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731部隊と信州人ー墓石を美辞麗句で隠さず

2018-02-03 11:30:43 | 日記
 昨日2月2日、NHK「知る信」で、日本の関東軍が中国で展開した、生物化学兵器部隊、731部隊の事を取り上げていました。ロシアで発見された731部隊に関する資料を基に、最近NHKがBSで放映した特番を興味深く見ましたが、今回はこの問題を総合テレビ、それも時間帯が夕方7時のニュースの後に放映されたことに驚きました。驚いたと言ったのは、「見せたくない」「見たくない」番組は裏番組あるいは深夜放送に回されるのが一般的だからです。ただ「知る信(州)」ということであったので、全国版では放映されなかったのかもしれませんが。
 
 内容は、ソビエトの満州侵攻後、戦犯としてソビエトで裁判にかけられた時の731部隊の将兵の証言記録をもとに、同部隊で下働きとして入隊していた長野県出身の元少年兵たちと、戦後シベリアに抑留され帰国直後に自殺されたとする元中級幹部であった軍医の二人の子供さんとのインタビューを通じて、731部隊の知られざる一面を描いたものでした。細菌兵器製造に当たり、現地の中国人や満州人が生体実験に使われていたことを直接には知らなかったと言う元少年兵のインタビューはともかく、直接関わった軍医の子供さんが、テープに残された父親の告白懺悔している声に、耳を傾け沈痛な面持ちで向き合っている姿がとりわけ印象的でした。

 とかく日本的風土の中で、嫌なことは「聞きたくない」「見たくない」、時には「水に流す」ことが美徳とされるような傾向がある中で、最も身近な父親の犯罪、それも70年以上前の戦時中の犯罪に、目を背けることなく向き合っている姿は、これまであまり見たことのない経験でした。僕の周りでも、中国や朝鮮で従軍していた当時の事を何も語らぬ父親に、疑心暗鬼を持っている、と言う話をしばしば耳にしたことがあります。でも息子や娘は何も聞けなかった。いや疑心暗鬼すら持たないまま今日に至っている高齢の息子や娘さんも多くいるかもしれません。もとより戦争を知らない世代おやでしょう。
 少し前、駐日ドイツ大使がインタビューの中で、父親世代が犯したナチス、アウシュビッツ問題について、青年時代に父親によく詰問したことがある、と言う話を聞いて、日本とドイツの戦後処理のあり方の違いを文字や学問以上に納得させられたことがありました。
 でも、70年以上前の父親の犯罪,それも軍務下の余儀なくされた犯罪に向き合い、テレビと言う姿形を隠せない公衆の画面に、今回身を晒した二人のお子さんの勇気ある行動は、必ずしもそうではない、そうであってはならないことを身をもって、今の私たちに教えてくれたようにも思いました。正に「墓石を美辞麗句で覆い隠す」最近の風潮とは対極にある姿でした。
 
 再放送があれば是非とも見ていただきたい番組でした。単に戦争犯罪を振り返ると言った内容以上に、深いものを読み取ることでしょう。

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