機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年12月8日

2014-12-11 22:26:32 | 癌の治療法

最も手ごわい乳癌は、好敵手に直面したかもしれない:
がん細胞に化学療法を効きやすくするタンパク質阻害剤

Toughest breast cancer may have met its match:
Protein inhibitor makes cell susceptible to chemotherapy



トリプルネガティブ乳癌は、名前の通り厄介である。この腫瘍を形成する細胞には、強力でカスタマイズされた治療薬に癌を反応させるための3つのタンパク質(ER、PR、HER2)がない。そのため医師は伝統的な化学療法で患者を治療するしかない。その化学療法で長期的な効果を示すのは患者の20パーセント未満である。

今回、ジョンズホプキンス大学の研究者はトリプルネガティブ乳癌が化学療法に抵抗するプロセスを逆転させる方法を発見した。彼らの報告は12月1日にPNASのオンライン版で発表された。



トリプルネガティブ乳癌は化学療法に抵抗性であることに加えて、癌幹細胞が多く含まれることが知られている。癌幹細胞は再発の原因であり、腫瘍を転移させて癌患者を死に追いやる。

以前の研究で、トリプルネガティブ乳癌細胞では低酸素誘導因子(HIF)によって制御される多くの遺伝子の活性が著しく増加することが明らかになっていた。Gregg Semenza医学博士たちの研究チームはこれらの過去の研究結果を考慮して、HIF阻害剤が化学療法の作用を改善する可能性について調べることに決めた。

「我々の研究は、化学療法がHIFのスイッチをオンにすることを示した。スイッチの入ったHIFは乳癌幹細胞の生存を強化する。癌幹細胞は、再発と転移を阻止するために殺さなければならない癌細胞である」、ジョンズ・ホプキンスのC.マイケル・アームストロング医学教授であり、ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンター専門家でもあるSemenzaは言う。

「良いニュースもある。我々にはHIFの作用を阻害する薬があるということである。」

Semenzaの研究は、ラボで成長させたトリプルネガティブ乳癌細胞に化学療法薬パクリタキセル(paclitaxel)を投与して、HIFレベルの変化を探すことから始まった。投与から4日後、HIFのタンパク質と活性レベルは増加した。同様に生き残った細胞の間で乳癌幹細胞の割合は増加した。

Semenzaたちの研究チームが癌細胞のHIFが少なくなるよう遺伝的に変更を加えると、癌幹細胞は化学療法による細胞死から保護されなくなった。これは癌幹細胞がパクリタキセルの毒性に抵抗するためにはHIFが必要であることを証明するものだとSemenzaは言う。



分子レベルで見ると、HIFが幹細胞の生存を強化する方法の1つは多剤耐性タンパク質1(multidrug resistance protein 1; MDR1)のレベルを増加させることによる。MDR1/ABCB1は化学療法薬をがん細胞から排出するポンプのように作用する。

しかし、トリプルネガティブ乳癌細胞にパクリタキセルとHIF阻害剤のジゴキシン(digoxin)を与えると、MDR1レベルは上がるよりむしろ低下した。トリプルネガティブ乳癌細胞を移植されたマウスでは、ジゴキシンとパクリタキセルの投与は、パクリタキセルだけの投与よりも30パーセント腫瘍サイズを減少させた。2剤の併用は、乳癌幹細胞の数とMDR1のレベルも低下させた。

ジゴキシンと別の化学療法薬のゲムシタビン(gemcitabine)を投与すると腫瘍の容積は3週以内にゼロになり、投与終了後にゲムシタビンだけを投与したマウスで観察されたような再発も阻止された。

化学療法で治療されたトリプルネガティブ乳癌の患者データベースの分析では、腫瘍のHIF活性レベルが平均より高い人々は、HIFレベルが平均より低い患者よりも死亡する可能性が非常に高かった。

Samantaは、HIF阻害剤のジゴキシンが心不全の治療薬としてすでに食品医薬品局(FDA)に承認されていることを強調する。他のHIFを阻害する薬もいくつか特定されており、現在、患者で試験中である。

記事出典:
上記の記事は、ジョンズ・ホプキンス・メディシンによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.乳癌幹細胞の化学療法への抵抗性には、低酸素誘導因子(HIF)が必要である。

PNAS、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141208152358.htm

<コメント>
MDA-MB-231のようなトリプルネガティブ乳癌は、HIFによって制御されるMDR1などの活性が上昇して化学療法に抵抗するだけでなく、化学療法自体がHIFの活性と癌幹細胞の割合を増加させるという記事です。Abstractによれば、パクリタキセルやゲムシタビンのような化学療法が癌幹細胞を増加させるのはIL-6とIL-8シグナルによるとのことです。

Semenza博士たちは数年前にジゴキシンがHIF-1の生成を阻害することを発見していました。Semenza博士たちはアクリフラビンもHIF-1を阻害できることを発見しています。

>アクリフラビン(Acriflavine)はその後の研究によりHIF-1に直接結合することが確認された。

最近、癌幹細胞の燃料についての記事、トリプルネガティブ乳癌のマーカーについての記事がありました。


2014年12月8日

2014-12-11 00:30:46 | 

アルツハイマー病を処置するための新しいアプローチ: 乾癬薬
New approach for treating Alzheimer's disease: Psoriasis drug



現在、世界でおよそ3500万人が認知症で苦しむと推定されており、2050年までに1億3500万人に増加すると予想される。ドイツ・アルツハイマー病アソシエーション(the German Alzheimer's Association; DAlzG)の推定によれば現在のドイツには約150万人の認知症患者が在住し、その約100万~120万はアルツハイマー病である。

ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ(JGU)メディカル・センターの精神医学・精神療法学部の研究者は、アルツハイマー病の治療法に今後どのような可能性があるかについての新しい洞察を得た。その洞察とは、乾癬の治療薬として承認されている薬が、アルツハイマー病の脳でADAM10という酵素の活性を刺激するということである。ADAM10は脳機能障害のようなアルツハイマー病に関連する影響を抑制することが可能であり、したがって学習と記憶容量を改善できる可能性があるという十分な基礎研究のエビデンスがすでに存在する。

それと関連する研究結果が最近Neurology誌で発表された。



最も広く見られる遅発性アルツハイマー病の原因に関するコンセンサスは依然として存在しないが、セクレターゼという酵素の活性が役割を果たすことが一般に認められている。セクレターゼは細胞膜上に存在し、タンパク質を切断してその断片を細胞外空間に放出する。

アルツハイマー病ではベータセクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein; APP)の切断が増加して、アミロイドβペプチドが形成される。これらのペプチドは凝集して神経細胞を傷つけ、患者の脳で蓄積する。いわゆるアルツハイマー病プラークの主要な構成要素である

アルファセクレターゼのADAM10は、ベータセクレターゼと競合する。アルファセクレターゼはアミロイドβペプチドが形成されないようにアミロイド前駆体タンパク質を切断し、代わりに神経細胞を保護する成長因子「APPsα」が分泌される。

マインツ大学メディカル・センターのKristina Endres博士とFalk Fahrenholz教授は開始点としてこの情報を取り入れ、アルツハイマー病の治療薬に新しいアプローチを取り入れることを決めた。彼らは精神医学・精神療法学部のKlaus Lieb教授とAndreas Fellgiebel教授、そしてロストック神経変性疾患ドイツセンター(DZNE)のStefan Teipel教授の研究チームと協力して、アルツハイマー病患者における乾癬薬であるアシトレチン(acitretin)の経口投与が脊髄液で高レベルのAPPsαにつながることを証明した。これはアシトレチンによるアルファセクレターゼADAM10の活性の刺激と解釈される。これはアルツハイマー病プラークの蓄積の減少に結びつくだろう。アルツハイマー病の動物モデルではADAM10が学習と記憶容量を強化することも示された。

アシトレチンの忍容性は十分に高いが、この薬が認知パフォーマンスに与える影響と実際に長期間の治療法として使えるかどうかを確認するため、より大規模な臨床的な試験を実施する必要があるだろう。

記事出典:
上記の記事は、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.アシトレチンで治療したアルツハイマー病患者における脳脊髄液中のAPPsαレベルの増加。

Neurology、2014年12月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141208093246.htm

<コメント>
乾癬(psoriasis)で使われるレチノイドのアシトレチン(acitretin)が脳のADAM10の活性を刺激してアルツハイマーに効果があるかもしれないという記事です。

ベキサロテンは再現性がないとされましたが、6月にはタミバロテンとRXRアゴニストの組み合わせについての熊本大学の発表がありました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24916544
Cooperative Therapeutic Action of Retinoic Acid Receptor and Retinoid X Receptor Agonists in a Mouse Model of Alzheimer's Disease.

セロトニンがAβを抑制するという記事もありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ef9515cea0ae9855cd989a4b896360c1
以前の研究ではセロトニンがアミロイド・ベータの産生を低下させることが示された。
抗うつ剤(antidepressant)のシタロプラム(citalopram)は既存のプラークの成長を止め、新しいプラークの形成を78パーセント低下させた。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ad06785ebedd4298b25fb41fb68eee65
ビタミンD→TPH2→脳のセロトニン
ビタミンD─┤TPH1→腸のセロトニン
ビタミンD↓→TPH2↓TPH1↑→脳のセロトニン↓腸のセロトニン↑

2014年12月5日

2014-12-10 15:19:56 | 癌の治療法

前立腺癌の成長と浸潤を阻止する治療薬が、動物で実験される
Agent prevents prostate cancer growth, spread in animal studies



ジョージタウン・ロンバルディ総合がんセンターの研究者は、研究室の基礎科学から臨床的な応用に向けた行程における重要なステップを完了した。

実験的治療薬YK-4-279は、前立腺癌で一般的な染色体異常を持つマウスにおいて腫瘍の増殖と浸潤を阻止することを示した。12月5日にPLoS ONEで発表された研究によれば、YK-4-279は前立腺癌細胞のおよそ半分で見られる染色体転座を標的にする初めての薬である。

転座は2つの正常な遺伝子が染色体から切断される時に生じ、それらは新しい位置で互いに融合する。このいわゆる「ETS融合」は、タンパク質を製造する新しい遺伝子を生み出して、前立腺癌の悪性化と転移を促進する。

「マウス・モデルで作用する化合物の存在により、我々はヒトの臨床試験に近づく」、ジョージタウン・ロンバルディのリード研究員、Aykut Uren医学博士は言う。

Urenたちは2つの前立腺癌の細胞株を免疫不全マウスで増殖させた。

「YK-4-279はETS融合があるマウスに対してはきわめて効果があったが、融合のないマウスに対しては効果がなかった。この結果は薬の選択制を証明するものであり、今後のヒトでの臨床試験でも類似した応答が起きると予想できる十分な理由になる。」

マウスは長期の治療(6-12週)にも耐え、YK-4-279は一次性腫瘍の成長ならびに肺に対する癌の浸潤を阻害した。

学術誌参照:
1.ETV1の小分子阻害剤YK-4-279は、マウス異種移植(Xenograft)モデルにおける前立腺癌成長と転移を阻止する。

PLoS ONE、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141205142422.htm

<コメント>
前立腺癌でよく見られるETSファミリー転写因子の転座に対して、それを阻害する実験薬のYK-4-279が動物実験で効果を示したという記事です。

本文によれば、ETSファミリー転写因子のERGとETV1がTMPRSS2SLC45A3のようなアンドロゲン応答遺伝子のプロモーターに転座することで生まれる融合タンパク質は、非常に悪性度が高い前立腺癌を生じます。

ETSファミリーの活性を阻害することは前立腺癌の新しい治療法になるだろう、とのことです。


2014年12月1日

2014-12-09 13:40:31 | 

悪性の乳癌と関連する遺伝子が発見される
Gene associated with an aggressive breast cancer uncovered



A*STARのシンガポールゲノム研究所(Genome Institute of Singapore; GIS)の科学者は地元の米国臨床医たちと協力して、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)と強く関連するバイオマーカーを特定した。トリプルネガティブ乳癌は化学療法をしてもすぐに再発して転移することが多い、きわめて悪性の癌である。

新しく特定されたバイオマーカーはRASAL2と呼ばれる遺伝子である。このバイオマーカーは新しい治療法の設計と開発の標的となる可能性がある。



エストロゲン受容体(ER)が陽性の乳癌やHER2で増幅される乳癌とは異なり、TNBCは致命的である。その理由は、ER陽性/HER2乳癌には効果的な分子標的治療があるのに対して、TNBC腫瘍は標的治療に反応しないためである。乳癌には多くのサブタイプがあり、それぞれ異なる遺伝子の構成を持つ。したがって、サブタイプが異なると、浸潤と転移のふるまいも異なる。

分子生物学者Min FengとGISの同僚は、乳癌組織サンプルのゲノム・データと乳癌細胞系統を使用した統合的アプローチにより、TNBCの高い転移能を説明するような調節不全を起こす遺伝子を捜そうと試みた。

その結果、高い転移能を持つTNBC細胞では特定のマイクロRNA(miR-203)が失われていることが明らかになった。このマイクロRNAは管腔細胞型乳癌(luminal breast cancer)では失われない。TNBC腫瘍でマイクロRNAが失われると、それによって抑制されていたRASAL2が上方調節される。

患者の予後を調べると、腫瘍でRASAL2の発現が高いTNBCの患者は、発現が低い患者と比較して生存率が低い傾向が見られた。乳癌マウス・モデルでは、RASAL2遺伝子をノックダウンすると転移の減少につながることが示された。

興味深いことに、以前の研究ではRASAL2が管腔型の乳癌の一部で失われることが明らかになっている。管腔細胞型においてRASAL2は腫瘍サプレッサー遺伝子として働く。

研究のプロジェクト・リーダーであり、GISのキャンサー・セラピューティクスならびに多層的腫瘍学プログラム(Stratified Oncology Program)のシニア・グループ・リーダーであるQiang Yu教授は次のように言う。

「癌は非常に異なった要素からなる疾患である。この疾患では、多くの分子プロセスがそれぞれ間違った方向に進んでいる。TNBCにおいてRASAL2は腫瘍サプレッサー遺伝子というよりむしろ、癌を促進する分子として働く。このことから我々が連想するのは、同じ分子でも癌のサブタイプが異なると、きわめて異なる機能を果たし得るということである。それは以前からしばしば観察されてきた現象だ。」

記事出典:
上記の記事は、A*Star Agency for Science, Technology and Researchによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.RASAL2はRAC1を活性化して、トリプルネガティブ乳癌進行を促進する。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201113408.htm

<コメント>

トリプルネガティブ乳癌(triple negative breast cancer; TNBC)の新たなバイオマーカーとして、miR-203の抑制と、RASAL2の上方調節が特定されたという記事です。

TNBC(MDA-MB-231, BT-549)ではいくつかのマイクロRNA群が失われているため、RASAL2が上方調節されてRAC1による腫瘍の浸潤と転移を促進します。逆にLuminalタイプ(MCF-7, BT474)ではRASAL2は腫瘍を抑制する方向に働きます(RASAL2はTNBCの38%、HER2+の16%で強く発現していたが、Luminalではほとんど発現していなかった)。


Luminal

 RASAL2─(E-カドヘリンによるMET)─┤RAS→pERK→成長/転移

 RASAL2↓ ───────────┤RAS↑→pERK↑→成長/転移

TNBC

 miR-200─┤ZEB1/2, SNAI1/2─┤E-カドヘリン─┤EMT
 miR-203─┤RASAL2─┤ARHGAP24─┤RAC1活性化→間葉系浸潤/転移


 miR-200↓─┤ZEB1/2, SNAI1/2↑─┤E-カドヘリン↓─┤EMT↑
 miR-203↓─┤RASAL2↑─┤ARHGAP24↓─┤RAC1活性化↑→間葉系浸潤/転移↑




ところで記事中の「同じ分子でも癌のサブタイプが異なるとまったく異なる機能を果たす」というのは、論文を見ると例えばTGF-βのことだと分かります。

>This phenomenon seems to resemble TGF-β signaling,
> which acts as an oncogene in basal breast tumors, in which it promotes EMT and metastasis,
> and acts as a tumor suppressor in luminal tumors, in which it is downregulated (54, 55).

2014年12月4日

2014-12-07 11:35:22 | 感染症

チフスのメアリー、マウスのチフス:
チフスからマウスを保護する酵素は、ヒトにはない

Typhoid Mary, not typhoid mouse: Enzyme protects mice, not humans from typhoid



チフス菌はヒトにチフスを引き起こすが、他の哺乳類はチフスにかからない。カリフォルニア大学サンディエゴ校とエール大学医学部の研究者は、今その理由の1つを明らかにする。それは、ヒトがCMAHという酵素を持たないからである。

この酵素がないと毒素はヒトの細胞に結合しやすくなり、細胞に侵入して病気を引き起こすことが可能になる。この研究はCellの12月4日号で発表される。

http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(14)01429-9



我々に進化的に最も近い大型類人猿を含むほとんどの哺乳類では、CMAHは細胞表面の糖分子をチフス菌の毒素が結合できない種類に変更する。

ヒトはCMAHを産生しないため、細胞表面の糖分子は変化しないままである。今回の研究が示すように、それはちょうどチフスの毒素が結合できる状態である。

「我々がこのプロジェクトを始めたのは、全く関係がない癌に関する研究のためだった。しかし代わりに、セレンディピティにより我々はチフスの毒素の結合に関するミステリーを解決した」、共シニア・オーサーのカリフォルニア大学サンディエゴ校Ajit Varki博士は言う。

全ての哺乳類は、細胞表面をNeu5Acというシアル酸糖分子の一種で装飾する。大部分の哺乳類において、CMAHはNeu5AcをNeu5Gcに変換する。それはただ1つの酸素原子を含むだけの、わずがだが重要な違いである。

VarkiとGalanたち研究チームは、チフス毒素の結合は、ヒト・タイプのNeu5Acにきわめて特異的であることを初めて発見した。

記事出典:
上記の記事は、カリフォルニア大学サンディエゴ校健康科学によって提供される素材に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141204140614.htm



<コメント>
チフス菌(Salmonella Typhi)の毒素の結合は、CMAHをもたないヒトに特異的であることが判明したという記事です。

CMAH(CMP-Neu5Ac hydroxylase)は、シアル酸の一種であるN-アセチルノイラミン酸 (Neu5Ac) をN-グリコリルノイラミン酸 (Neu5Gc) に変換する酵素です。

タイトルの「チフスのメアリー」を画像検索すると、こんなのが。荒木先生…


2014年12月3日

2014-12-04 23:03:40 | 環境

毛虫の腸の細菌はプラスチックを分解する
Gut bacteria from a worm can degrade plastic



中国の北京航空航天大学(Beihang University)の科学者は、食品のパッケージをムシャムシャ食べる(munch)ことが知られている毛虫の腸の細菌がポリエチレンを分解できることを発見した。ポリエチレンは最もありふれたプラスチックである。

米国化学学会(ACS)の学術誌Environmental Science & Technologyで報告された今回の発見は、分解されにくい廃棄物を一掃するのを助ける新しい方法につながる可能性がある。



世界中のプラスチック産業は毎年およそ1億4000万トンのポリエチレンを大量生産している。科学者はどのようにこのプラスチックのゴミを除去するべきか長い間ずっと研究してきた。

最近の研究のいくつかはプラスチックを分解するように細菌をけしかける(sic)ことを試みたが、それらはまず初めにプラスチックを光または熱にさらすことを必要とした。

Yangの研究チームはワンステップでポリエチレンを分解させることができる細菌を見つけようとして、waxwormというプラスチックを食べる蛾の幼虫に着目した。彼らはwaxwormの腸微生物の少なくとも2つの菌株が、前処理をすることなくポリエチレンを分解できることを発見した。

記事出典:
上記の記事は、米国化学学会によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.プラスチックを食べるwaxwormsの腸細菌の菌株によるポリエチレン生分解のエビデンス。

Environmental Science & Technology、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141203111130.htm



<コメント>
ポリエチレンを分解する細菌が、蛾の腸から発見されたという記事です。

記事中のwaxwormは、ノシメマダラメイガ(Indian mealmoth/ Plodia interpunctella)という蛾の幼虫のようです。

蛾の幼虫が本当にプラスチックを食べるのだろうかと思って検索してみました

http://www.ricepier.jp/%E3%81%8A%E7%B1%B3
>ノシメマダラメイガは、購入時のお米の袋など食い破って中に入り込んでしまうこともあります。
>この虫の幼虫はビニールくらい簡単に食い破る能力があるので、ビニールに密封しただけでは完璧とはいえません。

ビニールを食い破る能力があるというより、この幼虫にとってはビニール袋そのものがエサなんでしょうね。


2014年11月26日

2014-12-04 10:03:58 | 

多くの腫瘍の進行に重要な酵素
Enzyme may be key to cancer progression in many tumors



KRAS遺伝子の突然変異によって癌が起きることは長く知られていた。充実性腫瘍(solid tumors)のおよそ3分の1はKRASまたはKRAS経路の突然変異がある。

KRASは細胞成長と分裂を引き起こすことによってだけでなく、保護的な腫瘍抑制遺伝子をオフにすることによっても癌形成を促進する。腫瘍抑制遺伝子は通常、制御できない細胞の成長を制限して、損傷を受けた細胞を自滅させる。

アイオワ大学の最新の研究は、KRASが腫瘍抑制遺伝子をオフにするプロセスにおいて重要な酵素であるTET1を特定した。この酵素は癌の診断と治療の重要な目標である可能性が示唆される。この発見は11月26日にCell Reportsのオンライン版で発表される。



KRAS変異による癌において腫瘍抑制遺伝子はオフにされる(サイレンシング)が、それは抑制遺伝子の発現を制御するDNAがメチル化によって修飾されるためである。アイオワ大学の研究は、このメチル化に関与する遺伝子のサイレンシングをKRASが促進することを示す。KRASは、DNAからのメチル基の除去に関与するTET1酵素をオフにする。

アイオワ大学カーヴァー医科大学で生化学ロイJ.カーヴァー教授職でありシニアオーサーのCharles Brenner博士は次のように説明する。

「TET1というメチル基イレーサーは通常、非悪性の細胞で発現している。しかしKRASが活性化するとメチル基イレーサーはサイレンシングされ、遺伝子の発現を沈黙させるメチル基が蓄積される。」

KRAS突然変異により癌になった細胞は、異常に増殖してコロニーを形成する。Brennerと筆頭著者のBo-Kuan Wu博士は、この癌細胞にTET1を加えると腫瘍抑制遺伝子を再活性化させ、その異常な増殖を減少させるために十分であることを発見した。

癌細胞からKRASシグナルを除去するとその悪性度は低下したが、KRASが存在しなくても、細胞からTET1を除去することは再びそれらを癌化するには十分であった。



この経路を阻害する阻害剤は現在利用可能である。

「これらの阻害剤はいくつかの腫瘍で作用するが、そうでない腫瘍もある」、Brennerは言う。

「我々は、阻害剤がTET1を再び発現させることができるかどうかが、薬が腫瘍で作用するためのきわめて有力なバイオマーカーであると考えている。TET1の活性化は多くの悪性腫瘍に対する普遍的な治療学的戦略であるかもしれないと我々は考える。」

記事出典:
上記の記事は、アイオワ大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.TET1依存的なDNA脱メチル化反応の抑制は、KRASによって媒介される形質転換のために必須である。

Cell Reports、2014年11月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141126123924.htm



<コメント>
変異したKRASは、ERKを介して脱メチル化に関与する腫瘍抑制遺伝子TET1(Tet Methylcytosine Dioxygenase 1)のスイッチを切ってしまうという記事です。

DNAのシトシンはDNMT(DNA methyltransferase)によってメチル化され、反対にメチル化シトシンはTETによってヒドロキシル化されてから脱メチル化されます。

※TET1は、CXXCドメインによりプロモーターに局在する。TET2はCXXCドメインを欠く

IDH1/2の変異によって生じる2-ヒドロキシグルタル酸(2-hydroxyglutarate; 2-HG)は、JHDM/TETを抑制して、ヒストン/DNAの脱メチル化を抑制します。JHDMはヒストン、TETはDNAを、α-ケトグルタル酸をコファクターとして脱メチル化反応を触媒する酵素です。


2014年12月2日

2014-12-03 11:21:18 | 癌の治療法

制酸薬は、頭頚部癌でより優れた生存との関連がある
Antacids linked to better survival in head and neck cancer



ミシガン大学総合癌センターの新しい研究によれば、酸逆流をコントロールするために制酸薬剤を使用した頭頚部癌(head and neck cancer)の患者は、全生存期間が改善した。

酸逆流(acid reflux)は頭頚部癌の放射線治療や化学療法ではありふれた副作用である。ミシガン大学の医師はこの副作用の治療を補助するためにプロトンポンプ阻害薬またはヒスタミンH2ブロッカーという2つのタイプの制酸薬をしばしば処方する。

研究者は頭頚部癌の治療を受けた596例の患者を分析した。患者の3分の2以上は診断後に制酸薬の1つまたは両方のタイプを服用した。制酸薬を服用していた患者は、服用しなかった患者よりも全生存期間が著しく優れていた。

プロトンポンプ阻害薬(Prilosec、ネキシアム、プレバシドなど)は最も大きな効果があった: 制酸薬を服用しなかった患者と比較して、死亡リスクが45パーセント低下した。

ヒスタミンH2ブロッカー(タガメット、Zantac、Pepcid)を服用していた患者は、死亡リスクが33パーセント低下した。

「これらの薬剤はどういうわけか、患者の結果への好ましい影響があると思われた。我々の大きな患者コホートを制酸薬に焦点を合わせてスクリーニングしてレビューすることにした。実際、我々の研究結果は制酸薬を服用している人々の予後が良いことを示した」、ミシガン大学メディカルスクールで耳鼻咽喉科学・頭頸部手術のリサーチ・アシスタント・プロフェッサーである筆頭著者のシルバーナPapagerakis医学博士は言う。今回の研究結果は、Cancer Prevention Researchの12月号で発表される。

研究者はこれらの薬剤がなぜ癌に影響を及ぼすかことを確信していないが、関与するメカニズムを理解するために付加的な研究を開始した。

「我々はこの薬剤が癌の進行を止める可能性があると考えている。より長い治療期間はおそらく転帰の生存に関して重要な影響を持つかもしれない」、Papagerakisは言う。



制酸薬は比較的安全であることが観察され、ほとんどあるいはまったく有害な副作用がない。より重要なこととして、頭頚部の癌患者はこれらの薬剤にすでに服用していることをPapagerakisは強調する。

「本研究が明らかにすることは、これらの薬剤がただ副作用をコントロールするだけでなく、患者に利益をもたらすかもしれないということである」、彼女は言う。

学術誌参照:
1.プロトンポンプ阻害薬とヒスタミンH2ブロッカーは、頭頸部扁平上皮癌の患者で全生存期間の改善と関連する。

Cancer Prevention Research、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141202081926.htm

<コメント>
前回の記事と同じような内容の研究が、今度はミシガン大学から発表されました。

制酸薬やメトホルミンMetformin)のように癌に影響する薬は他にも色々ありそうです(海外のWikipediaには癌に対する効果の記述もあります)。

>In addition, the first clinical trials demonstrated a beneficial effect in breast and colon cancer.[128]

2014年11月26日

2014-12-01 23:19:14 | 癌の治療法

ありふれた制酸薬は、安価な抗癌剤となる可能性がある
How a common antacid could lead to cheaper anti-cancer drugs



ecancer medicalscienceで発表される研究によると、広く使われている消化不良の薬であるシメチジンは結腸直腸癌での生存を増加させる。

「シメチジンは興味深い薬である。きわめて安全で、きわめてよく知られていて、そして癌に対する臨床的な結果がある。それは多くの試験で確認されてきた」、論文の筆頭著者であり、腫瘍学における薬再利用プロジェクト(Repurposing Drugs in Oncology; ReDO)のメンバーでもあるPan Pantziarkaは言う。

シメチジンは腸のヒスタミン受容体を阻害することによって胃酸の産生を減少させて消化不良を治療するが、シメチジンは癌細胞のヒスタミン受容体も阻害するようだ。さらに、癌に対する免疫システムの防衛を支援する。

シメチジンは、結腸直腸癌、胃癌、メラノーマ、そして腎細胞癌でポジティブな作用を持つことが示された。



世界中の癌研究者の国際共同研究であるReDOプロジェクトの主な活動は、癌の全く新しい治療法だが手付かず(untapped)となっている薬の源を示す、ありふれた薬剤の根拠を推進することである。

ecancer medicalscienceで発表された以前の論文で、ReDOの研究者はメベンダゾールという薬の抗癌特性を調べた。メベンダゾールは医師の処方なしで買うことができる線虫の治療薬である。今回、ReDOプロジェクトはecancerと協力して、十分なエビデンスがあり臨床試験に到達した薬に関する一連の論文を発表する予定である。

今後の論文は、ニトログリセリン(狭心症を治療するのに用いられる)、イトラコナゾール(ありふれた抗真菌薬)、ジクロフェナク(医師の処方なしで売れる鎮痛剤)、クラリスロマイシン(抗生物質)の潜在的な抗癌剤としての作用についてである。



「開発資金と適切な臨床試験を実施するための特別手当(financial incentives)が出ないそのような有望な治療法を、製薬会社はしばしば無視する」、抗がんファンド(Anticancer Fund)の医学ディレクターであるGauthier Boucheは言う。

「ReDOプロジェクトはそのような可能性を見つけて実証するために設立された。」

ReDOプロジェクトのリーダーによると、アスピリンや制酸薬の抗癌剤としての再利用(Repurposed anticancer drugs)は癌治療薬の研究の未来を示すかもしれない。安価で手に入れやすくほとんど副作用がないこれらのソリューションは、低所得国から中所得国のヘルスケア専門家にとってきわめて魅力的である。再利用薬は先進諸国での経済的負担を低下させる可能性もある。

記事出典:
上記の記事は、ecancerによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.腫瘍学における薬の再利用(Repurposing drugs in oncology; ReDO)。抗癌剤としてのシメチジン。

ecancermedicalscience、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141126111118.htm

<コメント>
古い薬を抗癌剤として再利用しようというプロジェクトが進行中という記事です。

記事中のメベンダゾール(Mebendazole)は鞭虫に対する唯一の駆虫剤で、寄生虫のグルコース取り込みを阻害するといういかにも「効きそう」な薬です。海外のWikipediaの方には抗癌作用についての記述もあります。

>Several studies show mebendazole exhibits potent antitumor properties.

最近はこのような記事が多い印象です(ベラパミルダントロレンテプレノン)。