまウグイスの声が二度続けてした。声の主は間違いなくウグイスだが、まだそれほど上達していないようだ。今にもっとうまくなれば、その得意の喉を惜しみなく聞かせてくれるに違いない。

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     ’22年「春」(45)

2022年05月03日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 寒い朝だ。午前7時の気温は4度、もっと標高の高い山は当然氷点下だったろう。ここで知る限りは、山の遭難事故は起きていないようだが、詳しいことは分からない。これで霙や氷雨でも降れば、ひとたまりもない人たちもきっといただろうに、幸い昨日はそれほど天気は悪くなかった。
 
 今でも、連休の山行をあれこれと考えて気持ちを高ぶらせていたころを忘れてはいない。あまり思い出すこともないが、こうして振り返ってみれば、使わずに放置していた山道具のように、ゾロゾロと記憶の奥からかつての山の日々が甦ってくる。
 ただし、それらの日々を懐かしんでいるかと言えば必ずしもそうではない。山に関して、もしあのころの時代に還れたとしても、また同じように山を選ぶかどうかは分からない。これは正確な記憶ではないかも知れないが、出征する息子に対して父親が「来生があるとしたなら君の母を妻とし、君を息子とする」と言った人ほどの確信が、山との結び付きに果たしてあったのだろうかと考えると、覚束ない。
 確かに、山を引きづって今の牧守になったはずだが、こうして山の中で暮らしていると、重い荷物を担ぎ、あまり上手くもない岩登りに血道を上げたことを、まるで他人事のように感じている場合が多い。どうしてこんなふうに感ずるようになったのだろう、山に夢中だったことは確かだったのに。
 今の牧守の方が自分の性には合っていると気付き、納得しているから、あまり遠い昔の山行を懐かしむ気持ちになどならないのだろうか。もう一度登ってみたい山はと問われても、好きな山はと尋ねられても、すぐには答られない。山の仲間にしても、中には山で死んだ者もいれば、里で病に倒れた者もいる。また、山を離れて付き合いの途切れてしまった者もいるが、山が取り持った縁を特別視していた時代はいつの間にか終わってしまった。
 越年のため晦日、そして2月、3月と雪道を歩いて牧場へ来たが、あの時も一刻も早く目的地の小屋に着きたい一心でスキーを、スノーシューズを滑らせ、たった4,5時間くらいの行程に過ぎなかったのに、山を楽しむ余裕などあまりなかった気がする。

 山の本も少しは読んだ。前にも呟いたことがあるが、あの人の「もう登らない山」という本、題名の思わせぶりが気に入らなくて読まずにきたが、今の自分も考えてみればそういう心境に近いと思う。どうでもいいと言えばいいことだけれど、これを諦めと言うのか、それとも何と言えばいいのか、あの人なら教えてくれるだろうか。

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     ’22年「春」(44)

2022年05月02日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 あの人が去って、天気は回復してきた。本当に不思議な力を持った人だ(クク)。

 今朝6時前に家を出て上に来たら、薄氷が張っていた。キャンプに来た人の話では昨夜は霙も降ったらしい。大体毎年のようにこういうことはあるが、夏日が来たと思ったらきょうあたりは3月の気温だという。山桜の花も咲き、落葉松や白樺、コナシの芽吹きが始まったところで、これでまた季節の進み具合は遅れるのだろうか。一度勢いがついてしまえば、樹木の活動はもうそのまま進むという気もするが、昨日落葉松を1本伐った後皮を剝こうとしたら、まだ表皮と芯との間に充分な水分が行き渡っていなくて、上手く剥くことができなかった。
 そういえば、今朝ここに来る時に第2牧区にいつもいる鹿の群れが見えなかった。昼の気温が10度に届かないのだから、鹿たちは昨夜の寒さや霙に閉口してもっと下方に下ったことも考えられる。この調子では大型の囲い罠は、誘引及び閉じ込めのために使うゲートは微動だせずに、連休が過ぎていくだろう。

 昨夜里に下って、誰もいない家に帰り、風呂に夕食の前後に2回入り、疲労と酔いのせいで9時少し前に寝てしまった。上でかんとさんやT井さんと歓談したせいもあるだろうが、たった3日家を離れただけで、他人の空き家でも訪ねたような気がして落ち着かなかった。
 冬ごもりの間はそういうものだと思って、清貧独居禁欲は苦にしないことにし、夜の散歩も含めてそれなりの暮らし方に慣れ、落ち着くのだが、今の生活は山にも里にもどっちつかずで、どちらの生活に重点を置くにしてもしばらくは時間が要るだろう。
 昨夜のあの孤独感はここで感じるものとは大分違って、そこに身を沈めていたら風邪でも引きそうだった。いや、引いたかもしれない。家を出る時に見たら、ミヤコワスレの花が咲いていた。

 まいった。タイヤの次は携帯電話である。相手が掛けた場合はすぐに留守電になってしまうらしいし、こちらからはどこへも繋がらない。水道にも問題が発生した。これは昨夜の寒さのせいではない。夕方には戻ってくることにして、取り敢えず山を下るしかない。ヤレヤレ。

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     ’22年「春」(43)

2022年05月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前6時気温2度。大型連休で行楽地は賑わっているようだが、ここは3組の来訪者だけで静かだ。今朝は霧がすぐ近くまで降りてきて、権兵衛山や、ここよりわずかに高い周囲の森や林は白い闇の中に隠れてしまっている。
 そんな中、季節だけは進んでいて、待望の山桜は牧場のあちこちで清楚な花を咲かせ始めた。白樺の鋭い枝先は芽吹き出した新芽で遠くからは無数の枝が緑色に見え、落葉松やコナシの木々も遅い春の到来を感知して新緑の衣装に着替えつつあるのが分かる。
 いつの季節よりかも、今が一番いい。晴れていようと、曇っていようと、雨の日でも、どこへ行っても、何を見ても、誕生したばかりの生気、自然の活力が溢れている。
 三日前にここへ来る途中では、杖突峠に至る藤沢の谷はすでに両側の山は大いに笑っていた。それから山室の谷に入れば少しづつ季節は逆行するものの、里の自然を追いかけるように山桜が咲き、ヤマブキやツツジの花が清流の両岸を、あるいは人のいなくなった集落を飾っていた。

 上に暮らして三日があっという間に過ぎ、驚く。ただ気忙しく暮らしたというだけで、もう何をしていたのか思い返してみても覚束ない。それでも昨日のことならまだ覚えている。近くの作業道の水切りを直し、アラスカの森の長いこと使ってなかった林道の草刈りと倒木の処理を行った。10時からは撮影の打ち合わせをして、それが終わったと思ったら軽トラの前輪がパンクして、なぜかいくら探してもナット回しが見付からず、やむなく撮影関係者の車で富士見まで工具を買いに下り、予定外の時間を使って車のタイヤ交換をした。それを済ませてから再びアラスカの森に入り草刈りをし、1本の倒木を3本に切り分けて近くの流れに丸太橋を架けたりと、それなりに働いた。
 
 充分な支度をしてないまま山の暮らしを始めたため、この三日間のうち普段は食べないインスタントラーメン1食が一昨日、昨日は出来合いの酢豚とご飯1食、きょうは何も食べていない。その他には貰い物の「備食カンパン」とレーズン、チョコレート、まさしく山の食事、というのかさながら避難者の食事のようだ。ただ、カロリーが高い(?)ビールはしっかり荷揚げしてある。
 きょうはパンクしたタイヤを持って里に下り、今度は美味い物をたくさん携えてまた戻ってくるので、姉上はご心配なきよう。

 Mさん、有益な助言有難う。PCに詳しい人に聞いてみます。M田さんはこっちに来ているのですか。きょうは雨でも、明日からはしばらく良い天気になりそうです。
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