高曇り、静かだ。
牧場内の徒長したコナシの枝打ちをしようと外に出たら、葉を落ち尽くしたマユミの赤い実が目に付いた。冬枯れの風景の中で、いつもながらこの木が初の沢周辺にある樹幹と枝だけのダケカンバの林の侘しさを精一杯救っている。
灰色をした冬空の西に薄青色の空が見えたが、それは刺すような冷たさしか感じられなかった。昼間でもここの気温は5度。
昨日はゴミ芥の類を軽トラ一杯に積んで里へ下った。それらはここでは手に負えないものばかりだから、産廃業者に持ち込むしかない厄介物だ。ビン、缶、アルミ、鉄屑等々。
笠原を過ぎたらサイドミラーに夕空を背景にした仙丈岳が写っているのが見えた。薄っすらとまぶしたような雪が山肌を化粧い、そこに西に傾きかけた落日の光りが演出でもしたかのように射し、ハッとするような眺めだった。車を停め、しばらく眺め入った。
仙丈に降雪があったとは聞いていたが、好天が続けばまた消えてしまいそうな積雪量でしかなく、例年と比べたら半月以上も遅く、それは中アにも同じことが言えるのだとか。
ここにいては仙丈岳を見ることはできないが、中アの峰々なら西駒が岳を中心に毎日のように見ている。しかし今年は雪の訪れがそれほど遅れていたとは、意外だった。
ここでも水を落としたし、いつも行く富士見の温泉もゴンドラの営業と合わせるように休業するから、風呂に入ることができなくなった。食い溜め同様、入浴溜めも効かないことは承知の上で昨日2回、今朝も1回家の風呂に入ってきた。
ここで水を使えなくしてからたった1日しか経っていないというのに、家では蛇口をひねれば水が出るだけでなく湯を使って洗い物もできる。その便利さを痛感しつつも、まだしばらくはここでの暮らしが続く、慣れてはいけないと言い聞かせた。
空が晴れてきた。今夜も寒くなりそうだ。きょうから猟が解禁になったのに、猟師の姿を見掛けなかった、銃声も聞かなかった。
本日はこの辺で。