
京都から12人の小屋泊まりの登山者が着いた。ここへ来る前に守屋山に登ってきたので、露天風呂を用意して欲しいと言われた。その支度を終え、風呂が沸くまでの間、管理棟の部屋に横になって外の景色を眺めている。
12年という間ずっと、いつも見てきた眺めだ。確かに春夏秋冬、季節に合わせ様々な装いを見せてはくれるが、この時季に目に入る夏の眺めは毎年と同じ、変わらない。
今は牛がいるから、それが変化と言えばそうだが、夏は他の季節に比べても単調で、格別な何かがあるわけではない。炎暑に耐えつつ深緑色をした木々の葉が茂り、時々いい風が吹き渡り、鳥の声がする。
太陽がようやくその勢いを弱め、西の山に沈んでいくのだろう、ここからはその様子を見ることはできないが、残光が夕暮れの空に浮かんだ夏雲を、薄い朱の色に染めつつあるから分かる。
平穏、安堵、そして軽い疲労を感じながら、12年前と同じはずの景色を見るともなく見ている。(7月25日)

午前4時半、夜が明けた。今朝は霧が深い。気温は15度C。鳥の声がよく聞こえる。春や初夏のころより、もっといろいろな鳥の声がするような気がする。しかしもう、それらの美しい声の主を知るのは諦めて、聞き流している。
ようやく牛も起き出した。1頭のホルスが囲い罠の中の高い所に見えてる。と思ったら、ゾロゾロと他の牛も現れた。最近はねぐらを一緒にしているのか、3頭の和牛もいる。ただ草を食む場所は一緒ではない。
どんな理由によるのか、突然ホルスの1頭が急に小走りに移動しかけた。仲間の和牛1頭と他のホルスも遅れずに追随する。言葉を持たない牛たちのああした連携を、時に不思議に思い、時に感心する。
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