スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

伝統舞踊VS伝統音楽 II

2017-03-13 12:46:53 | ポルスカについて
※たくさんの方に読んでいただきありがとうございます!あらためて、誤解のないよう加筆しました。(ブルーの箇所です。4/19)

記事を書こうとブログにログインしたら、昨日は1000人近い人がアクセスしていました(1000回じゃなくて)。
目新しい出来事も記事も、一般受けすることも何もないのに不思議!こんなこと初めて!
たまに有料のアクセス解析しませんか?って見れることがあるんですが、見てみると訪問者上位はロボットなんですよねー
ものすごい数のロボットが押し寄せたんでしょうか。
もしや、あなたもロボット

先日、初めてレコーディングというものを経験しました。
昔、東京でレコーディングしたことがあるのですが「なんて素敵な空間」という以外は単にライブ演奏をしただけのような感じでした。
今回は、作曲された曲で楽譜アリ、パート別、重ね録りあり、で、いわゆるレコーディングというものの初めての経験です!
クリックが聞こえるような演奏だ」という会話を聞いたことがありますが、やっと意味が分かりました。
後の編集のために、ヘッドセットからメトロノームのようにクリック音を聞きながら演奏することがあって、つまり「クリックが聞こえるような」=「まぁ!なんと正確な!」
という意味だったんですねー。

さて、最近は「Spel och dans」といって「演奏してその曲で実際に踊るワークショップ」を継続して開催しています。
それで、一つの質問を受けました。

スウェーデンの伝統音楽はダンス音楽だから、ダンスの伴奏がうまい=演奏がうまい」ってこと
上手な演奏をするためには、ダンスの伴奏が上手でないといけない」よね
※スウェーデンの伝統音楽はダンス曲が大半、という大前提があります。

「質問」というよりもはや「確認」に近かったのですが、ひょっとしてそう思っている人って実は多い??
もしや、私が誤解させている

そこで、この話題について、はっきりと書いておこうと思います。
昔このブログで「伝統舞踊VS伝統音楽」という記事を書きました(なぜかカテゴリーを「スウェーデン生活」に分類していて、探すのに苦労しました!)。

当時は、熱き友人を尻目に、答えのでない難しい問題だと書いていました。
でも、それ以降、色んな人と話したり、色々と考える中で、自分の中では結論が出ています。

ダンスの伴奏と、伝統音楽の演奏、これは二つの異なるカテゴリーです。
求められるものが全く違います。
一方がうまくても、もう一方がうまいとは限らないのです。
一方に慣れている人は、もう一方にも慣れる努力が必要です。
著名なミュージシャンもそうで、ダンスの伴奏がうまくて有名な人もいれば、聴かせる演奏で有名な人もいます。(環境的に機会に恵まれ、どちらも上手という人たちも大勢います

この話は、この3つに尽きると思うのです。

1.ダンスのための音楽だからダンスを理解しないと弾けない。
※演奏は、ダンサーとのコミュニケーションで成り立つ。

2.聞かせる演奏をする場合、聞いて楽しい、聞いて心地よいと思わせる魅力的な何かが欲しい。
※演奏は、ミュージシャン同士や客席とのコミュニケーション。

3.ダンスの伴奏の場合、個性的な表現を前面に出しすぎると踊りにくい。

1があるから誤解をまねくのだと思います。もう少し説明すると、

1.リズムやメロディにオリジナリティを出したい時に、単に「脱線しちゃった」のか、「革新的」なのか。
気持ちのよいグルーブ感を強調したい時に、「奇妙」なのか「最高にノってる」のか。
これはダンスのこと、丸裸にした時の骨格、そうしたものが見えていないと出来ないことだと思います。
演奏で、”メロディだけなぞった超高速ポルスカが可笑しい”というのもこれです。

2.説得力のある演奏というのは、自然とゆらぎます。
緊張感を高めて次の瞬間にパっと解放したい、そんな時どう弾くと良いでしょう?
単調な♪タカタカタカタカというリズムが続くとき、過去の名手たちはどうやって揺らして遊んだでしょうか?
装飾を複雑に美しく聞かせるための緩急が得意な名手もいます(Pekkos Gustafとか)。

※ただし、スウェーデンの伝統音楽のほとんどがダンス音楽、実用的な目的をもった音楽です。
(愛情、悲しみや、崇高な何かを表現する芸術というよりも。)
つまり、「感情をこめてたっぷり」「大げさ」に弾くことはありません。
実用性を損なわない範囲で個性を出して遊ぶ演奏、という意味です。自分で書いておきながらややこしい!


3.ダンサーと演奏者はお互いをよく聞いて、見て、リズムを揺らしたり、お互い影響しあう中で楽しみます。
ただ、予想外の緩急があったり極端だったりすると、踊りにくくダンサーの足がとまってしまいます。
(上級者や演出の場合は別です)
以前、ワルツでリピートして初めに戻る時に、ゆったり、ためて弾くことが多い曲があって、踊りやすさを聞いてみたところ、
「慣れている人だったら、面白いな、と思うけど、普通の人なら踊りにくい。可能なら普通に弾いてほしい。」
という回答でした。

実際、私が経験したダンスの伴奏についてですが、
変なこと弾かないようにと、習った通りの演奏を思い出して(つまり緩急あります)それを忠実に再現して弾こうとするのですが、それではリズムが揺らぎ過ぎて踊りにくいと言われてしまいます。えー!そう習ったのにー!なんて言わず、習ったものを一旦、忘れる努力をして(耳で覚える伝承音楽なので意外に難しい)、リズムや緩急の特徴をなだらかにするように考えながら弾きます。
だからといって、メトロノームにあわせたような弾き方をすると、つまらない演奏になるから奥が深いのです
これは、ダンスの伴奏にまだ慣れていない私には、まだまだ課題です。

結局のところ、
<ダンスの伴奏>
ダンサーが踊りやすいテンポやアクセントを意識して弾く。

<聞かせる演奏>
本質を理解した上で表現したり、著名な奏者の個性を真似る(伝承音楽なので「聞いて真似る」ことは重要です)。

昔のブログ記事で書かなかった結論ですが
「演奏には2種類の弾き方があるので、どちらか一方のみという制限を受けると辛い。奏者にはどちらも必要。」
というのが今の私の意見です。(ダンスの伴奏に慣れていくうちに新たな発見をするかもしれません。)

オマケ
音楽と言葉は似ているな、と思います。
ニュース等で客観性を出すにはどう話したらいいか。
聞いてほしいと訴えかけるには、どうしたらいいか。
色々とありますよね。
ピアニストで指揮者のバーレンボイムの話し方というのに、私はとっても考えさせられます。
こちらのYoutube動画
動画の中で質問を受けるのですが、そんなに興味をひく話題と私は思えなかったのですが、バレンボイムの回答に引き込まれてしまうからです。
最初は考えながらゆっくりと、次第に早口で熱く。
心から出た言葉と感じるからでしょうか。
コメント
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