スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

「ニッケルハルパ演奏の基本」動画1/3 - 弓の話

2021-03-01 11:09:58 | ニッケルハルパ

大事なニッケルハルパの弓を2本、電車でなくしてしまいました。

そんなに忘れっぽいほうではなく(家族は激しく否定)、普段の生活でうっかりとかあんまりないタイプです…。と言いつつ、書きながら思い出してきました。ランドセルを持たず登校して教室について「あ、手ぶら」と気づいたこと(でも、6年間の小学校生活で1度だけです!)受験の時に電車に乗り間違えたこと(日本からわざわざスウェーデンまで行って受けた試験の日も反対方向の電車に乗ったなぁ…)。靴をなくしたのは生涯で1度きり、服をなくしたのもの1度きり、いや、2回、じゃなくて3回(パーカーを電車に、とか)。JR高槻と阪急高槻と、駅を勘違いしたのも1度だけ。子どもが幼稚園で抹茶をたててくれるお茶会の日、「おかーさん、今日は欠席ですか?」と電話がかかってきたこと。傘は、常にどこかの異次元に吸い込まれるようです。ああ…この生涯1度だけ(?)、というのがやけに多いなと気づいてきました

他にも無くす方がいるかもしれないので(いるか!?)参考に経緯を説明しますと、その日はテノールハルパでレコーディングの日でした。テノールハルパのケースの弓ポケットはマチがなくピッタリした作りで、高価なフランスの弓を入れるとポキっと折れそうで。以前知り合いからいただいた弓ケースに入れました。フランスの弓2本です。そして、駅のベンチで楽器と弓ケースと自分の荷物を置いて、スタジオまでの駅徒歩の道順をスマホで確認して立ち上がり…、その後、出口を出て、弓ケースを持っていないことに気づいて同じ道順で落としていないか確認しながら駅ベンチまで戻ったのですが、無くなっていたんです。わずか20分以内の出来事です(盗難の可能性もあります)。駅員さんに20分以内にあったものが、と説明しましたが、2-3日後に遺失物センターに電話してくださいとのこと。スタジオの方がとても親切で警察にも届け出をしました。

交番でコントのような展開になったのですが、それはともかく、無くしたものが「弓」ではなく、「ケース」や「鞄」という登録になるそうで、膨大な数があがること、見つかってもデータ入力する人が楽器の弓だと見て分からない可能性がある、と言われました。それから1か月半、データベース検索を続けましたが発見にいたらず。もし見つかっても売れると見込んで、先にフランスに弓を注文しておきました(事情を伝えると同情して急いで制作してもえました。ありがたい…)。

<弓のタイプ> 今までも時々書いていると思いますが改めて…

スウェーデンの伝統的「オールド・ボウ」:棹が大きくカーブしていて、ウップランド地方の曲を弾くのに適しています。慣れれば早い曲でも難なく弾けますが、弓の重さ、バランス、バウンス感に独特感があります。ニッケルハルパはウップランド地方の伝統楽器ですから、スタイルにこだわったり、最初からこの弓が楽器についてきた、といったことで良く使われています。現代のものはスクリューがありますが、本式はスクリューなし、弾く時に指で握って毛を張ります。

バロックボウ:バロックバイオリン用のバロックボウと同じスタイルで、直線的で先端が尖っています。イギリスのものやスウェーデンのものなど、バロックボウのお気に入りの作家にニッケルハルパ用の長さを注文して好んで使う奏者もいます。おそらく10万円前後だと思います。ただ、あまり広がらない理由は、ウップランド地方の曲は逆に弾きにくいこと(何でも慣れれば問題ないですが)、多様すぎて、絞ってこの人となりにくいのでは?と思います。

フランスの弓作家、ジャン・クロード・コンディJean Claude Condiの弓:ニッケルハルパの弓として最高と言われています。ヴェーセンのOlov Johanssonはじめ、多くのプロミュージシャン、ニッケルハルパの講師陣、皆が口をそろえてジャン・クロードが良い、払う価値があるといいます。ウップランド地方の伝統楽器なのにフランスの弓が良いというのです(珍しい)。価格帯が手ごろなもの作っているようですが、みんなが良いと言っているのは10万円ほどの弓です。掲載した写真にも映っていますが、オールドボウほど大きくカーブしていませんが、ほどよくカーブがあります。ウップランド地方の曲も早い曲も両方とも問題なく弾けます。そしてバランスと重量が非常にいいのです。脱力して弾くと、共鳴弦がよく鳴ります。基本のボーイングで「プンッ」というような共鳴弦の立ち上がりを鳴らすのですが、とても自然にできるのです。初めてジャン・クロードの弓で弾いた時に「あれ、出来た?」と思った衝撃を覚えています。練習して言われた通りにやろうとして成功率がまだまだと思っていた頃です。ジャン・クロードの弓に慣れてから、昔の安い弓に戻ったら出来るようになっていましたが、要は、成功体験の積み重ねでコツをつかんだ、ということだと思います。

私の演奏の45%は楽器のおかげ、45%は弓のおかげ、自分の力は10%未満じゃないか、と思っています。

今回、「ニッケルハルパ演奏の基本」という動画を作っている途中で新しく作ってくれた弓が届いたので、一部新しい弓で撮影しました。撮影に間に合わず安い弓で弾いてる箇所があるのですが、分かる方には分かると思います。安いほうの弓は金属音のような音がします。

ジャン・クロードの弓が買いたいという場合、本人のウェブサイトがあるのでそこからメールしましょう。Google翻訳を駆使して、フランス語でメールを書きました。弓はarchetです。希望する毛の長さを伝えます。2-3か月で弓を受け取った話も聞きますが、半年待ちと言われて忘れた頃(8~10か月後)に連絡がきた、というのがよくあるパターンです、支払いは銀行振り込みで、私は楽天銀行から手数料1750円でネット口座から送金しています。弓の送料は、1~2万円で、輸入消費税10%がかかる場合があります(10万未満と、複数弓を注文して数十万になった時で、計算が異なる)。

楽器に無料でついてきた弓は何本か持っていて、

固くて軽い弓:早弾きしやすいけど、初心者には共鳴弦を鳴らす基本ボーイングや、ウップランドの曲を弾きにくい。

軽くて柔らかい弓:共鳴弦は鳴るけど、軽すぎて腕の重みのほうが勝つのか?金属的な音色に偏りがち。

固くて重い弓:弓の重みでしっかり鳴るので曲を選ぶとOK。でも…固くて重いので思ったように操作できない。腕が棒になったような感覚が。

ちなみに、なぜか私のテノールハルパは軽くて柔らかい弓が弾きやすいのですが、これはテノールハルパの弦のテンションが柔らかすぎることが理由だとやっと気づきました。(弦のテンションが緩いのは未解決の大きな問題)

ところで、最近、続けて撮影している動画を見て、今頃自覚したのですが、私は薬指が内向きに曲がっています。伸ばすと真っすぐで、曲げると中指側に曲がり、薬指と中指でVサインになります。写真だと分からなかったけど動画で見ると弓を持つ指が不思議な感じに見えます。

次は、「ニッケルハルパ演奏の基本」動画の話を中心に。

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