毎度!ねずみだ。
世界中の息子や娘がその父親や母親に関して語るとしよう。時間はいくらあっても足りないのではなかろうか。ましてや亡くなってしまった親に関して話そうとするならば、さらに時間が必要だ。
という訳で今回も母親に関して記しておかなければならない話。
独立して実家を出た後も、毎週日曜には顔を出していた。出先からの帰りに一度実家により飯をごちそうになる。その後自分の家に向かう。飯を食わせてもらうというのは建前で、親の顔を見るのが目的だった。
週に一度顔を見に行くと、両親はともに喜び「最近どう?」と聞いてくる。「一週間前に話したばかりじゃないか。」と言いつつもとりとめのない話をし、昼飯をごちそうになる。それも親孝行の一環。
例によって昼飯を食べに行ったある日の話。
準備してないからなんでも好きなものを温めて食べてねと言われ、冷凍庫の中身を物色していると、そこのほうから冷凍ハンバーグが出てきた。弁当箱にミニハンバーグが載ったパッケージは冷凍庫の一番下に埋もれており、ずいぶん冷凍庫の中で眠っていたと推測される。
「子供が食べるようなハンバーグだよ?、どうしたのさ?」と聞くと、「浩一(兄の名前)が好きなのよ、それ。」と返ってきた。「だって、これ、子供が食べるようなハンバーグだろ?兄貴はもう50過ぎてるよ?おっさんがこんなの食べるの?」と言うと、お袋は「何言ってんのよ。子供のころからお弁当のおかずはハンバーグが一番好きだったのよ。」とさも当たり前のように言う。
「で、最近兄貴は実家に来る?」と聞くと、全然来ないような事を不満そうにごにょごにょ独り言ちる。「きっと忙しいんだねえ。しょうがないねえ。」と自分を慰めるように。
そうして「でもね、いつ浩一が帰ってきて<お腹すいた!なんか食べたい!>って言うか分からないじゃないでしょ。だから買ってあるのよ。」と続ける。母親はさも「だからミニハンバーグを買っておくのは当たり前だ」と言わんばかりだ。
いつ来るか分からない長男の為に。子供の頃弁当に入れて持たせていた、あのミニハンバーグを購入して冷凍庫に眠らせておく。ただひたすら長男が<お腹すいた、なんか食べたい!>と言って家のドアを開けるのを家の中で待っている。彼女はじっと待っている。
これがうちの母親だった。いや、お袋だけでなく世界中の母親とはこんなものなのだろう。
「浩一は本当にハンバーグが好きでねえ・・・。」お袋が誰に言うとでもなく、笑いながら繰り返した。
実家を後にして車の中、先ほどのお袋の顔を思い出した私は突然の涙に襲われた。びっくりするほど、涙は次から次へと流れ出た。
車を停めて兄にメールを送る。
「実家に寄ってくれ!<お腹が減ったのでハンバーグが食べたい!>とお袋に言ってくれ。できるだけ早く!」
息子への無限の愛を抱えたまま旅立った、母の人生を象徴する話である。
じゃ、また。
世界中の息子や娘がその父親や母親に関して語るとしよう。時間はいくらあっても足りないのではなかろうか。ましてや亡くなってしまった親に関して話そうとするならば、さらに時間が必要だ。
という訳で今回も母親に関して記しておかなければならない話。
独立して実家を出た後も、毎週日曜には顔を出していた。出先からの帰りに一度実家により飯をごちそうになる。その後自分の家に向かう。飯を食わせてもらうというのは建前で、親の顔を見るのが目的だった。
週に一度顔を見に行くと、両親はともに喜び「最近どう?」と聞いてくる。「一週間前に話したばかりじゃないか。」と言いつつもとりとめのない話をし、昼飯をごちそうになる。それも親孝行の一環。
例によって昼飯を食べに行ったある日の話。
準備してないからなんでも好きなものを温めて食べてねと言われ、冷凍庫の中身を物色していると、そこのほうから冷凍ハンバーグが出てきた。弁当箱にミニハンバーグが載ったパッケージは冷凍庫の一番下に埋もれており、ずいぶん冷凍庫の中で眠っていたと推測される。
「子供が食べるようなハンバーグだよ?、どうしたのさ?」と聞くと、「浩一(兄の名前)が好きなのよ、それ。」と返ってきた。「だって、これ、子供が食べるようなハンバーグだろ?兄貴はもう50過ぎてるよ?おっさんがこんなの食べるの?」と言うと、お袋は「何言ってんのよ。子供のころからお弁当のおかずはハンバーグが一番好きだったのよ。」とさも当たり前のように言う。
「で、最近兄貴は実家に来る?」と聞くと、全然来ないような事を不満そうにごにょごにょ独り言ちる。「きっと忙しいんだねえ。しょうがないねえ。」と自分を慰めるように。
そうして「でもね、いつ浩一が帰ってきて<お腹すいた!なんか食べたい!>って言うか分からないじゃないでしょ。だから買ってあるのよ。」と続ける。母親はさも「だからミニハンバーグを買っておくのは当たり前だ」と言わんばかりだ。
いつ来るか分からない長男の為に。子供の頃弁当に入れて持たせていた、あのミニハンバーグを購入して冷凍庫に眠らせておく。ただひたすら長男が<お腹すいた、なんか食べたい!>と言って家のドアを開けるのを家の中で待っている。彼女はじっと待っている。
これがうちの母親だった。いや、お袋だけでなく世界中の母親とはこんなものなのだろう。
「浩一は本当にハンバーグが好きでねえ・・・。」お袋が誰に言うとでもなく、笑いながら繰り返した。
実家を後にして車の中、先ほどのお袋の顔を思い出した私は突然の涙に襲われた。びっくりするほど、涙は次から次へと流れ出た。
車を停めて兄にメールを送る。
「実家に寄ってくれ!<お腹が減ったのでハンバーグが食べたい!>とお袋に言ってくれ。できるだけ早く!」
息子への無限の愛を抱えたまま旅立った、母の人生を象徴する話である。
じゃ、また。
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