スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

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Wesslén ヴェスレン

2020-03-25 17:20:20 | ニッケルハルパ

それにしても最近は、どの角を曲がっても回遊魚のように自転車でぐるぐるしている子ども達に遭遇します。ぐるぐる、ぐるぐる、人の本能なんでしょうか。以前はゴーストタウンのようでしたが休校になって今は住宅地に人の気配がします。

こうして家に居て、ずっとフィンランドのオーガニックティーを飲んでいます。紅茶、緑茶、ブレンドティー…。なぜかと言うと、ネットショップ販売用に仕入れたのですが、システムが色々と変わってしまい、対応せずにいると毎月の注文がゼロになってしまいました(結局は、追加オプションに加入して払え、ということです)。そして、全て賞味期限切れになったので自分で飲んでいるのですが、良いのか、悪いのか、すごく美味しくって。もう他の紅茶は飲めそうにありません。リンゴンベリーの実と緑茶、オスロという名のスモーキーなコクのあるストレートティ、シナモンブレンド等々。(ストレートティで言うと、和紅茶の「紅ふうき茶」と似ていると思います。これも結構すきです。)

コーヒーも最近は、2つのお店のものばかり。一つは、富雄でお世話になっているバイオリン工房の方のおススメで、大和西大寺のCAUDA。スウェーデンから帰ってきて一度もおいしいコーヒーを飲んだことがないと思っていました(一度お土産でもらったノルウェーコーヒーはおいしかったです)。今では、日本で、このお店よりおいしいコーヒーは飲んだことがありません。粉で買ってきてプレスで飲んでいます。もう一つは、オアシス珈琲。コーヒー豆を水洗いしていて(汚れや薄皮まで取る)、香り、コク、ともに少し落ちるのですが、スッキリ、あっさりして、飲みやすいのです。変な味がしない、というのでしょうか。実家がずっと昔からこのコーヒーなので、私には飲みなれた普段の味という感じです。

時間もあってのんびり、お茶とコーヒーの話を書ていますが、今日は、Wesslén の話をしたいと思います。コーヒー片手にゆっくり読んでくださいね。

マッツ・ヴェスレン Matts Wesslén 1812-1878

Wesslénは、ヴェスレンと読みます。スウェーデン語のWとVは区別がないと聞きます。今でこそ外来語としてWを使う時は「ウ」のような発音になりますが、古い地名や人名では(例えば、ヴァ―サ王はWasa/Vasa)、WはVの音です。入り江を意味する「vik ヴィーク」も、古い地名の固有名詞では今も「wik」と表記されています。

ヴェスレンに話を戻すと、スウェーデン、ウップランド地方のオルガン奏者でクロッカレでした(日本語に訳せないのですが、街の、つまり教会の時計台の管理者です)。クロッカレと呼ばれる職業の人は大抵、教会の音楽を担当しておりオルガンを弾いたり聖歌を指導したりもします。ヴェスレンもそうでした。彼の住む町から25kmほど離れたところに、伝説的なニッケルハルパ奏者ビス・カレ(Byss-calle 1783-1847)が住んでいました。(このビス・カレもクロッカレにちなんだ曲、ベルタワー(時計台)のワルツなどがありますね。)ヴェスレンは地域の伝統音楽に興味があり、ビス・カレの評判ももちろん知っていました。ビス・カレやウップランド地方の伝統曲を採譜し、自身もシルベルバスハルパ(楽器の説明については以前の記事)を弾いていました。

残念ながら最初に書きため出版用に送った楽譜は火事で消失。その後、記憶を頼りに楽譜を書きなおします。今度は無事に、A.G.Rosenberg(ローセンベリ)の420曲の楽譜集の中に94曲が収められ1879年、出版されました。この楽譜集は、ローセンベリがピアノ曲としてアレンジしたもので、実はこのローセンベリの楽譜はネットでダウンロードできます。

ローセンベリのアレンジが、どれだけヴェスレンの書いたメロディに忠実か、今となっては誰にも分かりません。また、ヴェスレンのどの曲がビス・カレの曲で、どれが地域の作曲者不詳の伝統曲なのかも分かりません。ですが、ビス・カレが弾いていた楽器のチューニングや、ヴェスレンの弾くシルベルバスハルパのチューニング、他から伝わったビス・カレの曲などから、この曲はビス・カレらしい曲だなとか、ヴェスレンが弾くシルベルバスハルパ向きの曲だなとか、ある程度、感じとれる部分があります。

さて、コントラバスハルパやシルベルバスハルパといったニッケルハルパの古いモデルですが、今でも演奏されています。ただ、楽器の構造上ノイズが多く、人によって粗い、うるさい、と感じるかもしれません。ですが、最近は、音楽教育の基礎を積んでベテランへと育つミュージシャンが出てくる中で、楽器を厳密に自身の手で調整し、端正に演奏するミュージシャンが出てきました。粗い演奏ももちろん面白いですが、ヴェスレンのことを知れば、こうした端正な演奏をしていた人も当時いたはずと思えます。実際に、ヴェスレンの弾くシルベルバスハルパは、とても豊かな響きで巧みに演奏したと言われています。

私のお気に入りCDの紹介です。

Markus Svenssonマルクス・スヴェンソン 2020年リリースのCD「Wesslén」

全曲、シルベルバスハルパとコントラバスハルパによるソロ演奏です。アンサンブルやアレンジなどなく玄人向けかも。ですが、歴史的に掘り下げている、弦楽器の名手、最高にダンサブル、という3拍子揃った名盤中の名盤で、1曲終わるごとに思わず拍手してしまいました。マルクスは有名なミュージシャンなのに元々ネットでの露出がほとんどなく、CDと違う曲の動画を貼ると誤解を招きそうなのですが、どんな人なのか、マルクスのオリジナル曲の演奏のYoutubeリンクをここに貼っておきます。

マルクスは、実は私の好きなニッケルハルパ奏者5本の指どころか、3本の指くらいに入るお気に入りミュージシャンです。本人から直後買いましたが、他に買う方法は今のところなさそうです。(送料が4枚まで同じと言われて複数枚買って知り合いと分けたのですが、欲しいという人が何人かいれば、また送ってもらいます)

他にも、ヴェスレンの曲を収録したCDは色々とあり、ヴェーセンもそうです。

シルベルバスハルパ奏者でニッケルハルパの制作者Thor Pleijelも、ヴェスレンの曲を含むCDを出しました。

Höstpolskan

ちなみに動画右手のニルスは実は日本に縁があり、よく来日しているんですよ。とはいえ、日本で会ったことはなく来てたよと後で聞くばかりで残念…。

Thorは楽器制作者でもあり、横浜のダルシクラフトが彼の楽器を販売しています。私が個人レッスンをしている方が2019年トールの楽器を購入したので触らせてもらいました。

ほんの少し小さめのボディで軽く扱いやすいです。メロディ弦はガツンとしていない柔らかい音で、共鳴弦がよく鳴るので、全体が柔らかく包まれるような音色です。大きな派手な音ではなくソフトな印象で、ヴェスレンをはじめ1700-1800年代の端正な曲が好みの方に特に合うと思います。写真右が私の楽器、左がThor制作のもの。表面の装飾は普通のニッケルハルパにはなく、トールのオリジナルです。聞くと、今年もThorの楽器を入荷予定だとか。普通はオーダーを取ってから1年ほどかけて制作する楽器なのですが、ダルシクラフトに連絡したら在庫がある、なんてこともあるかもしれません。

個人的にも、ヴェスレン・ブームが来ていて、もっと落ち着いて品よく弾こうと思っているのですが、先日、笛のヨーランとやすこさんのウェディング・パーティで、1曲ダンスでスウェーデンの方と一緒に弾かせていただきました。後で動画をみたら…やっぱり落ち着きがなかった。目指せ、上品レディ!

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ニッケルハルパの歴史と種類、その2

2020-01-18 18:54:23 | ニッケルハルパ

先日イギリスから、4/26のワールド・ニッケルハルパ・デーの案内動画を送ってっと言われて、急遽、撮影。和室でニッケルハルパ持って正座して…なんか絵的に変!?でも、なぜか日本的にしないといけない気がしてしまいます「4/26にニッケルハルパの写真投稿やセッションなど何かやってSNSにあげようね(ハッシュタグはWorld Nyckelharpa Day)」というものです。今や世界に広がった愛好家、世界のどこにどんな仲間が?皆さんもぜひ参加してみてください。

さて、その1では、大まかなニッケルハルパの歴史についてでした。今回は、ニッケルハルパの種類についてです。(ニッケルハルパは、木の鍵盤があり、ギターのように構え、バイオリンのような弓で弾く楽器です。現在はスウェーデンの伝統楽器とされています。)

●Enkelharpa エンケルハルパ、Mixturharpa ミクストゥールハルパ、Gammelharpa ガンメルハルパ

enkelというのは、英語のsimple、簡単なという意味です。メロディ弦1本、鍵盤が一列というシンプルな構造のハルパです。ミクストゥールは、話が難しくなるので省略します。ガンメルハルパのgammelは古いという意味で、古楽器の総称のこともあれば、通常は、後で出てくるコントラバスハルパとシルベルバスハルパを指します。

●Moraharpa ムーラハルパ

1680年頃スウェーデンのダーラナ地方で作られました。どういった曲が演奏されたか、チューニング等、何も伝わっていないので地域に根差した伝統楽器ではないと言われています。ドイツの本を見て作った試作レプリカだという説が有力です。メロディ弦1本、ドローン弦2本、共鳴弦はありません。見た目と音色がユニークでファンも多く、演奏弦や共鳴弦を増やしたモデルが最近作られています。ムーラハルパ奏者は、Niklas Roswall、Anders Norudde、Daniel Petterssonなどが有名です。この3人が演奏するYoutube動画を挙げておきます。

●Kontrabasharpa コントラバスハルパ 

スウェーデン、ウップランド地方の伝統楽器はここから始まります(厳密には違いますが、プロトタイプに一貫性があります)。「ニッケルハルパの女王」とも呼ばれています。1600年代後半以降、100年にわたりスウェーデンのウップランド地方で演奏され、奏者や音楽、制作方法など、現在に受け継がれてきました。今でもたくさん当時の楽器が残っています。写真は私のコントラバスハルパで当時のものではありません。日本語の資料がほとんどないため、もう少し詳しく紹介していきたいと思います。

<コントラバスという名前>

紛らわしい名前ですが、低音の楽器ではありません。コントラというのは、「対、ペア、対称」という意味です。フォークダンス関係者なら、コントラ・ダンスと言えば、ぴんとくると思います。スクエアダンスともいいますが、こちら側と、あちら側、対称に向き合って踊るダンスのことです。kontra-bas、英語でcontra-droneというこの名前は、ドローン弦を真ん中に、その両側にメロディ弦が1本ずつあるためです。どちら側のメロディ弦を弾いても、真ん中のドローン弦を一緒に弾きます。

<特徴や仕組み>

サウンドホールはオーバル(楕円)で顔のようにも見えます。バイオリンは渦巻側を上に吊るしますが、スウェーデンのニッケルハルパはテールピース側を上に吊るすので、ますます顔に見えてきます。

鍵盤は一列のみ、メロディ弦は2本で、共鳴弦があり、どんな調も弾けるクロマチック楽器です。鍵盤をおさえる木片を英語でタンジェント(スウェーデン語löv)といい、一つの鍵盤に弦をおさえるタンジェントが2つあります。例えば、鍵盤を押さえて「ソ」の音を弾き、そのまま、もう一本の弦を弾くと「レ」の音がする、という仕組みです。

ウップランド地方の伝統的な制作方法は、スプルースの一本木を半分にし、くりぬいて作ります。年輪が美しですね。太い木はなかなか取れないので細く小ぶりで、トップの板に膨らみがあるのが特徴です。鍵盤にはカバーがあり、古くは絹弦を使っていたので弦を保護するためとも言われていますが、本当のところは不明です。木のそのままの美しさ、ナイフを使った工芸美、スウェーデンのニッケルハルパの美意識は、このコントラバスハルパから受け継がれたのだと思われます。バイオリンのようなピカピカした仕上がりはあまり好まれません。

<音色と共鳴弦>

共鳴弦は、インドからイギリスにもたらされヨーロッパで流行し、このコントラバスハルパにもつけられました。ドローン弦を常に鳴らしますが、同じドローン楽器のバグパイプやハーディガーディのような大きな音はでません。共鳴弦の余韻と木のぬくもりが感じられる音色です。また、当時、活躍していたコントラバス奏者Byss-Calleの曲は端正な曲が多いです。現代のコントラバスハルパ奏者は、Daniel Pettersson、Markus Svenssonなど、他にも沢山います。粗い音色が好みの方には、ロックなアタックで弾くVasenのOlov Johanssonがおすすめ。JosefinaとDavidの演奏も勢いがありフレッシュな演奏です。Polska efter Jeppsson

<楽器の購入>

古楽器(レプリカですが)の部類に入り、制作方法が受け継がれているとはいえ、愛好家も一定数いるとはいえ、やはり需要が極端に少ないので作り慣れている人は少ないです。以前はHasse Gille(1931-2012)などが作っていましたが亡くなってしまいました。今の職人さんは、自分が作り慣れたモダンタイプを応用していたり、相談すれば作ってくれるという感じでしょうか。まずはモダンタイプの職人さんに、作ってくれるか尋ねる、もしくは誰か紹介してもらうのが良いと思います。私の場合、モダンタイプの応用で作っていた職人さんが、伝統的な制作方法を経験したいから職人2人の共作ではどうか、と言ってくれたのでお願いしました。このエピソードは長くなるので、その3番外編として書くかもしれません。

●Silverbasharpa シルベルバスハルパと、kontrabasharpa med dubbellekコントラバスハルパ・メド・ドゥベルレーク

舌を噛むような名前が続きますが、この2つは1800年代以降人気のあった楽器です。コントラバスハルパがウップランド地方全体で見られたのに対して、時代を経てこの2種類からは、徐々にウップランド地方北部の狭いエリアに集中していきました。

<silverbasharpa シルベルバスハルパ>

1830年頃からみられます。Silver-bas、銀のドローン(銀巻ガット弦)のハルパという意味です。伝統の中心地の名前から「Tierps harpa ティエルプ・ハルパ」とも言います。新たな変更は、メロディ弦の間に合ったドローン弦が端へ移動しもう一本追加(CとGの2本)、それによりメロディ弦2本(CとA)が隣同士に並びます。また鍵盤が一列増え、初の2段構造となります。和音が弾けるようになり、ソロ楽器として豊かな響きになりましたが、Cメジャーの曲しか弾けなくなりました。コントラバスハルパのような鍵盤も残り、ハイブリッド型の鍵盤ともいえます(そうでないものあります)。ここでは、Thor Pleijelの演奏を紹介しておきます。彼の演奏は丁寧で味があります。また、腕の良い楽器職人でもあり日本でもダルシクラフトで入手可能で、その話はまた次回に。演奏は1:30くらいから。 Thor Pleijel Riksspelman 2015 på silverbasharpa

<kontrabasharpa med dubbellek コントラバスハルパ・メド・ドゥベルレーク>

1860年後半以降見られる楽器です。シルベルバスハルパからの発展型ではなく、並行して存在していました。伝統の中心の村の名前をとって「Österbyharpa オステルビ・ハルパ」とも言います。これは、シルベルバスハルパでいうドローン弦(G)がメロディ弦になり、メロディが弦3本へと増えたものです。鍵盤は2段ハイブリッド型で特定の調しか弾けません(C、F、Gメジャ―)。興味深いのは、メロディ弦の並びが今と同じ、G-C-Aとなったことです。

これらの楽器は1930-40年代までよく演奏されていた楽器です。クロマチックではないので、次世代モデルへ移行する橋渡しのような印象があるかもしれませんが、豊かな和音、素朴で力強く、明るい農村の曲というのは今でも多くの人を魅了します。現在のニッケルハルパでも、伝統的な奏法、ニッケルハルパらしい曲という時は、この時代の奏法と曲を指します。

●現代のニッケルハルパ

現在のニッケルハルパはクロマチックで、メロディ弦3本、鍵盤3段、ドローン弦1本、そして共鳴弦12本、全部で弦は16本あります。鍵盤一つに対し音も一つ、分かりやすい構造になりました。前のモデルと比較して、クロマチックとか、モダンタイプといいますが、単に「ニッケルハルパ」と言えば現在のモデルを指します。

<現在のモデルの誕生と変遷>

1900年代に入って、代々、伝統音楽奏者の家系だったアウグスト・ボーリンがストックホルムの野外博物館スカンセンでの演奏を依頼されました。1929年の夏のことです。すると、クロマチックでないシルベルバスハルパでは他の地域のミュージシャンと一緒に弾けないという経験をするのです。この経験から、クロマチック楽器に改造する着想を得たと言われています。ですが、実際に誰が3段構造の鍵盤にしたかは分かっていません。当初、改造されてもボディは、まだシルベルバスハルパのように丸みを帯びていました。後に、エリック・サルストレムがバイオリンのストラディバリウスをヒントにトップのカーブをよりフラットにする等々、手を加えていきました。演奏活動、楽器制作など普及に貢献し今ではエリックの名前を冠したニッケルハルパの学校があります。白黒の動画でも尚新鮮な、本人の演奏をアップしておきます。 Trollrikepolska av o med Eric Sahlström

伝統的な、木をくりぬいて作る制作方法は大変な作業で、今では多くの人がより簡単に作れるように横板、裏板、表板それぞれ作って接着し、表板のカーブも曲げて作るようになりました(職人による秘密の技を伝授というよりも、現実的で普及しやすくオープンで参加型というスウェーデンらしいマインドを感じます)。シルベルバスハルパ後期(1800年代の終わり)には、スプルース以外の色んな木が使われていましたが、やはりコントラバスハルパのように、全てスプルースのボディのほうが音色が良い、大きくなっていったボディもコントラバスハルパのようにやや小ぶりのほうが音色が良い、といったように、原点へと戻りつつ新しい形へと変わってきました。

●今も生み出される新しいニッケルハルパ

民俗楽器の面白さでもありますが、こうしたい、こうあってほしい、そんな望みに合わせてすぐに作り変えてしまいます。ここでは、ある程度、認知されたもののみ紹介します。

<Altnyckelharpa アルトニッケルハルパ、Oktavharpa オクターブハルパ>

通常タイプはソプラノ、アルトはヴィオラの音域です。オクターブハルパは1オクターブ低い楽器です。アンサンブルの要望から90年代以降に作られました。構造は同じでサイズが大きくなったものです。ニッケルハルパ・オーケストラNyckelharporkesternのByss-Calleというアルバムでどちらの楽器も演奏されています。

<ヨハン・ヘディン考案のTenorharpa テノールハルパ>

Johan Hedinが考案し、バイオリン職人のPeder Källmanが作りました。オクターブハルパと同じ音域なので混乱してしまいますが、ヨハンヘディン考案モデルのこと、とすると分かりやすいです。オクターブ低く、メロディ弦4本(バイオリン・チューニング)、鍵盤は4段、ドローン弦なし、微分音の鍵盤付き。私も違う職人ですが、Olle Plahnに作ってもらいました。テノールハルパはオクターブハルパよりボディが少し小さく扱いやすいです。Pelle Björnlert & Johan Hedin - Polska från Östra Ryd (live, 2006)

<多様なハルパ、4弦4段のニッケルハルパ、elharpa エレキ・ニッケルハルパなど>

ニッケルハルパの分類では、よく最後に、メロディ弦4本に鍵盤4段のタイプが掲載され、まるでこれが最新のモデルだと言うような印象を受けます。ですが、今も昔もそんなに盛り上がりをみせていませんし、様々なタイプの一つという位置づけに思えます。また、エレキのニッケルハルパという面白い楽器も作られました。その他、中世に描かれた楽器の復元モデル、リュートニッケルハルパ、色んなニッケルハルパが生み出されてきましたが、定着するのか、消えていくのか、ニッケルハルパの将来が楽しみです。

ニッケルハルパに限らずスウェーデンの伝統音楽は、古くは男性奏者ばかりでした。昔のスウェーデンでは、女性は楽器を弾くものではないと言われていたそうです。今では、伝統音楽のジャンルにとらわれず、現代の音楽シーンで活躍する奏者は、国籍、性別問わずたくさんいます。最後に、エネルギッシュな性奏者、エミリア・アンペルを紹介して終わりたいと思います。Emilia Amper - Spelpuma LIVE Nationaldagen Skansen 2015


お知らせ

・2020年6月にKaunanが来日、全国ツアーします。ここで紹介したコントラバスハルパをはじめ、ハーディガーディやマンドーラなどを駆使し、中世、バイキング、神話、色んな古いものをぎゅっとつめこんだ面白い多国籍バンドです。古(いにしえ)の響きに魅かれる方、なんだか面白そうと思った方、この機会をお見逃しなく!Kaunan来日情報はこちら。

・ノルウェーのハーディングフェーレ奏者、樫原聡子さんとライブします。ニッケルハルパとハーディングフェーレ、それぞれソロを中心にデュオ演奏も織り交ぜ。終演後にお茶の用意がありますので、ほっこりして帰ってただけたらと思います。私のコントラバスハルパ、まだ調整中ですが調子が良ければ持っていくかもしれません。

3/7(土)14:00open, 14:30start、予約2500円、当日3000円、木のぬくもりのあるアトリエ・風のポルッカにて(伊丹市)※下記の画像をクリックすると大きく表示されます。

※3/7は中止(開催時期をみて延期)とさせていただきます。

 

 

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ニッケルハルパの歴史と種類、その1

2019-12-28 21:49:54 | ニッケルハルパ

そう、あれは3年前のこと。「それで、この楽器を取りに、いつストックホルムに来る?」「え!?送ってくれないの?」ニッケルハルパ職人のBosseと、しばらくやり取りの後「訪ねてきたイギリス人が欲しいって言ってるんだけど、売ってもいいかな?」と言うではないですか。嫌と言えるはずもなく…、他の人の手に渡ってしまいましたでも、結果、良かったんです。コントラバスハルパという古いモデルの楽器は、本当に伝統に従って作る人はほぼいず、現代の制作方法を応用させていることが多いのです。他の人に売ったという楽器もそうでした。数か月後、またメールがきました。「伝統的な制作方法で作ってみようと思うんだけど、買う?」今度こそ!取りに行かねば!と受け取りに行った旅が、2年前にブログで書いた「北欧子連れ旅」でした。そのコントラバスハルパについて書こうと思います。

ですがその前に、全体の歴史に触れていないとどうにも分かりにくい。先にそちらから書きます。

※この情報は、ニッケルハルパの制作者(エスビョン・ホグマルク)から定期的にいただく資料や情報を中心に(いつも資料も写真も自由に使ってくれと言われます)、ニッケルハルパ研究者ペールウルフとのやりとり、スウェーデン留学中の講義、楽器制作者向けセミナー、その他、本や資料を基に理解したことを書いています。

ニッケルハルパの起源

ニッケルハルパは、木の鍵盤があり、ギターのように構え、バイオリンのような弓で弾く楽器です。時代により、形や音色が様々です。また現在はスウェーデンの伝統楽器とされていますが、歴史を紐解くとヨーロッパ各国でもみられます。

一番古いものは、1350年頃のゴットランド島の石造りの教会に刻まれたニッケルハルパを弾く天使についてよく言及されます。その時代からこの楽器があっただろうと。ですが、実際には分からないことばかりで、風化も激しく、本当にニッケルハルパなのか、鍵盤ではなく天使の指ではないのか、様々な推測がされています。また、つい2-3年前、1200年代の鍵盤らしき木片がシグトゥーナで見つかり、1200年代にニッケルハルパがあったのかも!?と一時盛り上がりました。サイズといい見た目も鍵盤そっくりですが、だからといってニッケルハルパの鍵盤だと断定できる証拠は何もありません。さらに、1400年代、1500年代には、イタリア、ドイツ、デンマークなど様々な国で教会のフレスコ画で「ニッケルハルパを弾く天使」が描かれています。スウェーデンではウップランド地方に、その絵は集中しています。

中世ヨーロッパのミステリー

ヨーロッパの様々な国で、天使がニッケルハルパを弾く絵が描かれていますが、どの絵も楽器のデザインに統一性がありません。一つずつがあまりに違うので、実物を見て書いていないのでは!?という疑惑があります。そしていつも「天使」が弾いていて、人間が描かれたものは見つかっていません。このことから、実際に存在した楽器というよりは、「天使がニッケルハルパを弾く絵」がモチーフとして流行していたのでは?と推測されています。スウェーデンの教会のフレスコ画もスウェーデン人が書いたのではなく、ドイツの職人を呼び寄せ描かせたと言われています。そして、ニッケルハルパを実際に演奏していた記録、どんな曲を弾いていたか、どうやって楽器を作ったか、そうした具体的な記録もまだ何一つ見つかっていません。「天使の絵ばかりで、楽器の絵はバライエティに富む、演奏の記録はない」、これが一つ目のミステリーです。

また、実際に、こうしたフレスコ画のような楽器が作られていたはずだと言う人もいます。1400年、1500年代というのは楽器に様々な実験的な試みがされていた時代です。ギターやリュート、フィドルや色んな楽器に鍵盤をつけてみた、というのは十分現実的にありえる話で、フランスでは鍵盤のあるハーディガーディも生まれました。ですが、描かれたようなニッケルハルパを作った人、弾いていた人の記録が何もないので、ニッケルハルパに関してはお試しの域を出なかった、一台(一代)限りで終わったのだろうと言われています。

そして、最大のミステリー。こうした天使とニッケルハルパの絵は1600年代以降は描かれなくなりました。理由は誰にも分かりません。

ムーラハルパの謎

現存する最古のニッケルハルパはムーラハルパmoraharpaだ、と言われてきました。これは1526年と楽器に記されており、スウェーデンのムーラの博物館に保存されているためこう呼ばれています。実際、楽器を調べたところ100年以上後、1680年頃に作られたと最近になって分かりました。そしてドイツの有名なプレトリウスの本に、正にこのムーラハルパそっくりの楽器が描かれています。ニッケルハルパの研究者ペールウルフによれば、ムーラハルパはこの本を見て作ったレプリカだそうです。(ムーラハルパは、地元に根付いた伝統や音楽など何もありません。)

スウェーデン、ウップランド地方のニッケルハルパ

1600年に入るとヨーロッパではすっかり忘れられた楽器(絵)になってしまいましたが、なぜか1600年以降、スウェーデンのウップランド地方では突如、ニッケルハルパが姿を現します(この起源も諸説あり)。これは作り方、木材など現在まで約400年間、一貫しており、制作の歴史、演奏家、演奏された曲という伝統が途切れることなく現在まで続いています。ですので、ウップランド地方のニッケルハルパは、最近の研究によって中世タイプのニッケルハルパとは別物という認識が広まってきました(作り方が根本的に違います)。この初代ウップランド・タイプが、「コントラバスハルパ」と呼ぶ楽器です。これは「種類」のほうで詳しく書きます。現在は制作方法は少し異なるのですが、それは1900年代に入って効率のため改良されたもので、伝統的な制作が途絶えた訳ではありません。

1900年代のニッケルハルパとフォークミュージック・リバイバルブーム

1900年前半には、今のモダンタイプへと変わるモデルチェンジがありましたが、まだ1940年代くらいまでは古い作りが主流だったようです。そして1940年代にはニッケハルパ奏者が一握りしかいないほどまで減ってしまいました。この頃からエリック・サルストレムが演奏、作曲、楽器制作と活躍しはじめましまた。そして1960-70年代には、スウェーデン全土で、楽器を問わず「伝統音楽のリバイバルブーム」が起きました。

ブームの頃、ニッケルハルパの楽器の供給が需要に追い付かなくなります。1970年代に、国の補助金で大きく2つの楽器モデルが採用され、何百台と流通しました。一応の需要は満たしたのですが、強度が悪く、弾きにくく、何よりも音色が悪かったので徐々に姿を消します。この70年代のモデルは(楽器も図面も)今でも時々見かけるので注意が必要です。モデルチェンジ後は方向性をさまよった感がありましたが、エリック・サルストレムが86年に亡くなって以降、制作者を束ねて牽引するエスビョンが活躍し、古いウップランドタイプ(コントラバスハルパ)の良さに着目する方向へ落ち着いていきました。エリック・サルストレムも晩年に作った楽器はコントラバスハルパに回帰しようとする傾向がみられ、エスビョンが上手くその後の時代へと繋いだのだと思います。※この流れとは別に、ハッセ・イッレなど常に独自に優しい音色の良い楽器を作り続けた人も、もちろんいます。

ちなみに、70年代ブームの少し後、80年代に、バイオリンの基礎もきちんとできて、且つ、村の味のある奏者から習って、技術と土地臭さのバランスが最高に良い伝統音楽奏者が沢山でてきました。個人的な意見ですが、伝統音楽の黄金期と言って良いんじゃないでしょうか(Bjorn Stabiがブームの頃の人、その直後に頭角を現したのがPer GudmundsonやOla Bäckström)。ニッケルハルパは良い楽器が不足し出遅れたためか、個人的に思う黄金期は少し後、90年代~かなと思います。90年代以降、エスビョンのニッケルハルパを手にした人が次々と活躍し始めました。(Olov Johansson, Niklas Roswallなど。)

スウェーデンのニッケルハルパ、ヨーロッパのニッケルハルパ この内容は特に、大半が個人的な意見です。

スウェーデンのニッケルハルパとヨーロッパのニッケルハルパは、ここ10-20年で、求めるもの、表現するものが違う、と区別されることが多くなってきたように感じます。

ヨーロッパでは、自分の国に昔あった(だろう)楽器で自分の国の音楽を弾きたいと、中世音楽、バロック音楽をはじめ、クラシックや現代曲など様々な音楽を演奏するのに適した音色や奏法(構え方)を追求しています。音色はソフトで音も柔らかく、やや小さな音が好まれ、ビオラダガンバのようとか、チェロのような丸みと言う人もいます。中世音楽では、ハーディガーディのような荒々しさや、ミステリアスな雰囲気をイメージしているようにも思えます。CADENCEというEUの助成プロジェクトがあり、ドイツ、イタリア、スウェーデン合同で「大人のためのニッケルハルパ教育」をテーマに、クラシックのスケール練習を取り入れたり、オーケストラ風アンサンブルにしたりとジャンルにとらわれず自由な活動をしているようです。

スウェーデンのニッケルハルパは、「ソロで弾くダンスの伴奏」という伝統から、音は大きく、共鳴弦の音がいつまでも長く続き、高音はキラキラと輝き、低音もはっきりと太く、「柔らかさ」と「強さ」、かつ「クリア」で「余韻がある」という、アイスクリームの天ぷらのような(相反する要素が一緒になったような)音色が好まれますが、人により好みは違うのではっきりとは言えませんが、要は「ダンス向けソリストの音」が好まれるということです。若干浮かせて構える楽器の持ち方も、より大きく響かせたいということだと思います(ヨーロッパでは体にくっつけ安定させる構え方もあります)。そして、古いタイプのニッケルハルパですが、スウェーデンでは荒々しいイメージよりも、丁寧に演奏する印象があります。おそらく弾く曲、その曲の時代の傾向で、そうした弾き方になるのでしょう。

動画の検索では、日本人からするとスウェーデン人もドイツ人も同じに見えるかもしれませんが、学ぼうとする方は、どの国の人がどんな曲を弾いているのか、スタイルの違いに注意してみてくださいね。スウェーデンは伝統的に統一感があり、ヨーロッパは人それぞれのスタイルです。ちなみに、アメリカはスウェーデン移民が多いためか「スウェーデン・スタイル」が主流のようです。

と、ここまでが簡単ですがニッケルハルパの今と昔のお話しでした。次回は、ニッケルハルパの種類についてです。

ニッケルハルパの歴史、種類、構造、について触れた本にはこうしたものがあります。全部、読破はしていませんが、紹介だけ。

Den gäckande nyckelharpan, Pel-Ulf Allmo

Franmlades then stora Nycklegijga, Pel-Ulf Allmo

Nyckelharpan, Jan Ling

Harpan och järnet, Eva Wernlid och Peo Österholm

Nyckelharpfolket, Gunnar Ahlbäck

Nyckelharpa Nu och Då など

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年の瀬に本や動画の紹介(雑談)

2019-12-20 10:25:53 | 番外編

12月は一般向けではないクローズドの演奏がいくつか続きました。(クローズドではないけど)関西スウェーデン協会のルシア祭での演奏がとても印象的でした!グルッグにルシアのパン(ルッセカッテル)、スウェーデン料理もすばらしく、今年着任されたスウェーデン大使とも少しお話しできました。30代と若い大使で、スウェーデン協会の会長さんからは、北欧は実力主義で年齢は関係ない、どうやって昇給、昇進するかという具体的な話も聞けて興味深かったです。ルシア祭では演奏したくせに、実際のルシアのことはボンヤリしてて、前夜に突然「」と思い出し、あわててサフランを探したけどあるはずもなく。…白いルッセカッテルを焼きました。翌朝、無事にサンタルチアを歌ってパンを食べました。まあ、正確には…、ねぼけた家族がゾンビみたいな顔して私の指示に従った、ですね。

次回予告をしておくと、次は、レクチャー系ではいつも話していましたが、まだブログには書いてなかった「古楽器コントラバスハルパ」についてを予定しています。

年末はいつも本や音楽の紹介、雑談で終わるので今年も。

バッタの研究者の面白い本とか色々とありますが(本の感想だけで違うブログが書けそう)、今年一番と言われると、ごはんの本です。

日本の家庭料理は和洋中にB級メニューと食事のバライエティが広いですよね。反対に、ドイツだとメニューが豊富にないとか、イギリスの日常食は簡素だとか良く聞きます。私もイギリスにホームステイした時は、毎日毎日ポテトとホウレン草で、週末だけメニューが変わりました(夜ごはん、食パン…)。スウェーデンはメニュー豊富なほうですが、時代で途切れていないのが日本と違います。時代で途切れるというのは…この本を読むと、なるほど、です。

「小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代」 阿古真理

人気の料理家の名前がタイトルについていますが、日本の家庭の食事について興味深い話です。本格的でセレブ風の西洋料理の紹介がされた時代(3日煮込むとか、フルーコースとか)、初めて自分のキッチンを持った核家族・専業主婦が登場しはじめた時代は、ウスターソースやケチャップ、マヨネーズが販売されメーカーがレシピを広め始めた時代でもあります。その親の世代は、戦中、戦後に育ったので自分自身が豊かな食生活(いわゆる家庭料理)を経験していない等。また、現在、和食とされていても割烹料理で、元々は庶民の家庭料理でなかったりします。軽い読み物という口調で書かれていませんが、内容が面白く読みやすかったです。

 

「英国一家、日本を食べる」 マイケル・ブース

先ほどの本とは違い、外国人の目を通してみる日本の料理は、こういう風になるんだなという本です。異なる食感の組み合わせを楽しむのは和食独特なんだとか、ひき算の料理(フランス料理は足し算の料理)、季節を料理に入れる、苦みを味わうのも日本の特徴だそうで、着眼点が面白いです。B級グルメから、ちゃんこ鍋に、割烹料理まで日本中を食べてまわった旅の本です。ただ、著者がアクの強いキャラで…そこだけ個人的には読みにくかったです。

 

「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」「東京の空の下オムレツのにおいは流れる」 石井好子

五感に訴える本!ミュージシャンで料理好きって多いですが、やはり食べ歩きではないところが面白いです。シャンソン歌手石井さんの本で、「メリケン粉」など昭和の言葉が出てきますが、全体が読みやすく気になりません。フランスを中心に外国の料理ばかりでかなり妄想かきたてられます!「○○という料理を食べました。これは、ニンニクを刻んで、バタをおとし、じゅっとなったら…」と作り方が続くので、匂い、刻む音、とろける映像が浮かぶんです。それと作り手(ロシア系マダムとか)とのエピソード。いまだに売れ続けているベストセセラーという書評を見て読んでみたら、納得でした。

さてさて、次は、よく見た動画。「オモシロ系クラシック」が一番見たかな。クラシック音楽をお笑いにできる、それで客席が埋まる、それなりに弾ける人が笑いの道に進む…!!本場ってこういうことなんだなって思いました。いくつか紹介します。

リモコンでCDを操作(実際にはオーケストラ)。この二人組、掃除機でバイオリンの弓を吸いこむとか、他にもたくさんオモシロイことしてます(ピアニスト&バイオリニスト)。

Where is the Remote Control?

 

うわーー!手がいっぱい!

Salut Salon "Wettstreit zu viert" | "Competitive Foursome"

 

このグループはいつも安定していて、隠し芸的な技がベテラン級です。

Grupa MoCarta / MozART Group - Wyścigi skrzypcowe / The Race - HD

 

大阪なんばのショーっぽい…?

ESTILOS del espectáculo PAgagNINI de YLLANA y ARA MALIKIAN

 

疲れたり色々あっても、笑って過ごしたいものです。では、良いお年を。

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好きに弾いて良いと適当なことを言うスウェーデン人

2019-11-13 12:43:58 | ポルスカについて

テノールハルパを和室に置いていたら、3か月で虫に食われました(毛を食べられた)。以前、子どもの使っていないバイオリンを和室に2台ハードケースのまま置いていた時も虫食いに合ったのを思い出しました。南向きの明るい和室でルンバも定期的に掃除して…、畳の部屋は保管に向かないのかも。弓の毛替えは、4-5000円するのでテンション下がります。皆さんもお気をつけて。

さて挑発的なタイトルをつけてしまいましたが、最近、考えさせられるやりとりがあったので、ちょっと書いてみたいと思います。

※このブログ全体、またこの記事は、スウェーデンの伝統音楽について知りたい(学びたい)方に向けて書いています。今でも教科書もなければ基本情報も日本に伝わっこない中、誤解も多く見受けられ、基本的な内容を基礎から伝えたいと思っています。ですが、こうした伝統音楽のメロディを使って色んなアレンジや表現をしたり自由な音楽活動を縛ろうという意図はありませんのでご理解ください。

「守破離(しゅはり)」という言葉をご存知ですか?

日本の武道、茶道など、古い師弟関係で学ぶ「~道」で言われる考え方のことです。「守」は私見を挟まずひたすら基本を真似し、「破」は確立した基本の上に個性が出て(基本を破る、型破り)、離は己のスタイルを確立する(例えば、その人の名前のついた流派が完成)、少しニュアンスが違うかもしれませんが、こういう意味だと思います。

「型破り」「型なし」という言葉が面白いなと思うのですが、「型破り」は「守破離」の「破」ですが、「型なし」は「守」が出来ていない、根っこがない時に言われるようです。

それで、スウェーデンの伝統音楽に話を戻しますが、「伝統」といえば日本語では格好よい響きがありますが、結局のところ「一般民衆の民俗音楽」です。厳しい師弟関係があったり、日本の「○○道」のようなしきたりがある訳でもありません。ですが、数百年続くものには、やはり「型」というか「スタイル」があるものです。でも、ルールブックも師匠もいないから、その見えない縛りがゆるーい。楽しみで弾いている、ほとんどの人は意識をしていないと思います。でも、無意識にその「型」を守っているんです。(どの地域のどの奏者のどのスタイルと、伝統を強く意識している人もいます。)

スウェーデン人はすぐにタイトルのように「好きに弾いて良いから」と言うのです。ホントに良く言います。

日本で、人に指摘されるまで深く考えたことなかったのですが、スウェーデン人は(守破離なんか知らないでしょうが)、守破離でいう「破」の部分に触れているんじゃないかなと思いました。

留学中、ヴェーセンのOlovが先生でしたが、「フォークミュージック(伝統音楽)は自由だ。好きに弾いて良い、まさに君が伝統の一部で、新しい伝統を作るんだ」と最後の授業でいいました(カッコイイ!)。ですが、ウップランド地方に特有のワルツのスウィング感をゴリゴリ出せ!と繰り返し、繰り返し、何度も練習させられ、1時間弾き続けても「ダメ。全然。」と言ったのは、同一人物ですよ。90点じゃアカンって感じでした。つまり、ウップランド・ワルツのノリは鬼コーチだし(守)、その先は自由にしろ(破、離)と、そういうことです。

ゆるーいスウェーデン人集団は、どうやって「型」を無意識に守っているのでしょうか?

推測ですが、曲を覚えたり皆で楽しく弾きたい人は、地方、地域の大小、さまざまなグループに属します。自分が踊りたくなくても、踊らないグループでも、ダンスをしているグループと常に関わり続けます。グループの集まりで、イベントで、色んな機会で弾く時に、演奏だけよりも「ダンス&演奏」という機会が圧倒的に多いです(伝統音楽の多くはダンス曲)。そこで、その曲でそのダンスを踊る時の核となる部分が(それも1曲ずつ曲ごとに)集団の中で暗黙にキープされていくんだと思います。グループに属さず、夏のお祭り(ステンマ)だけ行く人もいますが、上記のような人が大半な中に突入すれば朱に染まるというか、結局、無意識に型を守ってるんじゃないかなと思います。

「ここはどう弾いてもいいよ、好きに」という時は、「核となる部分ではない」から。

もう一つ、好きにどうぞって言われる時は核の部分に影響しない時だと思います。演奏が上手い人、あまり上手じゃない人、初心者、色々なレベルのスウェーデン人がいますが、皆さん、それぞれの曲ごとの核となる部分(言ってみれば「守」にあたる部分)から逸脱した人に私は出会ったことがありません。でも、それは自分の地域の曲を弾いている時の話です。違う地方の人が違う地方の曲を弾いて、あれ?何か違う?というのはスウェーデン人同士でも感じるし、本人も自覚していて。そういう時は、悪意はないのですが「何でそう弾くの?誰に習ったの?」と聞かれます。だから、プロで活躍する伝統音楽奏者も、セッションでは色々弾いてもステージでのレパートリーは出身地の曲ばかり、ということが多いです。(色んな地方の曲を器用に弾く人もいます。)

この「守」の部分はやはり大事だと思います。自分を捨てて、相手のマネをします(書道でお手本みて書く感じ)。メロディをなぞるのではなく、書道でいうなら、筆遣い、緩急、線の細さ、止めハネの勢いや力加減も全部です。どれだけ聞こえて、どれだけ再現できるかは聞き取る力にも左右されます。あてっこクイズで、さてこれは誰の弾き方?ってできるくらい(なんてマニアなクイズ…)。

自分の話になりますが、元々、自分を出したい欲がなかったこともあり、始めた頃から「自分を捨てて型を守る」意識は一番心掛けていました。ちゃんと出来ているかどうかは分かりません。ニクラスに習った曲は「弾き方がニクラスだ!」って言われるしモノマネレベルはまあまあかも。去年、ダニエルに東京で習った曲は「その弾き方、男っぽすぎませんか?」と言われたけど、ダニエルに習ったんだから、そりゃそうです。もちろん、マネしたくないな、と好みに合わなければ、お手本に選びません。馴染んだ後は、自分はこう弾きたいと思う部分は出てくるし、そこは自由だと思います。

CDやYoutubeで本気のモノマネって結構疲れます。本当は目の前にお手本の人がいるほうが簡単。それでもCDでも積み重ねを続けるとコツもつかんでだんだん慣れてくると思います。参考まで。

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北欧ダンス曲のリズム、スレングポルスカ

2019-09-10 20:21:00 | ポルスカについて

2019/9/15 ハーディングフェーレとニッケルハルパ お食事付き 残席わずか(会場へお尋ねください。)※この日、スウェーデンの友人のCDを販売します。その紹介はこのブログ記事の最後のほうで。

2019/10/6 スウェーデンの講師による音楽ワークショップ、ダンスワークショップ


夕飯中に、子どもに「早く食べて楽器弾いてよ」と言われます。食事中はCDをかけていて(北欧ものやアニメやなんでも)「CDじゃあ、あかんねん。目の前で弾く演奏がいいねん」と、今夜もこきつかわれています。しかも「なんかな、音程はいいんやけどな(そりゃそうだ、ニッケルハルパは鍵盤だし)、最後のその音、気をつけたほうがいい。」とまで。はいはい、頑張ります、難しいんだってば、この最後の音。

という話はさておき、「この曲はスレングポルスカですよね?」と時々聞かれます。返事をすると混乱させてしまうことが多く、前々からこの話題を書こうと思っていました。今日はスレングポルスカの話と、スウェーデンのトリオのCDの紹介を書きます。

スレングポルスカ slängpolska 

シンプルで軽快なリズムやメロディアスな曲が多く、セッションでも人気です。スモーランド地方、セルムランドや南スウェーデンのダンスの種類で、歩きながら自由に踊るダンスです。列を作って歩くようなポロネース(スクエアダンス)とは随分と違います。もっと古いスタイルで、歩き回らずその場で踊るスレングポルスカもあります。どちらも基本は歩くので、3拍子の拍が均等な曲が使われます(知らない方のために説明すると、リズムが不均等な曲がスウェーデンには多くあります)。歩くのにあわせ2拍子や4拍子のようなリズムの取り方をして、それをわざわざ3拍子で弾きます。「あの地方の人は数えられなくて1拍子なんだ」というジョークもあります。

ポルスカ 

地方により違いますが、一般的なポルスカは3拍子の、1と3拍目にアクセントがあり、それで回転するダンスのリズムを生み出します。ちなみに、アクセントというと誤解されるますが「強く弾く」のではありません。回転を生み出すので勢いや緩みといった緩急が必要になります(車のアクセルをブオンとふかす感覚に似てるような)。打楽器的な強弱のアクセントをつけると、途端に「踊りにくい」「ポルスカに聞こえない」と言われてしまいます。回転を押し出すイメージで、各拍の長さが不均等な曲が多いのです。もちろん、不均等である必要はなく、均等なリズムの曲も多くあります。

それで、スレングポルスカの話に戻りますが、「拍が均等で歩きやすい曲=スレングポルスカ?」と思われがちなのですが、もちろん、答えは「No」です。回転を意識した1と3拍目を弾くのか前に前にと進みたくなる(2拍子かのような)グルーブ感を出すのか。どちらの演奏でもどちらのダンスも踊れますが、リズム感(グルーブ?)が異なります。また、どちらよりの演奏をするか、フレーズごとに変えるのか、多少は演奏者の選択の余地もあって、そこが譜面にならない伝統曲の楽しい部分です。

そして、このスレングポルスカが混乱を招く理由が2つあるのです。

1.ダンスの種類として言ってる

スレングポルスカがスモーランド地方などの地域にあるダンスの種類なので、曲も本来はその地方の曲のはず。でも、スウェーデンでも「(スレングポルスカが踊りやすい曲だから)この曲はスレングポルスカだ」と音楽の由来のほうではなく、ダンスの種類の話をしていることがあり、それが混乱を招くのです。(「ビスカレのポルスカ」を「スレングポルスカ」と呼ぶ人が多く、こうした例が誤解のもとになっている気がします。多分、スレングポルスカのようなグルーブ感で弾いたらカッコ良くて人気を集めたのかな?と。個人的な推測です)。また、例えばスモーランド地方のポルスカなら何でもスレングポルスカかといえば、そうではありません。ポロネス、メヌエット、時代背景にしてもニュアンスが異なります。

2.色んな地方にあるスレングポルスカ

ウップランド地方、もっと北のヴェステルボッテン地方などでも「スレングポルスカ」という名前のダンス(曲)がありますが、リズムもダンスも全く異なります。「スレング」という言葉は「投げる」という一般的な言葉です。投げるような動きをするダンスがあれば誰でもそれを「スレングポルスカ」と呼ぶことはごく自然にありえるので、紛らわしいのです。いっそのこと、スモーランドポルスカのように呼び名を変えれば誤解がなくなるんじゃないかと思います。よく基本のポルスカとされ、他の地方の曲で踊ることもある「ビングシューポルスカ」は、「ビングシュー」が地名なので他の地域の曲で踊ってもこうした混乱は起きません。

そういう訳で、「スレングポルスカですか?」と聞かれると、「スレングポルスカも踊れるけど、違います」「1と3拍目を強調したので、そのつもりで弾いてません」「スコーネ地方の曲だけど、どうでしょうねぇ…」と奥歯にものが挟まったような答えになってしまうのです。決して、イジワルではぐらかしているのではありません。


スウェーデンのトリオのCDを販売します このブログを書き始めた頃からの10年来の友人のCDを紹介したいと思います。ニッケルハルパと双子のフィドルのトリオです。ニッケルハルパのスンニヴァはそれはそれは繊細なため息のでるような音色で、難しいフレーズも水が流れるように、静寂さえ感じる演奏です。そして双子のカロリンとマデリンは一週間のコースを一緒に過ごしただけなので知り合い程度ですが、初めて出会った時は衝撃を受けました。生き生きと、こんなに楽しそうに弾く人を他に知りません。二人を見ていると楽器からではなく体のどこからか音が鳴っているように聞こえるんです。実は私が演奏する時はいつもこの2人を思い浮かべています。「音楽は体の中で作って呼吸のように吐き出すもの」なんだと思わせてくれます。

このCDは、全曲、ダンサーと一緒にライブ・レコーディングしています。聴衆のいるコンサート・ライブ版ではありません。目の前で踊るダンサーと目の前で演奏するミュージシャンが、お互いに影響し合う、いわば本物のダンスミュージック。ダンサーの足音はほどよく入っており決して音楽の邪魔をしていません。欲しい音が良いタイミングでバッチリ入っています。

ミキシング、プロデュースは、自身もニッケルハルパ奏者で日本でライブもしたヨセフィーナです。スタジオでは作り出せない、空気感が楽しめます。ごく少量、本人から買い取りましたので、日本語訳の紙をつけて、イベントやライブなどで販売する予定です。郵送をご希望の方はメールにて。infoあっとfolkishproject.com あっとは、@に変えてください。

オフィシャルトレーラー:オフィシャル動画は宣伝用に撮影されたもので演奏者が踊るシーンもありますが、CDのレコーディングのほうは各曲それぞれダンサーが踊っています。

レコーディング時の様子:3つ目の動画です。カッコいいオフィシャル動画もステキですが、こちらの素朴さが本当に本物っぽくて、ほっこりして、なんて楽しそう!思わず笑顔がこぼれます。

Tradpunkt – Lilla Lasse [Official]

Tradpunkt – O tysta ensamhet [Official]

Tradpunkt - Gubbelubb 楽しすぎる!男性ダンサーの肩の力の抜け具合にほっこり、にっこり、してしまいます!

 

 

 

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ニッケルハルパのPA(音響)

2019-07-16 21:33:01 | ニッケルハルパ

最近、クラシック音楽のコメディにはまっています。掃除機にバイオリンの弓を吸い込んだり、カノンをスキップしながら弾いたり色々あって、ご飯の後にゴロゴロしながらYoutubeで見て、ガハハと笑っています。よく考えると、クラシック音楽を笑いにしてしまうって、文化的な成熟度が違うな~って思います。例えば、これはCD(オーケストラ)をリモコン操作する動画。「早送り」が好きです。

Where is the Remote Control?

さて、最近、屋外イベント、カフェやライブハウスにホールと、色んな環境での演奏が続きました。足を運んでくださった皆様ありがとうございます。

そして、演奏環境がそれぞれ違いが大きく、勉強になりました。少し思ったことを書きたいと思います。

まず、前提として、ニッケルハルパは、共鳴弦のふわっとした音を聞きながらメロディ弦の音圧を加減しながら弾きます。(例えば、大きな音で弾いてさっと力を抜くと共鳴弦の音が立ちますし、小さな音で弾き続けると共鳴弦の音がふわ~っと浮き上がってきて、それを絡み取るように弾きます)ですので、共鳴弦が自分の手元で聞こえない=音圧のさじ加減が分からない、となり不要な力が入ったりします。(そうはいっても、100年前は、バイオリンのようなf字孔もないし力強く弾いていて、共鳴弦の繊細な音を気にするのは最近のスタイルです。)

ちなみに、ニッケルハルパはちょっと練習で弾くだけでもチューナーを使ってきちんとチューニングをするようにスウェーデンでよく言われました。これは共鳴弦がきれいに鳴っている状態で演奏することに意味があるためです。チューニングを適当にサボる方がいたら要注意ですよ~!

ステージ演奏では弦楽器とひとくくりにできないのが、「音量が十分足りていても共鳴弦の音が手元では聞こえない」というケースです。演奏がすごく難しくなります。例えばこういう状況…

1.共演者の弾き方で(ベタっと弾く、常に刻んでいる等)、手元の共鳴弦が聞こえにくい

2.客席側のスピーカーはバッチリなのに、返しのモニター(演奏者の確認用のスピーカー)では共鳴弦が聞こえない場合 ※共鳴弦が聞こえるまで音量をあげるとハウリングすることも。

3.演奏場所の環境(反響がない空間、生音なのに人が多すぎる、等々)

この1-3の解決方法は模索中ですが、今のところ…

1.共演者につられないよう力を抜く。相手の音を下げてもらう。

2.共鳴弦の音はあきらめて、モニターの音量をPAで上げて、リバーブをたっぷりかけてもらう(客席側のことではなく、モニターの返しの自分が聞く音量のこと)

3.環境による場合はそれぞれの対応ですが、10-20名の小さな場所でも響かない空間はあるし、良く響く場所と聞いていても、常にPAの可能性を考えておく。生音で十分響くと言われて実際にそうだったことは残念ながらそんなにないです。そういう時は音が会場全体を柔らかく包み込むような音の場合が多く、音の芯があって手元で共鳴弦が鳴るのが聞こえることとは別のことです。

バンド系のニッケルハルパ奏者はどうしているのか?

正直なところ、スウェーデンでニッケルハルパを使っているグループの演奏は共鳴弦の音はほとんど聞こえません。ライブもCDも同じです。あきらめざるを得ないのか、もしくはサウンドの好みが違うのでは、と思います…。ちなみに、ソロであっても共鳴弦がCDできちんと聞こえる例はなく(再生機器のクオリティにも左右されると思いますが)、それでもレコーディングの音が一番自然で一番美しいのはダニエル・ペテションです。本人に聞いたら他人任せで機械のことは分からないと言っていましたが、彼が共鳴弦の音や余韻を大事にした演奏スタイルなのでレコーディングする側もそこを最大限に引き出そうとするのかもしれませんね。私のCDでも試行錯誤をしており、まだベストな共鳴弦の音では録れません

スウェーデンの伝統音楽の小さなステージのPA

そして、ちょうど先日、スウェーデンで伝統音楽の小さなステージでPAを入れるかどうかを聞かれたのですが、基本的には入れると思います。私の知る範囲ですが、PAを入れていない場合は、教会でするとか、予算や機材の都合が理由に思えます。野外の小屋の前にくんだ小さなステージでも、屋内の小さなライブステージでも、聴衆を意識した演奏の時はPAは入れていることが多いと思います。

なぜか日本では、しっかりお客さんに聞こえるかどうかよりも、多少の無理しても生音のほうが良いような雰囲気を感じるのですが…皆さんはどう思いますか?バイオリンやピアノはクラシックホールで生音で演奏して成り立つから同じように思われるのでしょうか?ニッケルハルパは元々コンサート用の楽器ではなく民俗楽器です。生音で楽しもうとするには条件が厳しいのかなと思います。私なら、ライブは生音かPAかよりも、奏者が心地よく演奏する音を聞きたいです。

ニッケルハルパで使うマイク

以前、ブログでも書きましたが、スウェーデンで聞いて、ライブ用はDPA4061の無指向の低感度モデルを使っています。でも、スウェーデンの奏者も日本の知人もほとんどが、DPA4099の指向性マイクの方を使っています。指向性はハウリング防止のためですが、無指向のほうが共鳴弦の音を自然に拾います。言われるがままに買ったので、なぜ低感度がいいのか自分ではわかっていませんが、マイク取付位置によるノイズ軽減のためでは?と言う方がいました。無指向マイクはブリッジのすぐ後ろにつけますが、指向性4099は上から音を拾うように付けます。※レコーディング用マイクはリボンマイクで、また別の話なので略。

この動画は、バイオリンですが、DPAのマイクの取付位置と型番の参考です。私の使う4061のセッティングは1分過ぎくらいに紹介されています。

How to mic a violin

終わりに

自分の顔を生で見ることが叶わないように(写真や鏡などですよね)、自分の鳴らす楽器の生音が対面する人にどう聞こえているかは永遠の謎です。そもそも音楽、音とは、空気を揺らしてそれが遠くに伝わりますが、この世に存在するのかしないのか物質ではないのでよく分かりません。そんなものを電気信号に変えたり、記録媒体に閉じ込めたりすると思うとちょっと面白いと思いません?

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ポーランド公演の感想

2019-06-25 11:15:05 | ポルスカについて

先日ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャのオープニングを務めました。公演後すぐに書いた下書き記事、2-3日はweb上にあって編集していたのに、なぜかきれいに消えてしまいました!もう一度思い出して書いてみます。

一言でいえば、ヤヌシュの音楽は衝撃的でした。足元すくわれて転んで立ち直れない、そんなインパクトです。

スウェーデンの音楽とポーランドの関係は、ブログでも何度か書いていますが、この記事から始めて読むという方のために簡単にまとめておきますね。ご存知の方は読み飛ばしてください。


スウェーデンの伝統音楽(民俗音楽)のほとんどは「ポルスカ」という3拍子のダンス曲です。「ポルスカ」は「ポーランド風(のダンス)」という意味です。15世紀とも16世紀も言われますが、ヨーロッパで男女が組んで踊るペアダンス(カップルダンスともいう)が大流行します。この流行の前にスウェーデンで踊られていたのはロングダンスなど、歩いて移動する、歩いてすれ違う、中央に歩み出て対面して踊るといった歩くスタイルでした。つまり、ペアで組むダンスはありませんでした。スウェーデン王シギスムンドがポーランドの国王でもあった時代1500年代以降に、このペアダンスがスウェーデンに入ってきたと言われています。「ポーランド風」というのはほぼ「外国風、異国風」という意味合いで使われていたのではと思います。ダンス音楽は最初はフランスなどヨーロッパ諸国から入ってきましたが、農村へと広がるうちにスウェーデン独自の音楽とダンスとして発展していき、現在ではポーランド音楽とはあまり似ていません。


 ヤヌシュ来日前にCDを聞いてすごく良い演奏だなと思ったのですが、メロディを聞いているとどこで呼吸したらいいのか分からない、そんな気持ちになる不思議な音楽でもありました。ですが、目の前でみたコンサートは不思議さは消え、全てが腑に落ちました。リズム、呼吸、メロディ、ダンス、全てがパズルのピースのように完璧に合わさって会場を熱気で包みます。そして、数百年前にタイムスリップして当時の音楽を目撃したかのような。彼らの音楽は、息をのむ、眩暈、何と言えば伝わるのか分かりません。「ああ、見てしまった。信じられない。絶句。」と、立ち尽くすのみです。会場にいた知人は、ゾクっとしたと言いました。

スウェーデンの音楽には、時代や変化を感じるものがあるんです。ヨーロッパから伝わった時代、農村の個性の時代、1900年代に入りコード感が出て。さらには、音大で伝統音楽を学んだ若者の演奏は洗練されてしまい、農村の「味」が消え没個性化していっていると言われるようになりました。それも時が過ぎれば、その時代の特徴となるのでしょう。ヤヌシュやメンバーと話していて、私がどうやってニッケルハルパを学んだのか聞かれるたびに、ポーランドにはそんな学校はない、伝統音楽も、ダンスも、先生もワークショップもない。パーティなどその場でやって覚えるだけで「学ぶ」ものではない、と口々に言うのです。おかしい!と声高に主張するのではなく、「ないよねー」「だよねー」という自然体。ポーランドの複雑な歴史の中で自国の伝統音楽が守られてこなかった。この「守られてこなかった」というより半ば見捨てられた伝統が、時を、変化を、止めたのだと思いました。スウェーデンの音楽は、守られ、復興し、普及させた中で感じる変化があります。200年前の農村のミュージシャンとヤヌシュの演奏は、何も変わらない。それがなんのフィルターも通さない力強い衝撃として伝わってくるのです。申し訳ないけれど、CDではこのインパクトは伝わらない。CDで伝わるのは演奏のすばらしさ、メロディとリズムの面白みや味のある歌声、そこまでです。

SNSで知人が薦めていたので最近読んだのですが、間宮芳夫さんの「現代音楽の冒険」の中でこう書いてありました。作曲することを英語ではcompose、作曲はcomposition。この単語には「構成する」という意味があり、西洋音楽はこれでできている、と。なるほどな、と思います。クラシック音楽は専門外なのでよく分かりません。でも、スウェーデンの伝統音楽が専門という立場で、スウェーデンの伝統音楽を取り入れたクラシック音楽を聴くと、どうしてもその素材を支配したいんだな、という強い意図を感じます。生きた伝統音楽を刺身のようにさばいて配置して、理論の世界に置き支配したい、と。構成する音楽だから、ということかもしれませんが、当然、生きた伝統音楽はそこでは死んでます(違う形で生き返ってゾンビっぽい感じはあります)。同じ西洋の音楽でも、民衆の音楽(民俗音楽、伝統音楽)は、この構成する、支配する、という概念から飛び出した、自由さと可笑しさ、悲しさ、逞しさがあり、そこが魅力だなと思います。

ヨーロッパで流行したペアダンスについて数百年前に書かれた資料では、野蛮、粗野、下級の者の踊り、狂ったような…という数々の低俗だという表現が出てきます。書き記す知識があった層の人の見方、ともいえます。何もそこまで言わなくても…と思いますが、ヤヌシュのコンサートと見るとよく分かりました。フィルターなしの、むき出しの音楽の芯と熱狂的なダンス。宮廷音楽の軽やかなステップとメロディに慣れた知識層には、いかに生々しく感じたことでしょう。

ポーランドの伝統音楽に興味のある方はこのブログでも何度か紹介しましたが、Dance pathという動画をおすすめします。ヤヌシュをはじめポーランドのミュージシャンとスウェーデンのミュージシャンの交流のドキュメンタリーです。その中でヤヌシュはギプスをした手に弓をもって、フィドルを弾いているんです。本人に、あれは何で?と聞くと、「前の週に娘とスキーに行って骨折してねー」って。えー!?腕を骨折して弾けんの!?って言ったら、「ぜんぜん問題ないよ。その翌週にはスキーで肩も外れちゃった」と笑顔で言っていました。さわやかなツワモノですね。そのブルーの瞳はどこまでも優しく、家族に音楽に日々の生活に注がれているのでしょう。


さて、感想はここまで。ちょっと雑談です。演奏が続いて疲れるとそのたびに副鼻腔炎(蓄膿症)になり頭も鼻も首も痛くて重くて、年に何度も抗生剤を飲んでいました。以前、知り合いが漢方をくれたのをふと思い出して飲んだら抗生剤飲まずに痛みが引いたんです。病は気からというし、気のせいか?とも思いましたが、気力で治るならそれも効果と思い買ってみて、何度も助けられました。同じものはネットでは買えず、amazonで。板藍根茶100%という数百円のものです。効果は人によりますし激マズですが、興味のある方は試してみては。

次回の演奏は、7月の名古屋、宗次ホールと、7/20大阪淀屋橋にあるケイットルオカラのランチコンサートです。ルオカラではスウェーデンのダンスも♪

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楽器の練習は何を、どのくらいしていますか?

2019-06-05 13:49:07 | ニッケルハルパ

先日は、梅田阪急の北欧フェアありがとうございました!デュオで2ステージ、トリオで3ステージ、弾いている本人も楽しかったです!野間さんが書いたアレンジは新鮮で、そして慣れないことに苦しみ、またフィドルのE線を2~3セント低くしようかとか、色んなことが、うわーってなりましたが、わーっと楽しかったです。ご年配の方が「元気がでた」とおっしゃっていたようで、それがたまらなくうれしかったです。今年はフィンランドがテーマで、カレリアのダンスはロシアよりだそうで、初めてみる雰囲気でした。来年もまたここで皆さんと集合できたらいいな…。 次は、6/15、16、博多阪急の北欧フェア、ソロライブです。博多阪急のお知らせやチラシではライブの掲載はありませんが、8階ユトリエ特設ステージにて。土日、各2ステージ13時、16時半~、予定しています。(リース作りなどワークショップも充実!)福岡でライブを1度したことがあって、イベントで声掛けいただいたのは初。福岡出身なので嬉しいです。福岡に北欧好きが増えますように~☆


「楽器の練習はどのくらいしていますか?」「どんな練習をしていますか?」

おそらくニッケルハルパ関係で一番受ける質問かな、と思います。

元々、ピアノが最初の楽器で、いわゆるイケてない練習がしみついていました。

間違えるのは練習が足りないから、下手なのは練習が足りないから、リズムが走ったのは日ごろの練習不足…呪文のように刷り込まれていたと思います。

今振り返ると典型的な悪い見本のようですね。ただ、基礎練自体は嫌いではなかったんです。編み物に似てるかも。段々、無意識になり、粒がそろってぴしゃっとしてくると、あ~スッキリ!みたいな。まあ、でも、頻繁に手や指を痛めて、痛めては「私ってよく練習してる~」と得意げになるおバカでした。でも、「痛めるほど練習しても間違える=下手」という思考回路なので、自己満足の一つもありません。

ケルトや北欧の伝統音楽を好きになる頃はフィドルを弾いていて、いわゆる基礎練は一度もしたことがありません

ただ、ひたすら、曲が好きで弾きたくて仕方なくて弾いていました。好きな曲をCDをかけて聞くか、自分が弾くことで聞くか、みたいな感覚です。平日帰宅しご飯とお風呂の時間以外は弾いてるような感じです。休日で家にいると一日中。(そんな乱暴な弾き方なので、手指の震え、首の痛み、整形外科で電気治療、痛み止めや、体の緊張をほぐす薬など飲むことになり、フィドルは一旦やめました)

スウェーデンにはちょくちょく習いに行っていましたが、専門の学校に留学したことで、自分の体に向き合う意味、練習の本質を、しっかり思い知ることになります。

これだけ体を酷使して、留学したら生きて帰れるか!?(大げさですけど)くらい思っていたのですが、スウェーデンでそんなことにはなりませんでした。そもそも考え方が違うんですね。

●練習前と練習後には必ず、入念に体の部位ごと時間をかけて運動をする(ストレッチなど)。体の部位と動きとその意味を知る。日常生活で、ウォーキング、水泳など体を毎日動かす。

●体を痛めたら弾かない。「2週間痛めたら2週間弾かないのか?」という話をしていた時、同じ学生(それも私よりもっと若い)から、「そういう時は何週間かかっても弾かない。体を痛めたまま弾いて結果楽器が弾けなくなったらどうするの」と笑顔で言われ、その場にいた全員がうなずいて…、そして怪訝な目で私をみつめました。体と楽器の付き合い方の価値観が身についているんですね。

●授業では、基礎練は5-15分以内にと言われます。脳が集中できるのは5分。その5分で決めろ!ということです。そして、練習後にfika(コーヒーブレイク)を取る。脳には休息を与える必要があると。先生が変わってもいつも話は「体の使い方」「脳の使い方」になり、「基礎練=脳トレ」かのようです。そして、去年、来日したダニエルが「”間違えることは悪いことではない”と脳に刷り込ませないといけない」と言っていました。スウェーデンの学校でここまではっきり言われていませんが、前提としてその考え方があるというのは肌で感じました。「間違える=悪いこと」となると結局、悪い演奏に結びつくので、その回路を断ち切らないといけないのです。

スウェーデンから帰って以降、私の練習はこんな感じです。

かなり自己流で、非効率的ですが‥。

1.指の基礎練、ボーイングの基礎練は言われたセットを2-3回するのみ(10分程度)。それも最初の1-2年は続けていましたが今はしていません。指の練習は、鍵盤に不慣れな初心者向きだと思います。※中級以上で、指の基礎練をしたい場合、Hardrevet、Byggnanなどの曲を美しく正確に弾く練習をおすすめします。ボーイングは3つ目に書いていますが曲の中でやります。

2.演奏前と後は、つま先から全身をほぐす(よくサボります…)。歩く選択肢がある時は必ず歩く(階段かエレベーターか、とか)。特にニッケルハルパは持久力が必要で、5階まで階段を上がるくらい平気というのが理想です。(今のとこクリア!)前から悪かった首、肩、腰は悪化はせず、改善もないけど大きな故障もありません。それと、演奏は、力を入れることは簡単ですが、抜くことは難しく、ここは普段の体づくりが影響するんだろうなって思います。

3.曲の練習はイメージに重点を置いていて、時間は決めていません。流れるように弾くフレーズでは、左の指は柔らかくボーイングを安定させ、早いフレーズではエッジをきかせ、ウップランドのスコップで掘ったようなアクセントはどう楽器を振動さるか‥。結局、イメージ通りに曲を弾こうとすることが基礎練につながるのかなと思います。

例えば、去年来日したダニエルに東京で習った曲

 Polonäs och Kadrilj

Aメロの終わり、ラドラファソー と弾いています。私は、この静かでハッキリした滑舌の良い音が出せずに、ううーーーーー!と一人、虎のように怒っていました。(東京の優しい皆さんは見て見ぬふりをしてくれました)私のイメージでは、ここは毛筆ではなくHBの硬筆のような硬さと透明感のある音なのです。でもいくら弾いても、2Bの削ってない鉛筆みたいな透け感の音になるんです。こういう時は、考えても理由は分からないのでイメージに近づくまで弾きます。パーツの切り出しはしません。全体の流れを重視します。(まだ出来ません、くやしい!)

それで、3の練習がメインと書きましたが、何もなければ練習しません。というか、日常に追われていると、そういうことも月単位でありました。最近は、ありがたいことに、リハや伴奏や本番や何か弾く機会があるので、それに向けて上記3の練習をします。イメージをつかむまで時間が許す限り練習します。

例えば、いつも同じように準備できる訳ではないのですが、フルライブ(14曲)の準備の一例を。午前中に1-2時間コーヒー飲みながら、午後も1-2時間、夜も(目標日をカウントして必要であれば)1-2時間弾きます。1-2時間は2-3時間になることもあります。イメージ重視で練習しているうち、連想ゲームになって全然違う曲を練習し始めることもよくあります…(勤めに出て帰宅して乳幼児を寝せていた頃は、平日22時から1時くらいまで弾いていました)

フルライブだと、最低でもこの10日分は、イメージの固定に必要かも。他の用事や演奏があったり休息も入れたいので、良い演奏に近づくのは3週間~です。選曲とアレンジの打ち合わせが終わって、さあ練習~という意味なので、全体では2か月は必要です。選曲の順番による気持ちの変化と、呼吸を確認したいので何度か順番通りに通して確認します。でも、イメージ練習法は、やりすぎると鮮度が落ちるという激しい副作用があります。※相手もあることなので準備についてはそれぞれで異なります。それに、どれだけ準備しても当日の出来はその時の状況に左右されるんですよね…へったくそな時はごめんなさい。

一度イメージできた曲は次からは楽では?と思うかもしれませんが、相手や楽器が変わる、相手が同じでも雰囲気が前と違う、他の人と弾いたせいでイメージが変わった等いろんな理由で、また一からイメージ作りをすることはよくあります。

例えば、Kristian Oskarssonのワルツ、ギターと弾いていた時はロック風でした。その後、別の人とフィドルと弾くようになると頭重たくべったりと、ハープと弾くと軽やかに伸びやかに。今はここ(ハープ)です。なので、フィドルであのワルツを弾こうと急に言われても、イメージを巻き戻せなくて、ごめんねー、となります。イメージなんか違ってても弾くくらい良いんですけど、前と弾き方変えた?なんか違くない?と相手を巻き込んで混乱させてしまうので。

私の場合の練習方法を紹介しましたが、かなり不器用で非効率的な自覚はあります(笑)良い自分に合う方法があれば変えていくつもりです。もし、参考になるところがあれば試してみてくださいね。

この記事で書いた練習のまとめ

基礎練(運指やボーイングに特化した練習)は5分ー10分以内に。もっと必要だと思う場合は、30分以上あいた休息をはさんで複数回する。

基礎練は中級以上になると曲を練習する中でやる。練習では、お手本やイメージを大事に隅々を表現する(それが基礎練につながるという考え方)

たくさん弾く時は、体を動かす、休める、を意識して。痛めた(炎症)ときは弾かない


 

6/13 ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ 神戸公演 オープニング

6/15、16(土)(日) 13時、16時半~ 各2ステージ、博多阪急、北欧フェアでニッケルハルパ・ソロライブ 他にもワークショップなど盛りだくさん!

6/23 スウェーデンハウス パーティにてハープと。

7月中旬、名古屋の宗次ホールで、野間さん、りりかさん、鈴木潤さん、私で北欧ライブ。

7/20(土) 大阪・淀屋橋の、ケイット・ルオカラ 特別ランチと、奈未さんのハープとデュオライブ、ひろみさんのダンスも一緒に♪

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ポルスカの歴史、その2

2019-03-22 00:17:18 | ポルスカについて

先日、電話がかかってきました。最近、電話がかかるというと実家からか勧誘くらいしかなく、不愛想に「もしもし」と出ると違っていて焦りました。「ポーランドと、スウェーデンのポルスカってどういう関係だっけ?」と難しいことを聞いてくるではないですか。頭を洗濯機みたいにぐるんぐるん回しても気の利いた一言も浮かばず、「関係ないんじゃないですか」という、この人に電話して時間の無駄だったみたいなことしか言えませんでした。

スウェーデンのポルスカは、カップルダンスがヨーロッパのある時期に流行して、ポーランドを通じてスウェーデンに入ってきたことからポーランド風(ポルスカ)と呼ばれるようになりました。流行が到達した後、どんな音楽でどんな風に踊るか、スウェーデン独自に発展していきました。また、経験上、メロディラインなどは特にポーランドよりもフランスの影響を受けているように思えて、ポルスカとポーランドは名前だけで音楽的な関係は薄いのではと思っていました。

でも、電話を切った後モヤモヤしてきます。だって、ポルスカって、スウェーデンの伝統音楽の中核であり、名前はまさにポルスカ(ポーランド風)。関係ないはずがない。ポロネーズという、ヨーロッパ中に与えた影響を考えても「さあ?カンケ―あったけ?」で済ませられる話ではありません。

ところで、なぜそんな電話がかかってきたかというと、6月にヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ Janusz Prusinowski Kompaniaというポーランドのミュージシャンの来日コンサートがあり、その企画関係の方から聞かれたのでした。ポーランドと言えば、ショパンやマズルカが有名で、ダンスもきらびやかなものが多くあります。ですが、ダンスで言えば見せるために創作された部分の多いショーであり、マズルカもクラシックを通して再現されたリズムやモチーフであったり、本来の農村で受け継がれた民俗音楽は?というとすごく土臭い独特な個性がある音楽です。

以前50分ほどのドキュメンタリー動画をこのブログで紹介しました。(スウェーデンとポーランドのミュージシャンの交流を描いたドキュメンタリー。すごく面白いです!)

Polska - Dance Paths

かつての社会主義国で民俗音楽を弾いてはいけない風潮があり、民俗音楽の指導者や学校がスウェーデンのようにある訳でもなく、伝統音楽の保存や普及活動はされてきませんでした。ですが、今回聞いた話では、ヤヌシュが中心となり、ほぼ眠っている状態の民俗音楽を掘り起こし、ポーランド中でリバイバルブームとなっているそうです。

それにしても、フランスのポロネーズにしても、ノルウェーのポルスにしても、ポーランドと名前がつく音楽(ダンス)がこんなにもヨーロッパ中にあって、ポーランドの音楽それ自体との関係は本当はあるのかないのか、すごく気になってきました。そして、電話を切ってから、ふと、まだ読んでいない本があることを思い出しました。

The Polish Dance in Scandinavian and Poland(Svenskt visarkivet) CD付き(英語)

これは2001年にスウェーデン主導で、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ポーランドの研究者を集めて、北欧諸国で400年の歴史がある民俗音楽の会議を初めて開催した時の論文をまとめたものです。

目次を読むと、ポーランド人による「ポルスカ」の歴史、デンマークのポルスカがなぜ消えたのか、メロディの変遷(時代と場所が変わっていく中で同じ曲がどう変わったか)、ノルウェーのスプリンガルや、フィンランドのポルスカについてなど、それぞれその国の研究者が書いたものがズラリ。本は収集だけじゃなく、ちゃんと読まないといけませんね~。読んでないどころか、持っていることさえ忘れてました。早速読んでみましたが、残念ながなら、知識が深まったところもありますが、結局、謎は謎のままミステリーなんだなと再認識したのでした。地球上で起きるあらゆることは、調べたら何でも分かるものではありませんが、歴史も同じ。過去に起きたことは調べたら分かると思ってしまいますが、有名人でもない人が移動や交流を繰り返し、口伝により、証拠や手がかりも乏しいとなると、わずかな手がかりから推論に推論を重ね幾通りもの仮説ができるのみです。

抜粋でも翻訳でもないのですが…自分なりに雑にまとめた内容を書きます。文献や注釈も沢山掲載があり興味深いので本をぜひ読んでください。

ポーランドのダンス、Polish Danceという言葉(概念)が記録上、登場しはじめたのはいつなのか。

<記録上、一番古いポーランドのダンス曲>

1540年に書かれたオルガンの本に、ポーランドに触れていないものの、マズルカという名称もないものの、マズルカの典型的なリズム(タタタンタン)が使われているそうです。マズルカの元となるリズムはこの頃作られたと考えられています。1554年にはチェコの兄弟が書いたsongbookに今でいう典型的なマズルカのパターンが書かれているそうです。この点については、マズルカの原型がチェコ起源であったとしてもポーランドにそれを複雑に発展させていく土壌があったという推論が書かれていました(マズルカと一言でいっても、オベレック、クヤヴィアックなど数種類のダンスや音楽があります)。また、ポーランド語のアクセントと、マズルカのリズムが似ており、深く根付いていったのは自然なことという説も紹介されています。

16-17世紀に残されたマズルカのリズムを持った曲のほとんどはポーランド以外の外国で書かれたもので、オルガンやリュートの楽譜に「ポーランドのダンス」という記載が見られるそうです。同じ時代にポーランド国内では「ポーランドのダンス」と書かれたものはないそうです。自分たちの曲というのは特別な意識はなく、外国人の目を通して初めて個性的で異国風だと認識されるのではないかと書いてあり、妙に納得してしまいました。

構成3拍子のポロネーズとマズルカ

最初は2拍子だったものが、すぐに前半が2拍子で後半が3拍子という二部構成のダンス曲になったそうです。このスタイルが広まってからは、前半ではゆっくりとした曲、後半は早くて飛び跳ねる曲(ダンス)という表現が残されているそうです。今も国や地域によっては、2拍子のポロネーズがあります。当時は、先に触れた二部構成、polonaise(2または4拍子)+ propotio(3拍子)、オプションで + serra(3拍子)が加わりました。また、昔は上流階級で踊られ、ブルジョワ、農民、と徐々に広まっていった経緯は、国が違っても同じ状況のようで、特に後半の速い曲(3拍子のproportioのこと)は身分の低い者が踊ると書かれているものがいくつも見つかっており。3拍子のダンス曲が一般民衆に広がっていく状況が推測されます。

17世紀の終わりには、前半の2拍子のパートが消えていきます。後半の3拍子のパートが残りフランスでポロネーズとして流行するにつれ、後半パートが独立したダンス音楽となっていきます。1640年以降、プロシア、ハンガリー、チェコ、スウェーデンで、"polish proportio"という表記の音楽が見られるそうです。そして、肝心のマズルカですが、基本のリズムやポーランドのダンスという概念があったとしても、この名称が登場するのはそれから1世紀も後(1800年代)のことなのだそうです。

デンマークには3拍子の曲がない!?

有名なRasmus Stormの楽譜集(1760年)など18世紀のデンマークで3拍子の曲は見られるものの、18世紀前半には既に廃れていたのではと書かれていました。デンマークでは、Fanøといった一部の地域を除き3拍子の曲は残っていません。仮説として書かれていましたが、後半の3拍子のパートよりも、前半の2拍子のパートだけが生き残ったのではないかと書かれています。(Fanøの話などは読み飛ばしました、興味のある方、すみません…)

ノルウェー

おそらくスウェーデンより後に、このポーランド風というヨーロッパ中で人気がでたダンス音楽の流行が到達したらしいです。デンマークと違って、スウェーデンとノルウェーでは、豊かなバリエーションが産まれ独特の音楽/ダンスを形成していきました。ノルウェーのスプリンガルでは2または3小節のモチーフがバリエーションを変えながら繰り返していく曲が多く、ポルスはスウェーデンのポルスカのように2-4小節のモチーフで8小節まとまりという割と固定された構成の曲が多いのだとか。2種類のリズムが交わるRorosのことや地域の話など詳細が書かれていたので、ノルウェーの曲に詳しくないと内容を多面的に捉えられない気がしました。ただ、ポロネーズの特徴はノルウェーでは1800年頃には消えていき、今あるノルウェーの民俗音楽に当時の特徴や痕跡はほとんど見られないと書かれており、強い独自性を感じます。

スウェーデン

スウェーデンで一番古いポーランドのダンス曲という記載は、1595年ストックホルムのドイツ教会に残されている4つの曲だそうです。(ちなみに、1500年代終わり頃、スウェーデン・ヴァ―サ家の出身の王がポーランドとスウェーデンの両国を治めていました)スウェーデンは、このポーランド風の曲をスカンジナビアに広めた中心地です。また、この4つの曲のことではありませんがスウェーデンの古い曲には、ゆっくりした3拍子のヨーロッパ風ポロネーズ、早くて勢いのあるポーランドのマズルカ、どちらの影響を受けた両方のダンス曲あるそうです。1600年代後半、スウェーデンでは、2拍子のポロネーズは上流階級に、3拍子は農民のダンスと分かれて行ったようです。現在、2拍子のポロネーズは、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンでは南部で見られます。(とはいえ、スウェーデンのポロネーズは一般的に3拍子です。)

以前、ポルスカの講義を受けたこともあるマグヌス・グスタフソンの論文では、ダーラナのHjort Andersの有名曲が(私は知らない曲)、さかのぼるとヘルシングランド地方の1800年代の曲を弾いたものだそうで(その曲も私は知りません)、さらに辿ると、私もよく知る1700年代後半のアンドレアス・ダールグレンの曲で(これは知っている曲!)、ここまで比較されると確かに楽譜を見比べて、Hjort Andersと100年以上の時を隔ててダールグレンの曲が同じ曲だと分かります。さらに辿ると、なんとヨーロッパから輸入されていたようなのです(デンマークの1760年のRasmus Stormに記載されていた曲)。つまり、バリエーション豊かに変化しつつも100年、200年たっても原曲は大きな差がなく(途中のメロディの変化にはとまどいましたが原曲とされる曲と最近の曲は非常に似ています)、時の推移や土地の移動、口伝などの条件であっても原曲は割と正確に伝わるということですね。楽譜に記載されている曲というのは後の研究者が発見したもので、村の奏者が目にするものではありません。他の論文では、各地の曲のパターンを数値化しグラフでどのくらい似ているか比較した論文もありました。これによればスウェーデンの曲は、いわゆるヨーロッパのポロネーズと似ており、ポーランドのマズルカとは似ていないとのことでした。(ただし、忘れてならないのがスウェーデンの古い曲にはマズルカに似た曲があるという事実です。上品でメロディアスなポルスカやポロネーズ以外に、農村の奥地に中東、中欧のような不思議な旋律の曲が残っており、私も以前からこの2タイプの曲があるなと思っていました)

フィンランド

フィンランドも、ノルウェー同様に初めて知る話が多く、まとめるのは躊躇します。ですが、フィンランド人の論文では、17世紀にドイツでポーランドのダンスが人気出ると同時にスカンジナビアにドイツから流行が到達したが、ドイツで流行したポロネーズとスウェーデンのポルスカが関係するかどうはあやしいという説、ポーランドの音楽との関連性すらあやしいが、南スウェーデンの音楽、フィンランドのポルスカ、東ヨーロッパの音楽には関連が強くみられるといった説など書かれています。また、フィンランドは以前スウェーデンだった地域があり(今でもスウェーデン語圏があり、ムーミンがフィンランドでスウェーデン語で書かれたのも有名ですね)、その違いや地域についても詳しく書かれていました。結婚式のダンス曲としての伝統がある、2拍子のポルスカ(ポルスカは、もやは異国風という意味しかなく特定のダンスを指していないとか)の話や、1700年代にロシア占領下、3万人のフィンランド人がスウェーデンに移民としてわたり、文化的な交流が進んだことにも触れていました。

-本を読み終えて-

結論と呼べるのか分かりませんが、私が経験上感じた、古いスウェーデンの曲はフランスの影響を感じるといった点も間違いではなさそうです。この本でも触れているのは、スウェーデンのポルスカは、東欧やポーランドに似たものもあり、ヨーロッパの上流階級を通して入ってきたポロネーズの影響もある、ということです。ですが、やはりノルウェーがより特徴的ですが、流行が川の流れのように隅々に広がっていき狭く閉鎖された土地では流れは一旦とまり、その土地に浸み込み独自のものを醸成していくという印象がぬぐえません。スウェーデンはヨーロッパの片隅の田舎の国で行き止まりではありますが、古くから北欧の中心地でもありそこから小さな枝葉を伸ばし、混ぜこぜになった輸入ものの痕跡と独自の農民音楽とがバランスよく育っていったのではないかと思いました。

ここで宣伝なんて、嫌らしい‥と思わせたらごめんなさい。

結局、電話の後、こうした会話を繰り返すうち、ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ Janusz Prusinowski Kompaniaの来日公演のオープニングをつとめることになりました(神戸公演のみ)。youtubeの演奏を聞くと、ポーランドの民俗音楽は、wildで生き生きとして、そして計算されていない複雑さや面白みを感じました。オープニングは、私と野間さんとのデュオで、軽くお話と2-3曲?程度の演奏です。ポーランドの生きた民俗音楽が、こうした北欧諸国のようにもっともっと掘り返され、議論され、弾いて踊って(創作のショーでなく)、広く伝えられることを願って。また、ポーランドの当時の大きな影響の結果(スウェーデンのポルスカ)をただ楽しんでいただけたらいいなと思います。

また、フィンランドの音楽は全く無知なのですが、フィンランドのスウェーデン語圏のポルスカは知った曲もあり、今年の阪急フェアのテーマがフィンランドなのでそうした曲も交える予定です。

そして、最後になりますが、明日から海外の親せき宅へ行くのでコメントをいただいてもすぐにお返事できません。誤りなど、ご指摘くださった方がいたらすみません。(その前夜の0時過ぎに、準備もせずブログを書いてる私って…


お知らせ(詳細情報、リンクが不足していますが、後から上書きで足していきます)

4/20(土) Spel och dans 東淀川スポーツセンター 1年以上ぶり?曲を覚えて弾いて、その曲で踊ってみるワークショップ。曲は私担当、ダンス指導はベテランのひろみさんです。参加費1500円にしていましたが、参加者が少なく部屋代もかかるので一旦2000円に戻しました。

4/27(土) ケイット・ルオカラ 淀屋橋の小さな北欧という感じの、スープ食堂で、ハープの奈未さんとイースターや春をテーマにしたランチコンサートです。

5/25(土)北欧の森音楽会(松阪)過去3回演奏させていただきました!今年4回目は、Lirica&michikoでミニライブです!

5/31-6/2 梅田、阪急百貨店で1週間の北欧フェア。今年はフィンランドがテーマでフィンランド曲を交えます!北欧の大御所、大森ヒデノリさん&セッションの仲間たち、hatao&namiやシャナヒー&アンニコルなど北欧の世界たっぷりに。私の出演は、5/31、6/2です。

6/1(土) トリオのタイムブルーでのライブは、都合によりキャンセル(延期)となりました。予定してくださった皆様申し訳ありません!

6/13 ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ神戸公演、オープニングアクト

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