スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

北欧ダンス曲のリズム、スレングポルスカ

2019-09-10 20:21:00 | ポルスカについて

2019/9/15 ハーディングフェーレとニッケルハルパ お食事付き 残席わずか(会場へお尋ねください。)※この日、スウェーデンの友人のCDを販売します。その紹介はこのブログ記事の最後のほうで。

2019/10/6 スウェーデンの講師による音楽ワークショップ、ダンスワークショップ


夕飯中に、子どもに「早く食べて楽器弾いてよ」と言われます。食事中はCDをかけていて(北欧ものやアニメやなんでも)「CDじゃあ、あかんねん。目の前で弾く演奏がいいねん」と、今夜もこきつかわれています。しかも「なんかな、音程はいいんやけどな(そりゃそうだ、ニッケルハルパは鍵盤だし)、最後のその音、気をつけたほうがいい。」とまで。はいはい、頑張ります、難しいんだってば、この最後の音。

という話はさておき、「この曲はスレングポルスカですよね?」と時々聞かれます。返事をすると混乱させてしまうことが多く、前々からこの話題を書こうと思っていました。今日はスレングポルスカの話と、スウェーデンのトリオのCDの紹介を書きます。

スレングポルスカ slängpolska 

シンプルで軽快なリズムやメロディアスな曲が多く、セッションでも人気です。スモーランド地方、セルムランドや南スウェーデンのダンスの種類で、歩きながら自由に踊るダンスです。列を作って歩くようなポロネース(スクエアダンス)とは随分と違います。もっと古いスタイルで、歩き回らずその場で踊るスレングポルスカもあります。どちらも基本は歩くので、3拍子の拍が均等な曲が使われます(知らない方のために説明すると、リズムが不均等な曲がスウェーデンには多くあります)。歩くのにあわせ2拍子や4拍子のようなリズムの取り方をして、それをわざわざ3拍子で弾きます。「あの地方の人は数えられなくて1拍子なんだ」というジョークもあります。

ポルスカ 

地方により違いますが、一般的なポルスカは3拍子の、1と3拍目にアクセントがあり、それで回転するダンスのリズムを生み出します。ちなみに、アクセントというと誤解されるますが「強く弾く」のではありません。回転を生み出すので勢いや緩みといった緩急が必要になります(車のアクセルをブオンとふかす感覚に似てるような)。打楽器的な強弱のアクセントをつけると、途端に「踊りにくい」「ポルスカに聞こえない」と言われてしまいます。回転を押し出すイメージで、各拍の長さが不均等な曲が多いのです。もちろん、不均等である必要はなく、均等なリズムの曲も多くあります。

それで、スレングポルスカの話に戻りますが、「拍が均等で歩きやすい曲=スレングポルスカ?」と思われがちなのですが、もちろん、答えは「No」です。回転を意識した1と3拍目を弾くのか前に前にと進みたくなる(2拍子かのような)グルーブ感を出すのか。どちらの演奏でもどちらのダンスも踊れますが、リズム感(グルーブ?)が異なります。また、どちらよりの演奏をするか、フレーズごとに変えるのか、多少は演奏者の選択の余地もあって、そこが譜面にならない伝統曲の楽しい部分です。

そして、このスレングポルスカが混乱を招く理由が2つあるのです。

1.ダンスの種類として言ってる

スレングポルスカがスモーランド地方などの地域にあるダンスの種類なので、曲も本来はその地方の曲のはず。でも、スウェーデンでも「(スレングポルスカが踊りやすい曲だから)この曲はスレングポルスカだ」と音楽の由来のほうではなく、ダンスの種類の話をしていることがあり、それが混乱を招くのです。(「ビスカレのポルスカ」を「スレングポルスカ」と呼ぶ人が多く、こうした例が誤解のもとになっている気がします。多分、スレングポルスカのようなグルーブ感で弾いたらカッコ良くて人気を集めたのかな?と。個人的な推測です)。また、例えばスモーランド地方のポルスカなら何でもスレングポルスカかといえば、そうではありません。ポロネス、メヌエット、時代背景にしてもニュアンスが異なります。

2.色んな地方にあるスレングポルスカ

ウップランド地方、もっと北のヴェステルボッテン地方などでも「スレングポルスカ」という名前のダンス(曲)がありますが、リズムもダンスも全く異なります。「スレング」という言葉は「投げる」という一般的な言葉です。投げるような動きをするダンスがあれば誰でもそれを「スレングポルスカ」と呼ぶことはごく自然にありえるので、紛らわしいのです。いっそのこと、スモーランドポルスカのように呼び名を変えれば誤解がなくなるんじゃないかと思います。よく基本のポルスカとされ、他の地方の曲で踊ることもある「ビングシューポルスカ」は、「ビングシュー」が地名なので他の地域の曲で踊ってもこうした混乱は起きません。

そういう訳で、「スレングポルスカですか?」と聞かれると、「スレングポルスカも踊れるけど、違います」「1と3拍目を強調したので、そのつもりで弾いてません」「スコーネ地方の曲だけど、どうでしょうねぇ…」と奥歯にものが挟まったような答えになってしまうのです。決して、イジワルではぐらかしているのではありません。


スウェーデンのトリオのCDを販売します このブログを書き始めた頃からの10年来の友人のCDを紹介したいと思います。ニッケルハルパと双子のフィドルのトリオです。ニッケルハルパのスンニヴァはそれはそれは繊細なため息のでるような音色で、難しいフレーズも水が流れるように、静寂さえ感じる演奏です。そして双子のカロリンとマデリンは一週間のコースを一緒に過ごしただけなので知り合い程度ですが、初めて出会った時は衝撃を受けました。生き生きと、こんなに楽しそうに弾く人を他に知りません。二人を見ていると楽器からではなく体のどこからか音が鳴っているように聞こえるんです。実は私が演奏する時はいつもこの2人を思い浮かべています。「音楽は体の中で作って呼吸のように吐き出すもの」なんだと思わせてくれます。

このCDは、全曲、ダンサーと一緒にライブ・レコーディングしています。聴衆のいるコンサート・ライブ版ではありません。目の前で踊るダンサーと目の前で演奏するミュージシャンが、お互いに影響し合う、いわば本物のダンスミュージック。ダンサーの足音はほどよく入っており決して音楽の邪魔をしていません。欲しい音が良いタイミングでバッチリ入っています。

ミキシング、プロデュースは、自身もニッケルハルパ奏者で日本でライブもしたヨセフィーナです。スタジオでは作り出せない、空気感が楽しめます。ごく少量、本人から買い取りましたので、日本語訳の紙をつけて、イベントやライブなどで販売する予定です。郵送をご希望の方はメールにて。infoあっとfolkishproject.com あっとは、@に変えてください。

オフィシャルトレーラー:オフィシャル動画は宣伝用に撮影されたもので演奏者が踊るシーンもありますが、CDのレコーディングのほうは各曲それぞれダンサーが踊っています。

レコーディング時の様子:3つ目の動画です。カッコいいオフィシャル動画もステキですが、こちらの素朴さが本当に本物っぽくて、ほっこりして、なんて楽しそう!思わず笑顔がこぼれます。

Tradpunkt – Lilla Lasse [Official]

Tradpunkt – O tysta ensamhet [Official]

Tradpunkt - Gubbelubb 楽しすぎる!男性ダンサーの肩の力の抜け具合にほっこり、にっこり、してしまいます!

 

 

 

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