NHKBS3の「日本百名山」は、私の大好きな番組の一つ。 毎回録画して見ている。
5月18日(月)は、沖縄・西表島の≪古見岳(コミダケ)≫が取り上げられていた。
私にとっては、古見岳という山の名まえも聞き始めだったし、何よりこの山が標高僅か469Mであることに、ビックリした。
「こんな低い山が、百名山に取り上げられるのはなぜだろう?」
古見岳のある西表島は、沖縄本島から南西に430キロ、珊瑚の海に浮かぶ、八重山諸島最大の島。
そんなに低い山が「百名山」に取り上げられるには、古見岳ならではの素敵な“魅力”があるに違いないと思ったけれど、
番組を見始めると、その“魅力”が何であるかに、すぐ気づくことができた。
今回古見岳登山を案内してくださったのは、ガイドの八幡暁さん。
八幡さんは、これまで世界の海をカヤックで巡ってこられた。
そして、世界中の海や川を旅する中で見えてきた、“自然”や“命”の大切さを、伝えてこられたのだそうだ。
私はまず、この八幡さんの男性的な風貌、飾り気の無い率直な物言い・振る舞いに、心惹かれた。
そして、彼が何気なく発せられることばの面白さ(ユーモアのセンス)や、自然についての見識の深さを、素晴らしいと
思った。
今回の登山は、海から始まった。
西表島西部にある「上原」から、カヤックで、古見岳の麓の「ユツン川」河口を目指す
八幡さんはカヤックを操りながら、大声で次のようにおっしゃった。
「山の森に入る前に 海の森が見えますよ!」
“海の森”かあ! 私はこのことばを聞いただけで、もう嬉しくなる。
今回八幡さんが、直接ユツン川河口から登山を開始されずに、わざわざ上原からカヤックに乗ってユツン川河口に向かわ
れたのには、訳があった。
それは八幡さんが常日頃思っておられることを、視聴者に感じてもらうためだったのだ。
「雨が降って 山が保水して 川に流れて また海に帰る。
その循環の中に 生き物 (人間だけじゃなく 植物も 動物も 昆虫も) の営みがある。
だから 水をたどれば 生きるということの意味が 感じられる。」
以前、今では美しくよみがえった珊瑚の海にも、珊瑚の大白化が見られた時期あったのだそうだ。
「こちらの自然は、まだ珊瑚の大白化があっても、自然のサイクルに戻れるんですよ。
でも、陸域がダメになっていると、いったん白化したら、復活はできないんです。」
ユツン川河口でカヤックを下りられた八幡さんは、周りに生い茂るマングローブを見ながら、その中の「オヒルギ」を例にし
て、彼らの生きる知恵を教えてくださった。
マングローブの一つ・オヒルギ
「オヒルギは成長すると、下のような長い種を付ける。
この種は熟すると自然に下に落ちるが、落ちた時が干潮なら、その場で発芽し、やがて木へと成長していく。
しかし、落ちた時が、あいにく(なのか、幸いなのか)満潮だったら、種は波に乗って流され、遠くの島かどこかで発芽
する。」のだと。
自然の生命力ってすごいなあ! そして、なんて神秘的なんだろう!
オヒルギの種
オヒルギの新芽
八幡さんはその後、いったん山道に入って、登っていかれる。
この時比較的河口に近いところで咲いていた、「セイシカ」という花。
もっと山道に入ると、沖縄料理には欠かせない「シークヮーサー」が、いっぱい生っていた。
八幡さんは、今でも童心を忘れない、無邪気な方でもある。
昔川でよく釣った「コンジンテナガエビ」というエビを見つけると、草で作った仕掛けでエビを釣っては、大喜びしておられた。
釣り上げたコンジンテナガエビ
また、島の人たちの暮らしにも強い関心を寄せられ、島に伝統的な「マングローブ染め」にも挑戦されていた。
八幡さんが染められた、自分のTシャツ
ユツン川はいよいよ流れが激しくなり、『ユツン三段の滝』が現われる。
この滝の水の流れを見て、八幡さんが思わず発せられたことば……「水っぷりがイイですよ!」
なるほど、「水っぷり」ねえ! 言い得て妙な表現だ、と感心する。
そもそも「水っぷり」って言葉ってあったかしら?
たぶん八幡さんの造語だと思ったが、念のため広辞苑で引いてみたら、やっぱり「水っぷり」は無かった。
言葉のセンス、凄いなあ!
八幡さんの言葉のセンスの素晴らしさについてもう一つ。
「ユツン三段の滝」をてっぺんまで登り、しばらく苔むした岩がゴロゴロしている処を過ぎると、オオタニワタリなどの亜熱帯
の木々がおい茂った森に出た。
その時の八幡さんのことば……「妖精 いますね!」
苔むした岩がゴロゴロしている
オオタニワタリ
いよいよ、469Mの山頂に到着。
山頂からは、「石垣島」やまっ平らな「竹富島」などが望める。
その山頂で、八幡さんがこう言われて、今回の登山(旅)を締めくくられた。
「まず、美しいですよね、自然が。
多くの人は都市で暮らしていて、登山という形で山に入って、非日常を楽しむ。
でも、島の人にとっては、日常のフィールド。
だから、日常の中でそれが、どれほど大切に守られているのかってことが、強く感じられる旅になりました。」
ラフティングですかあ!?目が回ってぶっ倒れそう!(ー_ー)!!