スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

Himlens polskaー曲のタイトルについて考えてみた

2024-01-31 12:25:49 | ポルスカについて

SNSで静かにしていると静かな余生を過ごしているだろうなと思われそうですが、狂ったような日々を過ごしていますそして、それにも関わらず、猫を飼い始めてしまいました ほんとは犬派なんですけどね~

ずっと猫を飼うなら赤い毛でグリーンかブルーの目がいいなと思っていて、赤毛ではないけど目はブルーグレー。朝が特にきれいな色で、目を見つめては「ほほーう」と感心しています

さて、今日はふと思いついたこの話題。曲のタイトルから考えてみる。

「Himlens polska」という伝承曲があります。調べると、フィンランドの伝統曲とでます。

フィンランドのフォーク(伝統曲)はスウェーデンとは随分と曲調が違うのですが、たまに似た雰囲気だなと思って伝承地域を見ると、歴史的にスウェーデン語圏だったりします。

そういうケースでは、地域名もスウェーデン語とフィンランド語の両方をよく見かけます。フィンランドのTurk(トゥルク)は、スウェーデン語名はÅbo(オーボ)です。

他には曲名でよく出てくるフィンランドの地名「Pohjanmaaプフヤンマー」は、スウェーデン語で「Österbottenオステルボッテン」、英語では「Ostrobothniaオストロボスニア」です。あー、わかりにくい。

フィンランドに行く際に空港名で迷ったことがある方もいるのでは?フィンエアでストックホルムからHelsinkiヘルシンキへ向かうと、Helsingforsヘルシンフォシュ行きのフライトという表示です。

 

さて、冒頭の曲ですが、スウェーデンの伝承曲のような雰囲気ですが、フィンランドのÅboの伝承曲(つまりTurkの伝承曲)と言われる曲です。似た曲がいくつかあるそうですが、フィンランド関係は全くの初心者の私なので、似た別の曲というのは知りませんし、フィンランド語も分からないとどう調べていいのかも分かりません(ニッチな内容はその国のことばで調べないと出てこない)。ただ、曲の引用として、A.F.Stare (Adol Fredrik Stare 1787-1810)とあれば、それはスウェーデン人学生のことです。フィンランドのオーボ(つまりトゥルク)に1806-1808年の間、留学している間に書き留めた曲で、しかも帰国の際に持って帰り忘れたという...持ち帰り忘れたそのノートブックは、今もオーボ(トゥルク)のシベリウス博物館にあります。取り戻せなかったのは、帰国後2年で亡くなってしまったからかも。

※個人メモのようなノートブックは(昔でいう自分用カセットテープ、今でいうMy play listのようなもの)スウェーデンに多くありますが、色んな曲が書き留められ、タイトルがないもの、タイトルがあっても作曲者も書かれていないものが大半です。この曲もなぜStareが書き留めたのか、自分が作ったのか、どこかで聞いたのかは本人にしか分かりません。

また、その楽譜には本人が「Himlens polska」ではなく、「Hin Håles polska」というタイトルを書いています。

Hin Håleとは「悪魔」を指すことばです。縁起でもないから直接「悪魔」と言わず婉曲してそれを指す語(noaord)というものです。「Himlens(天国、空) polska」というネーミングで演奏する人がいますが、曲の由来にStareという学生の名前をあげている場合、なぜタイトルを変えたのかはわかりません。もしかしたら、フィンランドにいくつかあると言われている曲と関係するのかも。それか、単に悪魔の反対にしたいと思ったか(婉曲的に天国が悪魔とか??)。

ともかく、こんな美しいメロディなのに「悪魔」とはなぜ?何か逸話があるのか?ぐいぐい興味がひかれますよね。ですが、スウェーデンの伝承曲に慣れていると「たぶん」という推測の域を出ませんが、ある程度想像できます。

スウェーデンでは、「djävul(悪魔)のポルスカ」と呼ばれる曲がいくつかあります。「näcken(ネッケン)のポルスカ」もよくあります。(ネッケンはフィドルが上手くて人を殺したりする水の精)

こうした邪悪そうな精霊や悪魔の名前がついた曲には共通点があります。

ーメロディが音階、スケールのような動きをする。(そうでない有名曲が一つありますが、作曲された歌の曲なのでそれは例外)

ーチューニングも変えて響き最優先することも。結果、ふわふわ響いてちょっと不思議な曲。

ー似たウラ話がある。「森で遭遇して魂と引き換えにこの曲を習った」「森でネッケンが弾いていた曲」など。

結局のところ「Hin Håles polska」の名前の由来は不明ですが、Stareがスケールの動きと響きでネッケン系の曲と同タイプと思ったのか、似た曲がある地域でそのように思われていた曲かもしれません。

ただ、忘れてはいけないのは、これはポルスカ(ダンス曲)という点です。美しいのでゆったり弾きたくなりますが(私もゆっくりめで弾いているし、アレンジでそうしても良いのですが)、原曲はダンスのテンポということです。スウェーデンの曲は(おそらくスウェーデンの影響を受けた、フィンランドのスウェーデン語圏の曲も)曲にタイトルがなく、実用の音楽(ダンスのための演奏曲)が大半なのです。スウェーデンというと、分類学のリンネが有名ですが、曲名も分類のようなタイトルが多いのは国民性かな?と思ったり。そうだとしたら面白いですね。

また、この話をすると、有名曲の「Farmors brudpolska(おばあちゃんの結婚式のポルスカ)」のタイトルの意味を考えて沼にはまる方が時々いるのを思い出します。スウェーデンの伝承曲に慣れていると、おばあちゃんが結婚した時?とは考えません。「誰それが弾いていた〇〇」という曲名が多いため「伝統音楽奏者のおばあちゃんが村の結婚式でよく弾いていた曲」なんだろうな、と想像する訳です。※ややこしいですが、伝統音楽奏者自身がその曲を伝えたとは限らないのもポイントです。

ただ、曲名に慣れていると容易に想像できても、「常に例外がある」という考えも大事。慣例に引きずられて凝り固まらないようにしないとな、とも思います。

今回、慣れているとタイトルからこんな風に読む、というのを紹介しましたが、結局のところ真実はわからないのです。

※もう少しStareについて知りたい方は、Södermanlands Spelmansförbundに詳細があります。

https://www.samlingarna.sormlandsspel.se/noter/adolf-fredrik-stare/

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