スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ソーンメルケで銅メダル!

2008-07-03 21:16:36 | 2008年夏
朝、5:30に起きた。
ソーンメルケ(Zornmärkesuppspelning)を受けに行く。今年はDelsboだ。
Delsboのステンマは、今年100周年を迎えるので盛大だ。

去年、2007年6月にも受けてDiplomを取得した。
なので今回は銅メダルをねらいます。

去年の記事を補足すると、Zornmärkeというバッジ付与コンテストはアンデシュ・ソーン(Anders Zorn)という
ダーラナ地方のGesundaにいた有名な画家が始めた。
1910年のことなので、間もなく100周年を迎える。
新しいものがどんどん出来、外国から色んな文化が流入してき、自国に根付いた伝統文化が「どうでもいいもの」と
軽く思われていた。夏至祭のお祭りも「そんな古臭い」といった風潮だったとか。
そんな状況を危惧したZornが、伝統を守る・伝えるという意味で始めたのだそう。

ここで一つ訂正。Brons diplom→Brons→Silver diplom→Silver(Riksspelman)という順で取得すると
書いたけど、Silver diplomが廃止され、今はDiplom→Brons→Silver(Riksspelman)となっている。

さて、Delsboはウプサラから北へ約300kmに位置する、小さな小さな村。
まずはHudiksvallまで電車で行き、そこからバスに1時間のりDesbo Torgまで。
その先は・・・会場まで4km。どうやって行くかは未定。

電車が動き始めると、10分ほどして改札にまわってきた。
チケットをいつものように見せると・・・ "fel tåget"と言われた気がする。
え?電車が違う?英語で聞き返すと、これはストックホルムに行く電車だというではないか。正反対。
「ストックホルムまで行ってチケット買いなおすしかないわね」と車掌さん。
ショック!ストックホルムだと南へ行き過ぎるので、次の駅で降りてウプサラまでタクシーで戻ろうかと思ったけど、
止まった駅の周辺の様子は・・・お店はない。人もいない。タクシーが呼べる雰囲気ではない。(番号も聞かないと分からない)
「日本から来てワカリーませぇーんでした。」といい訳して時間をずらしてもらおうか、と結局ストックホルムに着くまで
グルグルと考えていた。
ストックホルムに着くと、早速チケット売り場に行って番号を札をもらう。
30数人待ちだ。時刻表を見ると、30分後にHudiksvall行きの電車がでる。
これにのればギリギリの到着が可能だ。
あのぉ、急いでるんですけど・・・相談できないかと窓口外のスタッフに話かけると「Yes.皆いそいでるんだから順番を待ちなさい」
分かりました。時間がきたらチケットなしで電車にのろうと決めて待つことにした。(乗ってからの改札で乗る時は何もない)
やっと順番がまわってきて事情を説明すると、返金はするけど(本当はできない券種)買いなおす必要がある、と。
そしてセカンド・クラスが満席だからファースト・クラスしかない、と。
値段を聞いてびっくり。仕方がない。ファースト・クラスのチケットを購入した。

電車にやっと乗り込むとグッタリ。ファーストの座り心地を堪能するまでもなく、ぐーぐーと寝てしまった。
さて、地図でみるHudiksvallは○印が大きい。つまり大きな都市なんだろうと想像していたけど、ものすごく小さな駅だ。
周辺にお店も見当たらない。つくづく、スウェーデンって田舎だと実感。
ここで、バスに乗換え1時間。

Delsbo Torgに到着。目の前にスーパー一つとガソリンスタンド一つ。後は草原が広がる。
さて、ここからどうやっていこう。私の演奏まで1時間をきっている。4km歩くのは危険だ。
ガソリンスタンドの売店に入り、タクシー会社の番号を聞き電話することにした。
すると・・・ダメ!!英語が通じない!途中で電話をきられてしまった。
すると、あ!タクシーだ!
ちょうど老人がスーパーの前でタクシーを降りていた。ここで捕まえないとかけより、無事にタクシーをゲット。

会場はSvanbacken Strandhotellというホテルである。
到着すると矢印に従い2階へあがり、メールでやりとりしていた事務局長のアンデシュがいた。
早速、手続き。写真を撮り、住所や今日弾く曲名など確認される。
正直いって既にぐったり。本当は早めに来てランチの予定だったのに。
ここまで飲まず食わず。事情を説明し「売店か何かある?」と聞くとレストランしかないとのこと。
もう時間もないし、それならいいと言うとアンデシュが嬉しいことを。
「黒パンとトナカイの肉入りチーズならあるよ」
自分の持ってきたのをくれるみたい。ありがとー!これで生き返る。
「好きなだけどうぞ!」
そしてパンを握り締め、リハの部屋に移動した。
ここで40分前くらい。
チューニングし、パンをほおばり、弾いてみた。悪くない。
実は曲を昨日変えた。ビングシューで隣のテントだっと人に「好きな曲、自信のある曲にするべきだ」と言われていた。

Zornは、技術地方性(音楽の持つ方言)、それにパフォーマンス(自己表現力)が問われる。
どうしても技術と地方性に目が行きがち。
だからフォーク・ミュージックの持つ楽しさやコミュニケーション力が実は一番大事だと言いたかったのだろう。
その方向で考え直し、一つ選曲を変えた。急にかえたから、これは「もう一曲」と言われた場合のエキストラに。

落ち着かないまま、ちょっと早めに呼び出された。
別の控え室に移動し待機する。
ビングシューで皆と弾いたこと、エケビホルムでのセッション、あの感覚を思い出しながらちょっと固く緊張しつつある
体をストレッチしてほぐす。
それでも何度もため息がでる。勧められた椅子にはまだ座る気がしない。
エドヴァルド・アンデション(Edward Andersson)がやってきた。
Ekebyholmでここのスタッフをすると確か言っていた。
Ekebyholomではフレンドリーだったのに、今はいかついマハラジャのような表情だ。
硬い表情のまま静かにぎゅっと抱きしめ「Hej(こんにちは)」と挨拶する。
公平性という意味で、フレンドリーな態度にならないよう気を遣っているのでしょう。
「時間だよ」
といい部屋に連れていかれた。

今朝から目まぐるしい展開で頭があまりついていっていない。
部屋に入ると、広い会議室のようなスペース。笑顔のない審査員。
部屋の中央には去年のようにマイク。植木鉢が一つおいていて「その前に立ってください」と。
去年なら「お名前は?どこから来たの?何を弾きますか?」ニコニコ顔で緊張をほぐすような会話をしてくれた。
ところが今年は違う。部屋に入るとシーンとした沈黙。
う、圧迫面接みたい。

エドヴァルドはもったいぶったようなゆっくりした動作で審査員達の隣に、座った。
沈黙をやぶりスウェーデン語で名前と出身を言ってみた。
反応は・・・ない。私の言うこと聞いているのかな?
「今からGånglåtを弾きます」
違和感と緊張感から、随分保守的に弾いた気がする。イマイチ気分も乗ってこない。審査員も無表情だ。
「次」と言われたので次のワルツを弾いた。
緊張しつつ笑ってみせたけど、なんとも気分の乗らない感じでワルツを弾いた。
ヤバイ。ひょっとしたら無難ってことで、ダメかもしれない。
最後の曲は気をとりなおそう。もう後がない。
スウェーデン語で曲の説明をした。なぜこの曲が好きなのかも。
やはり審査員は反応がない。言葉通じてる!?と思い「Forstår ni?(わかります?)」と聞くと初めて
「Ja-!(分かるよ)」と大きくうなずいてくれた。
この曲だけは、いつもの感じを思い出して気持ちよく弾いた。でも2箇所ほど間違えたのでヒヤッとする。

そのせいか案の上「En till(もう一曲)」と言う。それにしても言葉少ない人達だ。
「もっと聞きたいって?」と問いかけ「Ja-!」とおじさん達に言わせた。
これは昨日思いついた曲だ。
「この曲には歌もあります」とよっぱらいの歌を歌って見せると、寡黙なおじさん達が大爆笑。ふん、そんなに面白いのかな。
無事終了すると汗をびっしょりかいていた。Edwardに見送られ部屋でる。
どっと疲れた!

ロビーに戻ると、LSがいた。そっか、同じ日に受けたんだった。忘れてた。
LSとその家族も着ていて、皆で遅めのランチを食べた。
「どうだった?」「審査員のせいか、部屋が広くて音が響かなかったせいか、マチガイも何箇所かしたし・・・」と暗い私。
LSも同じように感じたみたい。ランチを食べ、外で数曲一緒に弾くと、LSのママが帰りのバス停まで送ってくれた。

そう!ここからまだ長いんです。
またダーラナ地方はRättvikに向かうのです。
バスでHudiksvallの後→GävleFalunRättvikと乗換えが続く。
帰りの電車でぐったりして寝ていると結果発表の18時を過ぎている。
Andersに電話しようか・・・ネットでもみれるし・・・と迷ったけど、腹をきめて電話した。
「残念でした」と言われた場合の返答を想像しながら電話すると・・・
「Grattis!You have got Brons!(おめでとう!ブロンズとったよ)」
やった!
レトビックで待つ友人にメールを送ると「Grattis!」と返信が来た。
LSからも電話がかかってきた。「良かったね!」
怒涛の一日でまだ実感がわきません・・・。

レトビックからさらに交通手段はないので友人Eが車で迎えに来てくれた。
「オメデトー!」と器用な日本語で迎えてくれた。
今日は友人Eの友人Iのレトビック宅にお邪魔する。
Mats Berglund(マッツ・ベリルンド)一家、ヨーテボリのスペルマンスラーグ一行も来ていて、到着すると大勢が外で弾いていた。
まずはMatsに挨拶。「前からヴェルムランド地方の曲が習いたくて会いたかったんです」
夢のようだ。
少しワインをもらうとみんなで庭で弾いた。ヨーテボリからの一行の中で見覚えのある人がいた。
Toboのディスタンスコースを取っていた夫妻だ。
3人で別室で弾いていると友人Eが「皆にちゃんと紹介する」と呼びに来た。

庭で弾いている皆のところに行くと・・・友人Eが突然シャンパンを取り出し、私にグラスを渡した。「ブロンズおめでとう!」
栓をシュパっと抜き、注がれた。
そして全員が一斉に私に向かって「Hurra!Hurra!Hurra!」(腹から出す掛け声)
乾杯!
みんなありがとう!2,3曲お礼に弾いた。
庭は0時をまわっているのにまだ明るい。庭からはシリアン湖が見える。

1時をまわると、昔の馬小屋へ移動し、Matsも加えヴェルムランドの曲のセッションが始まった。
ベルムランドの曲は激しい。それに答えるようにダンサーが踊る。
4時をまわらないうちに寝ました。

友人Eに、審査員に歌ってみせた歌を歌うと大爆笑。そんなにおかしい?と聞くと
「とっても!すっごいおかしい。それは皆笑うわ!」
だそうです。
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5 コメント

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Unknown (みかたろう)
2008-07-06 21:52:40
え! ブロンズ取得されたんですか!!

おめでとうございます!!!

Delsboといえば、Polska fran Delsboって曲があったなぁと思い出していました。こんなところなんですね。
返信する
祝ブロンズ (josan)
2008-07-06 22:25:17
Delsboまで間に合うのか、ドキドキしながら読ませてもらいました。
見事Blons獲得、おめでとうございました!

Edwaldのマハラジャには笑いました。やっぱり、あの髭のイメージでしょうか(^^)。
返信する
Tack! (管理人)
2008-07-07 01:20:15
みかたろうさん、josanさん

ありがとうございます!
まだ実感がありません。Delsbo滞在時間が短かったせいかも。
じゃあ、来年はSilverを目指す?と聞かれそうですが、しばしお休みです。

そう、エドヴァルドのひげはいつもじっと見てしまいます。くるんってなってるんですよ。毛先が!
返信する
おめでとう! (Heidi)
2008-07-18 09:10:56
今更ですが、本当おめでとう!

すごいな~~~

今度本当ぜひ聞かせてね。
うちの地元でイベントやるから!来てねー。
返信する
Unknown (管理人)
2008-07-23 19:28:47
ありがとうー!
でも、ブロンズっていったって、まだまだです。
もっと精進します。
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