スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ニッケルハルパのPA(音響)

2019-07-16 21:33:01 | ニッケルハルパ

最近、クラシック音楽のコメディにはまっています。掃除機にバイオリンの弓を吸い込んだり、カノンをスキップしながら弾いたり色々あって、ご飯の後にゴロゴロしながらYoutubeで見て、ガハハと笑っています。よく考えると、クラシック音楽を笑いにしてしまうって、文化的な成熟度が違うな~って思います。例えば、これはCD(オーケストラ)をリモコン操作する動画。「早送り」が好きです。

Where is the Remote Control?

さて、最近、屋外イベント、カフェやライブハウスにホールと、色んな環境での演奏が続きました。足を運んでくださった皆様ありがとうございます。

そして、演奏環境がそれぞれ違いが大きく、勉強になりました。少し思ったことを書きたいと思います。

まず、前提として、ニッケルハルパは、共鳴弦のふわっとした音を聞きながらメロディ弦の音圧を加減しながら弾きます。(例えば、大きな音で弾いてさっと力を抜くと共鳴弦の音が立ちますし、小さな音で弾き続けると共鳴弦の音がふわ~っと浮き上がってきて、それを絡み取るように弾きます)ですので、共鳴弦が自分の手元で聞こえない=音圧のさじ加減が分からない、となり不要な力が入ったりします。(そうはいっても、100年前は、バイオリンのようなf字孔もないし力強く弾いていて、共鳴弦の繊細な音を気にするのは最近のスタイルです。)

ちなみに、ニッケルハルパはちょっと練習で弾くだけでもチューナーを使ってきちんとチューニングをするようにスウェーデンでよく言われました。これは共鳴弦がきれいに鳴っている状態で演奏することに意味があるためです。チューニングを適当にサボる方がいたら要注意ですよ~!

ステージ演奏では弦楽器とひとくくりにできないのが、「音量が十分足りていても共鳴弦の音が手元では聞こえない」というケースです。演奏がすごく難しくなります。例えばこういう状況…

1.共演者の弾き方で(ベタっと弾く、常に刻んでいる等)、手元の共鳴弦が聞こえにくい

2.客席側のスピーカーはバッチリなのに、返しのモニター(演奏者の確認用のスピーカー)では共鳴弦が聞こえない場合 ※共鳴弦が聞こえるまで音量をあげるとハウリングすることも。

3.演奏場所の環境(反響がない空間、生音なのに人が多すぎる、等々)

この1-3の解決方法は模索中ですが、今のところ…

1.共演者につられないよう力を抜く。相手の音を下げてもらう。

2.共鳴弦の音はあきらめて、モニターの音量をPAで上げて、リバーブをたっぷりかけてもらう(客席側のことではなく、モニターの返しの自分が聞く音量のこと)

3.環境による場合はそれぞれの対応ですが、10-20名の小さな場所でも響かない空間はあるし、良く響く場所と聞いていても、常にPAの可能性を考えておく。生音で十分響くと言われて実際にそうだったことは残念ながらそんなにないです。そういう時は音が会場全体を柔らかく包み込むような音の場合が多く、音の芯があって手元で共鳴弦が鳴るのが聞こえることとは別のことです。

バンド系のニッケルハルパ奏者はどうしているのか?

正直なところ、スウェーデンでニッケルハルパを使っているグループの演奏は共鳴弦の音はほとんど聞こえません。ライブもCDも同じです。あきらめざるを得ないのか、もしくはサウンドの好みが違うのでは、と思います…。ちなみに、ソロであっても共鳴弦がCDできちんと聞こえる例はなく(再生機器のクオリティにも左右されると思いますが)、それでもレコーディングの音が一番自然で一番美しいのはダニエル・ペテションです。本人に聞いたら他人任せで機械のことは分からないと言っていましたが、彼が共鳴弦の音や余韻を大事にした演奏スタイルなのでレコーディングする側もそこを最大限に引き出そうとするのかもしれませんね。私のCDでも試行錯誤をしており、まだベストな共鳴弦の音では録れません

スウェーデンの伝統音楽の小さなステージのPA

そして、ちょうど先日、スウェーデンで伝統音楽の小さなステージでPAを入れるかどうかを聞かれたのですが、基本的には入れると思います。私の知る範囲ですが、PAを入れていない場合は、教会でするとか、予算や機材の都合が理由に思えます。野外の小屋の前にくんだ小さなステージでも、屋内の小さなライブステージでも、聴衆を意識した演奏の時はPAは入れていることが多いと思います。

なぜか日本では、しっかりお客さんに聞こえるかどうかよりも、多少の無理しても生音のほうが良いような雰囲気を感じるのですが…皆さんはどう思いますか?バイオリンやピアノはクラシックホールで生音で演奏して成り立つから同じように思われるのでしょうか?ニッケルハルパは元々コンサート用の楽器ではなく民俗楽器です。生音で楽しもうとするには条件が厳しいのかなと思います。私なら、ライブは生音かPAかよりも、奏者が心地よく演奏する音を聞きたいです。

ニッケルハルパで使うマイク

以前、ブログでも書きましたが、スウェーデンで聞いて、ライブ用はDPA4061の無指向の低感度モデルを使っています。でも、スウェーデンの奏者も日本の知人もほとんどが、DPA4099の指向性マイクの方を使っています。指向性はハウリング防止のためですが、無指向のほうが共鳴弦の音を自然に拾います。言われるがままに買ったので、なぜ低感度がいいのか自分ではわかっていませんが、マイク取付位置によるノイズ軽減のためでは?と言う方がいました。無指向マイクはブリッジのすぐ後ろにつけますが、指向性4099は上から音を拾うように付けます。※レコーディング用マイクはリボンマイクで、また別の話なので略。

この動画は、バイオリンですが、DPAのマイクの取付位置と型番の参考です。私の使う4061のセッティングは1分過ぎくらいに紹介されています。

How to mic a violin

終わりに

自分の顔を生で見ることが叶わないように(写真や鏡などですよね)、自分の鳴らす楽器の生音が対面する人にどう聞こえているかは永遠の謎です。そもそも音楽、音とは、空気を揺らしてそれが遠くに伝わりますが、この世に存在するのかしないのか物質ではないのでよく分かりません。そんなものを電気信号に変えたり、記録媒体に閉じ込めたりすると思うとちょっと面白いと思いません?

コメント
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