スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ニッケルハルパのボーイングについての議論

2024-04-30 14:56:28 | ニッケルハルパ

ハレステンマ Hare Stämman 2024 7th北欧の森音楽会

今年も松阪行きます!

第7回ということは、2年目から毎年参加しているので私は6回目の参加です。昨年くらいから徐々に忙しくなり、ほとんどの演奏はお断りしていますが、こちらは外せません。というより、遊びのように気楽に参加させてもらえるので可能なのだと(ありがたい!)。そんなリラックスした北欧の本当のステンマ(伝統音楽イベント)のようです。現地でお会いしましょう!

猫のFIPのその後

前回のブログで触れた猫のFIP(数年前は致死率ほぼ100%の病気)。投薬はかなり早期に終えて観察期間中。再発しないか注意しています。数年前に薬ができた時は100万だとか、その後に60万だとか、高額費用がかかっていました。最近、お聞きした知り合いの例では20万くらいになったそう。でも、うちの猫は今のところ(再発しなければ)10万かからず、また保険で支払われます。地域によっては高額な薬をつかう病院しか近隣にない場合もあると思いますがが、ネットでは最新情報が追いつかないようで、新旧の情報であふれています。うちの実際の例です、とお伝えできたらと思ってここで少し触れました。※情報があまりにも少ないので、ネットで探せた論文、参考文献にある資料、海外で公開された医療記事には全て目を通しました。

 

今回のトピックはニッケルハルパのボーイングです。先日、FB(フェイスブック)で白熱議論が勃発していました。

ボーイングの議論:クラシックバイオリンのボーイング VS ニッケルハルパのボーイング

ボーイングについて尋ねる質問に対して、100件を超えるコメントがついていました。質問は「ニッケルハルパのボーイングはクラシックバイオリンでいう、どの持ち方をするべきか?バロック風か?」というもの。また読み進めると「バイオリンのボーイングは車のワイパーのようにカーブしてはいけない。ブリッジに平行に弾かなくてはいけない」ので、「ニッケルハルパではまっすぐ弾くことができない」悩みがある、とのこと。他にも爆弾発言した人がいて(クラシックの基礎がある人が良いミュージシャン的な)脱線したほうも白熱していましたが、この最初の質問に対して「ニッケルハルパはバイオリンではない」という答えがずらっと並びました。

「バイオリンを弾いているとニッケルハルパを早く弾けるようになる」という話はたまに聞きます。弓で弦をこする楽器なので、ギターやピアノより早く手になじむかもしれません。ただ、それは最初だけかなと思います。

ニッケルハルパの発音(音の出し方)とボーイング

私は「弓の毛で弦をつかんではなす」というのをスウェーデンで徹底して仕込まれました。違う表現では(FBでは)「attack」と言っていました。アタック。なぜかというと、触れもしない共鳴弦を最大限に鳴らす必要があるからです。でも、ビオラダガンバのような、柔らかい音は好まれません。なぜかというと、スウェーデンの伝統音楽を弾く場合、ダンス音楽なので独特のリズム感、ノリというのが必要で、それは柔らかくは弾けません。ニッケルハルパは、澄んだまっすぐな音が好まれます。ダンスの回転をぐっと押し出すようなスウィング感も重要でですが、そちらは曲によりますがニッケルハルパは苦手で、フィドル(バイオリン)のほうが得意かと思います。

こうした「共鳴弦を鳴らすために最初に弦をつかむ」「ダンスのノリ」を出すには、手首はリラックスして力は入っていないものの、バイオリンのように大きく手首を返しません。自然と少し返す程度です。

また、バイオリンでは「ブリッジ(駒)に平行に弓を動かす」と最初に徹底しますが、ニッケルハルパは肘を固定するので、ボーイングは自然とカーブします。以前、クラシックバイオリン奏者Aさんが私のニッケルハルパを試し弾きした時に「やっぱり弓は平行に弾くと音が一番美しいですね」と言ったので、私も「?」と思いつつ、まだ始めて間もないころだったので自信がなく、つい「そうですね」と返してしまいました。が、今言われたら「そんなことはない」と言えます。Aさんが平行に弾くと美しいと感じたのは、Aさんにとって接点をズレずに同じプレッシャーで弾くのに一番慣れた方法が「平行に弾く」ことだったのでは?と思います。

腕はカーブするけど、弓の毛と弦のコンタクトポイントはズレません。「肘を固定し、弓の動きは自然とカーブするけど、接点はずれない」この練習を徹底するのがニッケルハルパです。あまり平行ボーイングに固執すると、「手首を不自然に曲げないといけない」「肘が浮く」となってしまいます。

※カーブして内側に弓が入ると、体にあたり弾きにくいので、私は「アップボウでは左肩を狙う」と習いましたが、今はそう教えていないようです。

弓の持ち方

ニッケルハルパにも「弓の持ち方の基本」はあります。最初に習うことは習うのですが、弾きなれるうちに調整していって...結局、人によります。

それは楽器を体で受け止めて(何年も弾くと肋骨下付近に凹みできます)右ひじは楽器に固定するので、楽器の位置、肘の位置と、定点が体形で違います(背が高い、痩せている、腕や肘下が長い、肩幅が広い等々)。個人差があるので、「1.リラックスして弾ける状態で楽器を構える」の次は、「2.正しく弓を動かせるか」が重要です。その次に「3.1と2が上手くいくよう弓を持つ」となるため、弓の持ち方も人よるのです。ですので、正しく弓を動かすために、弓を短く持つ人もいます(フロッグ付近ではなく)。実際のところ、弓も自分の腕の長さにあわせてオーダーで作ってもらうのですが、たまたま長い弓を使う場合は短く持つ、ということです。

それと、ニッケルハルパでは、弓に置く人差し指の位置は、深く持ったほうが安定して弾けます。Emilia Amperは、人差し指は第一関節よりも下の部分を使うそうで、手首がリラックスして弓の角度もちょうど良いとFBで返答していました。私も曲によってそう持つかも、と分かる気がしました。

クラシックの基礎が必要か

FBで脇道にそれて盛り上がっていましたが、反対多数だけど正解はない、というところで落ち着いたようです。

音楽の基礎があれば理解が早いでしょう。ただ、スウェーデンの伝統音楽は、楽譜から生まれた音楽ではないので何のジャンルの基礎があっても、知識があればあるほど、演奏方法が固定しているほど、それが足枷になってその先に進めなくなるようです。困っている人をよく見ます。

例えば、スウェーデンの伝統音楽にありがちな不均等な拍やリズムいついて「各小節の頭は均等に来るのでは?」といったことを考えているうちは、生き生きとした演奏ではない、それでは踊りにくい、と言われ続けます。また、滑らかで美しい芸術的な音色や表現力を追求しても、ニッケルハルパらしい音ではない(やりたいならバイオリンですればいいのに)、とニッケルハルパ仲間に言われてしまいそうです(例えば、三味線でバッハを追求するような...。反対はしませんが、三味線には三味線のテイストがありますから)。

きっとこの記事を最後まで読んだ方はニッケルハルパを弾いていて興味がある方では?と思います。難しく考えすぎず、楽しいニッケルハルパ・ライフを!

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