スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ポルスカ、曲名のミステリー

2016-08-18 23:19:04 | ポルスカについて

今日のお題、慣れている人にはミステリアスではないのですが。

ところで、最近、深海の奥深くにひそんでいたのに、こんなに出てきていいのか?とソワソワしています。ありがたいことです。でも、「最近一体どうしたの!?」と聞く人もいるくらい。でも、出てきたからには、楽しみます!来年の今頃はまた潜っていることでしょう・・・ブクブク.。o○


お知らせ

  • 8/27(土) 「北欧の音楽祭」に向け、練習会(三田、郷の音ホール)※北欧の曲を弾くのが初めての方向け。そとフェス楽しみましょう!!
  • 9/3(土) ハーディングダモーレの野間さんとデュオ・ライブです。茨木のDBarにて、19時~、2500円+ドリンク別。以前ならドレークスキップ、五弦ヴィオラの野間さんです!と紹介したでしょう。Malungで腰を落ち着けて学んだディープな北欧の音色にソロ活動も注目です!そんな方と一緒にできて光栄ですハーディングダモーレの音色はフィドルとも違う、ハーディングフェーレとも違う、不思議に空気に溶けていく音でした。ガット弦を使っているそうで、その柔らかさも感じます。野間さんは南部よりもダーラナの曲が好きなのだそう。リハではお互いの共通曲を探し・・・これ知ってる?合戦。面白かったです☆要予約:nyckelharpa@folkishproject.comまで。そしてリハ中、なんでか南部の曲を教えてもらいました(ライブの曲とは関係なく) 聞いたことあるなーと思ったら有名な曲のようです。Pigopolskan efter Pehr Hörberg
  • 9/17(土) 枚方ワールドミュージックフェス 様々なアーティストライブが目白押しです。私は、投げ銭ライブ10分&スウェーデンのお話し50分です。投げ銭のほうは、その後にするお話しの宣伝を兼ねているので短いソロ演奏の予定です。お話しは、スウェーデンのこと、伝統音楽、ニッケルハルパの歴史、制作の様子など!
  • 9/21(水) 演奏&ダンスワークショップ 「弾いて、そして踊る」第2回です。スウェーデンの伝統音楽を、「聞く、弾く、踊る」。それぞれに楽しみがありますが、どれもが一部であり、全てではない。切り離せない一つのことを一つのワークショップにしました。ダンス初心者でも大丈夫です。三田の北欧の音楽祭、アルスペル曲からもやります。場所は、都島スポーツセンター(最寄りは、JR桜ノ宮駅 or 地下鉄谷町線、都島駅)18時~演奏、19時~ダンス、20時~演奏&ダンス nyckelharpa@folkishproject.comまで。 
  • 10/2(日) 北欧の音楽祭 三田市、郷の音ホール。中のライブイベント、外の参加イベント、ワークショップやマーケットも。私は主に外フェスをうろついています!

最近、北欧の音楽祭に向けて、少しだけお手伝いさせてもらっています。その関係で以前、ニッケルハルパのJosefinaの動画セリフを訳したのですが、意外に難しかった!翻訳って経験はありますが、仕様書、契約書、報告書、資料、過去の判例…など、楽しめる読み物ではない文書を訳す実務翻訳がほとんどなのです。だから、セリフの翻訳は実は初めて。えーっと、何語に訳そう最初からキーボードの指が止まってしまいました。

私は筑豊弁と博多弁が混ざった言葉を話します(最近はアクセントが関西風と言われます。だって関西に住んで10年以上)。だから関東の話し言葉は分からないのです。「~じゃん」は横浜と言うけどホントかどうか知らないし、「~だわ」って妙じゃないか東京の従妹に聞いてみようと一瞬思ったけどやめました。そんなことしてたら「なんか、言い回しも文法も変です!アナタ、ニホンジン、ウソ!」なんて言われそう!

そこで、ふと思ったんです。海外セレブ記事で使われる日本語。「私、ハッピーだわ」みたいな言い回し、よくみかけますが、20代のイマドキの女性の言葉として不自然に思えるのです。そしたら、やっぱり。その不自然な違和感は正解でした。「~だわ」「~かしら」など翻訳で使われる女言葉は明治時代の女学生の言葉なんだそうです。この女言葉は翻訳の世界で生き続けているという話なのですが(中村桃子さんによる記事)、私からすれば、翻訳者なんて自宅でPCに向かう人がほとんどで、地方在住者が私みたいにリアル東京弁が分からないから無難にドラマ風言葉をあてるっていう例もあるんじゃないでしょうか。

ちなみに、役割語(金水敏さんによる説明)というのもあって、博士語「わしは~じゃ。そんなもんは知らん。」という上方風の言葉、忍者の「拙者は~でござる。」、そして、田舎者には疑似東北弁をあてるのだとか(西日本の方言ではなく)。

これと似た話で、スウェーデンの小説で田舎者が登場すると、ノルウェー風の訛りをしゃべらせることがあると書いてある本を見ました。言葉って生きてるだけに奥深い。

さて、やっと本題!スウェーデンの曲の名前の話

ここ最近「スウェーデンの曲、名前が覚えられなーい!」とか、「efter~ (誰々にちなんだ)って、自分が弾いて教えたら、efter(自分)になるってこと?」と聞かれることがチラホラ。聞かれて、考えてしまいました。そんな視点で見たことがなくて。スウェーデンでも曲名のことで話題になったことがなく、同じ言語、文化的に当たり前と思っている背景を共有しているからじゃないでしょうか。そこで日本人から見た、曲名のこと、私の経験上のまとめ程度ですが、順を追って書いてみます。

  • 曲名の基本1 「曲の種類、その曲を伝えた人、地名」

「Polska efter Viksta Lasse, Vendel, Uppland」とあれば、「ウップランド地方、ヴェンデルの、ヴィクスタラッセが伝えたポルスカ」で、これが曲名です。同じ人の曲だと、同じタイトルが続きます。人名のミステリー、という話題もありますがやめておきます(Viksta LasseのVikstaは地名とか、OlleとOlofは別人じゃないよ、とか。)

  • 曲名の基本2 efter~は、1「誰のバージョンかを示す」または、2「教えてくれた人を表す」

1.efter~は「誰々にちなんだ」と訳せます。「その人が作った曲」、「その人が地元の曲を弾いていた」、どちらもありえますが、つまりその人が弾いていたバージョンです。同じ曲で、efter~の後に色んな人がいる時は、それぞれの人によるバージョン違いということです。じゃあ、誰でも弾いたら、efterの後にその人の名前をつけられるのか?という問いには、もちろんNo!です。その時代、その土地で有名とか、または最近話題のミュージシャンとかであれば、その人のバージョンだと言われます。口伝による音楽では、多数の人が認めて初めて定着するものだと思います。

2.言葉通りの使い方で、「誰々に教わった」という時にもefter~と言いますがこの時は曲名でないことに注意です(私は曲名ではないと思っています)。見てなんとなく分かります。efterの後が、古い奏者ではなく、活躍中の人の名前だったりするからです。「あの時のワークショップで習ったあの曲」という仲間内で回す楽譜で補足として使うことが多く、雰囲気でも察知できます。

  • 曲名の基本3 やっぱり似てる!番号!1、2、3!

やっぱり曲名が同じだと紛らわしいのです。なので、nr.1、nr.2、と番号をふっていきます。でも、これも口伝音楽なので・・・人によって何番がどの曲とか違ってたりします。仕方ないか。a-moll、d-mollと、曲名にkey(調)まで加えて識別することも多々。

  • 曲名の基本4 曲も似てるでしょ!

メロディがそっくりだと、姉妹、syster-(システル)とつけることも。systerpolska nr1、systerpolska nr2。ちょっとカッコいい感じのvariantもあります。「○○ポルスカ、ヴァリアント」と書いてあると、「○○ポルスカのバージョン違い」という意味です。

  • 曲名の基本5 そりゃ、歌だわ!

Randig kjortel(ストライプのスカート)とか、意味のある曲名の時は、歌(歌詞がある曲)が元になっていることが多いです。多いというだけで必ずではありません。(歌の場合は、歌詞から曲名をつけるのが普通) それと、誰かが作ったオリジナル曲もタイトルをつけますね。

  • 曲名の基本6 そんなの意味ないし!

曲名があると歌の確率が高いと言いましたが、実は、大した意味がない曲名も多いです。口伝だから人の言うことって所詮・・・ですね!

例えば、「Julafton valsクリスマスイブのワルツ」クリスマスに弾いたらいい感じ?いいえ、関係ないのです。エリック・サルストレムが、クリスマスイブに(日本でいうなら家族だけで大晦日や元旦を過ごしている時に)電話がかかってきて「あのワルツなんだっけ?ほら、ラーララ♪っていうアレ。」こんな時にそんな電話するか?!ということで、クリスマスイブのワルツと呼ぶようになったんだそうです。これは、元はエリックのお父さんの名前をつけたVals efter Anders Sahlströmと呼ばれていた曲です。他にも、アニメの出だしに似ているからとアニメのタイトルをくっつけたとか、なぜそう呼ばれるのかさえ分からないというものもあります。じゃあ、Storpolska(storは、大きいという意味)も意味がないの?と思う方、残念でした。このstor-がつくときは、言葉通り、でっかいのです。通常、Aメロ、Bメロの構成が、Cメロまである(またはそれ以上)のポルスカのことを指します。

  • 曲名の基本7 意外に大事なav

av~(人の名前)この時は、英語でいうby~です。その人が作った曲です。このavを軽く見ていると、ややこしいことになりかねません。

例えば、Julottan av Mats Wallman、「マッツ・ヴァルマンが作ったユーロッタン」という有名なクリスマスのポルスカがありますが、これがなぜかダーラナ地方の伝統曲として一部広まっているようなのです。Matsは現役で活躍するフォークミュージシャンなので、かわいそう・・・(本人はどうでも良いと思ってるかもしれないけど)。avは、きちんと注目したい箇所です。

  • 曲名の基本8 番号は謎の手がかり

曲名に番号がある時は、Byss-Calleビスカレの有名な#25、#32であれば、Byss-calleの52曲ある譜面集の番号だったり、Einar Övergaadが書き記した譜面集の番号だったりします。ちなみに、曲名ではありませんが、SvLはSvenska låtarという地方ごとに編纂された楽譜集のことで、Einar ÖvergaadならEÖと略され、CDやネットで拾った譜面に補足があることも。この楽譜集は、奏者の生い立ちとその人の曲(楽譜)の両方が掲載されています。

  • 曲名の基本のまとめ やっぱりややこしい?

じゃあ、どうやって曲名が覚えられるのか、と聞かれれば、やっぱり色んな地方をランダムにいいとこどりすると覚えにくいものです。一つの地方、一つの楽器に絞って音源を聞くと、繰り返し同じ名前が出てくるので覚えられるのです。その人をネットで調べてみましょう。その地方を代表する人だと分かるはずです。そして似た名前があれば、その人のお父さんだったり、誰と誰は演奏仲間とか、それを少しずつ広げていきます。

  • まとめのまとめ スウェーデンって合理的

スウェーデンはとても合理的な考え方をする国だという印象があります。観光本など眺めても、社名や店名でイメージ優先のネーミングよりも、地名や人の名前をシンプルに使うことが多いです。デュオやグループ名も(名づけることもありますが)、本人の名前だけというケースが多いなと感じます。曲名に関しても、隣のノルウェーはきちんと曲に名前がついたものが多く(個人の印象ですが)、比べれば、スウェーデンは曲の由来や資料情報がそのままタイトルになることが多いと思うのです。時々、よく曲のこと知っているね!と言われますが、単に曲名から調べて分かった、というのは案外多いんですよ!

追伸:スヴェン・アルベックの論文で背中を押してくださった皆様へ!

夏の課題図書だ!と改めて読み始めました。類似する日本語の論文を先に読まないと、用語や引用など素地としての知識が不足しているなと痛感しています。一旦、このまま読み進めますが、皆さんに内容紹介しようと思えば、他のものも読んでから・・・。まだ先になると思います。気長にお待ちくださいませ!!

コメント
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