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2014年12月9日

2014-12-13 23:44:23 | 

脳の免疫細胞の受容体を阻害することで、アルツハイマー病に対抗する
Blocking receptor in brain's immune cells counters Alzheimer's in mice



スタンフォード医科大学の研究者による新しい研究によれば、アルツハイマー病の神経細胞が大量に死ぬ原因は主にミクログリアという細胞が仕事をしなくなることから起きるのかもしれない。

マウスのミクログリアの細胞膜表面の分子の作用を阻害すると、仕事を片づける能力が回復することを研究者は発見した。それはマウスの記憶喪失と、他の多くのアルツハイマー病的な特徴を取り消した。12月8日にJCIのオンライン版で発表される今回の研究はミクログリアの重要性を示すものであり、アルツハイマー病の発症を防ぐ新しい方法に通じる可能性がある。それはまた、アスピリンとアルツハイマー病の発症率の減少との間の興味深い関連を説明するかもしれない。




脳の細胞のおよそ10-15パーセントを占めるミクログリアは、神経細胞よりも免疫細胞にかなり似ている。

「ミクログリアは脳の巡回警察官である」、研究のシニア・オーサーであり神経学と神経科学の教授であるKatrin Andreasson博士は言う。

「それらを正しく保つことは記憶喪失に対抗して健康な脳を保つことを、我々の実験は示す。」



ミクログリア細胞は最前線の手ごわい衛兵であり、周囲の環境を探査して疑わしい活動や物質を監視する。侵入してきた細菌とウイルスをむさぼり食うことによって脳を保護し、さらに別のミクログリアを呼び寄せる物質を分泌する。彼らはものを静めることの達人でもある。もし炎症が手に負えなくなると、炎症の取り締まりを強化する。

さらに彼らはごみ収集人としても働き、死んだ細胞や分子のゴミを噛み砕いて食べてしまう。そのゴミにはアミロイドベータと呼ばれるタンパク質クラスターが含まれる。アミロイドベータは粘着性の沈着物として凝集して、アルツハイマー病の解剖学的特徴であるプラークを形成する。

アミロイドベータは体の至る所で作られるが、いくつかの分子からなる可溶性のクラスターとして凝集すると神経細胞にとってきわめて有害な存在となる。このクラスターは、アルツハイマー病の発症において重要な役割を果たすと考えられている。

「ミクログリアは常にアミロイドベータを掃除して、炎症を抑制し続けていると考えられている」、Andreassonは言う。

「彼らが仕事をする能力を失うと、物事の制御は失われる。アミロイドベータは脳で蓄積して有毒な炎症を引き起こす。」

スタンフォードの研究は、このミクログリアの機能の悪化が主にミクログリアおよび神経細胞の表面にある「EP2」という単一の分子のシグナルの促進によって引き起こされるという有力なエビデンスを提供する。



Andreassonと他のラボによる以前の研究で、このEP2と呼ばれる受容体タンパク質はプロスタグランジンE2(PGE2)と結合して活性化されると、炎症を引き起こす強い潜在性があることが示されていた。

「我々の以前の研究では、マウスの脳細胞がこの受容体を持たないように生体工学によって変更すると、炎症性の活動が大幅に減少した。」

しかし研究者は、その炎症の低下の原因が神経細胞なのかミクログリアなのか、その正確な結果が何なのかが分からなかったため、実験して確かめることにした。



生存可能なミクログリアを脳から分離することは非常に難しい。しかしその同類であるマクロファージを大量に収穫することは簡単である。お互いに完全なコピーというわけではないが、ミクログリアとマクロファージは多くの遺伝子的、生化学的、行動的な特徴を共有する。

若いマウスから抽出されたマクロファージを可溶性のアミロイドベータ・クラスターと一緒にシャーレに入れると、反応は静かであった。他の細胞を呼び寄せる化学物質は生み出したが、炎症性分子の産生は増加しなかった。特に、この若い細胞のアミロイドベータを分解する酵素の産出は活発だった。

しかし、年老いたマウスから抽出したマクロファージは異なっていた: アミロイドベータはEP2の活性を大幅に増加させ、炎症性分子の産生は増強され、他を呼び寄せる化学物質ならびにアミロイドベータ消化酵素の産生は減少した。ミクログリアのEP2シグナルのこのような加齢に伴う変化は、アルツハイマー病に関係する神経病理学的特徴のいくつかを促進する可能性がある。この研究の前半でのヒントは、その後、次のような実験で裏づけられた。

Andreassonの研究チームは、ヒトのアルツハイマー病と似た状態(the mouse equivalent of Alzheimer's)になりやすい傾向を遺伝的に持つマウスに加えて、アミロイドベータまたはコントロール溶液を脳へ注入したマウスを使用した。

遺伝子操作でミクログリアのEP2を欠損させると、マウスのどちらのグループでも記憶と学習に対するアミロイドベータの悪影響は生じなかった。ミクログリアのEP2活性の阻害は、2種類の標準的なマウスの記憶検査の成績を著しく改善した。

アミロイドベータを加えた脳では、生体工学によってEP2がないマウス・ミクログリアは通常のミクログリアを大きく上回った。具体的には、他を呼び寄せる化学物質の分泌や、神経細胞に利益をもたらす因子の分泌、そして炎症を刺激するタンパク質よりも炎症に対抗するタンパク質を産生するというような重要な仕事においてである。



疫学的報告では、非ステロイド系抗炎症薬(例えばアスピリン)の使用はアルツハイマー病の発症を阻止できることが示唆される。ただし、疾患のどんな徴候でも示し始める十分に前から飲み始めた場合だけである、とAndreassonは言う。

「いったん記憶喪失のどんな気配(whiff)でも出てしまうと、これらの薬は効き目がない。」



NSAIDはCOX-1とCOX-2という2つの酵素を阻害することによって主に作用する; これらの酵素が作る分子はいくつかの別の物質に変換され、その中にはEP2に作用するPGE2が含まれる。PGE2は脳で炎症性の変化を調節し、体内でも様々な作用がある。さらに問題を難しくするのは、PGE2はCOX-1とCOX-2から生じる5つのプロスタグランジンの内のたった1つであるということだ。

したがってアスピリンと他のCOX-1/COX-2を阻害する薬には無数の作用があり、そしてそれらのすべてが有益なわけではない。ミクログリアのEP2だけ、またはその下流を阻害する化合物が、副作用のないアルツハイマー病の予防薬として適したものになるだろうとAndreassonは言う。

一方で彼女のグループは、EP2シグナルがミクログリアをダーク・サイドに過剰に突き動かす生物学的メカニズムを調べている。

記事出典:
上記の記事は、スタンフォード大学メディカル・センターによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.プロスタグランジン・シグナル伝達は、アルツハイマー病モデルにおいて有益なミクログリアの機能を抑制する。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141209082149.htm

<コメント>
アルツハイマーの予防にNSAIDs(特にイブプロフェン)が効くことが以前から示唆されていましたが、その分子的な機序を説明する記事です。

記事中の「神経細胞に利益をもたらす因子」ですが、本文を見るとIGF-1だと分かります。

>Validation of the EP2-dependent regulation of IGF1 was carried out in aged primary macrophages, where Igf1 mRNA expression was found to be suppressed by the EP2 agonist butaprost (Figure 4F).

活性化したミクログリアは抑制性シナプスを引き剥がして保護するという記事が以前にもありました。

そんなすごい作用があるらしいNSAIDsですが、本文にもあるように「少しでも徴候が出ていると効き目がない」のが残念です。だからといって必要な用量もわからないまま予防のために何十年も飲み続けるのは、副作用(消化管粘膜の傷害等)を考えると難しいです。

PGE2はオメガ6のアラキドン酸から変換されるので、とりあえずオメガ6が多い植物油を摂り過ぎるのは控え、オメガ6の変換と拮抗するオメガ3の適度な摂取を心がけた方がいいでしょう。