スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

Himlens polskaー曲のタイトルについて考えてみた

2024-01-31 12:25:49 | ポルスカについて

SNSで静かにしていると静かな余生を過ごしているだろうなと思われそうですが、狂ったような日々を過ごしていますそして、それにも関わらず、猫を飼い始めてしまいました ほんとは犬派なんですけどね~

ずっと猫を飼うなら赤い毛でグリーンかブルーの目がいいなと思っていて、赤毛ではないけど目はブルーグレー。朝が特にきれいな色で、目を見つめては「ほほーう」と感心しています

さて、今日はふと思いついたこの話題。曲のタイトルから考えてみる。

「Himlens polska」という伝承曲があります。調べると、フィンランドの伝統曲とでます。

フィンランドのフォーク(伝統曲)はスウェーデンとは随分と曲調が違うのですが、たまに似た雰囲気だなと思って伝承地域を見ると、歴史的にスウェーデン語圏だったりします。

そういうケースでは、地域名もスウェーデン語とフィンランド語の両方をよく見かけます。フィンランドのTurk(トゥルク)は、スウェーデン語名はÅbo(オーボ)です。

他には曲名でよく出てくるフィンランドの地名「Pohjanmaaプフヤンマー」は、スウェーデン語で「Österbottenオステルボッテン」、英語では「Ostrobothniaオストロボスニア」です。あー、わかりにくい。

フィンランドに行く際に空港名で迷ったことがある方もいるのでは?フィンエアでストックホルムからHelsinkiヘルシンキへ向かうと、Helsingforsヘルシンフォシュ行きのフライトという表示です。

 

さて、冒頭の曲ですが、スウェーデンの伝承曲のような雰囲気ですが、フィンランドのÅboの伝承曲(つまりTurkの伝承曲)と言われる曲です。似た曲がいくつかあるそうですが、フィンランド関係は全くの初心者の私なので、似た別の曲というのは知りませんし、フィンランド語も分からないとどう調べていいのかも分かりません(ニッチな内容はその国のことばで調べないと出てこない)。ただ、曲の引用として、A.F.Stare (Adol Fredrik Stare 1787-1810)とあれば、それはスウェーデン人学生のことです。フィンランドのオーボ(つまりトゥルク)に1806-1808年の間、留学している間に書き留めた曲で、しかも帰国の際に持って帰り忘れたという...持ち帰り忘れたそのノートブックは、今もオーボ(トゥルク)のシベリウス博物館にあります。取り戻せなかったのは、帰国後2年で亡くなってしまったからかも。

※個人メモのようなノートブックは(昔でいう自分用カセットテープ、今でいうMy play listのようなもの)スウェーデンに多くありますが、色んな曲が書き留められ、タイトルがないもの、タイトルがあっても作曲者も書かれていないものが大半です。この曲もなぜStareが書き留めたのか、自分が作ったのか、どこかで聞いたのかは本人にしか分かりません。

また、その楽譜には本人が「Himlens polska」ではなく、「Hin Håles polska」というタイトルを書いています。

Hin Håleとは「悪魔」を指すことばです。縁起でもないから直接「悪魔」と言わず婉曲してそれを指す語(noaord)というものです。「Himlens(天国、空) polska」というネーミングで演奏する人がいますが、曲の由来にStareという学生の名前をあげている場合、なぜタイトルを変えたのかはわかりません。もしかしたら、フィンランドにいくつかあると言われている曲と関係するのかも。それか、単に悪魔の反対にしたいと思ったか(婉曲的に天国が悪魔とか??)。

ともかく、こんな美しいメロディなのに「悪魔」とはなぜ?何か逸話があるのか?ぐいぐい興味がひかれますよね。ですが、スウェーデンの伝承曲に慣れていると「たぶん」という推測の域を出ませんが、ある程度想像できます。

スウェーデンでは、「djävul(悪魔)のポルスカ」と呼ばれる曲がいくつかあります。「näcken(ネッケン)のポルスカ」もよくあります。(ネッケンはフィドルが上手くて人を殺したりする水の精)

こうした邪悪そうな精霊や悪魔の名前がついた曲には共通点があります。

ーメロディが音階、スケールのような動きをする。(そうでない有名曲が一つありますが、作曲された歌の曲なのでそれは例外)

ーチューニングも変えて響き最優先することも。結果、ふわふわ響いてちょっと不思議な曲。

ー似たウラ話がある。「森で遭遇して魂と引き換えにこの曲を習った」「森でネッケンが弾いていた曲」など。

結局のところ「Hin Håles polska」の名前の由来は不明ですが、Stareがスケールの動きと響きでネッケン系の曲と同タイプと思ったのか、似た曲がある地域でそのように思われていた曲かもしれません。

ただ、忘れてはいけないのは、これはポルスカ(ダンス曲)という点です。美しいのでゆったり弾きたくなりますが(私もゆっくりめで弾いているし、アレンジでそうしても良いのですが)、原曲はダンスのテンポということです。スウェーデンの曲は(おそらくスウェーデンの影響を受けた、フィンランドのスウェーデン語圏の曲も)曲にタイトルがなく、実用の音楽(ダンスのための演奏曲)が大半なのです。スウェーデンというと、分類学のリンネが有名ですが、曲名も分類のようなタイトルが多いのは国民性かな?と思ったり。そうだとしたら面白いですね。

また、この話をすると、有名曲の「Farmors brudpolska(おばあちゃんの結婚式のポルスカ)」のタイトルの意味を考えて沼にはまる方が時々いるのを思い出します。スウェーデンの伝承曲に慣れていると、おばあちゃんが結婚した時?とは考えません。「誰それが弾いていた〇〇」という曲名が多いため「伝統音楽奏者のおばあちゃんが村の結婚式でよく弾いていた曲」なんだろうな、と想像する訳です。※ややこしいですが、伝統音楽奏者自身がその曲を伝えたとは限らないのもポイントです。

ただ、曲名に慣れていると容易に想像できても、「常に例外がある」という考えも大事。慣例に引きずられて凝り固まらないようにしないとな、とも思います。

今回、慣れているとタイトルからこんな風に読む、というのを紹介しましたが、結局のところ真実はわからないのです。

※もう少しStareについて知りたい方は、Södermanlands Spelmansförbundに詳細があります。

https://www.samlingarna.sormlandsspel.se/noter/adolf-fredrik-stare/

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オンラインあれこれの続き(楽譜集のID番号)

2020-07-06 23:31:52 | ポルスカについて
7月最初の水曜日。スウェーデン最大の伝統音楽の集まり、ビングシュー・ステンマの日ですが、1969年より続くこのイベントも今年初めてキャンセルとなりました。
 
さらに残念なことに、スウェーデンを代表する偉大な伝統音楽奏者、ペシュ・ハンスPers Hansが金曜に77歳で亡くなりました。お父さんのPers Erik、祖父のPers Olleと続く伝統音楽の家系で(ソーン金メダル、文化賞受賞歴)、70年代伝統音楽ブームを牽引した1人です。私が初めてスウェーデンに行った時、あまりに伝説的奏者だったので過去の亡くなった人だと思いこんでいまして(白黒写真しか見たことがなかった)。すると、目の前で本人を紹介され…「!!」とびっくりしたのでした。演奏も録音で聞いていたとおりの流麗さで、ダーラナの伝統美を隅々まで感じる演奏だったのを思い出します。時は流れ、次の世代に引き継がれる。分かっていても、悲しいですね。
PERS HANS OLSSON
 
さて、話を変えて、日本では6月、オンラインイベントが二つありました。
北欧のおうちでピクニック、約4時間半、一気に見てしまいました!
途中お客さんが来たりスマホやPCや場所を移動しながらですが、一人ずつが個性豊かで目が離せませんでした。
その前夜祭かのように東京北欧セッションがズームで開催。ズームを初めてダウンロードしてログインしたものの、夏至のディナーと被って見れませんでした。ごめんなさい!こちらも、ワークショップなど濃密なプログラムを組んでいましたね。
 
前回の続きです。
頸椎ヘルニアを指摘されてから姿勢を正して過ごしています。
背筋が反りすぎないよう、顎を上げすぎないよう…。3週目過ぎた頃が一番辛かったです
身も骨も、一夜干しのホッケになった気分でした。
 
さて、伝統曲のセッションを現地でする時、自分とメロディ、装飾、リズムに違いがあると、誰に習ったの?と聞かれます。楽譜もないので、教える人が違えば少しずつ違いが生まれ、これが伝統曲の豊かさにも通じます。
 
では、楽譜の曲はどうでしょう?皆同じように弾くと思いますか?
※ここでいう楽譜は、最近の人が楽譜に書いてネットにあげたものではなく、古い楽譜集で伝わった曲のことです。
 
そもそも楽譜の曲というのが特殊です。ブログで何度か書いたことがありますが、ここで簡単におさらいを。
---楽譜についてのおさらい---
口伝の伝統曲は楽譜がありませんでした。今も習う時には使いません。
1900年代に収集/出版された有名なSvenska Låtarスヴェンスカ・ロータル(スウェーデン曲集)という楽譜集がありますが、これは資料です。「それを見て弾いてね」というものではありません。
主に1600-1800年代、楽譜を書く知識のあった人がnotbok(ノートブック、楽譜集)という、自分用に曲を書き留めたものがあります。ほとんどが現代に伝わっていない曲で、作った曲、習った曲、街の流行曲もあり、作曲者にも触れていなかったり、いわば私的な覚書です。そうした古い楽譜集をのぞくことは、現代の伝統音楽奏者にとっては、「新曲」発見のツールでもある訳です。
 
そして、先ほどの「楽譜があれば皆同じように弾くのか?」の答えですが、「イエス」でもあり、「ノー」でもあります。
(私の個人的な意見ということを断っておきます)
古い楽譜集から曲を探した人は、楽譜から解釈をすることがあります。バロック的なアプローチだったり、楽譜に間違いがあったり、あきらかな簡略化の楽譜に音を足して…等々、理由はそれぞれ。そうやって譜面から自分のものにした曲を人に教える際は、伝統にのっとり楽譜を使いません。そして、その人のバージョンが広まるという訳です。楽譜集の掘り出し物調査は最近の流れなので、バージョン違いが生まれるほど年月も経っていません。ただ、楽譜の曲は分かりやすい曲が多いので、編曲され色んなアンサンブルに使われます。
このため、「楽譜集掘り起こし曲」の多くは、古い楽譜とはなんだか違う、でも誰もが同じバージョンを弾いている、アレンジしやすくアンサンブル向き、という「イエス」でもあり「ノー」でもあるということになりがちなのです。
 
さて、こうした古い楽譜集のうち、スウェーデンのvisarkivetが管理している分については、1曲ずつID番号を割り振っています。
以前は、直接行かないと見せてもらえませんでしたが、2000年代に入ってからデジタル保存され、今はネットで見れるようになりました(システム統合などで2019年以前のリンクは古くなり、あちこちのサイトでリンク切れになっているので注意)。
 
このID番号から見えるスウェーデン伝統音楽の話を書きたいと思います。
 
Sven Donatの楽譜集
この中の一曲を例に紹介したいと思います。
Sven Donat(1755-1815)は兵士で伍長になったフィドル奏者で、200曲以上ノートブックに書き留めました。
私の知らない、ある1曲が流行っていて、聞くと、Youtubeでマグヌス・ホルストレムが弾いていて人気になったようです。その動画を見ると、アドリブ的な部分も感じたので原曲の譜面がみたいなと思い、ネットで検索しました。folkwikiという自由投稿の楽譜サイトがヒットし、タイトルに「Polska efter Sven Donat (Ma5 42)」とあります。ノートブックのID番号が複数掲載、そして、「マグヌスの動画参照。ヨハン・ヘディンを通して有名」という一言が添えられています。ヨハン・ヘディンは、バロック音楽(バイオリン)にも精通したニッケルハルパ奏者です。最初にヨハンが広めたとしたら、独自の解釈をしてそうな気がします。
 
掲載されていた、ID番号はこちらです。同じ曲がこれだけの楽譜集(5冊)で見られるということは、古くからの人気曲だったのでしょうね。
 
Sven Donatと、以下4つが掲載されていました。楽譜集のIDを調べて、その名前も付け足しました。
Ma5:042, Sven Donat
Sö12:064, Malcolm Åhlander
Sm2:007, Lars Sundell "Lasse i Svarven"
Ma10:050 nr394,  Sam Wåhlberg
Ma7:025 nr.62, Andreas Dahlgren
 
それぞれの楽譜をネットで見ると、4つはCm(動画はGm)、メロディラインの印象も動画とは異なります。
唯一、Lars Sundell(1874-1923)はGmで、メロディが動画に似てると思うところも、違う箇所もあります。
時代でいえば、Lars Sundellが一番最近の人で、Sven Donat(1755-1815)、Sam Wåhlberg(1700年代)、Andreas Dahlgren(1758-1813)は同世代。だからこの3人の譜面はそっくりなのかも。(Malcolm不明)
動画のメロディを「Sven Donatのポルスカ」と呼ぶには、どの譜面とも違うし、どういう経緯だったのか…ぜひ知りたいところです。
感慨深いのは、当時の楽譜をこんなに簡単に見比べることができる時代になったことですね。
 
Ma、M、MMD、地名、SvL
Spelmäns böcker(フィドラーの本)の分類には3つあります。
Mはmelodibokメロディブック、aはavskrift原書からの写し(ただし、Maとあっても原書のことがある)、MMDは旧・音楽歴史博物館(現・パフォーミングアーツミュージアム)が所有していたダンスブックの曲集です。
それ以外では地方名の略語が24種類あります。は、Södermanland、DrはDalarnaなど。Svenska Låtarの楽譜集はこの膨大なコレクションをもとに出版されました。この楽譜集の曲に言及する場合、SvLという略語を使います。(SvL Skåne nr80とあれば、”Svenska Låtarのスコーネ地方の巻、80番”)
CDの曲解説で、こうしたID番号が掲載されていることが多いです。
 
アルファベットの後の数字
楽譜集ごとに割り当てた番号です。Mには1-189まで(189冊)あります。
コロンの後の3桁の数字はスキャンした写真の番号です。025は25番目の曲ではなく、25ページ目でもなく、スキャナー画像の42枚目です。
nr62のようにさらに番号が書いてある場合は、原書に書かれている曲番のことです。
 
検索はこちら
 
検索サイトの組織について
 
-FMK(Folkmusikkommissionen )
直訳するとフォークミュージック(伝統音楽)委員会、FMKが1908年にできました。
創始者は弁護士でフォークミュージシャンのニルス・アンデション(1864-1921)。最初のメンバーにはアンデシュ・ソーンもいます(著名な画家で、最初の伝統音楽の集まりを始めた人)。活動は、曲の収集や保存です。1910年代には地方ごと、奏者ごとにまとめられた楽譜集「Svenska Låtar」の出版に着手しましたが、1921年にニルスは亡くなりました。その後、残ったメンバーで毎年出版を続けたそうです。FMKのメンバーではなかったのですが、当時、ニルスの助手として活躍していたウロフ・アンデション(1884-1964)がその後、FMKの収集、編集業務を委託される形で活動を続けました。スキャナー画像の譜面でもウロフによる膨大な写しが見れます。1936年に、FMKのコレクションは、当時の音楽歴史博物館(後の音楽博物館、現・パフォーミングアーツミュージアム)に預けられ、引き続きウロフ・アンデションが作業を行いました。彼は、エストニアのスウェーデン語を話す地域の曲も調査し、本を出版しています。FMKのコレクションと、博物館のノートブック・コレクションと、合わせるとスウェーデンで一番大きなアーカイブとなりました。彼の死後1976年にFMKは解散、2003年よりVisarkivetがコレクションを管理しています。
 
-MusikverketとVisakivet
Musikverketは、スウェーデンの官庁の一つで音楽と劇場芸術を司り、パフォーミングアーツミュージアム(旧・音楽博物館)、Visarkivet、Capriceレコードなどもあります。
Visarkivetは、伝統音楽とジャズの収集/保存、研究、出版をする機関です。分かりにくいのですが、Visarkivetには、バラッドや子供の歌、録音資料など様々なコレクションがあり、FMKがかつて所有してた古い楽譜集のコレクションも含む、ということです。この関係が分からないと、サイトの中でMusikverket、ミュージアム、visarkivetのコレクションと、ぐるぐるさまよいがちです。

FMKが収集した曲
対象は、文化的、歴史的に保存する意義のある古い曲です。ウェブサイトの説明によると、1880年頃までを目安にしているそうです。アコーディオンの流行に伴い新しい音楽の時代になったのがその頃で、「ありとあらゆる奏者の全てのレパートリーを記録することを目的としていない」とのこと。ですが、1900年代に写しなど記録/編集されたものも多数あります。1930年代にプロシアやリガの曲を音楽歴史博物館のために写したもの(原本は世界大戦で消失)もあるそうです。
また、バラッドなどの膨大な物語歌は対象とせず、ほぼ全て器楽曲(羊飼いの歌や村の讃美歌など多少あります)、それもほとんどがフィドルの曲というのが特徴です。バラッドは、FMKではなく、Visarkivetのコレクションとしてあります。スウェーデンの伝統音楽は、歌をのぞいても現在10万曲あると言われ(収集により今も増加中)、これは他国と比べても膨大な数なのだそうです。FMKの現在のスキャンデータは3万ファイルとも4万5千ファイルとも記述がまちまちですが(まだスキャンされていないもの多数)、1イメージに複数の曲が書かれているので、合計でいうとかなりの曲数がネットで見れる状態です。
 
全ての楽譜集は所有していない
ただし、FMKと旧・音楽歴史博物館所有のコレクションがスウェーデンの伝統音楽の全てではありません。
例えば、よく聞く有名なEinar Övergaardの収集も、ブログでも書いたグスタフ・ブリドストレムの楽譜集も(ロシアで捕虜で過ごすうちに300曲書き留めた)、Himlens Polskaとよばれるあの名曲の書かれた楽譜集も別の組織が所有しています、
ヒムレンス・ポルスカは、フィンランドの曲とされていますが、スウェーデンのセルムランド出身、アドルフ・フレドリック・スターレの楽譜集の曲です。1806年、二十歳そこそこでフィンランドに留学し自分のノートブックを置き忘れて帰国してしまい、その2年後に亡くなりました。忘れ物を回収する人もいず、以降、現在まで200年もの間、フィンランドのシベリウスミュージアムに保存されています。
 
こうして書いていくと、スウェーデンでは自国の伝統音楽を守るために、国家予算を割き、国をあげて自国の文化を保存・継承する姿勢がすごいな、という印象があります。
ですが、実際には、強く訴え、働きかけ、組織を立ち上げたのは一般の人の力です。政府は、活動が軌道にのったなと気をゆるめるとすぐに予算削減まっしぐらです。私が知る、この10年、20年でも、様々なせめぎあいがあり、個人の活動家の熱意で成り立ってきたと感じます。
FMK創始者のニルス・アンデションの記事を読んでも、組織を作り、資金調達し運営をし、また資金調達してSvenska Låtarを出版し、一つずつ起業家精神で活動をしていたことが感じられます。
 
スウェーデンの伝統音楽の黄金時代を造った、偉大な伝統音楽奏者、Pers Hansの死亡記事ひとつ、文化ニュースにとりあげられないことに伝統音楽の愛好家は憤りを感じ、メディアへ働きかけをしていると聞きました。
私はこうして、聞いたこと、読んだことをここに書くだけしかしていません。スウェーデン人の行動力にはとても及ばないと情けなく思いながら、それでも一つでも誰かの記憶に残るストーリーを伝えていけたらと思います。
 
お知らせ
-数年前に書いた、浜松の楽器博物館の図録に寄せた個人的なエッセイ、とうとう出版となったようです。様々な楽器の奏者が書いたそれぞれのエッセイがおさめられています。
-3月にキャンセルとなった、アトリエ・ポルッカでのハーディングフェーレ&ニッケルハルパ、樫原聡子さんとのデュオライブ、秋開催の可能性を探っているところです。
興味のある方、もう少々お待ちください。
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好きに弾いて良いと適当なことを言うスウェーデン人

2019-11-13 12:43:58 | ポルスカについて

テノールハルパを和室に置いていたら、3か月で虫に食われました(毛を食べられた)。以前、子どもの使っていないバイオリンを和室に2台ハードケースのまま置いていた時も虫食いに合ったのを思い出しました。南向きの明るい和室でルンバも定期的に掃除して…、畳の部屋は保管に向かないのかも。弓の毛替えは、4-5000円するのでテンション下がります。皆さんもお気をつけて。

さて挑発的なタイトルをつけてしまいましたが、最近、考えさせられるやりとりがあったので、ちょっと書いてみたいと思います。

※このブログ全体、またこの記事は、スウェーデンの伝統音楽について知りたい(学びたい)方に向けて書いています。今でも教科書もなければ基本情報も日本に伝わっこない中、誤解も多く見受けられ、基本的な内容を基礎から伝えたいと思っています。ですが、こうした伝統音楽のメロディを使って色んなアレンジや表現をしたり自由な音楽活動を縛ろうという意図はありませんのでご理解ください。

「守破離(しゅはり)」という言葉をご存知ですか?

日本の武道、茶道など、古い師弟関係で学ぶ「~道」で言われる考え方のことです。「守」は私見を挟まずひたすら基本を真似し、「破」は確立した基本の上に個性が出て(基本を破る、型破り)、離は己のスタイルを確立する(例えば、その人の名前のついた流派が完成)、少しニュアンスが違うかもしれませんが、こういう意味だと思います。

「型破り」「型なし」という言葉が面白いなと思うのですが、「型破り」は「守破離」の「破」ですが、「型なし」は「守」が出来ていない、根っこがない時に言われるようです。

それで、スウェーデンの伝統音楽に話を戻しますが、「伝統」といえば日本語では格好よい響きがありますが、結局のところ「一般民衆の民俗音楽」です。厳しい師弟関係があったり、日本の「○○道」のようなしきたりがある訳でもありません。ですが、数百年続くものには、やはり「型」というか「スタイル」があるものです。でも、ルールブックも師匠もいないから、その見えない縛りがゆるーい。楽しみで弾いている、ほとんどの人は意識をしていないと思います。でも、無意識にその「型」を守っているんです。(どの地域のどの奏者のどのスタイルと、伝統を強く意識している人もいます。)

スウェーデン人はすぐにタイトルのように「好きに弾いて良いから」と言うのです。ホントに良く言います。

日本で、人に指摘されるまで深く考えたことなかったのですが、スウェーデン人は(守破離なんか知らないでしょうが)、守破離でいう「破」の部分に触れているんじゃないかなと思いました。

留学中、ヴェーセンのOlovが先生でしたが、「フォークミュージック(伝統音楽)は自由だ。好きに弾いて良い、まさに君が伝統の一部で、新しい伝統を作るんだ」と最後の授業でいいました(カッコイイ!)。ですが、ウップランド地方に特有のワルツのスウィング感をゴリゴリ出せ!と繰り返し、繰り返し、何度も練習させられ、1時間弾き続けても「ダメ。全然。」と言ったのは、同一人物ですよ。90点じゃアカンって感じでした。つまり、ウップランド・ワルツのノリは鬼コーチだし(守)、その先は自由にしろ(破、離)と、そういうことです。

ゆるーいスウェーデン人集団は、どうやって「型」を無意識に守っているのでしょうか?

推測ですが、曲を覚えたり皆で楽しく弾きたい人は、地方、地域の大小、さまざまなグループに属します。自分が踊りたくなくても、踊らないグループでも、ダンスをしているグループと常に関わり続けます。グループの集まりで、イベントで、色んな機会で弾く時に、演奏だけよりも「ダンス&演奏」という機会が圧倒的に多いです(伝統音楽の多くはダンス曲)。そこで、その曲でそのダンスを踊る時の核となる部分が(それも1曲ずつ曲ごとに)集団の中で暗黙にキープされていくんだと思います。グループに属さず、夏のお祭り(ステンマ)だけ行く人もいますが、上記のような人が大半な中に突入すれば朱に染まるというか、結局、無意識に型を守ってるんじゃないかなと思います。

「ここはどう弾いてもいいよ、好きに」という時は、「核となる部分ではない」から。

もう一つ、好きにどうぞって言われる時は核の部分に影響しない時だと思います。演奏が上手い人、あまり上手じゃない人、初心者、色々なレベルのスウェーデン人がいますが、皆さん、それぞれの曲ごとの核となる部分(言ってみれば「守」にあたる部分)から逸脱した人に私は出会ったことがありません。でも、それは自分の地域の曲を弾いている時の話です。違う地方の人が違う地方の曲を弾いて、あれ?何か違う?というのはスウェーデン人同士でも感じるし、本人も自覚していて。そういう時は、悪意はないのですが「何でそう弾くの?誰に習ったの?」と聞かれます。だから、プロで活躍する伝統音楽奏者も、セッションでは色々弾いてもステージでのレパートリーは出身地の曲ばかり、ということが多いです。(色んな地方の曲を器用に弾く人もいます。)

この「守」の部分はやはり大事だと思います。自分を捨てて、相手のマネをします(書道でお手本みて書く感じ)。メロディをなぞるのではなく、書道でいうなら、筆遣い、緩急、線の細さ、止めハネの勢いや力加減も全部です。どれだけ聞こえて、どれだけ再現できるかは聞き取る力にも左右されます。あてっこクイズで、さてこれは誰の弾き方?ってできるくらい(なんてマニアなクイズ…)。

自分の話になりますが、元々、自分を出したい欲がなかったこともあり、始めた頃から「自分を捨てて型を守る」意識は一番心掛けていました。ちゃんと出来ているかどうかは分かりません。ニクラスに習った曲は「弾き方がニクラスだ!」って言われるしモノマネレベルはまあまあかも。去年、ダニエルに東京で習った曲は「その弾き方、男っぽすぎませんか?」と言われたけど、ダニエルに習ったんだから、そりゃそうです。もちろん、マネしたくないな、と好みに合わなければ、お手本に選びません。馴染んだ後は、自分はこう弾きたいと思う部分は出てくるし、そこは自由だと思います。

CDやYoutubeで本気のモノマネって結構疲れます。本当は目の前にお手本の人がいるほうが簡単。それでもCDでも積み重ねを続けるとコツもつかんでだんだん慣れてくると思います。参考まで。

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北欧ダンス曲のリズム、スレングポルスカ

2019-09-10 20:21:00 | ポルスカについて

2019/9/15 ハーディングフェーレとニッケルハルパ お食事付き 残席わずか(会場へお尋ねください。)※この日、スウェーデンの友人のCDを販売します。その紹介はこのブログ記事の最後のほうで。

2019/10/6 スウェーデンの講師による音楽ワークショップ、ダンスワークショップ


夕飯中に、子どもに「早く食べて楽器弾いてよ」と言われます。食事中はCDをかけていて(北欧ものやアニメやなんでも)「CDじゃあ、あかんねん。目の前で弾く演奏がいいねん」と、今夜もこきつかわれています。しかも「なんかな、音程はいいんやけどな(そりゃそうだ、ニッケルハルパは鍵盤だし)、最後のその音、気をつけたほうがいい。」とまで。はいはい、頑張ります、難しいんだってば、この最後の音。

という話はさておき、「この曲はスレングポルスカですよね?」と時々聞かれます。返事をすると混乱させてしまうことが多く、前々からこの話題を書こうと思っていました。今日はスレングポルスカの話と、スウェーデンのトリオのCDの紹介を書きます。

スレングポルスカ slängpolska 

シンプルで軽快なリズムやメロディアスな曲が多く、セッションでも人気です。スモーランド地方、セルムランドや南スウェーデンのダンスの種類で、歩きながら自由に踊るダンスです。列を作って歩くようなポロネース(スクエアダンス)とは随分と違います。もっと古いスタイルで、歩き回らずその場で踊るスレングポルスカもあります。どちらも基本は歩くので、3拍子の拍が均等な曲が使われます(知らない方のために説明すると、リズムが不均等な曲がスウェーデンには多くあります)。歩くのにあわせ2拍子や4拍子のようなリズムの取り方をして、それをわざわざ3拍子で弾きます。「あの地方の人は数えられなくて1拍子なんだ」というジョークもあります。

ポルスカ 

地方により違いますが、一般的なポルスカは3拍子の、1と3拍目にアクセントがあり、それで回転するダンスのリズムを生み出します。ちなみに、アクセントというと誤解されるますが「強く弾く」のではありません。回転を生み出すので勢いや緩みといった緩急が必要になります(車のアクセルをブオンとふかす感覚に似てるような)。打楽器的な強弱のアクセントをつけると、途端に「踊りにくい」「ポルスカに聞こえない」と言われてしまいます。回転を押し出すイメージで、各拍の長さが不均等な曲が多いのです。もちろん、不均等である必要はなく、均等なリズムの曲も多くあります。

それで、スレングポルスカの話に戻りますが、「拍が均等で歩きやすい曲=スレングポルスカ?」と思われがちなのですが、もちろん、答えは「No」です。回転を意識した1と3拍目を弾くのか前に前にと進みたくなる(2拍子かのような)グルーブ感を出すのか。どちらの演奏でもどちらのダンスも踊れますが、リズム感(グルーブ?)が異なります。また、どちらよりの演奏をするか、フレーズごとに変えるのか、多少は演奏者の選択の余地もあって、そこが譜面にならない伝統曲の楽しい部分です。

そして、このスレングポルスカが混乱を招く理由が2つあるのです。

1.ダンスの種類として言ってる

スレングポルスカがスモーランド地方などの地域にあるダンスの種類なので、曲も本来はその地方の曲のはず。でも、スウェーデンでも「(スレングポルスカが踊りやすい曲だから)この曲はスレングポルスカだ」と音楽の由来のほうではなく、ダンスの種類の話をしていることがあり、それが混乱を招くのです。(「ビスカレのポルスカ」を「スレングポルスカ」と呼ぶ人が多く、こうした例が誤解のもとになっている気がします。多分、スレングポルスカのようなグルーブ感で弾いたらカッコ良くて人気を集めたのかな?と。個人的な推測です)。また、例えばスモーランド地方のポルスカなら何でもスレングポルスカかといえば、そうではありません。ポロネス、メヌエット、時代背景にしてもニュアンスが異なります。

2.色んな地方にあるスレングポルスカ

ウップランド地方、もっと北のヴェステルボッテン地方などでも「スレングポルスカ」という名前のダンス(曲)がありますが、リズムもダンスも全く異なります。「スレング」という言葉は「投げる」という一般的な言葉です。投げるような動きをするダンスがあれば誰でもそれを「スレングポルスカ」と呼ぶことはごく自然にありえるので、紛らわしいのです。いっそのこと、スモーランドポルスカのように呼び名を変えれば誤解がなくなるんじゃないかと思います。よく基本のポルスカとされ、他の地方の曲で踊ることもある「ビングシューポルスカ」は、「ビングシュー」が地名なので他の地域の曲で踊ってもこうした混乱は起きません。

そういう訳で、「スレングポルスカですか?」と聞かれると、「スレングポルスカも踊れるけど、違います」「1と3拍目を強調したので、そのつもりで弾いてません」「スコーネ地方の曲だけど、どうでしょうねぇ…」と奥歯にものが挟まったような答えになってしまうのです。決して、イジワルではぐらかしているのではありません。


スウェーデンのトリオのCDを販売します このブログを書き始めた頃からの10年来の友人のCDを紹介したいと思います。ニッケルハルパと双子のフィドルのトリオです。ニッケルハルパのスンニヴァはそれはそれは繊細なため息のでるような音色で、難しいフレーズも水が流れるように、静寂さえ感じる演奏です。そして双子のカロリンとマデリンは一週間のコースを一緒に過ごしただけなので知り合い程度ですが、初めて出会った時は衝撃を受けました。生き生きと、こんなに楽しそうに弾く人を他に知りません。二人を見ていると楽器からではなく体のどこからか音が鳴っているように聞こえるんです。実は私が演奏する時はいつもこの2人を思い浮かべています。「音楽は体の中で作って呼吸のように吐き出すもの」なんだと思わせてくれます。

このCDは、全曲、ダンサーと一緒にライブ・レコーディングしています。聴衆のいるコンサート・ライブ版ではありません。目の前で踊るダンサーと目の前で演奏するミュージシャンが、お互いに影響し合う、いわば本物のダンスミュージック。ダンサーの足音はほどよく入っており決して音楽の邪魔をしていません。欲しい音が良いタイミングでバッチリ入っています。

ミキシング、プロデュースは、自身もニッケルハルパ奏者で日本でライブもしたヨセフィーナです。スタジオでは作り出せない、空気感が楽しめます。ごく少量、本人から買い取りましたので、日本語訳の紙をつけて、イベントやライブなどで販売する予定です。郵送をご希望の方はメールにて。infoあっとfolkishproject.com あっとは、@に変えてください。

オフィシャルトレーラー:オフィシャル動画は宣伝用に撮影されたもので演奏者が踊るシーンもありますが、CDのレコーディングのほうは各曲それぞれダンサーが踊っています。

レコーディング時の様子:3つ目の動画です。カッコいいオフィシャル動画もステキですが、こちらの素朴さが本当に本物っぽくて、ほっこりして、なんて楽しそう!思わず笑顔がこぼれます。

Tradpunkt – Lilla Lasse [Official]

Tradpunkt – O tysta ensamhet [Official]

Tradpunkt - Gubbelubb 楽しすぎる!男性ダンサーの肩の力の抜け具合にほっこり、にっこり、してしまいます!

 

 

 

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ポーランド公演の感想

2019-06-25 11:15:05 | ポルスカについて

先日ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャのオープニングを務めました。公演後すぐに書いた下書き記事、2-3日はweb上にあって編集していたのに、なぜかきれいに消えてしまいました!もう一度思い出して書いてみます。

一言でいえば、ヤヌシュの音楽は衝撃的でした。足元すくわれて転んで立ち直れない、そんなインパクトです。

スウェーデンの音楽とポーランドの関係は、ブログでも何度か書いていますが、この記事から始めて読むという方のために簡単にまとめておきますね。ご存知の方は読み飛ばしてください。


スウェーデンの伝統音楽(民俗音楽)のほとんどは「ポルスカ」という3拍子のダンス曲です。「ポルスカ」は「ポーランド風(のダンス)」という意味です。15世紀とも16世紀も言われますが、ヨーロッパで男女が組んで踊るペアダンス(カップルダンスともいう)が大流行します。この流行の前にスウェーデンで踊られていたのはロングダンスなど、歩いて移動する、歩いてすれ違う、中央に歩み出て対面して踊るといった歩くスタイルでした。つまり、ペアで組むダンスはありませんでした。スウェーデン王シギスムンドがポーランドの国王でもあった時代1500年代以降に、このペアダンスがスウェーデンに入ってきたと言われています。「ポーランド風」というのはほぼ「外国風、異国風」という意味合いで使われていたのではと思います。ダンス音楽は最初はフランスなどヨーロッパ諸国から入ってきましたが、農村へと広がるうちにスウェーデン独自の音楽とダンスとして発展していき、現在ではポーランド音楽とはあまり似ていません。


 ヤヌシュ来日前にCDを聞いてすごく良い演奏だなと思ったのですが、メロディを聞いているとどこで呼吸したらいいのか分からない、そんな気持ちになる不思議な音楽でもありました。ですが、目の前でみたコンサートは不思議さは消え、全てが腑に落ちました。リズム、呼吸、メロディ、ダンス、全てがパズルのピースのように完璧に合わさって会場を熱気で包みます。そして、数百年前にタイムスリップして当時の音楽を目撃したかのような。彼らの音楽は、息をのむ、眩暈、何と言えば伝わるのか分かりません。「ああ、見てしまった。信じられない。絶句。」と、立ち尽くすのみです。会場にいた知人は、ゾクっとしたと言いました。

スウェーデンの音楽には、時代や変化を感じるものがあるんです。ヨーロッパから伝わった時代、農村の個性の時代、1900年代に入りコード感が出て。さらには、音大で伝統音楽を学んだ若者の演奏は洗練されてしまい、農村の「味」が消え没個性化していっていると言われるようになりました。それも時が過ぎれば、その時代の特徴となるのでしょう。ヤヌシュやメンバーと話していて、私がどうやってニッケルハルパを学んだのか聞かれるたびに、ポーランドにはそんな学校はない、伝統音楽も、ダンスも、先生もワークショップもない。パーティなどその場でやって覚えるだけで「学ぶ」ものではない、と口々に言うのです。おかしい!と声高に主張するのではなく、「ないよねー」「だよねー」という自然体。ポーランドの複雑な歴史の中で自国の伝統音楽が守られてこなかった。この「守られてこなかった」というより半ば見捨てられた伝統が、時を、変化を、止めたのだと思いました。スウェーデンの音楽は、守られ、復興し、普及させた中で感じる変化があります。200年前の農村のミュージシャンとヤヌシュの演奏は、何も変わらない。それがなんのフィルターも通さない力強い衝撃として伝わってくるのです。申し訳ないけれど、CDではこのインパクトは伝わらない。CDで伝わるのは演奏のすばらしさ、メロディとリズムの面白みや味のある歌声、そこまでです。

SNSで知人が薦めていたので最近読んだのですが、間宮芳夫さんの「現代音楽の冒険」の中でこう書いてありました。作曲することを英語ではcompose、作曲はcomposition。この単語には「構成する」という意味があり、西洋音楽はこれでできている、と。なるほどな、と思います。クラシック音楽は専門外なのでよく分かりません。でも、スウェーデンの伝統音楽が専門という立場で、スウェーデンの伝統音楽を取り入れたクラシック音楽を聴くと、どうしてもその素材を支配したいんだな、という強い意図を感じます。生きた伝統音楽を刺身のようにさばいて配置して、理論の世界に置き支配したい、と。構成する音楽だから、ということかもしれませんが、当然、生きた伝統音楽はそこでは死んでます(違う形で生き返ってゾンビっぽい感じはあります)。同じ西洋の音楽でも、民衆の音楽(民俗音楽、伝統音楽)は、この構成する、支配する、という概念から飛び出した、自由さと可笑しさ、悲しさ、逞しさがあり、そこが魅力だなと思います。

ヨーロッパで流行したペアダンスについて数百年前に書かれた資料では、野蛮、粗野、下級の者の踊り、狂ったような…という数々の低俗だという表現が出てきます。書き記す知識があった層の人の見方、ともいえます。何もそこまで言わなくても…と思いますが、ヤヌシュのコンサートと見るとよく分かりました。フィルターなしの、むき出しの音楽の芯と熱狂的なダンス。宮廷音楽の軽やかなステップとメロディに慣れた知識層には、いかに生々しく感じたことでしょう。

ポーランドの伝統音楽に興味のある方はこのブログでも何度か紹介しましたが、Dance pathという動画をおすすめします。ヤヌシュをはじめポーランドのミュージシャンとスウェーデンのミュージシャンの交流のドキュメンタリーです。その中でヤヌシュはギプスをした手に弓をもって、フィドルを弾いているんです。本人に、あれは何で?と聞くと、「前の週に娘とスキーに行って骨折してねー」って。えー!?腕を骨折して弾けんの!?って言ったら、「ぜんぜん問題ないよ。その翌週にはスキーで肩も外れちゃった」と笑顔で言っていました。さわやかなツワモノですね。そのブルーの瞳はどこまでも優しく、家族に音楽に日々の生活に注がれているのでしょう。


さて、感想はここまで。ちょっと雑談です。演奏が続いて疲れるとそのたびに副鼻腔炎(蓄膿症)になり頭も鼻も首も痛くて重くて、年に何度も抗生剤を飲んでいました。以前、知り合いが漢方をくれたのをふと思い出して飲んだら抗生剤飲まずに痛みが引いたんです。病は気からというし、気のせいか?とも思いましたが、気力で治るならそれも効果と思い買ってみて、何度も助けられました。同じものはネットでは買えず、amazonで。板藍根茶100%という数百円のものです。効果は人によりますし激マズですが、興味のある方は試してみては。

次回の演奏は、7月の名古屋、宗次ホールと、7/20大阪淀屋橋にあるケイットルオカラのランチコンサートです。ルオカラではスウェーデンのダンスも♪

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ポルスカの歴史、その2

2019-03-22 00:17:18 | ポルスカについて

先日、電話がかかってきました。最近、電話がかかるというと実家からか勧誘くらいしかなく、不愛想に「もしもし」と出ると違っていて焦りました。「ポーランドと、スウェーデンのポルスカってどういう関係だっけ?」と難しいことを聞いてくるではないですか。頭を洗濯機みたいにぐるんぐるん回しても気の利いた一言も浮かばず、「関係ないんじゃないですか」という、この人に電話して時間の無駄だったみたいなことしか言えませんでした。

スウェーデンのポルスカは、カップルダンスがヨーロッパのある時期に流行して、ポーランドを通じてスウェーデンに入ってきたことからポーランド風(ポルスカ)と呼ばれるようになりました。流行が到達した後、どんな音楽でどんな風に踊るか、スウェーデン独自に発展していきました。また、経験上、メロディラインなどは特にポーランドよりもフランスの影響を受けているように思えて、ポルスカとポーランドは名前だけで音楽的な関係は薄いのではと思っていました。

でも、電話を切った後モヤモヤしてきます。だって、ポルスカって、スウェーデンの伝統音楽の中核であり、名前はまさにポルスカ(ポーランド風)。関係ないはずがない。ポロネーズという、ヨーロッパ中に与えた影響を考えても「さあ?カンケ―あったけ?」で済ませられる話ではありません。

ところで、なぜそんな電話がかかってきたかというと、6月にヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ Janusz Prusinowski Kompaniaというポーランドのミュージシャンの来日コンサートがあり、その企画関係の方から聞かれたのでした。ポーランドと言えば、ショパンやマズルカが有名で、ダンスもきらびやかなものが多くあります。ですが、ダンスで言えば見せるために創作された部分の多いショーであり、マズルカもクラシックを通して再現されたリズムやモチーフであったり、本来の農村で受け継がれた民俗音楽は?というとすごく土臭い独特な個性がある音楽です。

以前50分ほどのドキュメンタリー動画をこのブログで紹介しました。(スウェーデンとポーランドのミュージシャンの交流を描いたドキュメンタリー。すごく面白いです!)

Polska - Dance Paths

かつての社会主義国で民俗音楽を弾いてはいけない風潮があり、民俗音楽の指導者や学校がスウェーデンのようにある訳でもなく、伝統音楽の保存や普及活動はされてきませんでした。ですが、今回聞いた話では、ヤヌシュが中心となり、ほぼ眠っている状態の民俗音楽を掘り起こし、ポーランド中でリバイバルブームとなっているそうです。

それにしても、フランスのポロネーズにしても、ノルウェーのポルスにしても、ポーランドと名前がつく音楽(ダンス)がこんなにもヨーロッパ中にあって、ポーランドの音楽それ自体との関係は本当はあるのかないのか、すごく気になってきました。そして、電話を切ってから、ふと、まだ読んでいない本があることを思い出しました。

The Polish Dance in Scandinavian and Poland(Svenskt visarkivet) CD付き(英語)

これは2001年にスウェーデン主導で、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ポーランドの研究者を集めて、北欧諸国で400年の歴史がある民俗音楽の会議を初めて開催した時の論文をまとめたものです。

目次を読むと、ポーランド人による「ポルスカ」の歴史、デンマークのポルスカがなぜ消えたのか、メロディの変遷(時代と場所が変わっていく中で同じ曲がどう変わったか)、ノルウェーのスプリンガルや、フィンランドのポルスカについてなど、それぞれその国の研究者が書いたものがズラリ。本は収集だけじゃなく、ちゃんと読まないといけませんね~。読んでないどころか、持っていることさえ忘れてました。早速読んでみましたが、残念ながなら、知識が深まったところもありますが、結局、謎は謎のままミステリーなんだなと再認識したのでした。地球上で起きるあらゆることは、調べたら何でも分かるものではありませんが、歴史も同じ。過去に起きたことは調べたら分かると思ってしまいますが、有名人でもない人が移動や交流を繰り返し、口伝により、証拠や手がかりも乏しいとなると、わずかな手がかりから推論に推論を重ね幾通りもの仮説ができるのみです。

抜粋でも翻訳でもないのですが…自分なりに雑にまとめた内容を書きます。文献や注釈も沢山掲載があり興味深いので本をぜひ読んでください。

ポーランドのダンス、Polish Danceという言葉(概念)が記録上、登場しはじめたのはいつなのか。

<記録上、一番古いポーランドのダンス曲>

1540年に書かれたオルガンの本に、ポーランドに触れていないものの、マズルカという名称もないものの、マズルカの典型的なリズム(タタタンタン)が使われているそうです。マズルカの元となるリズムはこの頃作られたと考えられています。1554年にはチェコの兄弟が書いたsongbookに今でいう典型的なマズルカのパターンが書かれているそうです。この点については、マズルカの原型がチェコ起源であったとしてもポーランドにそれを複雑に発展させていく土壌があったという推論が書かれていました(マズルカと一言でいっても、オベレック、クヤヴィアックなど数種類のダンスや音楽があります)。また、ポーランド語のアクセントと、マズルカのリズムが似ており、深く根付いていったのは自然なことという説も紹介されています。

16-17世紀に残されたマズルカのリズムを持った曲のほとんどはポーランド以外の外国で書かれたもので、オルガンやリュートの楽譜に「ポーランドのダンス」という記載が見られるそうです。同じ時代にポーランド国内では「ポーランドのダンス」と書かれたものはないそうです。自分たちの曲というのは特別な意識はなく、外国人の目を通して初めて個性的で異国風だと認識されるのではないかと書いてあり、妙に納得してしまいました。

構成3拍子のポロネーズとマズルカ

最初は2拍子だったものが、すぐに前半が2拍子で後半が3拍子という二部構成のダンス曲になったそうです。このスタイルが広まってからは、前半ではゆっくりとした曲、後半は早くて飛び跳ねる曲(ダンス)という表現が残されているそうです。今も国や地域によっては、2拍子のポロネーズがあります。当時は、先に触れた二部構成、polonaise(2または4拍子)+ propotio(3拍子)、オプションで + serra(3拍子)が加わりました。また、昔は上流階級で踊られ、ブルジョワ、農民、と徐々に広まっていった経緯は、国が違っても同じ状況のようで、特に後半の速い曲(3拍子のproportioのこと)は身分の低い者が踊ると書かれているものがいくつも見つかっており。3拍子のダンス曲が一般民衆に広がっていく状況が推測されます。

17世紀の終わりには、前半の2拍子のパートが消えていきます。後半の3拍子のパートが残りフランスでポロネーズとして流行するにつれ、後半パートが独立したダンス音楽となっていきます。1640年以降、プロシア、ハンガリー、チェコ、スウェーデンで、"polish proportio"という表記の音楽が見られるそうです。そして、肝心のマズルカですが、基本のリズムやポーランドのダンスという概念があったとしても、この名称が登場するのはそれから1世紀も後(1800年代)のことなのだそうです。

デンマークには3拍子の曲がない!?

有名なRasmus Stormの楽譜集(1760年)など18世紀のデンマークで3拍子の曲は見られるものの、18世紀前半には既に廃れていたのではと書かれていました。デンマークでは、Fanøといった一部の地域を除き3拍子の曲は残っていません。仮説として書かれていましたが、後半の3拍子のパートよりも、前半の2拍子のパートだけが生き残ったのではないかと書かれています。(Fanøの話などは読み飛ばしました、興味のある方、すみません…)

ノルウェー

おそらくスウェーデンより後に、このポーランド風というヨーロッパ中で人気がでたダンス音楽の流行が到達したらしいです。デンマークと違って、スウェーデンとノルウェーでは、豊かなバリエーションが産まれ独特の音楽/ダンスを形成していきました。ノルウェーのスプリンガルでは2または3小節のモチーフがバリエーションを変えながら繰り返していく曲が多く、ポルスはスウェーデンのポルスカのように2-4小節のモチーフで8小節まとまりという割と固定された構成の曲が多いのだとか。2種類のリズムが交わるRorosのことや地域の話など詳細が書かれていたので、ノルウェーの曲に詳しくないと内容を多面的に捉えられない気がしました。ただ、ポロネーズの特徴はノルウェーでは1800年頃には消えていき、今あるノルウェーの民俗音楽に当時の特徴や痕跡はほとんど見られないと書かれており、強い独自性を感じます。

スウェーデン

スウェーデンで一番古いポーランドのダンス曲という記載は、1595年ストックホルムのドイツ教会に残されている4つの曲だそうです。(ちなみに、1500年代終わり頃、スウェーデン・ヴァ―サ家の出身の王がポーランドとスウェーデンの両国を治めていました)スウェーデンは、このポーランド風の曲をスカンジナビアに広めた中心地です。また、この4つの曲のことではありませんがスウェーデンの古い曲には、ゆっくりした3拍子のヨーロッパ風ポロネーズ、早くて勢いのあるポーランドのマズルカ、どちらの影響を受けた両方のダンス曲あるそうです。1600年代後半、スウェーデンでは、2拍子のポロネーズは上流階級に、3拍子は農民のダンスと分かれて行ったようです。現在、2拍子のポロネーズは、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンでは南部で見られます。(とはいえ、スウェーデンのポロネーズは一般的に3拍子です。)

以前、ポルスカの講義を受けたこともあるマグヌス・グスタフソンの論文では、ダーラナのHjort Andersの有名曲が(私は知らない曲)、さかのぼるとヘルシングランド地方の1800年代の曲を弾いたものだそうで(その曲も私は知りません)、さらに辿ると、私もよく知る1700年代後半のアンドレアス・ダールグレンの曲で(これは知っている曲!)、ここまで比較されると確かに楽譜を見比べて、Hjort Andersと100年以上の時を隔ててダールグレンの曲が同じ曲だと分かります。さらに辿ると、なんとヨーロッパから輸入されていたようなのです(デンマークの1760年のRasmus Stormに記載されていた曲)。つまり、バリエーション豊かに変化しつつも100年、200年たっても原曲は大きな差がなく(途中のメロディの変化にはとまどいましたが原曲とされる曲と最近の曲は非常に似ています)、時の推移や土地の移動、口伝などの条件であっても原曲は割と正確に伝わるということですね。楽譜に記載されている曲というのは後の研究者が発見したもので、村の奏者が目にするものではありません。他の論文では、各地の曲のパターンを数値化しグラフでどのくらい似ているか比較した論文もありました。これによればスウェーデンの曲は、いわゆるヨーロッパのポロネーズと似ており、ポーランドのマズルカとは似ていないとのことでした。(ただし、忘れてならないのがスウェーデンの古い曲にはマズルカに似た曲があるという事実です。上品でメロディアスなポルスカやポロネーズ以外に、農村の奥地に中東、中欧のような不思議な旋律の曲が残っており、私も以前からこの2タイプの曲があるなと思っていました)

フィンランド

フィンランドも、ノルウェー同様に初めて知る話が多く、まとめるのは躊躇します。ですが、フィンランド人の論文では、17世紀にドイツでポーランドのダンスが人気出ると同時にスカンジナビアにドイツから流行が到達したが、ドイツで流行したポロネーズとスウェーデンのポルスカが関係するかどうはあやしいという説、ポーランドの音楽との関連性すらあやしいが、南スウェーデンの音楽、フィンランドのポルスカ、東ヨーロッパの音楽には関連が強くみられるといった説など書かれています。また、フィンランドは以前スウェーデンだった地域があり(今でもスウェーデン語圏があり、ムーミンがフィンランドでスウェーデン語で書かれたのも有名ですね)、その違いや地域についても詳しく書かれていました。結婚式のダンス曲としての伝統がある、2拍子のポルスカ(ポルスカは、もやは異国風という意味しかなく特定のダンスを指していないとか)の話や、1700年代にロシア占領下、3万人のフィンランド人がスウェーデンに移民としてわたり、文化的な交流が進んだことにも触れていました。

-本を読み終えて-

結論と呼べるのか分かりませんが、私が経験上感じた、古いスウェーデンの曲はフランスの影響を感じるといった点も間違いではなさそうです。この本でも触れているのは、スウェーデンのポルスカは、東欧やポーランドに似たものもあり、ヨーロッパの上流階級を通して入ってきたポロネーズの影響もある、ということです。ですが、やはりノルウェーがより特徴的ですが、流行が川の流れのように隅々に広がっていき狭く閉鎖された土地では流れは一旦とまり、その土地に浸み込み独自のものを醸成していくという印象がぬぐえません。スウェーデンはヨーロッパの片隅の田舎の国で行き止まりではありますが、古くから北欧の中心地でもありそこから小さな枝葉を伸ばし、混ぜこぜになった輸入ものの痕跡と独自の農民音楽とがバランスよく育っていったのではないかと思いました。

ここで宣伝なんて、嫌らしい‥と思わせたらごめんなさい。

結局、電話の後、こうした会話を繰り返すうち、ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ Janusz Prusinowski Kompaniaの来日公演のオープニングをつとめることになりました(神戸公演のみ)。youtubeの演奏を聞くと、ポーランドの民俗音楽は、wildで生き生きとして、そして計算されていない複雑さや面白みを感じました。オープニングは、私と野間さんとのデュオで、軽くお話と2-3曲?程度の演奏です。ポーランドの生きた民俗音楽が、こうした北欧諸国のようにもっともっと掘り返され、議論され、弾いて踊って(創作のショーでなく)、広く伝えられることを願って。また、ポーランドの当時の大きな影響の結果(スウェーデンのポルスカ)をただ楽しんでいただけたらいいなと思います。

また、フィンランドの音楽は全く無知なのですが、フィンランドのスウェーデン語圏のポルスカは知った曲もあり、今年の阪急フェアのテーマがフィンランドなのでそうした曲も交える予定です。

そして、最後になりますが、明日から海外の親せき宅へ行くのでコメントをいただいてもすぐにお返事できません。誤りなど、ご指摘くださった方がいたらすみません。(その前夜の0時過ぎに、準備もせずブログを書いてる私って…


お知らせ(詳細情報、リンクが不足していますが、後から上書きで足していきます)

4/20(土) Spel och dans 東淀川スポーツセンター 1年以上ぶり?曲を覚えて弾いて、その曲で踊ってみるワークショップ。曲は私担当、ダンス指導はベテランのひろみさんです。参加費1500円にしていましたが、参加者が少なく部屋代もかかるので一旦2000円に戻しました。

4/27(土) ケイット・ルオカラ 淀屋橋の小さな北欧という感じの、スープ食堂で、ハープの奈未さんとイースターや春をテーマにしたランチコンサートです。

5/25(土)北欧の森音楽会(松阪)過去3回演奏させていただきました!今年4回目は、Lirica&michikoでミニライブです!

5/31-6/2 梅田、阪急百貨店で1週間の北欧フェア。今年はフィンランドがテーマでフィンランド曲を交えます!北欧の大御所、大森ヒデノリさん&セッションの仲間たち、hatao&namiやシャナヒー&アンニコルなど北欧の世界たっぷりに。私の出演は、5/31、6/2です。

6/1(土) トリオのタイムブルーでのライブは、都合によりキャンセル(延期)となりました。予定してくださった皆様申し訳ありません!

6/13 ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ神戸公演、オープニングアクト

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伝承音楽と楽譜

2019-02-04 12:31:54 | ポルスカについて

平日の朝「ピンポーン」という音で目が覚めました ご近所さんがおかしいと思ってインターフォンをならしてくれたんです。子どもの学校からも電話がかかってきました。この数日、深夜にCDを作っていて朝起きれなかったんです。子どもが「あれー、目覚ましならへんかった」と。そりゃそうです。前の日にOFFにして寝たのは私です。

「CD作らないの?」とよく聞かれていたのですが、初期費用がかかるし納得いく音に出会ったことがない(イメージと違う)、選曲もデザインもこだわりたい、楽譜も付けようかとか、リクスペルマンになったら記念に1枚と思っていたり…そんなこんなで考えていませんでした。それに素朴な伝統音楽は目の前で空気感を楽しむライブが一番とも思います。新鮮なお刺身をいただきます、みたいな。

結局作ったんですが、続きは後半で書くとして、今日はまじめに楽譜の話をまとめたいと思います(興味のない方には退屈な話かもしれません…)。

フォーク(伝統音楽)と楽譜の関係

スウェーデンの伝統音楽は、フォーク、民俗音楽、伝承音楽ともいいますが、譜面を使わない口伝の音楽です。楽譜を書いたり読んだりする知識がない村の奏者によるものが多数を占めます。

数百年前に書かれたノートブックnotbok(楽譜集)も多数ありますが、覚書きのようなもので、細かな音符や指示、曲名、誰が作ったのかそれとも伝承曲なのかも書かれていません(口伝の曲を、村の奏者を訪ねて楽譜に記録した楽譜集もあります)。

こうした曲は、知識や経験がない場合、楽譜だけで曲を覚える(学ぶ)のはとても難しいです。「楽譜を見て弾いて、後で原曲を聞いてあまりの違いに愕然とした」、はたまた「別の人は1小節多い」「あの人は1拍多い(変拍子!?)」「シャープ♯で弾く人とそうじゃない人ががいる?」と混乱してしまう話はよく聞きます。ダンスのステップというよりも、回転の動きに合わせて生まれたリズムだからでしょうか、譜面で書き表すことが難しい曲も多いです。地域によっては半音の半分の音(微分音)を使うのですが楽譜では分からなかったりします。

では、スウェーデンのフォークでは、楽譜は使わないのかというとそんなことはありません。私も数千曲の楽譜を持っています。スウェーデンの伝統曲は10万曲以上あるそうです。

楽譜の使い方

スウェーデンの伝統音楽では、楽譜はメロディの基本だけ分かるようできるだけシンプルに書かれます。リズムは地域や奏者でそれぞれなので、はっきりと書かないのです。つまり、地域やダンスなど分かっていればある程度推測できます。

パート別のアンサンブルを編曲するといったものでなければ、楽譜は「既に知っている曲を書き留めた備忘録」としての使い方が主流です。曲がぱっと思い出せないからと「出だしだけイントロ楽譜集」を自作している人もいます。地域やダンスで分類したい、収集が趣味、所属グループのレパートリー集等、それぞれの理由で楽譜を集める人は沢山います。(私の場合、収集が趣味かも…)

楽譜にきちんと書かない訳

一つは、地域名、ダンス名、誰が伝えたのか(奏者の名前)、この3つがあれば推測できる部分が大きいからです。

それと、もう一つの理由は「ダンスの伴奏」なので、「その場に合わせたライブミュージック」が基本だからです(と、私は思うのです)。

レッスンで「ここのボーイング(弓使い)は?」と聞くと、スウェーデン人の回答は「弾く度に違うので分からない」「好きにしたら」「意識したことがない」「自分がどう弾きたいかで変わる」というのがほとんどかなと思います。(「どう弾きたいかで変わる」については、自分はこう思う、と教えてくれます)。

装飾音についても同じです。装飾音をどういれるのか?と聞けば、弓使いの時と同じような答えが返ってきます。

では、弓使いも装飾音も自由にしてい良いのか、というと、2パターンあります。一つは、習った時のまま弾く(誰かが「その弾き方はどうして?」と聞くと、「誰々に習ったバージョンだ」という会話になるパターン)。自由に弾く場合は、違和感を感じない程度までという暗黙の縛りはあります。(※コンセプトがあって編曲された曲はもっと自由ですが)

去年11月に来日したダニエルは「ダンスの達人である必要はないけど、音の一つずつが体の動きと関連しているから、曲と体の動きの基本的な部分を理解しておかないといけない」と言っていました。音と体の動きの関連性が途切れると違和感になるのかもしれません。

それでも楽譜から曲を覚えたい

(誤解のないように言うと、楽譜を見ながら弾くことについては触れていません。また、「どうやって曲を覚えたらいいか」と尋ねられれば「耳で聞いて覚えるのが一般的です」と答えます。)

楽譜から独学で曲を覚えるのは難しいと感じるかもしれませんが、一人の奏者(古い奏者)、一つの地域に絞るとある程度理解が追いつき、そこから違う地域に広げると良いと思います。楽譜だけ見ても推測できるようになっていきます。

たまたま見つけたこの曲、弾きたいな。私もそういうことはよくあります!とにかく、その曲の地域、奏者、知らなければどんなダンスなのかを動画検索で見たり、同じ地域の似た曲でもいいので探して聞きます。私は資料のように膨大なCDを持っていますが、最近はネットもかなり充実しています。できるだけ地元奏者や愛好家の演奏の動画を探します。特徴をつかむにはシンプルなものがおすすめです。また、日本でも教えている人はいるので、基本的な部分だけでも習いに行くことをおすすめします。旅行感覚でスウェーデンに行って、ちょっと習うこともできます。

楽譜を入手するには/楽譜集の紹介

ネットなら

1.folkwiki、また、Blue Rose(運営が個人?なのか不明なのでリンクはのせませんがアメリカのサイトです。来日講師の演奏が楽譜とともに掲載されている曲もあり、参考になります)も充実しています。

2.各地のステンマ(フォークミュージック・フェスティバル)はイベントの大小関係なくアルスペル曲(Allspel låtar 皆で弾く基本の曲)が10曲ほど公開されます。誰もが参加しやすいよう、その地域の定番曲を載せています。例えば、スウェーデンで最大規模のステンマ、BingsjöstämmanでもAllspellåtarのリストで楽譜が掲載されています。

3.ストックホルムのVisarkivetで保存する1700-1800年代など古い楽譜集はスキャナーでPDF化されており、検索するとネット閲覧できます。最近webサイトがリニューアルされたようです。The collection of the folk music commision (他の地方で保存されているものは見れません) よく演奏される楽譜集の名前を挙げると、Andreas Dahlgren, Andreas Höök, Petter Dufva, Blomgren, K.P. Leffler, Einar Övergaard,…等々。その人たちが書き留めた(または集めた)楽譜集です。古い楽譜集に写真や解説を加えて近年出版されたものもあります。

4.それぞれのスペルマンスラーグのサイト ※スペルマンスラーグは地元のアマチュア演奏家グループ。(名前はたいてい、地名+Spelmanslagで、大きな地方の名前もあれば小さな町の名前もあります)下記8を参照。

本なら ※私は、現地で買う、知り合いにもらう、ネットで買う、ネットの古本屋antikvariatで探す、などで入手しています。

5.Svenska Låtar:100年近く前、地方を周って曲を収集したもので、地域別に全20巻。バイブルのような存在です。奏者の写真やプロフィールも掲載。ただし、北部は含まれません。以前は、ストックホルムの音楽博物館で買えましたが名前も建物も代わりました。私はリニューアル後行ったことありません。Scenkonst museet (Swedish museum of performing arts) または、上記3のVisarkivetからメールで取り寄せて本を買えます。本より送料のほうが高くなるのが難点…。

6.Svenska Folkdanser del 1, 2:グリーンブック、ブルーブックと呼ばれ、ダンスの解説と楽譜がセットです。地域別に豊富な曲、ダンスの種類が網羅されているので基本の楽譜集ともいえます。音楽関係よりも、ダンス関係で買う機会があります。ダンス組織はFolkdansringenと言い、このサイトでこの本の注文についてのページがあります

写真は私の本棚より、Einar Övergaards folkmusiksamlingの中を紹介。CDを見ていて曲名の後に、SvLの何番、の何番と記載があれば、Svenska LåtarやEinar Övergaardの略で本の楽譜番号のことです。

7.Slatta:Svenska Låtarには北部がないと言いましたが、ヴェステルボッテン地方については、その地域のアーカイブ(研究施設的な位置づけ)が相当に分厚い楽譜集Slattaを出していますが既に販売終了のようです。

8.各地のスペルマンスラーグが販売する楽譜集:スペルマンスラーグのサイトを見ると、自分たちのレパートリーの楽譜もあれば、その地域の古い資料的な楽譜集の再販をしている場合も。ちなみに、ニッケルハルパの定番、Byss-Calleの57曲の楽譜集は、Uplands Spelmansförbundで買えます。

9.アーティストによる楽譜集:ヴェーセンのtune book、Mia Marin、ヨーラン・モンソンのCD付き楽譜(日本で販売)等々、調べると本人がCD付きで売っていることがあります。UK Nykcelharpa Projectのイギリス人ミュージシャンも楽譜販売をしています。

ここに書ききれなかった楽譜はまだまだあります。ぜひ楽譜を有効活用してくださいね。スウェーデンの伝統音楽のバライエティ豊かな面にさらにはまることを願って…。


 CDの話の続き

1/13にタイムブルーで販売したCDを購入された方へ1曲増え全6曲バージョンになりました。100円で新しいCDをお渡しします。その際は古いほうのCDは返却いただきます。お手数ですがご希望の方はご連絡ください。

追記:CDは事情により対面販売のみの予定ですが、ケルトの笛屋さん京都店にて、ご厚意により数枚置かせていただいております。音のサンプルはSoundcloudで3曲聞けます。

https://soundcloud.com/usermh-3/01byss-calle-32

ヴェーセンのOlovにレコーディング用リボンマイクのことを聞いたら、意外に手が届く価格ということが分かったんです。ちょうどその頃「私が生きているうちに作ってよ」とパンチの聞いた一言をいただきまして 簡易版ならすぐに作れるという気に。

重ね録りをしてみたのですが、自分が2人って意図が明確になるんだなって実感。この世に私みたいな人がいっぱいいたら大変なことになる、とはよく言われますが、音だと困ったことにはならないんですね。

でも、難しかったのは、目や表情や動きが見えないので呼吸が合わせにくい。そんな時はメトロノームに合わせて一定のリズムで弾くものでしょうが、リズムの伸び縮みやタメの部分がなくなって変な感じに。なので、それはせず、とにかく耳で聞いて合わせました。ですが、これが中々…。自分が意外に予想外の動きをするんですよね。なんでそこでそう突っ込む!?と、一人コント状態?で先に進みません。そんなこんなで1曲につき20テイクくらいやり直し続けて、最後は頭が回らなくなって指だけ動いている状態です。CDを聞いた方に、控えめで上品だったと言われましたが、このくらい意識朦朧、じゃなくて邪念がないと、控えめになるのですね。普段はもっと荒くれているのでしょうね。

音は何も触らずマイク2本の音量バランスの調整のみです。こだわればもっと音は良くなると思いますが、響きは生の音に近いと思います。選曲とデザインはできるだけシンプルに。初めての試みということで、CD-Rにやいた簡易版として対面中心に少量のみ販売予定です。(先にも書きましたが、5曲版を購入いただいた方でご希望の方は、100円と現物で6曲版と引き換えますのでご連絡ください)

お知らせ

2/22(金) 奈良ホテル 創業プレ110周年特別記念イベント <グルメとワインの祭典>にて、ハープとニッケルハルパで

創業110周年という歴史と格式のある奈良ホテルにて、ハープの奈未さんと一緒に演奏します。アインシュタインが弾いたピアノが置いてあったり、オードリー・ヘプバーンが宿泊した時の写真があったり、時間が止まったかのような空気を感じる歴史ある佇まいのホテルです。ワイン50種が楽しめるという予約制ビュッフェ。料理もおいしそうです!打合せでは、紅茶、食事など北欧を取り入れられるか検討中ですとのことでした。ご予約は、奈良ホテルまで。

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スウェーデンのポルスカと、ポーランドの音楽

2017-12-21 09:27:09 | ポルスカについて

スウェーデンの伝統的なダンス曲「Polskaポルスカ」は、スウェーデン語でポーランドを意味します。

「ポーランド」とよぶ理由は、昔、ヨーロッパで流行したペアダンス(男女がくんで踊るという、当時は画期的で刺激的なダンスのスタイル)が、ポーランドを経由してスウェーデンに入ってきたからだと言われています。スウェーデンのダンスは、国の名前がついたものが多く、ショティスはスコットランド、エンゲルスカはイングランド、レインレンデルはドイツの地名で、その土地から来たダンスだと言われています(音楽はスウェーデン産)。ですが、実際にその国から入ってきたかどうかは不確かです。例えば、2拍子のショティスを聞いたことがなかった田舎の人が「あんなモダンな音楽はドイツの曲に違いない」と言い、そのショティスのことを「ティスカ・ポルスカン(ドイツのポルスカ)」と呼んだ、なんて話もあります。

という話はさておき、このスウェーデンのポルスカと、ポーランドの音楽、枝分かれするずっと前は同じだったのでは?今でも共通する部分があるのでしょうか?

スウェーデンの伝統音楽奏者、ポーランドの音楽奏者が集い、交流をし、その謎にせまるプロジェクトが1-2年前に始まりました。当時アップされた動画は残念ながら意味がわからなくって。1年待って、やっと英語字幕がつきました!!(ポーランド語は英語字幕、スウェーデン人は英語で話します)そして見てみると…すごく面白いです。動画の中でも言っていますが「この問いに対する答えはすぐに出るものではない、始まったばかり」だと。ですが、確かに共通点を感じます。そして、すごく違うとも感じます。動画でも「共通点は明らかなのに、とにかく違うんだ。求めているもの、向かっていく先、すべてが違う」と語ります。

Polska - Dance Paths

ポーランド人からみたこの二つの音楽を語るところを聞くと、違う角度から物体をみつめるようにスウェーデンの音楽の特徴が浮かび上がってきます。「スウェーデン人は歌うように弾き、そこにルールを感じる(※秩序や理性を感じるという意味かと思いました)。そしてダンスのためにリズムを奏でる。(※スウェーデンの伝統音楽は世界でも珍しく打楽器を使いません。メロディの中でダンスのリズムを表現します。)でも、ポーランドの音楽は、一緒に弾くこと自体を楽しむ音楽なんだ(※ポーランドの民俗音楽はダンスのための音楽ではないとという意味かと思いました)。ドラム、ベース、リズムがあり、フィドラーやシンガーはそれに合わせて自由に歌う/演奏する、即興の音楽だ」と。

「コミュニズムなど政治、社会的な問題で、ポーランドの伝統音楽は大事にされなかった。人々に見下された音楽だったが、スウェーデンは違っていた。伝統音楽の学校があり、指導者と一緒に演奏ができた。ポーランドでそんな学校を作ることは不可能だった。」と。1976年にはスウェーデンにはフィドラー向け指導者育成の学校があったそうです(伝統音楽の、と明言していないように思いましたが、文脈よりそう理解しました)。「今では生徒が1000人。人口900万のスウェーデンにしてはかなりの人数だ」と言います。後半は、ポーランドとスウェーデンのグループがそれぞれに演奏するコンサートの様子もおさめられ、楽しめます。さりげなくスウェーデンの伝統音楽の有名な人たちが登場しています。最初のほうで語っているMagnus Gustafssonマグヌス・グスタフソンはフィドラーでもあり、伝統音楽の研究者でもあります。論文を書いたり、歴史的な内容の講義も色んな学校でする人で、スウェーデンの伝統音楽をしていると誰もがどこかで会ったことがある人、です。

51分の動画です。飲み物を用意して、ゆっくりと見たくなります。


<お知らせ>

12月23日 すばるホール・プラネタリウム(富田林市)「コルミッコ」のコンサートでちょこっとゲスト出演。クリスマスのディープなお話しと演奏です。久々のソロ(ゲスト出演)で自由度が高いので、選曲も構成もかなりレアでいきます。これで今年が終われる!

1月7日 満席になりました。hardingfele solo live(ニッケルハルパ、ゲスト出演)大阪、天六のTime blueにて。ノルウェーの紅茶、スウェーデンの紅茶を用意します!

1月20日 和歌山のリュースモーネにて(南海高野線の林間田園都市駅まで送迎有・予約時に要連絡)、1月21日 難波のカフェ・ホロホロにて、野間友貴さんとデュオ。たっぷりとスウェーデンの伝統音楽です。

2月4日(日) Spel och dans 曲を習ってその曲で踊るワークショップ

3月9日(金) ニッケルハルパ・ソロライブ 第五回古民家コンサート(生駒市桜ケ丘6-2 生駒駅より徒歩10分)

1500円 ケーキ付 13:30~「桜が丘つどい場”笑”」にて 定員20名

※お問合せ・ご質問はこちらまで。nyckelharpaーあっとーfolkishproject.com ーあっとーは@マークに変えてください。2-3日で返事がない場合はお互いどちらかのメールが届いていないと思います。


そして、去年のこの時期も全然、北欧と関係のない動画をアップしましたが、今年も!

今年、私が一番ヘビロテで見た動画です。ウクライナのグループでノリノリです!イェイ!特にブルガリアン・ボイスという訳ではないですが、あれがロックになったらこんな感じかなー?みたいなワクワク感があります。

DakhaBrakha — Yanky

 

気に入った方は、もっとこちらで聴けます!

DakhaBrakha: NPR Music Tiny Desk Concert

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伝統舞踊VS伝統音楽 II

2017-03-13 12:46:53 | ポルスカについて
※たくさんの方に読んでいただきありがとうございます!あらためて、誤解のないよう加筆しました。(ブルーの箇所です。4/19)

記事を書こうとブログにログインしたら、昨日は1000人近い人がアクセスしていました(1000回じゃなくて)。
目新しい出来事も記事も、一般受けすることも何もないのに不思議!こんなこと初めて!
たまに有料のアクセス解析しませんか?って見れることがあるんですが、見てみると訪問者上位はロボットなんですよねー
ものすごい数のロボットが押し寄せたんでしょうか。
もしや、あなたもロボット

先日、初めてレコーディングというものを経験しました。
昔、東京でレコーディングしたことがあるのですが「なんて素敵な空間」という以外は単にライブ演奏をしただけのような感じでした。
今回は、作曲された曲で楽譜アリ、パート別、重ね録りあり、で、いわゆるレコーディングというものの初めての経験です!
クリックが聞こえるような演奏だ」という会話を聞いたことがありますが、やっと意味が分かりました。
後の編集のために、ヘッドセットからメトロノームのようにクリック音を聞きながら演奏することがあって、つまり「クリックが聞こえるような」=「まぁ!なんと正確な!」
という意味だったんですねー。

さて、最近は「Spel och dans」といって「演奏してその曲で実際に踊るワークショップ」を継続して開催しています。
それで、一つの質問を受けました。

スウェーデンの伝統音楽はダンス音楽だから、ダンスの伴奏がうまい=演奏がうまい」ってこと
上手な演奏をするためには、ダンスの伴奏が上手でないといけない」よね
※スウェーデンの伝統音楽はダンス曲が大半、という大前提があります。

「質問」というよりもはや「確認」に近かったのですが、ひょっとしてそう思っている人って実は多い??
もしや、私が誤解させている

そこで、この話題について、はっきりと書いておこうと思います。
昔このブログで「伝統舞踊VS伝統音楽」という記事を書きました(なぜかカテゴリーを「スウェーデン生活」に分類していて、探すのに苦労しました!)。

当時は、熱き友人を尻目に、答えのでない難しい問題だと書いていました。
でも、それ以降、色んな人と話したり、色々と考える中で、自分の中では結論が出ています。

ダンスの伴奏と、伝統音楽の演奏、これは二つの異なるカテゴリーです。
求められるものが全く違います。
一方がうまくても、もう一方がうまいとは限らないのです。
一方に慣れている人は、もう一方にも慣れる努力が必要です。
著名なミュージシャンもそうで、ダンスの伴奏がうまくて有名な人もいれば、聴かせる演奏で有名な人もいます。(環境的に機会に恵まれ、どちらも上手という人たちも大勢います

この話は、この3つに尽きると思うのです。

1.ダンスのための音楽だからダンスを理解しないと弾けない。
※演奏は、ダンサーとのコミュニケーションで成り立つ。

2.聞かせる演奏をする場合、聞いて楽しい、聞いて心地よいと思わせる魅力的な何かが欲しい。
※演奏は、ミュージシャン同士や客席とのコミュニケーション。

3.ダンスの伴奏の場合、個性的な表現を前面に出しすぎると踊りにくい。

1があるから誤解をまねくのだと思います。もう少し説明すると、

1.リズムやメロディにオリジナリティを出したい時に、単に「脱線しちゃった」のか、「革新的」なのか。
気持ちのよいグルーブ感を強調したい時に、「奇妙」なのか「最高にノってる」のか。
これはダンスのこと、丸裸にした時の骨格、そうしたものが見えていないと出来ないことだと思います。
演奏で、”メロディだけなぞった超高速ポルスカが可笑しい”というのもこれです。

2.説得力のある演奏というのは、自然とゆらぎます。
緊張感を高めて次の瞬間にパっと解放したい、そんな時どう弾くと良いでしょう?
単調な♪タカタカタカタカというリズムが続くとき、過去の名手たちはどうやって揺らして遊んだでしょうか?
装飾を複雑に美しく聞かせるための緩急が得意な名手もいます(Pekkos Gustafとか)。

※ただし、スウェーデンの伝統音楽のほとんどがダンス音楽、実用的な目的をもった音楽です。
(愛情、悲しみや、崇高な何かを表現する芸術というよりも。)
つまり、「感情をこめてたっぷり」「大げさ」に弾くことはありません。
実用性を損なわない範囲で個性を出して遊ぶ演奏、という意味です。自分で書いておきながらややこしい!


3.ダンサーと演奏者はお互いをよく聞いて、見て、リズムを揺らしたり、お互い影響しあう中で楽しみます。
ただ、予想外の緩急があったり極端だったりすると、踊りにくくダンサーの足がとまってしまいます。
(上級者や演出の場合は別です)
以前、ワルツでリピートして初めに戻る時に、ゆったり、ためて弾くことが多い曲があって、踊りやすさを聞いてみたところ、
「慣れている人だったら、面白いな、と思うけど、普通の人なら踊りにくい。可能なら普通に弾いてほしい。」
という回答でした。

実際、私が経験したダンスの伴奏についてですが、
変なこと弾かないようにと、習った通りの演奏を思い出して(つまり緩急あります)それを忠実に再現して弾こうとするのですが、それではリズムが揺らぎ過ぎて踊りにくいと言われてしまいます。えー!そう習ったのにー!なんて言わず、習ったものを一旦、忘れる努力をして(耳で覚える伝承音楽なので意外に難しい)、リズムや緩急の特徴をなだらかにするように考えながら弾きます。
だからといって、メトロノームにあわせたような弾き方をすると、つまらない演奏になるから奥が深いのです
これは、ダンスの伴奏にまだ慣れていない私には、まだまだ課題です。

結局のところ、
<ダンスの伴奏>
ダンサーが踊りやすいテンポやアクセントを意識して弾く。

<聞かせる演奏>
本質を理解した上で表現したり、著名な奏者の個性を真似る(伝承音楽なので「聞いて真似る」ことは重要です)。

昔のブログ記事で書かなかった結論ですが
「演奏には2種類の弾き方があるので、どちらか一方のみという制限を受けると辛い。奏者にはどちらも必要。」
というのが今の私の意見です。(ダンスの伴奏に慣れていくうちに新たな発見をするかもしれません。)

オマケ
音楽と言葉は似ているな、と思います。
ニュース等で客観性を出すにはどう話したらいいか。
聞いてほしいと訴えかけるには、どうしたらいいか。
色々とありますよね。
ピアニストで指揮者のバーレンボイムの話し方というのに、私はとっても考えさせられます。
こちらのYoutube動画
動画の中で質問を受けるのですが、そんなに興味をひく話題と私は思えなかったのですが、バレンボイムの回答に引き込まれてしまうからです。
最初は考えながらゆっくりと、次第に早口で熱く。
心から出た言葉と感じるからでしょうか。
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ポルスカ、曲名のミステリー

2016-08-18 23:19:04 | ポルスカについて

今日のお題、慣れている人にはミステリアスではないのですが。

ところで、最近、深海の奥深くにひそんでいたのに、こんなに出てきていいのか?とソワソワしています。ありがたいことです。でも、「最近一体どうしたの!?」と聞く人もいるくらい。でも、出てきたからには、楽しみます!来年の今頃はまた潜っていることでしょう・・・ブクブク.。o○


お知らせ

  • 8/27(土) 「北欧の音楽祭」に向け、練習会(三田、郷の音ホール)※北欧の曲を弾くのが初めての方向け。そとフェス楽しみましょう!!
  • 9/3(土) ハーディングダモーレの野間さんとデュオ・ライブです。茨木のDBarにて、19時~、2500円+ドリンク別。以前ならドレークスキップ、五弦ヴィオラの野間さんです!と紹介したでしょう。Malungで腰を落ち着けて学んだディープな北欧の音色にソロ活動も注目です!そんな方と一緒にできて光栄ですハーディングダモーレの音色はフィドルとも違う、ハーディングフェーレとも違う、不思議に空気に溶けていく音でした。ガット弦を使っているそうで、その柔らかさも感じます。野間さんは南部よりもダーラナの曲が好きなのだそう。リハではお互いの共通曲を探し・・・これ知ってる?合戦。面白かったです☆要予約:nyckelharpa@folkishproject.comまで。そしてリハ中、なんでか南部の曲を教えてもらいました(ライブの曲とは関係なく) 聞いたことあるなーと思ったら有名な曲のようです。Pigopolskan efter Pehr Hörberg
  • 9/17(土) 枚方ワールドミュージックフェス 様々なアーティストライブが目白押しです。私は、投げ銭ライブ10分&スウェーデンのお話し50分です。投げ銭のほうは、その後にするお話しの宣伝を兼ねているので短いソロ演奏の予定です。お話しは、スウェーデンのこと、伝統音楽、ニッケルハルパの歴史、制作の様子など!
  • 9/21(水) 演奏&ダンスワークショップ 「弾いて、そして踊る」第2回です。スウェーデンの伝統音楽を、「聞く、弾く、踊る」。それぞれに楽しみがありますが、どれもが一部であり、全てではない。切り離せない一つのことを一つのワークショップにしました。ダンス初心者でも大丈夫です。三田の北欧の音楽祭、アルスペル曲からもやります。場所は、都島スポーツセンター(最寄りは、JR桜ノ宮駅 or 地下鉄谷町線、都島駅)18時~演奏、19時~ダンス、20時~演奏&ダンス nyckelharpa@folkishproject.comまで。 
  • 10/2(日) 北欧の音楽祭 三田市、郷の音ホール。中のライブイベント、外の参加イベント、ワークショップやマーケットも。私は主に外フェスをうろついています!

最近、北欧の音楽祭に向けて、少しだけお手伝いさせてもらっています。その関係で以前、ニッケルハルパのJosefinaの動画セリフを訳したのですが、意外に難しかった!翻訳って経験はありますが、仕様書、契約書、報告書、資料、過去の判例…など、楽しめる読み物ではない文書を訳す実務翻訳がほとんどなのです。だから、セリフの翻訳は実は初めて。えーっと、何語に訳そう最初からキーボードの指が止まってしまいました。

私は筑豊弁と博多弁が混ざった言葉を話します(最近はアクセントが関西風と言われます。だって関西に住んで10年以上)。だから関東の話し言葉は分からないのです。「~じゃん」は横浜と言うけどホントかどうか知らないし、「~だわ」って妙じゃないか東京の従妹に聞いてみようと一瞬思ったけどやめました。そんなことしてたら「なんか、言い回しも文法も変です!アナタ、ニホンジン、ウソ!」なんて言われそう!

そこで、ふと思ったんです。海外セレブ記事で使われる日本語。「私、ハッピーだわ」みたいな言い回し、よくみかけますが、20代のイマドキの女性の言葉として不自然に思えるのです。そしたら、やっぱり。その不自然な違和感は正解でした。「~だわ」「~かしら」など翻訳で使われる女言葉は明治時代の女学生の言葉なんだそうです。この女言葉は翻訳の世界で生き続けているという話なのですが(中村桃子さんによる記事)、私からすれば、翻訳者なんて自宅でPCに向かう人がほとんどで、地方在住者が私みたいにリアル東京弁が分からないから無難にドラマ風言葉をあてるっていう例もあるんじゃないでしょうか。

ちなみに、役割語(金水敏さんによる説明)というのもあって、博士語「わしは~じゃ。そんなもんは知らん。」という上方風の言葉、忍者の「拙者は~でござる。」、そして、田舎者には疑似東北弁をあてるのだとか(西日本の方言ではなく)。

これと似た話で、スウェーデンの小説で田舎者が登場すると、ノルウェー風の訛りをしゃべらせることがあると書いてある本を見ました。言葉って生きてるだけに奥深い。

さて、やっと本題!スウェーデンの曲の名前の話

ここ最近「スウェーデンの曲、名前が覚えられなーい!」とか、「efter~ (誰々にちなんだ)って、自分が弾いて教えたら、efter(自分)になるってこと?」と聞かれることがチラホラ。聞かれて、考えてしまいました。そんな視点で見たことがなくて。スウェーデンでも曲名のことで話題になったことがなく、同じ言語、文化的に当たり前と思っている背景を共有しているからじゃないでしょうか。そこで日本人から見た、曲名のこと、私の経験上のまとめ程度ですが、順を追って書いてみます。

  • 曲名の基本1 「曲の種類、その曲を伝えた人、地名」

「Polska efter Viksta Lasse, Vendel, Uppland」とあれば、「ウップランド地方、ヴェンデルの、ヴィクスタラッセが伝えたポルスカ」で、これが曲名です。同じ人の曲だと、同じタイトルが続きます。人名のミステリー、という話題もありますがやめておきます(Viksta LasseのVikstaは地名とか、OlleとOlofは別人じゃないよ、とか。)

  • 曲名の基本2 efter~は、1「誰のバージョンかを示す」または、2「教えてくれた人を表す」

1.efter~は「誰々にちなんだ」と訳せます。「その人が作った曲」、「その人が地元の曲を弾いていた」、どちらもありえますが、つまりその人が弾いていたバージョンです。同じ曲で、efter~の後に色んな人がいる時は、それぞれの人によるバージョン違いということです。じゃあ、誰でも弾いたら、efterの後にその人の名前をつけられるのか?という問いには、もちろんNo!です。その時代、その土地で有名とか、または最近話題のミュージシャンとかであれば、その人のバージョンだと言われます。口伝による音楽では、多数の人が認めて初めて定着するものだと思います。

2.言葉通りの使い方で、「誰々に教わった」という時にもefter~と言いますがこの時は曲名でないことに注意です(私は曲名ではないと思っています)。見てなんとなく分かります。efterの後が、古い奏者ではなく、活躍中の人の名前だったりするからです。「あの時のワークショップで習ったあの曲」という仲間内で回す楽譜で補足として使うことが多く、雰囲気でも察知できます。

  • 曲名の基本3 やっぱり似てる!番号!1、2、3!

やっぱり曲名が同じだと紛らわしいのです。なので、nr.1、nr.2、と番号をふっていきます。でも、これも口伝音楽なので・・・人によって何番がどの曲とか違ってたりします。仕方ないか。a-moll、d-mollと、曲名にkey(調)まで加えて識別することも多々。

  • 曲名の基本4 曲も似てるでしょ!

メロディがそっくりだと、姉妹、syster-(システル)とつけることも。systerpolska nr1、systerpolska nr2。ちょっとカッコいい感じのvariantもあります。「○○ポルスカ、ヴァリアント」と書いてあると、「○○ポルスカのバージョン違い」という意味です。

  • 曲名の基本5 そりゃ、歌だわ!

Randig kjortel(ストライプのスカート)とか、意味のある曲名の時は、歌(歌詞がある曲)が元になっていることが多いです。多いというだけで必ずではありません。(歌の場合は、歌詞から曲名をつけるのが普通) それと、誰かが作ったオリジナル曲もタイトルをつけますね。

  • 曲名の基本6 そんなの意味ないし!

曲名があると歌の確率が高いと言いましたが、実は、大した意味がない曲名も多いです。口伝だから人の言うことって所詮・・・ですね!

例えば、「Julafton valsクリスマスイブのワルツ」クリスマスに弾いたらいい感じ?いいえ、関係ないのです。エリック・サルストレムが、クリスマスイブに(日本でいうなら家族だけで大晦日や元旦を過ごしている時に)電話がかかってきて「あのワルツなんだっけ?ほら、ラーララ♪っていうアレ。」こんな時にそんな電話するか?!ということで、クリスマスイブのワルツと呼ぶようになったんだそうです。これは、元はエリックのお父さんの名前をつけたVals efter Anders Sahlströmと呼ばれていた曲です。他にも、アニメの出だしに似ているからとアニメのタイトルをくっつけたとか、なぜそう呼ばれるのかさえ分からないというものもあります。じゃあ、Storpolska(storは、大きいという意味)も意味がないの?と思う方、残念でした。このstor-がつくときは、言葉通り、でっかいのです。通常、Aメロ、Bメロの構成が、Cメロまである(またはそれ以上)のポルスカのことを指します。

  • 曲名の基本7 意外に大事なav

av~(人の名前)この時は、英語でいうby~です。その人が作った曲です。このavを軽く見ていると、ややこしいことになりかねません。

例えば、Julottan av Mats Wallman、「マッツ・ヴァルマンが作ったユーロッタン」という有名なクリスマスのポルスカがありますが、これがなぜかダーラナ地方の伝統曲として一部広まっているようなのです。Matsは現役で活躍するフォークミュージシャンなので、かわいそう・・・(本人はどうでも良いと思ってるかもしれないけど)。avは、きちんと注目したい箇所です。

  • 曲名の基本8 番号は謎の手がかり

曲名に番号がある時は、Byss-Calleビスカレの有名な#25、#32であれば、Byss-calleの52曲ある譜面集の番号だったり、Einar Övergaadが書き記した譜面集の番号だったりします。ちなみに、曲名ではありませんが、SvLはSvenska låtarという地方ごとに編纂された楽譜集のことで、Einar ÖvergaadならEÖと略され、CDやネットで拾った譜面に補足があることも。この楽譜集は、奏者の生い立ちとその人の曲(楽譜)の両方が掲載されています。

  • 曲名の基本のまとめ やっぱりややこしい?

じゃあ、どうやって曲名が覚えられるのか、と聞かれれば、やっぱり色んな地方をランダムにいいとこどりすると覚えにくいものです。一つの地方、一つの楽器に絞って音源を聞くと、繰り返し同じ名前が出てくるので覚えられるのです。その人をネットで調べてみましょう。その地方を代表する人だと分かるはずです。そして似た名前があれば、その人のお父さんだったり、誰と誰は演奏仲間とか、それを少しずつ広げていきます。

  • まとめのまとめ スウェーデンって合理的

スウェーデンはとても合理的な考え方をする国だという印象があります。観光本など眺めても、社名や店名でイメージ優先のネーミングよりも、地名や人の名前をシンプルに使うことが多いです。デュオやグループ名も(名づけることもありますが)、本人の名前だけというケースが多いなと感じます。曲名に関しても、隣のノルウェーはきちんと曲に名前がついたものが多く(個人の印象ですが)、比べれば、スウェーデンは曲の由来や資料情報がそのままタイトルになることが多いと思うのです。時々、よく曲のこと知っているね!と言われますが、単に曲名から調べて分かった、というのは案外多いんですよ!

追伸:スヴェン・アルベックの論文で背中を押してくださった皆様へ!

夏の課題図書だ!と改めて読み始めました。類似する日本語の論文を先に読まないと、用語や引用など素地としての知識が不足しているなと痛感しています。一旦、このまま読み進めますが、皆さんに内容紹介しようと思えば、他のものも読んでから・・・。まだ先になると思います。気長にお待ちくださいませ!!

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ポルスカを感じるワークショップ

2016-06-18 21:55:17 | ポルスカについて

今日は堺市で恒例のリズムパラダイスに行ってきました。ロングダンスでタンバリン博士の田島さんに少し入ってもらい、終わらないでー!っていういい感じになりました。ロングダンスで使った曲は”Opp au ud å au”というとってもシンプルな歌。別名"Opp och ut och gå", ”Näs Ingars polska", "Slängpolska efter Brunn"色んな呼び方、いろんなバージョンがあります。音が少なくてすごくシンプルなのにビートを聞かせるとかっこよくなり、飾りを沢山いれると上品にもなる、優れものメロディですよー。皆さんもお試しあれ~。KeyはDかGで、ニッケルハルパならCでドローンたっぷりで弾くと楽しくってとまりません!

Falun folkmusik festivalの古い映像(文字リンクだけ貼ってます。4:50辺り)ですがいい感じですよー。

もう一つは、下に埋め込んだ動画。大御所、Johan HedinとPelleの優雅な演奏にうっとり。これも元は同じ曲です。

Upp å ut å gå, polska efter Karl Andersson

ところでここ最近、バイオリン初級レッスンの付き添いをしています。付き添いといっても待っているだけで、その間、前回の記事に書いたSven Ahlbackの論文を読んだり(みごとに寝落ちします夏の課題図書に決定!?)。そして、気持ちよ~く、うたたね寝していると、先生のあるお言葉でハッと目が覚めました。

「休符のところを、ウンウンって心の中で数えてねー。足でトントンって数えたらあかんでぇ~。足でしかリズムが取れない大人になっちゃうからね!」

パリーン!ってグラスが割れる音がしました(幻聴)。ムンクの叫びも見えました(幻覚

そんな大人、ここにいます!無表情、無関心を装いましたが、血圧が乱降下しました。いけませんねー。いやいや、何がいけないのでしょう。考えると何がbetterで何がbestなのか分からなくなってしまいます。

ちなみに、ポルスカは「タン タンタン タンタン タンタン…」が延々と続きます。そして、それを足でとっています。「でも最後は、タンタンタンって均等になるよね」と言われたことがあります。でしょ?ポルスカを弾く人だけに分かる「あるある」です。

ダンスの「あるある」は、ポルスカをまわっていると、段々まわっている感覚がなくなって前に進んでいるだけという不思議な感覚になること。そして、深い深い瞑想の世界へ・・・そんな感じです。静かで不思議で止まらない。

そんなポルスカをもっと体感しませんか?

  • 9月17日 ひらかたワールドミュージックフェス  -このフェスは世界中のワールドミュージックが楽しめます。私が担当する講座は、ニッケルハルパ制作の過程や歴史の話、スウェーデンの伝統音楽の話を演奏も少し交えながらスライドの写真を使ったりお話しを聞いていただく内容です。ニッケルハルパを触ってみたい方は終了後にコーナー設けているのでぜひ!

7/6のワークショップ(演奏&ダンス)について

ポルスカを「弾いて踊って感じる」ためのものです。そして「北欧の音楽祭」で、当日、自由参加で皆で弾く機会があるのですが、その時の曲もやりましょう!というものです。曲は簡単なのでお気軽に参加ください。ダンスのほうは、すぐには踊れないかも?3拍で1回転するのは、自転車を初めて乗る時のように練習というより最初のコツをすぐに飲みこむかどうかで個人差があるのです。でも、1輪車曲芸みたいに特別な人だけが踊れる特殊なダンスではありません。スウェーデンのおじいちゃん、おばあちゃん、普通の人たちが今も昔も踊っているものなのです。美しいターンを極めるには何年もかかるけど、楽しく踊るだけなら十分!試してみたいなーという方、一緒にリズムを感じましょう!

そうそう、10/2に北欧の音楽祭(スペルマンス・ステンマ)があるのですが、「フォークミュージック・フェス(民俗音楽祭)」と「スペルマン・ステンマ(演奏家の集まり)」どう違うの?と時々きかれます。

どちらも「参加型の伝統音楽のお祭」です。弾きたい人はあちこちで弾いたりワークショップがあればダンスもできるし、ライブもあります。聞くだけでもOKです。北欧を旅する機会があればぜひのぞいてみてください♪

それで、二つがどう違うのか、私の個人的な印象ですが・・・。

フォークフェス」は、よりショー的でステージにお金もかかっていて、その分、交通の便のよい集客しやすい立地が多いです。その分、ピクニック気分というよりライブに行く感じになり、行動に制約がつくこともあります。一言でいうと、参加型ライブ・イベント。民俗衣装を着ている人を見るとパフォーマンスする人かな?と思ってしまいます。

ステンマ」も規模が大きいとステージ・プログラムは同じくらい充実しますが、森と草原広がる場所での開催や地域の伝統行事と一体になったものが多く、大自然の中、朝まで弾いたり、テントはってご飯つくったり、自由きまま。「ステンマ」という言葉は音楽は関係なく単に「集まり」という意味で、プロもアマチュアも関係なく伝統音楽を楽しむために人が集まったという感じです。聞いて楽しむだけもOK。そして民俗衣装を着ている人を見ると、地域の人かな?という感じで自然に溶け込んでいます。

そして、10月にある北欧の音楽祭では、アルスペル曲のリストアップを私が担当しています。当日もウロウロしているので探してみてくださいねー♪

スウェーデンで、「フォーク・フェス」「ステンマ」いずれも、アルスペル曲allspel låtarというのが発表されます。これはアル(皆で)スペル(弾く)曲というい意味。やはり共通のレパートリーがあってこそ楽しめるものですよね。必ず事前に告知されるものなのです。近いうちにそのリストも公表予定です。

その曲をリストアップしていて、そういえば「スウェーデンの曲名ってどうやって覚えるの?」「覚えられない!」とよく言われるなーとふと思いました。例えば「~にちなんだ曲(efter-)」というだけでも文字通りだけではない意味があって。長くなったので、曲名の謎については次回書きます!

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メロディは楽譜を超える?

2016-05-21 15:44:40 | ポルスカについて

先月はハープのなみさん、フィドルのみどりさんと、私にはもったいないような方と一緒に演奏させていただきました!そして、その後は楽器を持ってきた方とのセッションタイム!今年で一番楽しい日でした。なんで、皆で弾くとこんなに楽しいんでしょう!?はしゃいでいると終電を逃してしまいました・・・。

そして、ここ数年ギター(男性)と弾く機会のほうが多かったせいか、私が野性的だからか、力強いとか逞しい演奏と言われることが多かったのですが。ハープの音色ってなんて乙女!そして、みどりさんの伸びやかなフィドルの音色に合わせると、借りてきた猫、じゃなくて借りてきた虎みたいです。私も少しは女子だったことを思い出しました。床を蹴るなんて、とんでもございませんわ、という気分で演奏させていただきました。あ~音楽って不思議。人を操りますね。

色んなお知らせは最後に掲載しています。

さてさて、最近、大きな課題を見つけました。今日は堅い話です。曲を探していたときのこと。

Polska från Barsebäckって知っていますか?古くて上品なメロディ、フランス人が好むようでEU圏で人気というイメージがあります。

※ちなみに、スウェーデン語-rs-は「シュ」という発音です。例、Andersはアンデシュ、Barsebäckならバーシュベックです。

Slangpolska fran Barsebäck / Špecialni godalkarski orkester

この曲、E(ミ)で終わります。では、この曲の調はなんだと思いますか?普通ならE(フリジアン)と答えるでしょう。でも、よーくメロディを聞いてください。Folkwikiというスウェーデンの伝統曲を集めたサイトではA-moll(Am)と分類しています。そして、その楽譜の下に面白い会話が載っていました。

-この曲は、本当にAmなのか?Eフリジアンじゃないのか?

-(要約)モダリティ(教会旋法などのこと。これは、調(key)という概念と異なります)に、100%の正解はない。試しに、Eのドローン(ベース音)、Aのドローンメロディに合わせて歌ってみて、どちらがメロディに合うと思うか。こういうスウェーデンのモダリティについてもっと知りたければ、Sven Ahlbäckの論文を読んでみて。

という内容です。モードとキーについて、深く考えたことないのですが、そういえば、レッスンでスコーネの古い曲を教えていたときにおかしなことがありました。Amの曲だと思っているのに、伴奏をつけるとDmで最後までいってしまうというループに陥ったことが。どうしてそうなったかちゃんと分析できていません。

もう一つ、私がライブでもよくひくPolonais efter Magnus Theorinという曲があります。これは後半は転調するので前半だけでいうと、シで終わるのでh-mollのようです。でも、弾くときはDのドローンで弾いています。いくつか音源を聞いたことがありますが、明るい伴奏がつくのでそういう認識の曲のようです。そう弾くととっても明るくさわやかなメロディになり、私のお気に入り曲の一つなのです。(folkwikiの楽譜もD)でも、「100%正解はない」という言葉通り、h-mollのマイナー調で伴奏しても、暗くてかっこいい感じにしたければそれで良いのでしょう。でも、これもSvenの論文でいう、モダル・ミュージックの話なのかはっきりしません。

スウェーデンでは、「シ」と「シb」は、それぞれ「H、ホー」「B、ベー」と明確に区別します。全て「B」で通すと、通じません。)

この議論に登場するスベン・アルベックSven Ahlbäckは、著名な伝統音楽のミュージシャンです。研究者でもあります。そのSvenの論文を読んで、きちんと話を理解するべきなのでしょうね。

ネットで探すと、すぐにヒットしました。「Melody beyond notes」というタイトルです。メロディは楽譜を超える。なんとも意味深な。

早速ダウンロードして印刷しようとすると…550ページほどあります。そんなに!?でも、読んでおかないと…。紙をけちって2分割の両面で印刷してみました。あぁ、ちっちゃくて図が見えない。ますます読む気力が。

誰かー!完読できるよう背中を押してください

お知らせ

6/18 堺市 リズムパラダイス ※ダンス講師ひろみさんと、未就学児でも踊れるスウェーデンのダンスを。ダンス&演奏のデモも。

6/25 箕面市 リシュオル祭 ※アトリエ・リシュオルで、ハープ、フィドル、ニッケルハルパのハウス・ライブ。終了後、箕面川に蛍を見に行きます。そのあと、セッションタイムもあるので、楽器持参でご参加ください。冒頭のチラシがそれです。チラシの背景は、私がスウェーデンにいた時、駅までの道のりでパチリと写したもの。のどかです。

7/6(仮) 日時と場所は追ってお知らせします。楽譜を使わないスウェーデンスタイルで、ポルスカを覚えませんか?前半は音楽ワークショップ、後半はダンス講師ひろみさんによる、ポルスカ・ダンスのワークショップ、最後に曲とダンスを合わせます。

そしてこれは、10月2日、三田の郷の音で開催される、北欧の音楽祭(スペルマンス・ステンマ)のプレイベントです。楽器をもって弾きたい人は弾き、聞きたい人は聞く、踊りたい人も、音楽を通して気ままにすごす北欧流のイベントです。国内外アーティストライブも!これについても、また次回紹介します。

コメント (6)
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ポルスカのリズム

2015-06-09 15:21:35 | ポルスカについて

ずっと放置気味のブログですが、ここ最近、更新頻度があがっている!?

いえいえ、たまたまです。

スウェーデン再訪(いつか…)または、すごく書きたいことがあった時のみ書いています。書きたいこととは、そう、今回はこのタイトル、ポルスカのリズムについてです。(前回の記事、MD崩壊はまだ未解決です)

その前に…。(本題に行きたい方はのところまですっとばしてください)

去年は福岡ライブをしましたが、今年の夏は福岡でワークショップを開催します(5名以上集まれば開催)。

See on Tackk.com

ところで先日、所用で福岡に数日帰省していました。帰る度に「ギターちょーだいよ~」と両親に言っていたのですが「重い」とか「デカイ」とか「弦が切れてる」とかでそのまま…

団塊世代って、昔、ギター弾き語りが流行ったようで1人一本持ってる!?ようなイメージがあるのですが、どうでしょう?そして、今回は「金属弦とナイロン弦どっち持って帰る?ナイロン弦なら、やっと数十年ぶりに弦を張り替えたよ」というではないですか!ギターのことなんか分からないので「どっちでも、いらんほうで良い」というと、ナイロン弦ギターを渡されました。(ちなみに金属弦のほうは父、ナイロン弦は母が若かりし頃に買ったのだそう。)

これは、クラシックギターと呼ぶのでしょうか私と姉が子供の頃「"禁じられた遊び"くらいは弾けんといかんよねー」と仕込まれた思い出のギターです(もちろん今、そんなもの弾けません

このギターは買ってからもうすぐ50年ですって初任給が1万円くらいだった時代に3千円くらいで買ったんだとか。ソフトケースはチャックが壊れていたので、ガムテープで留めて持って帰りました。なんならスナフキンみたいに裸ギターを背負って帰ろうと思ってたんですけど

さて、ギターなんて何にも分からないのに、とりあえずチューニングとドレミの位置を確認して…スウェーデンンの曲を弾いてみました!楽しい!Gのkeyを確認して、弾いてみたのはVästergötlandのポルスカ。右手のはじき方も変!って言われましたが気にせず、フィドルのように2本ずつ和音でメロディをとってみます。この曲好きで最近よく弾くんですけど、そういえばYoutubeでギターで弾いてるデュオがいた!と思い出しました。もちろん、こんな風には弾けません

Polona?s from Sexdrega - Bougt & Bergek Duo

それから、e-mollのKom lunkomも弾いてみると、3小節目あたりがニッケルハルパと違ってなんかロックな響き。ミーレミファの頭のミの前にレもひっかけます。イエイ、イエイ、ひゅー、ひゅー!(1人盛り上がり状態)。

 

ポルスカのリズムについて。さてさて、今日の本題です。

※ポルスカとは、スウェーデンの伝統的なダンスとその音楽のことです。3拍子ですが、土地によりリズムや曲調に明白な特色があります。

きっかけ

父に「そろそろメトロノーム使って、きちんと練習したら?」と言われたのがきっかけでした。長年思っていた言いにくいことをやっと口にだした、という感じの発言でした。「ポルスカは3つの拍の長さが不均等というけど、音楽である以上、各小節の1拍目は均等にくるはず。その一拍目にあわせてメトロノームを使った練習が有効なはず」と。そして遠回しな言い方ですが「そのアバウトなリズム感は聞き苦しい」と。メトロノームといわれると違和感があるのですが、自信もなく反論もできませんそもそも「耳に痛い言葉こそ自分に必要な意見」という考え方もあります。また、私が伝統音楽のリズムの訓練をもっとしたいと思った時にどうすればいいのか?現地では、リズムの練習などはなくて「聞いて同じように弾く」だけだったのでますます分かりません。

ディッテへ質問

そこで、ニッケルハルパの伝統音楽奏者として指導者として、心から信頼しているディッテ・アンデションDitte Anderssonに質問をすることにしたのです。ディッテは、言葉や楽譜にするのが難しい口伝音楽を論理的かつ明朗な思考で説明し(確か指導法の論文も書いてるはず)、そしてその演奏は真にウップランド地方の伝統そのもの。すると、ディッテから帰ってきた回答は、単に回答だけでなく、ポルスカのリズムやその神髄について触れたとてもとても深い内容だったのです。これは、ぜひブログでポルスカに興味を持つ方とシェアしたいと思い書くことにしました(ディッテ了解済みです)。

ディッテによるポルスカのリズム、ビートに関する考察

「メトロノームを使うことはあまり勧めません。ビスカレのような16分音符のポルスカsextondelspolskaなどではテンポを確認するのに使うことはあるかな。でも、8分音符のポルスカåttondelspolskaでそれをするとおかしくなってしまいます。コンスタントなリズムがポルスカのflow(流れ)を壊してしまうからです。

ポップス、ロックなどモダンミュージックでは、ビートが非常に重要でリズムに規則性を求めます。ディスコ・チューンとかね。もちろん、ポルスカにもビートはあるけど、それよりも何よりも重要なのはflow(流れ)であり、ビートとビートの間に存在するものです。これは、弓で弾く楽器や笛、歌は皆、常に音を出し続けるというflowがあるのです。一方で、パーカッション、ギター、ピアノでは、音を出した後は奏者がその音に何かをすることはできません。

そして、ポルスカの重要な特徴としてビートはわずかに変化することです。(ちなみに、ダーラナ地方のボーダBodaのポルスカのように2拍目が長いポルスカというのは、実は比較的、各小節は規則正しいです。ここでいう「変化する」というのは、この2拍目が長いとか早くくるとか、そういう意味ではありません。)例えば、リズム・バリエーションの偉人、ヴィクスタ・ラッセViksta-lasseの演奏を聞いてみてください。彼は演奏中たくさんの音を加えますが必ずしもビートの上に乗っていません。例えば、そのビートの前から音が始まったりします。ビートというのは体や足にあって、ここというビートの時にはアクセントとして作り出すのです。こういうことは、他の音楽ジャンルの人をとても混乱させてしまうようです。

こうした伝統曲を現代風にアレンジするバンドの演奏を聞くと、すごく均一なリズムで一定のテンポで演奏が続きますが、ヴィクスタ・ラッセやエリック・サルストレムEric Sahlströmや、他にも今活躍している伝統音楽奏者はそんな演奏はしません。出だしのフレーズで加速するのもよく聞くでしょう。

こうした音楽のリズムの練習というと、一番はいいのは、お気に入りの奏者を選んだら繰り返し繰り返し聞いて、そのリズムに合わせることです。最初に言ったように16分音符のポルスカなど一部の曲では確認のためにメトロノームを使ってみても良いでしょうが、そうすると曲の持つ予期しない"不規則性"(他の人は望む)に気づくでしょうね。そうした不規則性が曲のスタイルとなるのです。規則的なビートを刻むと思われがちなアイリッシュやスコティッシュも実はこうしたビートの変化がありますが、コンピューターで再現できるかのような規則的で速い演奏をよく聞きます。おそらく、土地に伝わる音楽が、コンピューターで再現できるような、まるで数学的とでもいうような現代音楽にすごく影響を受けているのだと思います。オーストリアのウィンナーワルツだって、よく聞けば、リズムは加速したり変化しますね。

ポルスカはとても奥が深く、理解するまで何年とかかる。ポルスカを理解することは、玉ねぎをむいていくのに似ていると思うのです。一つの層をむくと、その下に新たな層があるのです。」

演奏中に足を踏むことについて

足を踏むのが当然だと思っていましたが、これも「コンサートでメロディを聞きたいのに集中できない。足を踏むのをやめるか、ソフトシューズにしては?」と言われ、また度々「足を踏むんですね…!?」と言われることが多いです。「お客さんが聞き苦しいと思うのなら…」と迷いが生じ、これについてもディッテに聞きました。

「他の国もそうだけど、スカンジナヴィアの伝統曲を弾く人は、体を動かし足を踏みます。そうした音楽とは、元々、何かをするための音楽です。ダンス、歩くとき(結婚式やお祭りで)、仕事をする際の歌。足を踏むということは音楽の一部です。だから、足を踏むのをやめないでね!もちろん、ケルト音楽のairのように足を踏むべきでない音楽もあります。でも、スウェーデンにはairのような音楽を楽器で弾くことは(伝統的には)ありません。」

※私はちょっとやりすぎのところがあるので、不可欠とはいえ踏む音を控えめにしようと思います。

他ジャンルの曲をニッケルハルパで弾くこと

これも私が質問をしました。伝統曲のリスト中1曲だけなら、お客さんが知っている曲を入れることはいいのです。サービスとして。私の力量の問題もあるのですがスウェーデンの音楽以外はどのように表現したらいいのか呼吸さえ分かりにくく、あまり人前で弾きたくありません。人によっては「皆が知っている曲を弾くべき。その中で1-2曲スウェーデンの曲を弾いたらいい。ニッケルハルパやスウェーデンの曲の魅力を知ってもらいたい、広めたいというなら、やり方を変えたほうが良い」という意見の人がいます。私は答えはNo!と決まっているのですが、言い返す言葉は何も浮かばないのです。ディッテにその話をしたところ、ディッテらしい意見が聞けました。

「私も、違う種類の曲をニッケルハルパで弾きますよ。でも、ニッケルハルパで弾く曲はニッケルハルパの曲が一番良いという事実は否定できません。何人かで弾くための、クラシック、ポップス、ロックの曲は、ソロで弾いても楽しくない。でも、スウェーデンやノルウェーの曲はソロで弾くための曲で、一人で弾いて完全に美しいでしょう?私はそういう側面が好きです。」

というお話でした。

感想

伝承音楽は、とにかく過去の優れた奏者の演奏を「聞いてまねをする」「聞いて感じて理解する」これに集約されるのですね。(古い奏者のCDはスウェーデンでもなかな入手が難しいです。例にあがったヴィクスタ・ラッセもSonetからソロで30曲くらい入ったCDがありますが既に廃盤です。Youtubeならこうした奏者の演奏はきけます)譜面から生まれた曲ではないスウェーデンの伝承音楽は譜面上でいじって論理的に処理すると、とたんに土着性が失われるということなのでしょう。ただ、これは、良い/悪いではないと思います。現代風のアレンジも聞いて美しく、楽しく、そしてクリエイティブでアートです

ただ、私が思うのは、スウェーデンで伝統音楽をモダン・アレンジするグループは、大抵、ソロで弾いても伝統音楽をすばらしく奏でます。その土地の伝統音楽と、モダンアレンジと、どちらかではなく両方できるということ。だから、どちらを弾いてもスウェーデン人らしさというアイデンティティが出るんだろうなって思いました。

私はポルスカを弾く時におおきなうねりを感じながら弾いていますが、みなさんはいかがですか?それは小節ごとにくる場合もあれば、フレーズとして円を描いて戻ってくる感じがすることもあります。規則正しいリズムと思われているスレングポルスカSlängpolskaでは、私は駒が手のひらで回っている感覚があります。規則的に見えて遠心力がある、一点で回っているようでこぎざみに回る、あの感覚がずっと体にあります。こうした感じ方も人によるのでしょうが、聞いてまねするからこそ自分なりの体の感覚を感じるのかな?ってちょっと思いました。

ポルスカを聞いてまねするって、それってモノマネの世界か!?という方へ

以前、著名な書道家、柿沼さんのインタビューの内容にとても感銘を受けました。書の手本をまねしてまねして究極までつきつめると、そこで見えてきたものは自分の個性だったと。模倣と創造に垣根はないのだと。

わずかに感じるギャップをとらえることができた時にはじめて、自分の個性という実体のないものを感じる。究極の模倣とは自分をみつめることなのかもしれません。

では、私もより深い理解を求めて頑張ります!

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マグヌスは病気

2007-03-15 23:38:35 | ポルスカについて
今日は、マグヌス・グスタフソン(Magnus Gustafsson)をゲスト講師に再び迎えて2回目の「ポルスカの歴史」の授業...のはずだった。
マグヌスは、うちの学校に来ることが決まると途端に病気になる。
去年もドタキャンだったらしい。そして今回も。
「lung(肺)の調子が…」と聞いた。たいしたことなければいいけど。

急遽、ディッテによる「ポルスカの地方による特色」という授業に。

ディッテによると、地方による分類ではポルスカは2種類だという意見。
1、8部音符のポルスカ(Åttondelspolskor)
基本的に3連符リズムのポルスカ。
この分類に当てはまる曲は、3連符の曲じゃなくてもこのリズムに置き換えることができる。
2、16分音符のポルスカ(Sextondelspolskor)
16分音符の曲じゃなくても(8部音符のメヌエットでも)、例えば伴奏で16音符のリズムが使える曲もここに入る。
これは、前回のマグヌスによる歴史的、音楽的分類とは異なる。

今回、なるほどと思ったのは、スモーランド地方のポルスカについて。
この地方のポルスカは半分以上が生き残れなかったらしい(伝承音楽の形で)。
なので、大半がペッレ・ビョンレート(ヨハンとデュオのCDも出している) による、昔に書き記されたノートブックからのリバイバルだというのだ。
それで納得。
スモーランド地方ってやたらノートブックにこだわるよなぁと思っていた。

そして、Östergötland地方のポルスカを聞いた。
これはスモーランド地方と同じタイプのポルスカでビートが均等。でも、3拍子の曲の一箇所に4拍子が混ざっている。
曲の最後の変拍子ならよくあるけど。これは曲のど真ん中。
でも、ビートが均等だからもう一拍増えても演奏にもダンスにも何の支障もない。
それで、「この辺りの地方の人は、拍を数えることができない」とよくからかわれるそう。
拍が支障のない例として、ウップランド地方にあるマーチを例にあげていた。これは馬のマーチで3拍子(普通、マーチは2拍子)。
ビートが均等なので問題ないのだ。
第一、2拍でも3拍でもどうせ馬はカウントできないから、とディッテ。
納得。

授業では、スウェーデン全土に及ぶ30数曲を分類し地図で表してCDも用意していた。

すると、掃除機の音がゴーゴーとうるさい。
ふとドアの向こうを見ると、校長のミッケが掃除機をかけていた。
掃除担当スタッフが病気で1週間以上休んでいるのだ。
夕食の食器も今は自分達で片付けている。それでブチきれた数人が昨日、校長に直談判した。
「別の人を雇うなり、対策を考えるべき!自分達はお金を払っているんだから、食器を毎回洗ったことに対するお金も戻すべき!」と。
私はそんなこと恐ろしくて言えない。
けど、校長はすんなり納得。
それで、今朝から校長を筆頭に先生達もお掃除という訳。
食器を自分達で洗った分の返金も考えていると言っていた。

話を戻して、私の以前から一向に解決しないスレン(グ)ポルスカ(Slängpolska)とはなんぞや?という質問をもう一度ディッテにぶつけてみた。
すると、とても複雑で地雷のような言葉なのだと説明してくれた。
、スレンポルスカは、元来「その場で踊っていた頃の名称」だという。
(今は、「その場」ではなくワルツのようにターンしながら進む)
なので、北部のヴェステルボッテン地方でポルスカのリバイバル運動があり、スレンポルスカと名づけたのは元来の意味から。
南部のスレンポルスカとは何の関連もない。
、それから、言葉の持つ意味からスレンポルスカと呼ぶ人がいる。
スレンポルスカのスレング(スレンガ)は「投げる」という意味があり、例えば、ウップランド地方のボンドポルスカ(女性がジャンプし、見た目には女性を投げているよう?)をスレンポルスカと呼ぶ人がいる。(また、1であげたヴェステルボッテンのダンスも女性を投げるタイプなので、2の理由もありえる)
、南部でスレンポルスカと呼ばれるポルスカがあり、それに合わせて踊るダンスの名称として独り歩きしている。(そのダンスが踊れそうなら、何でもスレンポルスカと呼んでしまう)
要するに、スレンポルスカの定義付けは難しいということ。

今日は、久々に外を歩いた。写真はすっかり雪が解けた様子。
夕方歩いていてふと思い出した。今日はトボトシュダグ(木曜の夜、学校である音楽イベント)の日。
私がお茶や椅子の準備を担当する日だ。すっかり忘れていた。慌てて戻ると、他の担当の友人達がやっていてくれた。

写真右上:今日の演奏者のバイオリン・ケース。絵が美しい。
写真右下:トボトシュダグの様子。今日はバックから写してみました。
写真左下:ギターはうちの学校の校長。
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ポルスカの歴史

2007-01-24 23:22:38 | ポルスカについて
今日受けた「ポルスカの歴史」の授業は極めて興味深く、新たにカテゴリを増やすことに。この記事が最初で最後になるかもしれないけど!?

写真左:ゲスト講師なので、おやつが豪勢でした。
写真右:授業風景

:硬めの内容です。民族音楽学に興味のない人には面白くないと思います。また、資料を入手するつもりで、今後、訂正や異なる意見などが生じるかも。あくまでも今日の授業の抜粋として参考程度に思ってください。

講師について
Magnus Gustafsson。なんとも偶然、1/20に紹介したHöökのCDで演奏とCD解説をしている人だった。ストックホルムの音大などで音楽学(Musicology)の教鞭をとる傍ら、スモーランド地方(Småland)の膨大な曲のコレクションを記録、保存する国営の組織にも所属している。言われて思い出したけど、図書館にスモーランドの曲の詳細な楽譜と解説の大きな本があり、その著者でもある。
「ノルウェイやデンマークなど北欧に伝わる10の共通するメロディ(フレーズで曲では無い)」など興味深い記事や、ポルスカについての本を英語でも書いているそう。

こんな面白い話、「スウェーデン語だからわかりません」で終わらせたくない!
朝から猛吹雪で遅刻したMagnusを最前列中央席で待ち構えました。
最初はスウェーデン語オンリーで??だったけど、私に質問をしてくるので「スウェーデン語ワカリマセーン!」と言うと、そうなんだと気づいてくれ要所要所で英語で説明してくれた。加えて休憩時間の質問猛攻撃で今日を乗り切れました!

スウェーデンの民族音楽のコレクションについて
1922~40にかけ、録音された2万曲の中から8千曲を本として出版(SvL 地方ごとに分かれた有名な白い本。ただし、ヴェステルボッテンなど北の地方にポルスカがあると当時思われていなかったため、主にスウェーデン南部のみを扱ったコレクションとなっている)。
それ以外に、手書きで書き記された1700~1800年代の曲が5万曲。
総数としては、スウェーデン全土で約10万曲あると言われている。歌を除いた楽器用の曲としては、この数はどの国と比べても群を抜いている

1500年代 中世のダンス
ヨーロッパでは、ゆっくりしたダンス/fördans(4拍子)に続けて、早いダンス/efterdans(3拍子、4拍子、2拍子など)を踊る形が主流だった。
ダンスのフォームは、円、2列、自由に動く(ラインダンス)の3種類でpardans(par=ペア、dans=ダンス、つまりカップルダンス)では無かった。
次第に、円の中心に男女が出てきて踊る、2つ列が女性のラインと男性のライン、ラインダンスが男女交互の順に並ぶ、とpardansに近い形に。
14世紀にはすでに哲学者がpardansに移行しつつあることを記した言葉がある。

Pardansの発展
はっきりと男女がペアになって踊るようになった場所は分かっていない。当時の文化の中心であった北イタリア、フランス、ドイツなどと思われる。
またダンスの普及スピードは音楽よりも速く、そのためダンスに合わせた曲が沢山つくられる結果となる。
この頃より中世ののダンスにルーツを持つ、二つのパート(遅い&速い)を持った曲がヨーロッパ中に広まる。(「前半(4拍子)タン、タン、タン、タン 後半(3拍子の場合) タタ、タン、タン」という形が多く見られる)
例)ハンガリーのチェダーシュ、オランダのポロ、ルーマニアのダイナなどなど

ただし、ペアダンスはフィンランドを含む先には伝わらず、また大陸から海を越えてイギリスやアイルランドにも伝わらなかった。イギリスでカップルダンスが踊られたのはワルツ(1800年ジャストにパリで創作されたダンス)が入ってきた1800年代のこと。

スウェーデンの状況
Pardansが入ってくる以前、円で踊るスタイルが中世ヨーロッパより入ってきた。現在も、夏至祭クリスマスにポールや木を囲んで踊られる。
1680年代に書き記されたスモーランドの曲で中世の2パート・スタイルの残る曲は、1/20紹介のCDの4曲目。4拍子の前半と3拍子の後半がある。

なぜポルスカと呼ぶのか
Polska(ポルスカ)は、スウェーデン語でポーランドを意味する。理由は、このpardansがポーランドよりもたらされたことにある。(ポーランドが発祥ではないことに注意)
当時のスウェーデンは大陸文化から取り残されており、1500年代に活躍したヴァーサ王の長男が、当時繁栄していたポーランド王妃と政略結婚をした。この頃にポーランドよりこの大陸文化(ダンス)が伝わった。つまり、ポーランドが当時、大陸文化との唯一の接点であった。(この後、ポルスカはスウェーデンで独自に成熟し固有のものが出来たと推測するが今日の授業では触れられなかった)
「pardansの発展」で例を挙げたように各国でそれぞれの呼び名がある。
では、ポーランドではポルスカを何と呼ぶのか?(ポルスカは単にこの手のダンスをスウェーデンでそう呼んだだけに過ぎない)ポーランドではマズルカ(mazurka)。

北欧諸国
ノルウェイでは普及と共に、前半のゆっくりした4拍子(Gangar:ガンガル)と後半の速い3拍子(Springar:スプリンガル)とに完全に分離され地方へ広がっていった(Halling:ハリングはpardansではない)。デンマークでは前半の4拍子の部分だけが一部地域に残り発展していった。フィンランドではメヌエット(menuett)という形になった。

ポルスカの種類(地方による種類ではない)
Ⅰ-a 中世のダンスにルーツを持つ。”La Folia”(西洋中に見られるメロディ)はこのグループ(ちなみに"La Folia"に関する本が今年出版されるらしい)。
 -b Serra
-c モダル音楽(歌 Visorや中世バラッドなどに由来)

Ⅱ-a 1700年代に作られた16分音符のポロネーズ(ポルスカ)
 -b I-cから発展した16分音符のポロネーズ(ポルスカ)

Ⅲ メヌエット(Menuett)

Ⅳ 1800年代に作られた8部音符のハーモニスク音楽のポルスカ
  ハンボ(hambo)、ボンドポルスカ(bondpolska)などはこのグループ

Ⅴ Ⅱの発展系
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