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2014年12月23日

2014-12-26 16:21:22 | 代謝

食事制限による健康的な効果の分子メカニズムが特定される
Molecular mechanism behind health benefits of dietary restriction identified



ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health; HSPH)の研究者は、食事制限による健康効果の背後にある重要な分子メカニズムを特定した。ここでいう食事制限とは栄養失調にならない程度に食品の摂取を減らすことであり、カロリー制限とも呼ばれる。

食事制限が実験動物の加齢を遅らせることはよく知られているが、今回の研究でメチオニンとシステインという2つのアミノ酸を制限すると硫化水素(H2S)の産生が増加して、虚血後の再灌流障害(ischemia reperfusion injury)に対して保護されることが示された。再灌流障害とは、臓器移植や脳卒中の間に起きるような血流の中断の後に生じる組織の損傷である。

食事制限に応じて増加するH2S産生は、ワームとハエ、そして酵母での寿命の延長とも関連していた。



大量のH2Sガスは非常に有毒であるが、自然に生じる硫黄泉に存在する程度のH2Sは健康効果と長い間関連していた。哺乳動物の細胞も少量のH2Sを生じるが、しかしこの分子が直接食事制限の健康効果へ関連づけられたのはこれが初めてである。

「今回の発見は、H2Sが食事制限による有益性の一因となる重要な分子の1つであることを示唆する。それは哺乳類でも下等動物でも同様である」、シニア・オーサーであり遺伝学と複合性疾患(complex diseases)の准教授でもあるジェームズ・ミッチェルは言う。

「H2Sがどのようにその有益な作用を発揮するかを理解するためにはもっと多くの実験が必要ではあるが、この結果はヒト疾患と加齢を防ぐための我々の努力においてどの分子を治療的な標的とすればいいのかについての新しい見通しを我々に与える。」

この研究は2014年12月23日のCellオンライン版で公開される。



食事制限とは食事への介入であり、それには食品摂取全体の減少、タンパク質のような特定の多量栄養素(macronutrients)の消費の減少、または間欠的な一定期間の絶食などが含まれる。

食事制限は組織傷害からの保護や代謝の改善といった有益な健康作用を持つことが知られ、酵母から霊長類まで複数のモデル生物の寿命を延長することも示されている。これらの作用の分子的な説明は完全には理解されていないが、それには食事制限それ自体に起因する軽度の酸化ストレスによって活性化される保護的な抗酸化応答が必要であると考えられた。

ファースト・オーサーであり遺伝学と複合性疾患学部のリサーチ・フェローでもあるChristopher Hineたちは、1週間の食事制限が抗酸化応答を上昇させ、マウスを肝臓虚血再灌流障害から保護することを証明した。

しかし驚くべきことに、この保護的な作用は、そのような抗酸化応答を持たない動物でも損なわれなかった。その代わりにこの保護はH2Sの産生の増加を必要とすることを研究者は発見した。そしてそれは2つの含硫アミノ酸、メチオニンとシステインの食事摂取量の減少によって生じた。食事にこれらの2つのアミノ酸を補うとH2Sの産生は増加せず、食事制限による有益性も消失した。

さらに、酵母とワーム、ハエなど他の生物での食事制限による寿命延長のためには、H2S産生に関与する遺伝子が必要であることも明らかになった。

「これらの発見は、食事介入がどのように寿命を延長して組織傷害から保護するかについての我々の理解を深めるものである。臨床的にすぐに活かすとすれば、手術のように虚血性傷害のリスクが比較的高く、計画された急性ストレスの前に、何を食べるべきで何を食べないべきかについて重要な影響を持つ可能性がある」、Hineは言う。

記事出典:
上記の記事は、ハーバード公衆衛生大学院によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.内因性の硫化水素産生は、食事制限の有益性のために必須である。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141223122220.htm



<コメント>
食事制限でメチオニン(methionine)とシステイン(cystein)の摂取を減らすと、体内での硫化水素(H2S)の産生が増加して、「虚血後の再灌流による傷害」に対する保護が得られるという記事です。

Abstractにはこう書かれています。

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食事制限 (DR) によるストレス抵抗マウスモデルにおける含硫アミノ酸 (sulfur amino acid; SAA) の制限は、含硫置換基移動(transsulfuration)経路 (TSP) のシスタチオニンγ-リアーゼ (CGL) を増加させ、その結果として硫化水素 (H2S) 産生が増加して肝臓での虚血再灌流による傷害 (ischemia reperfusion injury) から保護する。

SAAの補足/mTORC1の活性化、または化学的/遺伝的なCGLの阻害はH2S産生を減少させ、DRによるストレス抵抗性を阻害した。In vitroではミトコンドリアタンパク質のSQR (succinate-coenzyme Q reductase; コハク酸CoQレダクターゼ/複合体II) が、栄養/酸素の不足している間のH2Sによる保護に必要である。

含硫置換基移動/TSP経路に依存的なH2S産生は、酵母、ワーム、ショウジョウバエ、げっ歯類を含む食事制限/長寿動物モデルで観察される。
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虚血性心疾患の再灌流による傷害はコハク酸の蓄積によるという研究が最近ありました。今回の研究もコハク酸が関係しているようです。


食事制限により増加するというシスタチオニンγ-リアーゼ(Cystathionine gamma-lyase)は、ビタミンB6の活性体であるピリドキサールリン酸を補酵素として、L-システインからピルビン酸+NH3+H2Sを生じるなどの反応を触媒する酵素です。以前ハンチントン病と関連があるという記事が掲載されました。

イブプロフェンが酵母におけるトリプトファンの取り込みを阻害して寿命を延長するという記事が少し前にありましたが、今記事の関連記事にも手術前のタンパク質/トリプトファンの制限は手術後の合併症のリスクを低下させるという記事があります。今回と同じハーバード公衆衛生大学院のジェームズ・ミッチェルたちの研究グループによるもので、マウスでトリプトファンを欠乏させることで手術によるストレスへの抵抗が誘導され、そのためにはGcn2が必要という研究です。

Gcn2は、アミノ酸の不足またはTORC1の不活化により活性化して、翻訳開始因子のeIF2αをリン酸化してタンパク質の生合成を阻害するキナーゼです。


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