スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

再会、出会い(ノルディックウーマンの続き)

2022-11-27 17:48:00 | ニッケルハルパ

再会

スンニヴァに会ってきました。この直前のブログで書きましたが、留学先のクラスメートで、つい先日まで「ノルディックウーマン」で来日公演をしていました。ホテルまで行って、10数年ぶりの再会。開口一番「あの時は英語が下手でごめんねー!」って言われて。「は?」と思いましたが、「いやいや、私なんか英語は忘れていく一方だから」と言ってお茶にいきました。

カンテレのあらひろこさんもホテルのロビーでお話して(初対面ではないけど、お話するのは初めて!)一緒にお茶に行くことに。淀屋橋付近だったので川沿いを歩いて、「ウメオUmeåの夏みたいね~」と言います。11月中旬だけど、スウェーデンでだとそうかもね。私が、梅田の高層ビルを指さして「昔、ヴェーセン(私たちの先生)があそこでビルで、ガラス越しの夜景をバックにコンサートしたよ」「うそー!」とか言いながら、大阪府立図書館へ。明治時代からのレトロな建物です。ここに、Smørrebrød KITCHENというカフェがあり、そこでお茶しました。スンニは、そのカフェメニューを見てえらい爆笑してます。デンマーク語名のカフェなので、デンマーク風なのかな?私には爆笑のツボが分かりませんが、「パンにバナナがのってる」と言うので、日本人のなんでものせちゃえ精神あふれるオープンサンドってこと?そして、マシンガントークのスタート...。ああ、なんか、妙に腑に落ちました

当時、スンニヴァはじめ、みんな仲が良く話も良くしていたけど、スウェーデン人って実はそんなに英語が上手じゃないんです。アメリカのドラマ見て育った子は別として、最初はそうでもない。よくあるのは、大学が全部英語で講義とか、数か月のバックパックの旅や留学など経て上手くなっていって、社会人になると仕事で(EU圏で)英語使いネイティブ並みになるコースが多くて(その機会が欠けたり、機会が遅いと、しゃべれるのも後ろにずれていく。)確かに、スンニは、深い話好きや授業のフォローをしてくれる固定メンツには入ってなかったわー。英語トークをもしかして避けていたのかも。こんなにおしゃべり好きだったなんて、知らなかった!私こそ「スウェーデン語しゃべれなくてごめん!」です。年数たっても、こうやって再会して話ができて本当に良かった やっと、今になって、東海大のオンラインのスウェーデン語習っています。スウェーデン人の先生、むちゃくちゃ教え方が良いです

それで、東京公演の音のこと聞きました。各公演で音響は違っていたそうです。東京(上野)の場合は、東京在住のフィンランド人が音響スタッフとの間に入って伝えたり手伝ってくれたのだとか。それと、やはり鍵盤の音はわざと入れているそうです。入れたいところで鍵盤を強く、弱く、とコントロールしているそうです。鍵盤の音だけでなく、楽器から出る余分な音、全てが音楽の一部という考えなんだと。グースネックのクリップで高い位置のマイクで全体の音を拾っているそう。「マイク通してプラスチックみたいなピカピカの音になるの、あれ嫌よね?」と私が言うと、激しく同意。「単に演奏良かったね、と言われるより嬉しい」と言われて、私もヨミが当たって嬉しいです

私の肩こりがひどいのも覚えていてくれて。そこから練習の話になりました。「練習したら疲れない?肩こり無い?」と聞くと「無い」と。「じゃあ、練習ってどのくらいしてる?」と聞くと、「30分。それ以上はしない。疲れるからね。」「ええ?コンサート前も?30分を日に何回か?」と聞くと「ううん、一日で30分。」ああ、また、私はスウェーデン風の練習スタイルを忘れてしまっていたようです。カンテレのあらさんにも聞いたら「あんまり...」そう、そうなんですよ。才能あるミュージシャンは練習なんかしないんですよ

確かに「5分以上、練習しない」とか、長時間練習することがどれだけ悪いか、留学中も聞いたし、3年ほど前に来たダニエルからも言われていたのを思い出しました。「マインドセットよ~!」とスンニは言います。「働きすぎ日本人」、「残業が減らない日本人」、「苦行が好きな日本人」次々と頭に浮かびます💦以前書いた練習についての記事がありますが、そこにライブ前だと1~2時間を日に何度かすると書いていたのでその箇所は削除しました(皆さんが真似しないよう)。カフェをでて、タコ焼きたべる!というので法善寺横丁まで行こうとしたのですが、時間も過ぎたし疲れもあって、目の前の「はなまるうどん」で手を打つことに。うどんを食べながら、ウメオのステンマ(音楽祭)を担当しているらしく、ウメオで早いうちに会おうと再会を約束して別れました。

出会い

さてさて、少し時間を戻して9月の話です。ニッケルハルパの弓でとても有名なフランスのジャン・クロード・コンディJean Claude Condi。彼にとてもお世話になっているという、バイオリン職人の女性が遊びに来てくれました。まだ20代と若く、フランス育ちですが、片方の親は日本人だそうで、日本語は流暢で読み書きも上手です。

ジャンクロードは、弓も作りますが、ニッケルハルパも作るし、色んな音楽関係のイベントも手掛けています。地元のバイオリン制作学校の学生の面倒も見ているんだそうです。特に、お金や色んな面で困っている学生に良くしてくれるそうで、またヨーロッパのニッケルハルパ職人のトップでEU圏の職人をまとめる存在でだったり(知りませんでした!)、話を聞いているとスウェーデンのエスビョンだなと思いました(職人のボス的存在で、面倒見も良い)。そのジャンクロードの家でミュージシャンが集まってよく演奏していて、そこで初めてニッケルハルパを見たそうです。バイオリン制作が専門ですが、日本に行ったら私に会えとなぜか言われたらしく(他の人の弓や、自分の分もいれて今まで10本くらいオーダーしたからかな)。そのフランス人の女性、自分が作ったというバイオリンを二つ見せてくれました。すごく軽くて、アンティークフィニッシュで、よく鳴るし良かったです。これからフランスに戻って自分の工房を開くところだと言っていました。SNSはしていないそうで、名前を出して良いのか聞かなかったのでまだ伏せておきます。

日本にルーツがあるので、ちょくちょく日本には来るようで、セッションなどにも顔をだしたそうでした。今回は時間がなく関西は私のところだけ(プラス観光)となったようです。北欧音楽をされている方は、彼女に近いうち会う機会があるかもしれませんね。ちなみに、彼女のバイオリンは、お店に置いてもらうと(お店の取り分で)値段がかなり高くなるので、もし気に入ったら直接買うほうがお得です。今、私ではありませんが大阪で預っている人がいて、知らない方には案内はしていませんが私と直接会う機会がある方で興味があれば声をかけてくださいね。


お知らせ

12/10 詳細後日。大阪梅田で、リリカさんと、数年ぶりのデュオです。20分 x 3回、クリスマスイベントでの演奏予定。

リハで数年ぶりに会いました。相変わらずの、これぞ、スウェディッシュ・フィドル、でした。すごく伝統的なフィドルです。数年前に来日したスウェーデン人のヨセフィーナとヨーナスにも聞いた「クラシックとは違う左手の使い方」というのも、多分りりかさんは無意識にやっていると思います(今度本人に聞いてみます)。

それはそうと、日本でスウェーデンの伝統音楽を演奏する方は、「伝統音楽<個人のスタイル」という方が多い印象です。日本だと、自己表現が主だったり、一般受けする要素をちりばめたり、聞く側のお客さんもそういう聞きやすさを求めていたり。もちろん正しいとか、悪いとか、そういう話ではありません。また、元々していた演奏スタイルに引きずられる場合も(例えば、ワルツをクラシック的に弾こうとするとか)。実は、最近のスウェーデンでも(他の演奏スタイルに引きずられるのはさすがにありませんが)似たような状況です。スウェーデンでは、ちょっと長くなりますが説明することこんな感じです。※個人的な意見です。

スウェーデンの王立音楽院で伝統音楽やニッケルハルパ奏者が卒業しはじめたのが15年ほど前。それ以降、すっかり伝統音楽の土臭さは消え、譜面で渡せば誰でも似たようなことができる(しっかりアレンジしてあり、ポルスカのリズムも分析され、クラシックの基礎練習を積んでいる)凝ったアレンジで、造りこんだ音が増えてきています。そのため最近のユニットは、伝統音楽ファン層はイマイチ盛り上がらないんですよね。という印象を私は持っています。その分、一般受けは良くなったのかもしれません。音大で学ぶこと自体が、伝統よりもオリジナリティを表現したいとか、遊びで入学した訳じゃないでしょうし、クリエイティブ志向を持った人は自然と増えていく気がします。伝統音楽ファンにいた若くて出来る子は王立音楽院を目指すようになり...。ある意味、生き残れる「持続可能な伝統音楽」という、時代に即した流れなのかもしれません。ただ、生き残っていけるのかは、まだ結果が見えず分かりません。

「15年ほど前~」と書きましたが、それ以前は「伝統音楽=個人スタイル」の絶妙なバランスがあり、楽器の基礎は別のところで習得し、伝統音楽は大学で学ぶものではなく伝統音楽奏者から学んだスタイルのミュージシャンが主流でした。自分の内面やオリジナリティを表現したいというより、伝統音楽がひたすら好き。アレンジするというより、それを仲間といじる、遊ぶ。突出して上手いユニットは、伝統音楽ファンの間でもすごく人気が出て...。そのアレンジを楽譜に書いて同じように演奏してと誰かに渡しても、全然同じように弾けない、となりそう(楽譜を使わない、楽譜から生まれたのではない音楽なので、そもそも書き表せない部分が多いため ←後で補足・追記しました)。伝統スタイルの土臭さや奏者の持ち味もちゃんとあり、黄金期だったのかなと思います。もちろん、15年以前/以降で、全員がそう、と言っている訳ではありません。傾向としての話です。※ちなみに、スウェーデンに限定した話で、フィンランドやノルウェーなど、他の北欧諸国については知りません。

70-80年代、村の奏者に習ったソロやデュオの伝統音楽奏者の時代 → 90ー2010年頃、その伝統音楽奏者から習ったバンド出現の時代

スウェーデンの音楽シーン、これからの方向性が見えないという話を時々聞きます。「伝統音楽をとりこんだ現代音楽」と「伝統的な音楽」の二手に分かれて分散していくか、やっぱり昔が良かったと原点回帰するか(してほしいな)、どちらでしょうね?

お知らせ欄に書き始めて大きな内容に膨らんだので、次回続きを書きます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ノルディックウーマン行ってきました

2022-11-05 12:52:49 | ニッケルハルパ

メトロノームのこと、点でとらえないリズム

先日、ノルディックウーマンの公演見てきました。その前にメトロノームの話を。壊れないものだと思っていました。実家のメトロノームは何十年使ってもまだ健在。先日、木製の振り子式の高いメトロノームを買ったのですが2か月で鳴らなくなり、4千円ほど払ってメーカに修理依頼をしました。戻ってきたら...かっちん・かちん・かちん・かっちん...って一定のリズムに聞こえない!実家の父が人間メトロノームのような人なので、電話をして「ほら」と聞かせたけど「電話じゃ、わからんばい」と。電話通信も信号が安定しないのか...この世で絶対に正確なものって何なんでしょうね。他の電子メトロノームで確認したら、やっぱりズレます。あの修理代は何だったのかとメーカーに言おうと思っていたら、昨夜、家族が派手にガッシャンと落として再び鳴らなくなりました。あーあ。高かったのに。先ほど、ポチっと買いなおしました。

スウェーデンの伝統音楽は、「円運動」の緩急リズムなのでメトロノームはそのままでは使いにくいのですが、細かなフレーズを確認をする時や自分の弱点を確認する時などで使います。細かなフレーズの中で、わざと揺らして弾くことがあり、その揺らし幅の確認とか(逸脱しすぎると共演者が困るかな、とか)。走る曲があったら、走り出したくなるトリガーポイントを特定するために使うとか、そんな感じです。子どももバイオリン練習で使うことがあります(ゆっくりではじめて、慣れたら、どこまでテンポを楽譜通りに近づけられるか、とか)。

普段、スマホのメトロノーム・アプリを使っていたのですが(目でランプの動きを確認できるのが便利で)。たまに正確じゃないような気がする時があるんです。「私がおかしいのか?オマエじゃないのか、狂ってんのは」と。深夜が近づくほど思うので、狂ってるのは私の頭のネジかも。ですが、スマホアプリは、バックで色んなものが動いているので安定性に欠ける、と聞きます(やっぱり、狂ってんのはアイツだ)。単体の電子メトロームは正確というけど、ピッピッという電子音を聞き続けると疲れるので持っているけど使っていません。振り子式のメトロノームは、木製のものは響きが心地良いんです。コツコツと疲れない音がします。それに振り子は目で見ていても「ぐにゃ」という動きで、リズムを点でとらえすぎないのが使いやすいと思います。

ノルディックウーマン

関西公演は残念ながら行けないので、東京文化会館の公演に行ってきました。前も書きましたが、ニッケルハルパ奏者Sunnivaスンニヴァは留学中のクラスメートでした。メールのやりとりは続いていたけど、10数年ぶりに会える上に、それも日本に来るというのに「ごめん、用事でいけないわー」はあんまりだと思って。久々の東京行きがあまりにも嬉しくて、日帰りなのにデカいリュックで行きました。色んなもの買ってぎゅうぎゅうに詰めて帰るためです(笑)行きの京都駅で既にリュックの3分の1は埋まってしまいました(え?何を買ったか?和菓子、洋菓子、ほぼ食料…)。

ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、サーミ、それぞれの国のミュージシャンが順に演奏する構成です。自国の伝統音楽の紹介というよりモダンな音楽よりでしたが、初めての方にはその国の音楽を感じられるんじゃないかと思いました。それぞれの演奏も良いのですが、やっぱりSunnivaがサイコーですね。当時から繊細で滑らかで時が止まったかのような空気感があったのですが、さらにその道を進んでいってる。あー、私はこの同じ十数年の間、何をやってきたのか、と思ってしまいます。

ステージでは、「鍵盤のカタカタという音」、聞こえます。「足を踏む音」、聞こえます(というより、足踏みは聞かせるためにオリジナルに考えたもの)。「ニッケルハルパの毛をつかんで共鳴弦が鳴り始めるスタート」、はっきり聞こえます。「共鳴弦の鳴らし具合」、ほどよくて完璧。「ニッケルハルパで聞きたい音、聞こえてほしい音」が消されることなく、心地よいバランスで聞こえます。PA(音響)が入ったステージなのでその具合もあると思いますが、彼女のCDもそうなので考え方じゃないかと思います。例えていうなら「白米(きれいな音だけ残す)」と「玄米」みたいな。ステージではSunnnivaは歌も少し歌うのですが、留学当時からSunnivaの声っていかにもスウェーデンらしいよなって思っていました。私からすると、ケルトやノルウェーの歌声とスウェーデンは特徴が少し違うんですよね(声の違いか、歌い方?響かせ方?わかりませんが、その話はまた別の時に)。来日中にお茶する約束をしたので、色々聞いてみようと思っています。色んな音を消してしまうミュージシャンもいる中で、Sunnivaなりのニッケルハルパの音、考えや向き合い方とか聞きたいなって。→と言いつつ、食べ物の話で終わるかもな。


さてさて、私は最近ほとんど活動はしてないのですが...たまたま今月、来月と続きます。その後はまた当分ないので、機会があれば足を運んでみてください。

10/30 青空音楽サロン、桜井市立図書館 ※3年ぶりの音楽会、ニッケルハルパの生徒さんのサポートで行ってきました。皆さんの演奏もすばらしく、会場も木の香りですごく良い感じでした。

11/13 枚方T-site、11/9-15まで「北欧ライフスタイルフェア」があります。その中で13(日)に、30分x2回、野間さんと演奏します。野間さんは、フィドル、五弦フィドル、マンドーラと色々持ち替え予定。

12/10 詳細後日。リリカさんと、数年ぶりのデュオです。20分、3回、クリスマスイベントでの演奏予定。リハもこれからなので、会うのも数年ぶり。どんな形になるのか楽しみです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする