スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

メンタル・ポルスカ

2008-07-17 19:53:16 | 2008年夏
今日はディッテのレッスン。
個人レッスンの先生を選ぶ紙も今朝ドアに張り出されたのでディッテを選んだ。

どの先生でも良かったのだけど、悪いところを指摘してもらったり、理論的なアドバイスが欲しいなら
ディッテは適任だと思う。他の先生は「いいねー」とほめてあまり指摘をしない。
それに、ディッテから習いたい曲もある。

エケビホルムのコースを先月取った時、ディッテはグループレッスンでもあたらなかったので1年ぶりのレッスンだ。
まずはCDをかけて軽くストレッチから。なつかしー!そうそう、毎回これやってた。
かけたCDは初めて聞く。静かなポップスかロック調で、歌の間奏でニッケルハルパになるとディッテが「これ、ウロフよ」と言っていた。

さて、弓の持ち方や動かし方など説明の後、曲をいくつか習う。
ビスカレのマーチ。やはり知った曲。どこかで弾いた程度でちゃんとは習ってないけど。
でも、ディッテは先生の余裕があるというのか、ちゃんと皆にこの曲を知っているか、この曲でいいかと確認をしてくれる上に、
数曲弾いて「この中のどれがいい?」と選択肢もくれるので、不満もない。

午後は、個人レッスン。
30分しかないので有効につかいたい。
頭の中で、30分の時間配分を色々考えていた。
1曲習いたい曲は、エケビホルムでみんなが弾いていたかっこいい曲。
私が「何、ソレ?」と聞くと「ディッテに習わなかったの?」と言われた。
じゃあ、ディッテに習おう!と心に留めておいたのだ。
でも録音していないので、どんな曲かよく覚えてない。それを伝えるだけで30分終わるかも??
するとfika(コーヒーブレイク)でテーブルに座っていると、偶然ディッテが私の隣に座った。

やったここでつかまえて、今のうちに何の曲か判明させよう!
「あのね、これ習いたいの。♪プリン・プリン・プリン♪・・・」
ディッテ、しばし沈黙。

分かるかな。メロディも音程も何も覚えてなくて、♪プリン・プリンって雰囲気だけ覚えてるんだけど・・・。
繰り返し「♪プリン・プリン」って言ってみた。

するとディッテ「・・・悪魔のポルスカじゃない?」と歌ってみせた。
「あー、それそれ!」そう、確かトロールか何か言ってた気がする。
それにしてもプリン・プリンで良く分かったなぁ。感心。

で、ディッテが面白いことを話はじめた。
ある音楽雑誌で「音楽とは」ということをアンケートとって色々調べたところ、
インナー・キネシス(運動?)、つまりエネルギー」という結論になったのだと。
「確かに、動かなくても(踊らなくても)、演奏しなくても、ワルツを体内で感じて表現できる」とディッテ。
静かに呼吸や微妙な動き(電車で一人でやっても目立たない、恥かしくもないほど微妙な動き)で表現してくれる。
確かに、それはワルツだ。同じようにポルスカもやってくれた。「これ、今、頭にボンドポルスカがある場合」
「それで、一度、メンタル・ポルスカを部屋で練習するように、と宿題をだしたら、一人本当に上手にやってきた子がいてね」
と笑って言うディッテ。
全くその通りだ。このメンタル・ポルスカなくして弾けば「何ひいてんの?」と聞こえるでしょう。
ディッテとの会話はいつも何かを得ることが多い。

休憩後、個人レッスンでは、左手の薬指と小指の筋力の弱さから来るリズムの乱れを指摘され、練習などアドバイスをもらった。
なれるまではその指を意識して特に強く押すように、と。
そして、悪魔のポルスカを録音して、大満足。

今日は19時から、サルストレム一家によるコンサート
それまで寮にいると、同じ建物に泊まっているカイサがラウンジにいたのでちょっと話をした。
カイサは日本の友人からもらったという抹茶パウダー入り緑茶ティーバッグを持ってきていた。
数年前、日本に来たことがあり、和食や緑茶などすごく気に入っているみたい。
で、残り少ないから、お金渡すので送ってというので、袋をカメラでパチリ。見たことない銘柄だ。
(※補足・・・帰国後、判明。茶の間というサイトで販売している抹茶入り煎茶でした。香りが良い)
ディッテもラウンジにやってきて、しばし私のこのブログの話題になった。
カイサのノートPCで見せると、すごい大爆笑。
Messmör(チーズの残りカスのバター)や紙パックワイン、蚊よけネットの帽子などなど私がスウェーデンのものを取り上げた
写真をみて、すごくウケてる。
・・・私は目の前の読者など想定せず書いてるから、何となく恥かしい・・・。

そうこうするうちにもうコンサートの時間。
あ、忘れてた!今日はLが遊びに来るんだった。Lは、去年の1年、ESIで一緒だった。エケビホルムのコースで再会したときに
「遊びに来るから」と言われていた。
慌てていくと、Lが来ていてすでに客席に座っていた。遠くから両手をふると気付いたみたい。

このサルストレム一家とは、ニッケルハルパの普及に貢献した神様的な存在、エリック・サルストレムの弟、娘、息子などの家族。
おじいちゃんの代から演奏一家で、古い曲を沢山後世に残している。
派手なアレンジはせず、伝統的な一族の曲を忠実に伝えるスタイルだ。
素朴なんだけど、どこか暖かい。
ソニア(エリックの娘にあたる)が「Tobogubbenを弾きます」と説明をはじめた。
エリックは、1960年代に日本に来たことがある(以前もこのブログで書いたけど)。コンサートをしてNHKにも出演した。
(その時の映像がみたい!)
その来日時ちょうど飛行機が日本海上空あたりで「この曲弾こうと思うけど曲名がないんだ」と言うと
一緒にいた演奏仲間が「トボ(住んでいる村の名前)グッベン(ホントはおじちゃんという意味)、『トボの仲間達』にしようよ」
ということで、以来、トボグッベンとして有名になった曲なのだ。
F-durで、シンプルなのに美しいメロディだ。聞くたびに新鮮な感じがする。

聞いていると、つい涙ぐんでしまった。
エリックが亡くなったのは80年代後半。会いたかった。
生まれる前の遠い世代ならまだしも、私の人生と少しでも時がかぶっていることから、会いたかったと思ってしまう。
不可能ではなかったはず、とつい思ってしまうのだ。
ヴィクスタ・ラッセもだ。確か80年代に亡くなった。ウヒヒと笑うあの陽気なおじちゃん、会ってみたかったなぁ。

エリックは、お父さんからこの曲を受け継いだ。お父さんはそのお父さんから。
そうして、エリックの娘達が今、こうしてその曲を弾いている。
サルストレム一家は、それこそメロディではなく、メンタル・ポルスカを受け継いでいる。
会ったことがないのに、その曲をこうして聞き、その存在を感じる。

隣に座っているマッツが、何か気付いたのかチラチラ私を見る。
ふん、ほっといてくれ!

コンサートの後は、早速ダイニングでセッションがはじまった。
カイサとダービッドが弾いている。入っていきにくい・・・。
しかし!今日は心強い。Lが遊びに来ているのだ。
私が躊躇していると「いいんじゃない?入ろうよ」と言い、カイサに「一緒にいい?」と聞いて椅子を持っていった。
そうそう、私は肝が小さいからこういう人がいてくれないと!
私とLも加わると、校長ミッケもギター片手にやってきた。ミッケのギターはかなりかっこいい。
そのうち、マグヌスなど数人も加わり、盛り上る!

でも、前も書いたように、今回のコース参加者はほとんど弾こうとしない。
ほとんどの人が聞くばかり。
聴衆に取り囲まれるセッションは気が散ってやりにくい。
数人聞いてるくらいならまだいいんだけど、慣れない雰囲気・・・。
例えて言うなら「誰かと話していたら、会話に加わらず大勢に取り囲まれた。
あのぅ、トークショーじゃないんですけど」みたいな感じ。
もちろん、悪いことないです。ただただ、違和感。

0時をまわり、一人また一人去り、マグヌス&ダービッドの若手が残った。
こうなると二人だけでガンガン飛ばしモードになるので、私は隣の部屋へ退散。
アンナやソーレン達が弾いていた。
最後は3人になり、弾いていると、ダービッドがこちらの部屋に一人やってきた。
ダービッドは一人だとガンガン飛ばしモードにならない。
一緒に数曲弾いてたのしー。
すると、マグヌスが「ここにいたか!」とやってきた。
ハイ。そうです。
ここでもまた二人の飛ばしモード・セッション、スタート!
二人は弾くために生まれてきたのでしょう。
弾きすぎて肩が痛いとうめいていたかと思うと、どちらかが弾き始めるや、さっと楽器をつかんで弾き始める。
ESI時代も一緒にすごしただけあって、息もぴったり。
今も、よく二人で演奏しているらしい。
変則的な動きも奇抜なアレンジも目すらあわせずに意図が伝わっている。

うらやましいなぁ。こんなに一緒に弾きこんだ仲間がいて。
その前に意図が伝わったって、二人の技術には私は到底ついていけません。
それに、むちゃくちゃ早い!
以前「早すぎるとポルスカじゃなくなる」とブログで書いたけど、二人は例外です。
アクセント、強弱、リズム、キレ、全てにおいて完璧のまま、5倍速くらいで弾くとそれはポルスカでした。
メンタル・ポルスカが失われていないからかもね。
いや、それにしてもすごい。
特にダービッドの指が細いせいか、早く動かす指が100本くらいにだぶって見える。

翌朝、指1000本の男だと言ってやったら喜んでいました。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヴェステルボッテンのノリ | トップ | 簡素な美 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

2008年夏」カテゴリの最新記事