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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

リソソーム内のα-シヌクレイン原繊維はチューブを通じて伝わる

2016-08-24 06:06:00 | 
Tunneling nanotubes between neurons enable the spread of Parkinson's disease via lysosomes

August 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160822111818.htm


(TNTによって繋がっているニューロン細胞
TNT内部にはシヌクレインの原繊維synuclein fibrils (赤色の凝集物) が含まれる

Credit: Copyright Institut Pasteur)

パスツール研究所/Institut Pasteurの科学者は、α-シヌクレインというタンパク質の凝集物aggregatesがニューロン間を輸送される際に『リソソーム小胞/lysosomal vesicle』が果たす役割を実証した
このタンパク質の凝集はパーキンソン病や他の神経変性疾患の原因である

α-シヌクレインがニューロンからニューロンへと移動するのは、細胞間の『細胞膜ナノチューブ/tunneling nanotube(TNT)』に沿って移動するリソソーム小胞によるものだという
この研究結果は8月22日にThe EMBO Journalで発表される


シヌクレイノパチー/synucleinopathyはパーキンソン病を含めた神経変性疾患のグループの一つであり、その特徴は中枢系から末梢の神経系に至るまで『折りたたみに失敗misfoldedしたα-シヌクレインタンパク質』の凝集物が封入体inclusionの中へと病的に蓄積することである
α-シヌクレイン凝集物の細胞間の伝達propagation(ニューロンから隣のニューロンへの)は神経病理が進行する一因だが、そのような拡散が生じるメカニズムはほとんどわかっていなかった


Chiara Zurzoloが率いる膜輸送病理発生ユニット/Membrane Traffic and Pathogenesis Unit(パスツール研究所)の科学者たちは、病原性のα-シヌクレイン原繊維がニューロン間を移動するのはリソソーム小胞の中に入ったまま細胞膜ナノチューブ/tunneling nanotube(TNT)を通ってであることを蛍光顕微鏡を使って培養細胞で実証した
TNTは最近発見された細胞間コミュニケーションのメカニズムである

TNTで移動したα-シヌクレイン原繊維は、受け取った側の細胞質にある可溶性のα-シヌクレインを呼び集めてrecruit凝集させるaggregationことが可能であり、これは疾患が拡散する説明になる

科学者たちの考えによると、リソソーム内のα-シヌクレイン凝集物で過剰な負荷overloadedを受けた細胞は、TNTを介する細胞間輸送を乗っ取ることによりそれらを処分dispose of するのだろうという
しかしながら、その結果として疾患は『ナイーブなニューロンnaive neurons』へと拡大していく


今回の研究はTNTがα-シヌクレイン原繊維の細胞間輸送で重要な部分を演じることを実証し、このプロセスではリソソームが特別な役割を持つことを明らかにした
これはシヌクレイノパチーの進行の根底にあるメカニズムの理解における象徴的な大発見である

これらの説得力のあるcompelling 発見は、同チームによる以前の報告と合わせて、神経変性疾患でのプリオン様タンパク質の拡散においてTNTが果たす全体的な役割を指し示し、治療不可能なこれらの疾患の進行と戦うための新たな治療標的がTNTであることを明らかにした


http://dx.doi.org/10.15252/embj.201593411
Tunneling nanotubes spread fibrillar α-synuclein by intercellular trafficking of lysosomes.
細胞膜ナノチューブはリソソーム細胞間輸送により原繊維α-シヌクレインを広める


Abstract
パーキンソン病のようなシヌクレイノパチーは、中枢から末梢神経系にわたってミスフォールドしたα-シヌクレイン凝集物が封入体へ病理学的に集積することを特徴とする
集積しつつある証拠はα-シヌクレインの細胞間伝播intercellular propagationが神経病理neuropathologyに寄与することを示唆するが、拡散が起きるメカニズムは完全には理解されていない

今回我々は共培養co-culturedしたニューロンで定量的な蛍光顕微鏡を使い、リソソーム小胞内のα-シヌクレイン原繊維が細胞膜ナノチューブ/tunneling nanotube(TNT)を通じてドナー細胞からアクセプター細胞へと効率的に移行することを示す
TNTでの移行後、α-シヌクレイン原繊維はアクセプター側の細胞質で可溶性α-シヌクレイン凝集の核となるseedことが可能である

リソソーム内のα-シヌクレイン凝集物が過負荷になったドナー細胞は、TNTを介する細胞間輸送を乗っ取り、この物質を処分することを我々は提案する

ゆえに、我々の発見はシヌクレイノパチーの進行におけるTNTとリソソームの全く新しい役割の可能性を明らかにするものである


Synopsis

Early endosome/初期エンドソーム
Recycling endosome/リサイクリングエンドソーム
Lysosomal vesicles/リソソーム小胞
Damaged lysosomal vesicles/損傷したリソソーム小胞
Oxidative stress(Reactive oxygen species)/酸化ストレス(活性酸素種)

Soluble α-synuclein/可溶性α-シヌクレイン
Misfolded α-synuclein/折りたたみに失敗したα-シヌクレイン
Recombinant α-synuclein fibrils/組み換えα-シヌクレイン原繊維
De novo α-synuclein aggregates derived from recombinant α-synuclein fibrils/組み換えα-シヌクレイン原繊維に由来する新規のα-シヌクレイン凝集物

・α-シヌクレイン原繊維はリソソームによって分解の標的にされる

・α-シヌクレイン原繊維は隣接する細胞間のTNTの形成を促進し、それはおそらく酸化ストレスの増加による

・α-シヌクレイン原繊維の負荷量が過剰overloadedになったリソソームは、ドナー細胞と隣接するアクセプター細胞をつなぐTNTの中を移行する

・いったんアクセプター細胞内に入ると、おそらくリソソームから脱したα-シヌクレイン原繊維は、細胞質に存在する内因性の可溶性α-シヌクレインの凝集核となることが可能である



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1d20ea3a1746202fc52edade6f3da2be
パーキンソン病ではリソソームによるオートファジーが低下する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e85b18da730d8dc42021e862f73efce8
VPS35を欠損するマウスではドーパミンニューロン内のリソソームが適切に機能しない



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GBA1突然変異はERストレスとオートファジーを破綻させてα-シヌクレインを細胞外へ放出させる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/db6cd3ef00d05c4d60094106fdbd459e
アンブロキソールはリソソーム酵素であるグルコセレブロシダーゼの活性を増大させる
 

アポE4はタウタンパク質やAPPの切断を阻害する

2016-08-21 06:06:33 | 
New mechanism discovered for Alzheimer's risk gene

August 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160817163749.htm

(画像はHtrA1。セリンプロテアーゼ活性部位active siteの触媒三残基/serine protease catalytic triadであるヒスチジン220(H220)、アスパラギン酸250(I250)、セリン328(S328)という3つのアミノ酸残基が示されている
※HtrA1のS328Aは機能喪失変異


ソーク研究所の科学者たちは、HtrA1という酵素がアポE4を分解することを突き止めた
アポE4はアルツハイマー病の最も強い遺伝リスク要因であり、この発見は最終的にアルツハイマー病という神経変性疾患の新たな治療につながるかもしれない新しい情報をもたらす

Credit: Salk Institute)


数十年もの間、アポリポタンパク質E4(アポE4)という遺伝子を2コピー持つ人々は65歳時点でアルツハイマー病である可能性が一般よりも高いことが知られていた

今回の研究でソーク研究所の科学者たちは、アポE4と、アルツハイマー病と関連するタンパク質の蓄積との間のつながりを突き止めた
これは余分なアポE4がどのようにしてアルツハイマー病を引き起こすのかに関する生化学的な説明をもたらすのかもしれない

「今回の研究の全体像としては、アルツハイマー病ではタンパク質がどのようにして調節されているのかについて、これまでとはまったく異なる考え方を我々は発見したということだ」
Alan Saghatelianは言う
彼はソーク研究所の教授であり、ソークのクレイトン財団ペプチド生物学研究室ではDr. Frederik Paulsen Chairの保持者でもある
2016年8月号の米国化学会誌/Journal of the American Chemical Society(JACS)で発表される彼らの研究結果は、疾患の理解を進めるためには伝統的にアルツハイマー病と関連がないとされていた遺伝子とタンパク質を調べることが重要であるということを強調する


遅発性アルツハイマー病/Late-onset Alzheimer's disease(LOAD)は65歳かそれ以上で起きる疾患サブセットで、アメリカだけでも500万人以上が罹患しており、その特徴は進行性の記憶喪失と痴呆である
その原因について、脳内のベータアミロイドプラークと呼ばれるタンパク質のクラスターclusterやタウタンパク質のもつれtangleなど様々な仮説が提案put forthされてきた

アポリポタンパク質E/ apolipoprotein Eには3つのバージョン(多様体variant)があり、それぞれアポE2、アポE3、アポE4と呼ばれる
これらのアポEタンパク質はすべて同じ機能を持つ
つまり、脂肪、コレステロール、ビタミンを体中に運び、そして脳内にもそれらを運んでいる

アポE2はLOADに対して保護的であり、アポE3は影響がないように見える
そしてアポE4の突然変異mutationはLOADの遺伝的リスク要因として十分に確立されているwell-established

以前の報告では、アポE4は脳がベータアミロイドを除去する方法に影響することが示唆されていたが、分子レベルで何が起きているのかは不明だった

「アポE4はLOADの予言に最も役立つpredictive遺伝子の変化だが、分子レベルで何が起こっているのかは誰も本当には理解していなかった」
Saghatelianは言う

しかしながら、科学者たちは以前ヒントを発見していた
それによると、アポE4は他の多様体variantsとは『分解のされ方が異なるdegrade differently』のかもしれないという
しかし、このアポE4の分解を実行するタンパク質はわかっていなかった


アポE4を分解するタンパク質を明らかにすべく、Saghatelianと彼の研究仲間research associateであり論文の筆頭著者first authorでもあるQian Chuは疑いのある候補potential suspectsについて組織をスクリーニングにかけ、HtrA1という酵素の一つに焦点を絞った

HtrA1: high-temperature requirement serine peptidase A1「高温で必要条件のセリンペプチダーゼA1」


彼らがHtrA1がどのようにしてアポE4を分解するのかをアポE3と比較したところ、HtrA1はアポE3よりもアポE4をより多くプロセシングし、アポE4をより小さく、より不安定な断片へと噛み砕くchewことが明らかになった
彼らはこの観察を単離したタンパク質とヒトの細胞の両方で確認した

この発見はアポE4を持つ人々の脳細胞内にはアポEが全体的に少ないことを示唆し、加えてタンパク質の分解産物breakdown productsもより多く存在することが考えられる

「アポE4の分解産物は有害でありうるという考えideaはこれまでも存在し、それはとことんまで論じられてきたtossed around」
Saghatelianは言う

「今回HtrA1がアポE4を分解することが判明し、我々はこの考えを実際にテストすることができるようになった」


しかし、アポE4を持つ人々でアルツハイマー病を引き起こすのは、ただ単に完全長full-lengthのアポEを欠くためではなく、その断片の増加でもなかった

SaghatelianとChuは、アポE4がHtrA1に対して十分強く結合してしまうため、HtrA1が(アポE4によって占有されて)タウタンパク質を分解できないようにすることを発見した
タウはアルツハイマー病と関連するタウのもつれtanglesの原因となるタンパク質である


Saghatelianは言う
「タウまたはアミロイドベータはアルツハイマー病を引き起こすものとして考えられてきた
しかし、今回の結果は、生化学的な経路を通じてタウまたはアミロイドに影響しうるタンパク質について、我々はもっと全体的に考える必要があることを示唆している」

ヒトにおいてもアポE4をアルツハイマー病につなげるのがHtrA1であるかどうかを確信する前に、今回の結果は動物研究でテストされて確認される必要がある
しかし、もし彼らが正しければ、それらは疾患のより良い理解ならびに新たな治療戦略への道を指し示すのかもしれない


http://dx.doi.org/10.1021/jacs.6b03463
HtrA1 Proteolysis of ApoE In Vitro Is Allele Selective.
in vitroでのHtrA1によるアポEのタンパク質分解は対立遺伝子選択的である


Abstract
アポリポタンパク質E/apolipoprotein E (ApoE) は、脂質の生理的な輸送をするために可溶化するタンパク質の大きな分類に属する
ヒトにはAPOE ε2、APOE ε3、APOE ε4という3つのアポE対立遺伝子alleleがあり、遺伝学研究によりアポE4がアルツハイマー病の最も強い遺伝リスク要因であることが同定された

アポE4がホモ接合体homozygousの人々(つまりアポE4/E4)は、アポE3/E3キャリアよりも遅発性アルツハイマー病(LOAD)を発症する可能性が1桁高い
ApoE4/E4 are an order of magnitude more likely to develop LOAD than ApoE3/E3.

※the resistance is an order of magnitude larger「抵抗が1桁大きい」

アポE3とアポE4との間のいくつかの違いは(ヒトの脳ではアポE4はアポE3よりも分解される度合いが高いという観察を含めて)、ADに寄与する可能性がある

高温要件セリンペプチダーゼA1/high-temperature requirement serine peptidase A1 (HtrA1) は神経系で見られるが、我々は実験によりHtrA1がアポE3よりも素早くアポE4を分解するという対立遺伝子allele選択的なアポE分解酵素であることを実証する

この活性はHtrA1に特異的である
なぜなら、HtrA2を使った同様の分析/アッセイassayではアポE4タンパク質分解proteolysisは最低限minimalの活性しか示さず、トリプシンはアポE4とアポE3との間に何ら選択性を示さなかったからである

また、HtrA1はタウタンパク質(Tau)とアミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断することが報告されており、特にAPPについてはアルツハイマー病と関連する有害なアミロイド沈着の形成を『邪魔hinder』するように切断する
アポE4とアポE3、タウタンパク質の競合アッセイcompetition assayでは、アポE4はタウ分解を阻害することが明らかになった

ゆえに、アポE4がペプチダーゼHtrA1の基質であるとin vitroで同定したことは、タウのようなAD関連タンパク質のアポE4による調節を関連付ける潜在的な生化学的メカニズムを示唆するものである




関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=HTRA1
High-Temperature Requirement A Serine Peptidase 1



関連サイト
http://bsw3.naist.jp/ishida/?page=1050
バクテリアのHtrAはバクテリアが高温化で生存するために必須の遺伝子で、高温によって異常になった蛋白質の構造を修正(Refolding)したり分解する機能を持つHeat shock proteinをコードしています。



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f69e68999aaf91e1daa22758545d605
タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b42d9618ca1ed178759eeabb2ed70437
APP─(βセクレターゼ)→ CTF-β + sAPPβ ─(γセクレターゼ)→ Aβ + AICD



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/adac22c976bba78be3239de9833a3cbf
アポE4は転写因子として働き、その標的はサーチュイン、加齢、インスリン抵抗性、炎症と酸化によるダメージ、アミロイドプラークの蓄積、タウのもつれと関連する遺伝子である



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b17271081045552783a35515421b8015
脳内のコレステロール排出が認知症に重要



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抗HIV薬のエファビレンツは低用量でCYP46A1を活性化して脳内のコレステロールを除去し、Aβによるプラーク形成をマウスで抑制する



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ミクログリアは放出された脂質をTREM2によって感知してAβの周りに集まる



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アルツハイマー病と関連するTREM2の多様体を持つ人のマクロファージは、リポタンパク質-アミロイドベータ複合体を飲み込む能力が低い



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160413084728.htm
PITPNC1はゴルジネットワークへRAB1Bをリクルートし、RAB1BはGOLPH3をリクルートすることで分泌を増加させ、癌の転移を促進する
この分泌には成長因子やプロテアーゼ(HTRA1, MMP1, FAM3C, PDGFA, ADAM10など)が含まれる
 

ALSではTDP-43によってミトコンドリア機能が破綻する

2016-08-06 06:06:02 | 
Scientists keep a molecule from moving inside nerve cells to prevent cell death

Findings may have implications for Lou Gehrig's, Alzheimer's, Parkinson's and Huntington's diseases

August 3, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160803124517.htm

筋萎縮性側索硬化症/amyotrophic lateral sclerosis(ALS)は、運動神経細胞を徹底的に破壊devastateする進行性の疾患である
ALSと診断された人々は筋肉の動きをコントロールする能力をゆっくりと失い、最終的には話したり食べたり動いたりすることも、息すらも不可能になる
ALSの背後にある細胞内のメカニズムは、ある種の認知症にも共通して見られる(前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)等

今回Nature Medicineで発表された革新的な科学研究によると、あるRNA結合タンパク質がどのようにしてALSの進行に寄与するのかが明らかにされたという


細胞はDNAから『タンパク質を作るための指示』をRNAへと転写し、タンパク質を製造する機械へと送る
ALSの元凶となるタンパク質TDP-43は正常な場合、新たに読み出されたRNAの小さな断片piecesに結合し、RNAが細胞核の内部を行ったり来たりするのを助けている

今回の研究ではTDP-43が神経細胞の内部で間違った場所に移動した/誤って配置されたmisplaced分子的な結果について初めて記述し、その位置locationを修正することにより神経細胞の機能は回復可能であることを実証する
TDP-43が神経細胞で間違った場所に移動すること/誤配置されることmisplacementはALSや他の神経疾患(FTDやアルツハイマー、パーキンソン病、ハンチントン病)の特徴である
これらの疾患に共通のメカニズムの特徴を調べる研究は広い範囲に様々な関連があり、広域的broad-basedな治療の開発を加速するかもしれない


誤って配置されたTDP-43を見つけるために研究者たちはALSまたはFTDで亡くなった人々から寄贈された献体の神経細胞を高性能/高倍率high poweredの顕微鏡で観察し、TDP-43は神経細胞のミトコンドリアに集積していることを突き止めた
ミトコンドリアは神経細胞が必要とする莫大な量のエネルギーを作り出す決定的に重要な構造物である

影響を受けたミトコンドリアを物理的に単離することにより、研究者はTDP-43の正確な場所を特定pinpointすることに成功した
彼らはさらに、誤配置されやすいタンパク質の多様性variationを特徴づけた

この重要な研究はケース・ウエスタン・リザーブ大学(CWRU)医学部の病理学部に属するXinglong Wang, PhDを中心とした彼のラボのチームによって実施された

Wangは次のように説明する
「我々は様々なアプローチにより、TDP-43の大部分がマトリックスに面するミトコンドリア内膜に位置することを特定した
多くの重要な神経変性疾患において、死滅するニューロンでミトコンドリアはTDP-43が蓄積する主な箇所であるかもしれない」


TDP-43はいったんミトコンドリアの中に入るとその『RNAと結合する役割』を再び開始resumeし、ミトコンドリアの遺伝物質genetic materialと結合する
このことがエネルギーを作り出すミトコンドリアの能力を破綻させるのだという
WangのチームはTDP-43が結合するミトコンドリアRNAを正確に特定し、その結果として生じるresultantミトコンドリアタンパク質複合体の分解disassemblyを観察した

今回の発見は神経細胞内部でTDP-43が間違った場所に移動した結果についての必要十分な明瞭さmuch needed clarityをもたらし、広範囲の神経疾患を含めたさらなる研究への扉を開くものだ

この研究ではALSとFTDに焦点を当てたが、Wangによると「TDP-43の誤った局在mislocalizationは アルツハイマー病患者の半分以上で 鍵となる病理学的な特徴を代表し、それは症状と強く相関する」という


TDP-43をコードする遺伝子の突然変異mutationsは、ALSやFTDのような神経変性疾患と長い間関連付けられてきた
Wangのチームは、疾患と関連するTDP-43遺伝子突然変異が神経細胞内部での誤配置を促進することを明らかにした

加えて、彼らはミトコンドリアによって認識されるTDP-43の一部sectionsを特定した
この部分がミトコンドリアの内部に入ることを許すシグナルとして働く

これらの部分sectionsは治療の標的となりうる
研究でそれらの部分を阻害すると、TDP-43がミトコンドリアの内部に局在することが妨げられた
重要なことに、小さいタンパク質を使ってTDP-43をマウスの神経細胞のミトコンドリアに入らせないようにすると、神経細胞への毒性と疾患の進行が『ほとんど完全にalmost completely』阻止できることが示された


「TDP-43のミトコンドリアへの局在の阻害はTDP-43と関連する神経変性を防ぐのに十分であるという、まったく新しいコンセプトを我々は初めて提供する」
Wangは言う

「ミトコンドリアのTDP-43を標的とすることは、ALSとFTD、そして他のTDP-43と関連する神経変性疾患に対する新たな治療アプローチになる可能性がある」


WangはTDP-43がヒトの神経細胞のミトコンドリアに到達できないよう防ぐための小分子タンパク質の開発を開始しており、この研究で使われた治療用の分子についても特許出願中patent pendingである

現在ALSやFTDで利用可能な治療は何も存在せず、ALS Associationによると新たにALSと診断された人々の平均寿命はわずか3年であるという


http://dx.doi.org/10.1038/nm.4130
The inhibition of TDP-43 mitochondrial localization blocks its neuronal toxicity.

Abstract
TAR DNA 結合タンパク質43/TAR DNA-binding protein 43 (TARDBP/TDP-43) の遺伝子突然変異は、ALSを引き起こす
TARDBPによってコードされるTDP-43タンパク質の細胞質での増大は、様々な神経変性疾患における変性ニューロンの組織病理学的histopathologicalに目立った特徴である
しかしながら、ALSの病態生理学pathophysiologyにTDP-43が寄与する分子メカニズムは分かりにくいままである

今回我々はTDP-43がALSまたはFTD患者のニューロンのミトコンドリアに蓄積することを発見した
疾患と関連する突然変異はTDP-43のミトコンドリアへの局在を増大させる

ミトコンドリア内では野生型(WT)ならびに変異体のTDP-43が
ミトコンドリアで転写された呼吸鎖の複合体IサブユニットND3とND6のmRNAと選択的に結合し、
それらの発現を損ない、特に複合体Iの分解を引き起こす

TDP-43のミトコンドリア局在の抑制は、
WTならびに変異体TDP-43によって誘発されるミトコンドリア機能不全ならびにニューロン喪失を無効化し、
TDP-43変異体のトランスジェニックマウスの表現型は改善される

したがって、我々の研究はTDP-43の毒性を直接ミトコンドリア生体エネルギーbioenergeticsに関連付けるものであり、神経変性に対する有望な治療アプローチとしてTDP-43のミトコンドリア局在を標的にすることを提案するものである



Figure 1: TDP-43 co-localizes with and accumulates in mitochondria in individuals with ALS and FTD.
TDP-43はALSとFTDの人々でミトコンドリアと共局在してその中に蓄積する

Figure 2: ALS-associated genetic mutations in TDP-43 increase its import into mitochondria.
ALSと関連するTDP-43遺伝子の突然変異はミトコンドリアへのインポートを増大させる

Figure 3: TDP-43 mitochondrial import depends on internal M1, M3 and M5 motifs.
TDP-43のミトコンドリアへのインポートは、TDP-43内部のM1、M3、M5モチーフによる

Figure 4: TDP-43 preferentially binds mitochondria-transcribed ND3 and ND6 mRNAs and inhibits their translation.
ミトコンドリアで転写されたND3とND6のmRNAに対してTDP-43は選択的に/優先的に結合し、その翻訳を阻害する

Figure 5: TDP-43 specifically reduces complex I assembly and impairs mitochondrial function and morphology.
TDP-43は特に複合体Iの組み立てを低下させ、ミトコンドリアの機能と形態構造morphologyを損なう

Figure 6: Suppression of TDP-43 mitochondrial localization abolishes TDP-43 neurotoxicity.
TDP-43のミトコンドリア局在を抑制するとTDP-43の神経毒性は無効化される



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160725151246.htm
ALSの3%にNEK1の突然変異
NEK1は、細胞骨格の維持、ミトコンドリア膜の調節、DNAの修復に関与する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/00f9bdacc5fee082eb60dda6170341fb
α-シヌクレインはTOM20に結合し、ミトコンドリアへのタンパク質インポートを阻害する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ed826987c5083df9db9a8729c7b72344
銅の欠乏によって弱ったミトコンドリアに銅を届けてALSを治療する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/930858dc048a991d95b21a50be1ad103
ヒトの内因性レトロウイルス遺伝子の再活性化はTDP-43によって調節される



関連サイト
https://en.wikipedia.org/wiki/TARDBP
Function
TDP-43は染色体に組み込まれたTAR DNAに結合する転写抑制因子であり、HIV-1ウイルスの転写を抑制する
加えて、TDP-43はCFTR遺伝子の選択的スプライシングを調節する
特に、TDP-43はスプライシング因子であり、CFTR遺伝子のintron8/exon9 junctionに結合し、アポAII遺伝子のintron2/exon3領域に結合する [4]
TDP-43はDNAとRNAの両方に結合することが示され、転写抑制、プレmRNA/pre-mRNAのスプライシング、転写調節において多くの機能を持つ [6]

Clinical significance
過剰にリン酸化、ユビキチン化、切断された形態のTDP-43は、病的pathologicなTDP-43であることが知られ、FTLD-TDP [9] ならびにALS [10] の主な疾患タンパク質である
TDP-43の異常はアルツハイマー病の重要なサブセットでも生じ、それは臨床的ならびに神経病理学的な特徴のインデックスと相関する [12]
 

なぜ抗うつ薬は効くまでに時間がかかるのか

2016-08-04 06:06:49 | 
Why do antidepressants take so long to work?

July 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160728125256.htm


(Image: Molly Huttner.)

大うつ病のエピソードは手足の自由を奪うように力を失わせcrippling、睡眠や食事、労働する能力を損なう
アメリカでは生涯で6人に1人がうつ病になり、重症のケースでは気分障害により自殺に至る可能性がある
しかし、うつ病の治療で利用できる薬は効き始めるまでに数週間から数ヶ月もかかることがある

イリノイ大学シカゴ校(UIC)の研究者は、抗うつ病薬が効果を示すまで時間がかかる理由の一つを明らかにした
Journal of Biological Chemistry誌で発表された彼らの発見は、将来の早く効く薬の開発を助けるかもしれない


UIC医学部で神経科学者のMark Rasenickたちは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤/selective serotonin reuptake inhibitors(SSRIs)のこれまで知られていなかった作用メカニズムを突き止めた
SSRIは最も広く処方されているタイプの抗うつ病薬である

SSRIは神経細胞によるセロトニンの再吸収を阻害することで作用すると長い間考えられてきた
しかしSSRIは細胞膜上に斑点のように存在する『脂質ラフト lipid raft』にも蓄積することがRasenickらによって発見され、SSRIの蓄積はラフト内の重要なシグナル分子のレベル低下と関連があった

※raft: いかだ、浮き台

「ずっと長い間の謎だったのは、なぜ抗うつ薬のSSRIは症状を抑え始めるまで2ヶ月はかかるのかということだった
(謎とされる理由はいくつかあるが)中でも特に、SSRIが標的と結合するのに数分とかからないからである」
UICで生理学と生体物理学、そして精神学の特別教授distinguished professorであるRasenickは言う

「おそらくSSRIは別の結合する箇所があり、それがうつ病の症状を減らす抗うつ薬の作用で重要なのだろうと我々は考えた」

シナプスからニューロン間の空間に放出されたセロトニンは、神経の細胞膜に埋め込まれているセロトニン輸送体transporterによって取り込まれる
うつ病の患者はセロトニンの供給が少ないと考えられており、SSRIはセロトニン輸送体に結合して阻害することによりセロトニンを取り込まれないようにして、利用可能なセロトニンの効果を増幅してうつ病の症状を減らすとされてきた


Rasenickは、薬の応答の遅れには神経細胞膜のシグナル伝達分子である『Gタンパク質』が関与するのではないかと長い間考えてきた
実際、以前の彼らによる研究で うつ病の人々はGタンパク質が脂質ラフトに集合congregateする傾向があると示されていた(脂質ラフトlipid raftとは、細胞膜内のコレステロールが豊富な斑点状の領域である)

※脂質ラフト: 論文によると脂質ラフトに豊富なのはコレステロールだけではなく『カベオリンcaveolin、スフィンゴ脂質sphingolipids、細胞骨格タンパク質とGPIアンカータンパク質cytoskeletal and GPI-anchored proteins (9,10)』も豊富であり、『シグナル伝達分子が集積clusteringまたは隔離sequestrationされうる領域 (11)』 であるという

※以前の彼らの研究: 論文のRefenece 15には "Postmortem brain tissue of depressed suicides reveals increased Gs alpha localization in lipid raft domains where it is less likely to activate adenylyl cyclase.(うつ病で自殺した死後脳組織の調査から、アデニリルシクラーゼを活性化しにくい場所である脂質ラフトドメインにGsαが局在していることが明らかにされる)" という2008年の論文が挙げられている


ラフト内に座礁strandedして取り残されたGタンパク質は『環状AMP/cyclic AMP(cAMP)』という分子へのアクセスを失い、結果としてcAMPが作られなくなる
cAMPはGタンパク質が機能するために必要な分子である
cAMPが低下してシグナル伝達の勢いが弱まるdampenedことは、なぜうつ病の人々が環境に対して『無感覚numb』なのかを説明する可能性があるとRasenickは推論reasonする

Rasenickはラットのグリア細胞という脳細胞を様々なSSRIの溶液に浸してbath、細胞膜内でのGタンパク質の位置を調査した
実験の結果、SSRIは時が経つにつれてover time 脂質ラフトに蓄積してゆき、蓄積するにつれてラフト内のGタンパク質は減少した

「このプロセスは、抗うつ薬の細胞への他の作用と一致するタイムラグを示す」
Rasenickは言う

「このようなGタンパク質の動き、つまり脂質ラフトの外へ出て Gタンパク質が機能可能な領域へ移動するという影響の仕方は、抗うつ薬が作用するまでにとても長い時間がかかる理由になりそうだ」


この発見は、抗うつ薬がどのようにして改善されうるのかという可能性を示唆すると彼は言う

「正確な結合箇所が特定されたことは、Gタンパク質の脂質ラフトの外への移動を早めて抗うつ薬の効果がより早く感じられるような 新たな抗うつ薬のデザインの助けになるかもしれない」

Rasenickは脂質ラフトが結合する箇所について、わずかながら既に理解している
彼がラットのニューロンをエスシタロプラムescitalopramというSSRIと、その鏡像mirror imageとなる分子の溶液に浸したところ、『右手の型right-handed form』だけが脂質ラフトに結合した

「この非常にわずかな分子の変化が結合を妨げる
ゆえに、結合箇所の特徴のいくつかを絞り込むnarrow downのを助けてくれる」


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M116.727263
Antidepressants Accumulate in Lipid Rafts Independent of Monoamine Transporters to Modulate Redistribution of the G protein, Gαs.
抗うつ薬はモノアミントランスポーターとは関係なく脂質ラフトに蓄積し、Gタンパク質Gαsの再分布を調整する

Abstract
うつ病は公衆衛生上の重大な問題であり、現在利用可能な薬物治療medicationは、効果があっても患者が反応するまでに数週から数ヶ月の治療が必要である

以前の研究では、cAMPを増加させるGタンパク質(Gαs)がうつ病患者では徐々に脂質ラフトに局在するようになり、抗うつ薬の慢性的な投与はGαsを脂質ラフトの中から外へ移動translocationさせることが示されている

ラットまたはC6グリオーマ細胞に対して慢性的に抗うつ薬を投与すると、Gαsの脂質ラフト外への移動は開始onsetの遅れを示すが、
それは抗うつ病薬の治療効果の開始の遅れと一致する

抗うつ病薬は脂質ラフトに局在するGαsを特に修正するようであるので、我々は構造的に様々な抗うつ病薬が脂質ラフトに蓄積するのかどうかを特定しようとした

5HTトランスポーターを持たないC6グリオーマ細胞への 継続的な投与sustained treatmentは、ラフト分画fractionにおける複数の抗うつ病薬の顕著な濃度上昇を示した
それは吸光度absorbanceの上昇ならびに質量フィンガープリントmass fingerprintによって明らかである

構造的にそっくり似たような関連性を持つclosely relatedが抗うつ病薬の効果は持たない分子は、ラフト分画への集中を示さなかった

よって、少なくとも2クラスの抗うつ病薬が脂質ラフトに蓄積し、cAMPシグナル伝達カスケードを活性化する非ラフト膜分画へのGαsの移動に影響する

ラフト局在の構造的な決定要素determinantの分析は、抗うつ薬の作用の履歴効果hysteresisの説明を助け、抗うつ治療の新たな基質のデザインと開発につながるかもしれない


Results
Gradual accumulation of antidepressant drugs in plasma membrane microdomains correlates with Gαs subcellular redistribution.


我々は複数の薬物クラスの代表的な薬剤の蓄積を評価した

・モノアミン酸化酵素阻害剤MAOI (フェネルジンphenelzine)
・三環系抗うつ薬TCA (デシプラミンdesipramine, イミプラミンimipramine, アミトリプチリンamitriptyline)
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI (エスシタロプラムescitalopramとその不活性な立体異性体stereoisomerであるR-シタロプラム, フルオキセチンfluoxetine)
・非定型抗精神病薬atypical antipsychoticだが独立した抗うつの効能があるアリピプラゾールaripiprazole(エビリファイ)
・非定型抗精神病薬atypical antipsychoticで抗うつ作用がないオランザピンolanzapine(ジプレキサ)(26)

結果、時間経過による細胞膜脂質ラフト分画fractionsへの薬剤蓄積はクラス特異的(例えばSSRIとMAO阻害剤)なメカニズムのようだった (Figure 2A)

主な抗うつ作用は持たない抗精神病薬であるオランザピン (27) も脂質ラフトに蓄積するようだが、これはその強い疎水性の性質hydrophobic natureのためかもしれない (Figure 2B)
しかしながら、GC-MS質量分析によるラフト分画の分析では、ラフトへの薬剤蓄積は疎水性hydrophobicityからは独立しており、オランザピンとアリピプラゾールは蓄積しない

総イオンクロマトグラム/total ion chromatograms (TIC) による脂質ラフト抽出extractionsの分析では、フェネルジンphenelzine、フルオキセチンfluoxetine、エスシタロプラムescitalopramだけが投与72時間後に脂質ラフトに蓄積していた (Figure 3);

エスシタロプラム、フルオキセチン、フェネルジンの蓄積は、Gαsの脂質ラフトからの移動を仲介する能力と一致parallelしていたが、R-シタロプラムまたはオランザピンolanzapineはそうではなかった (20)
三環系抗うつ薬 (desipramine, imipramine, amitriptyline) もアリピプラゾールaripiprazoleも脂質ラフトに蓄積しなかったので、この現象は薬剤クラス特異的である可能性がある
さらに、蓄積は化合物の親油性lipophilicityからは独立している (Figure 2B)


Figure 2
Phenelzine 0.18 ***
Desipramine 0.05 **
Imipramine 0
Amitriptyline 0
Fluoxetine 0.19 ***
Escitalopram 0.5 ***
R-citalopram 0
Aripiprazole 0
Olanzapine 0.04 *




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シタロプラムは既存のプラークの成長を止め、新しいプラークの形成を78パーセント低下させる



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https://www.sciencedaily.com/releases/2013/10/131029090347.htm
ケタミンとスコポラミンはセロトニン2C受容体アンタゴニストであり、おそらくドーパミンを前頭前皮質に分泌させることで抗うつ病効果を早く開始させる



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うつ病の原因の一部はミクログリア
 

なぜレボドパでジスキネジアが起きるようになるのか

2016-08-02 06:06:01 | 
Why brain neurons in Parkinson's disease stop benefiting from levodopa

Essential mechanism of long-term memory for L-DOPA-induced-dyskinesia

July 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160728143608.htm

レボドパlevodopa/L-DOPA(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)はパーキンソン病の症状を劇的に改善できるにもかかわらず、5年以内に2人に1人が『不可逆的な状態irreversible condition』を生じ、不随意involuntaryで繰り返されるrepetitive、急速rapidで痙攣性jerkyの動作が起きるようになる
この異常な運動行動motor behaviorはレボドパを摂取している間だけ現れ、薬をやめると異常も止まる
しかしながら、再びレボドパを摂取すると、多くの月日が経っていても急速に再発re-emergeする

このような副作用を防いでレボドパの有用性を延長するための研究の中で、アラバマ大学バーミングハム校(UAB)の研究者たちは『レボドパによって誘発されるジスキネジア/L-DOPA-induced-dyskinesia(LID)』が長期にわたって記憶されるために必須のメカニズムを明らかにした

彼らの報告によると、レボドパによって脳細胞内のDNAメチル化が広範囲にわたって再編成reorganizationされていたという(メチル化とはDNAの機能を調節するプロセスである)
また、DNAのメチル化を増やすか減らすような治療は、動物モデルでジスキネジアの症状を修正できることが明らかにされた
したがって、DNAメチル化の調整は、LIDを防ぐか覆すための新たな治療標的になるかもしれない

「レボドパはパーキンソン病にとって非常に有益な治療だが、多くの場合ジスキネジアによってレボドパの使用は制限される」
UABの神経学部長でありJohn N. Whitaker Professor教授職でもあるDavid Standaert, M.D., Ph.D.は言う

「LIDを予防するか覆す手段があれば、耐えられないような副作用を引き起こすことなくレボドパの使用期間をはるかに長く延ばせる可能性がある
我々が今回使った方法のメチオニンサプリメントやRG-108はヒトで使うには実用的ではないが、それらはメチル化を基盤としたエピジェネティックなパーキンソン病の治療法を開発する機会を指し示している」

研究には神経変性実験治療センター/Center for Neurodegeneration and Experimental TherapeuticsとUAB神経学部が参加し、成果はThe Journal of Neuroscience誌で発表された


研究の詳細
Research Details

LIDの動物モデルでの研究では遺伝子発現ならびに細胞シグナル伝達における変化が示されているものの、まだ重要な問題が未解決のまま残っている
「レボドパが神経に届くのは一時的transientなのに、なぜLIDで見られる感受性増感sensitizationは永続的persistentなのか?」

UABの研究者はDNAのメチル化、つまりDNAのヌクレオチドにメチル基が付け加えられるプロセスに変化が生じているのではないかと考えた
なぜならメチル化は細胞が成長して分化するにつれて遺伝子の発現を安定して変化させるからである
さらに、ニューロンにおけるメチル化の変化は 場所記憶place memoryの形成 ならびに コカイン使用後の常習行為addictive behaviorの発生に関与することが示されている
一般に、DNAメチル化の増加は近くの遺伝子の発現を沈黙silencingさせる効果があり、メチル基の除去は遺伝子の発現を促進する


研究者たちは次のようなことを発見した

・パーキンソン病モデルのげっ歯類へのレボドパの投与は、2つのDNA脱メチル化酵素の発現を促進した

・LIDモデルにおける背側線条体dorsal striatumの細胞は、広範囲の、そしてある箇所に特異的なDNAメチル化の変化を示し、それらのほとんどは脱メチル化として観察された

・DNAメチル化の変化は、LIDにおいて機能的重要性が確立された多数の遺伝子の近くで見られた

・DNAメチル化を全体的に調整すると、LIDのジスキネジア行動は修正された
 メチオニンを注入してメチル化を増加させるとLIDのジスキネジア的行動は低下し、RG-108を線条体に投与してメチル化を阻害するとLIDのジスキネジアは増加した


「合わせて考えると、これらの結果はレボドパが線条体のDNAメチル化に広範囲の変化を誘発することを実証するものであり、LIDの発症と維持にはDNAの調整が必要である」


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0683-16.2016
Dynamic DNA Methylation Regulates Levodopa-Induced Dyskinesia.
動的なDNAメチル化はレボドパによって誘発されるジスキネジアを調節する

Abstract
レボドパによって誘発されるジスキネジア/L-DOPA-induced-dyskinesia(LID)は永続的persistentな行動的感受性増感behavioral sensitizationであり、パーキンソン病患者がレボドパ/levodopa (l-DOPA) に繰り返しさらされることで発症する

LIDは、ドーパミン作動性の刺激後に 線条体ニューロンの転写的な振る舞いが 持続性の変化を生じた結果である
ニューロンにおける 動的なDNAメチル化 を通じての転写調節は、多くの長期的行動の調整にとってきわめて重要であることが示されている
しかしながら、そのLIDにおける役割はまだ調査されてはいない

我々はげっ歯類モデルを使い、LID発症がDNA脱メチル化酵素の異常な発現につながることを示す
遺伝子座locus特異的なDNAメチル化の変化は遺伝子プロモーター領域で生じ、レボドパ投与後に転写が異常になる

動的dynamicなDNAメチル化をLIDでゲノムワイドに探索すべく、『reduced representation bisulfite sequencing(RRBS)』を使った結果、背側線条体dorsal striatalのメチロームmethylomeに広範囲な再編成を発見した

Reduced representation bisulfite sequencing (RRBS): 減少表示亜硫酸塩シーケンシング。制限酵素により解析部位を限定する

LIDの発症は、多くの重要な異常転写遺伝子の調節領域での有意な脱メチル化につながった

我々は薬理学的にDNAメチル化を変化させ、ジスキネジア的行動が調整可能であることを発見した

合わせて考えると、これらの結果はレボドパが線条体DNAメチル化に対して広範囲の変化を誘発することを実証し、そのようなDNA修飾がLIDの発症ならびに維持にとって必要であることを示す


SIGNIFICANCE STATEMENT
LIDは繰り返されるレボドパ曝露後にパーキンソン病患者で生じ、効果的な治療への主な障害の一つであり続けている

LID行動は 転写的な振る舞いの持続的な変化を原因とする 線条体ニューロンの感受性増感sensitizationである
しかしながら、この細胞的プライミングprimingが長期にわたって維持される原因となるメカニズムは不確かなままである

動的なDNAメチル化の調節は 複数の長期的な行動調整の維持にとって重要であることが示されているが、LIDにおけるその役割は調査されていない

この研究で我々はLID発症におけるDNAメチル化の再編成にとっての重要な役割を報告し、
DNAメチル化の調整が ジスキネジア的行動を予防または覆す際に利用できる新たな治療標的である可能性を示す



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/69c9fa39bc1266df4293922450508bb2
レボドパによるドーパミン補充療法は自発的/非自発的振る舞いを悪化させうるが、その理由は『線条体に存在する投射ニューロン』におけるドーパミン受容体の感受性が促進されるためである



関連サイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/314
治療によりドパミンを補充したときに、ドパミン受容体が過剰に刺激を受けて意図せず勝手に体が動く不随意運動(ジスキネジア)が出現することがある。
L-dopa投与量の増加によって起こりやすくなるが、同量のL-dopa持続投与では減少するので、L-dopa経口服用によるパルス状の刺激がジスキネジアを起こりやすくしていると考えられている。



関連サイト
http://www.comtan.jp/effect/dyskinesias.html
ジスキネジア: レボドパが効き過ぎたときに出現しやすく、自分の意思とは無関係に頭(口)、手、足、体が不規則に動いてしまう症状
振戦: レボドパが効いていない時に出現しやすく、手や足が規則的に震える



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/19133502/
ヒドララジンまたはプロカインアミドで治療された結核の患者は、SLEとリウマチのような症状を発症することが臨床経験から示されている。ヒドララジンとプロカインアミドはCpGのDNA配列を脱メチル化する。その機序は、
・DNMT1活性を直接障害する (ヒドララジン)
・細胞外シグナル制御キナーゼ (ERK) 経路を阻害する (プロカインアミド)
であり、特にERK経路はDNMT1とDNMT3の発現を誘導する。
 

ニューロンのゴミ処理には機能するタウが必要

2016-07-31 06:06:22 | 
Tau, not amyloid-beta, triggers neuronal death process in Alzheimer's, new research shows

November 1, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141101173217.htm

ジョージタウン大学メディカルセンター/Georgetown University Medical Center (GUMC) の新たな研究によると、アルツハイマー病のような疾患でニューロンの細胞死を刺激するために大きな影響力を持つイベントseminal eventなのはアミロイドベータのプラークではなく、タウタンパク質であることが示されたという
この研究はMolecular Neurodegeneration誌のオンライン版で発表された


ニューロンの細胞死はニューロンの中に存在するタウが機能しなくなった時に起きる
タウの役割はニューロンの内部に線路train trackのような構造を供給することであり、この構造によって細胞は 不要で有害なタンパク質の蓄積物を除去できるようになる

「タウに異常が起きると、アミロイドベータを含む有害なタンパク質がニューロン内部に蓄積する」
研究の首席調査員senior investigator、Charbel E-H Moussa, MB, PhDは言う
彼はGUMCで神経学の助教授assistant professorである

「細胞は細胞外の空間へ、できるだけas best they canタンパク質を吐き出し始め、細胞内で有害な影響を発揮できないようにする
アミロイドベータは粘着性stickyなので、互いに凝集してプラークを形成する」


Moussaによると、細胞を破壊するのは『放出されずにニューロン内部に残ったアミロイドベータ』であり、細胞外に形成されるプラークではないことが研究からは示唆されるという

「タウが機能しないと、細胞はがらくたgarbageを除去できない
その時点での『がらくた』にはアミロイドベータや機能しなくなったタウのもつれが含まれ、やがて細胞は死ぬ
死んだニューロンから放出されたアミロイドベータは、形成されつつあったプラークにくっつくstick」

動物モデルでの実験では、タウが機能していると細胞外に蓄積するプラークが少なく、タウを持たないニューロンに再びタウを挿入するとプラークは育たなかった


タウの機能不全は、遺伝子の異常や加齢を通じて起きる可能性がある
個々人が年を取るにつれてタウの中には機能不全を起こすものがあり、一方でがらくたの除去を助ける正常なタウも十分に残っているような場合、ニューロンは死なないとMoussaは言う

「プラークは蓄積しているが認知症はまったくない年老いた人々という混乱させる臨床的な観察は、それで説明できる」


Moussaは長い間、ニューロンに強制的にがらくたを除去させるような方法を探してきた
彼は今回の研究で抗癌剤のニロチニブがこのプロセスを手助けしうることを示す
ニロチニブはニューロンががらくたを除去するのを助けるが、しかしそれには機能するタウがいくらかは必要だと彼は言う

「ニロチニブは、機能しないタウよりも機能するタウの割合が高ければ作用することができる」
Moussaは言う

「タウが機能しない一方でプラークは蓄積しないような認知症、例えばパーキンソン症候群と関連する前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)のような疾患は多い
それらに共通する元凶culpritはタウであり、タウの仕事を助ける薬剤は疾患の進行から脳を保護するのを助けるかもしれない」


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25384392
Tau deletion impairs intracellular β-amyloid-42 clearance and leads to more extracellular plaque deposition in gene transfer models
タウの削除は細胞内のベータアミロイド42の除去を損ない、遺伝子導入モデルにおける細胞外プラークの蓄積につながる


Abstract

背景:
タウは軸索axonalのタンパク質であり、微小管に結合してその機能を調節する
タウの過剰なリン酸化は微小管への結合を低下させ、アルツハイマー病におけるベータアミロイドの蓄積depositionと関連する

逆説的だが、タウの減少はベータアミロイド病理を防ぎ、タウは細胞内Aβの除去を仲介する

今回の研究では、Aβ1-42のオートファジーによる除去ならびにプロテオソームによる除去におけるタウの役割を調査し、その後に起きるプラーク蓄積への影響を調べた


結果:
タウの消去はオートファジーを介するAβ除去を損なったが、プロテオソームによる除去は損なわれなかった

Tau-/-マウスに 野生型のヒトのタウを導入したところ、オートファジーによるAβ除去は部分的に回復した
このことは、外因的exogenousなタウ発現がオートファジーによるAβ1-42の除去を補助しうることを示唆する

タウの消去はオートファジーの流れを損ない、リソソーム前オートファジー空胞/pre-lysosomal autophagic vacuoleにおけるAβ1-42蓄積という結果になり、リソソーム内へのAβ1-42の蓄積depositionに影響した

Tau-/-マウスにおけるこのオートファジーの機能不全は細胞内Aβ1-42の減少ならびにプラーク負荷の増加と関連し、マウスは細胞死の減少を示した(細胞外プラークは増えたが細胞死は減少した)

Ablチロシンキナーゼ阻害剤のニロチニブはオートファジー除去メカニズムを促進し、Tau-/-マウスにヒトのタウを発現させた時のみAβ1-42を減少させた


結論:
タウの消去は細胞内Aβ1-42の除去に影響し、細胞外プラークにつながることをこれらの結果は実証する



関連記事
http://newsroom.cumc.columbia.edu/blog/2015/12/21/improving-brains-garbage-disposal-may-slow-alzheimers-disease/
タウはプロテアソームに接着してタンパク質分解を遅くするが、抗鬱剤として使われるロリプラムはcAMP-PKAを介してプロテアソーム機能を促進する




<コメント>
「タウはプロテアソームを阻害する」
「タウはオートファジーに必要」

 

抗癌剤でアルツハイマー病を治療する

2016-07-30 06:06:47 | 
More evidence in quest to repurpose cancer drugs for Alzheimer's disease

July 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160727100824.htm

腎細胞癌の治療用としてFDAに承認された薬剤は、アルツハイマー病とパーキンソン病の認知症と関連する脳内の有害なタンパク質のレベルを動物モデルで減少させるようである
この発見はジョージタウン大学メディカルセンター/Georgetown University Medical Center (GUMC) のトランスレーショナル神経治療プログラム/Translational Neurotherapeutics Program(TNP)で実施された最新の研究によるもので、研究者たちは神経変性疾患の治療におけるチロシンキナーゼ阻害剤/tyrosine kinase inhibitorsの効果について調査している

トロントで開催される国際アルツハイマー病会議/Alzheimer's Association International Conference(AAIC 2016)で発表される今回の研究では、パゾパニブpazopanibという薬剤が 脳全体でヒトのタウ変異体mutant tauを作るように遺伝子を操作した動物モデルにおいて リン酸化タウ/phosphorylated Tau (p-Tau)のレベルを低下させることが明らかになった

TNPのラボは以前、タウが『廃棄物処理システム/garbage disposal system』の重要criticalな一部であることを動物モデルで実証し、このシステムによって動物は蓄積した有害なタンパク質を除去できるようになる
ヒトにおいてリン酸化タウは異常な修飾を受けたタウであることを示し、修飾されたタウは『仕事』の実行が不可能なままになる

GUMCの薬理学博士号取得候補者doctoral candidateであるMonica Javidniaが次のように説明する
「我々のラボは、機能するタウがアミロイドベータ(Aβ)の除去clearanceに必要であることを以前示している
アミロイドベータは蓄積してプラークという粘着性の凝集塊sticky clumpsを形成する
もしタウが機能しなくなると、アミロイドベータが蓄積して細胞死につながる」

「タウが異常な修飾を受けるとニューロン内部で粘着性のもつれsticky tanglesを形成し、細胞が死ぬと修飾されたタウとアミロイドベータは脳内にまき散らされるspill out
これらがアルツハイマー病の特徴であるプラークともつれである」

リン酸化したタウは他の神経変性疾患にも関与している(FTDなど)


TNPによる以前の研究では、チロシンキナーゼが阻害されると廃棄物処理システムが働き始めて、細胞は再び有害なタンパク質を除去できるようになることが示されている
そしてパゾパニブはチロシンキナーゼ阻害剤であることが知られている

TNPはCharbel Moussa, MD, PhDを中心とする研究で複数のチロシンキナーゼが神経変性疾患やタンパク質除去、炎症などに関与するようだということを突き止めており、その研究が抗癌剤のニロチニブによるパーキンソン病とアルツハイマー病での今夏の臨床試験につながっている
(Moussaは、ジョージタウン大学が出願したニロチニブなどチロシンキナーゼ阻害剤の神経変性疾患への使用に関する特許の考案者として発表されているlisted as an inventor)

※file an application for a patent on~: ~の特許を出願する


アルツハイマー病の分野では、主な原因がタウなのかアミロイドベータなのかという2つの学派が存在するとJavidniaは説明する
「我々のラボや他のグループの研究ではタウ病理がアミロイドベータに先行することが示されている
我々は認知症の主な原因がタウで、タウがアミロイドベータ病理を悪化させると考えている
しかしながら、我々はどのようにしてパゾパニブが作用するのか、それがどんな病気の治療として潜在的に使えるのかをさらに理解するため、パゾパニブのアミロイドベータへの影響も研究している」


Javidniaによると、今回の研究での分析ではパゾパニブは腎細胞癌の治療で投与される用量の半分に相当する量でマウスの血液脳関門(BBB)を通過することが示されたという
治療後の動物モデルはリン酸化タウレベルの著しい低下を示した

「加えてこの薬剤は安全であり、十分な忍容性があるwell-tolerated」
Javidniaは言う

「我々の次の研究ではパゾパニブが標的にする受容体のそれぞれに焦点を当て、タンパク質除去と炎症におけるそれら受容体の役割をさらに理解すべく研究を進める予定である」



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160216142835.htm
ノルエピネフリンを脳全体に分泌する青斑にはタウのもつれによる病理が真っ先に現れる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6dcaf6ed70f9d942cb066045b0d029cb
ニロチニブはパーキンソン病で低下したドーパミンを回復する

>脳脊髄液中の細胞死のマーカーを示すタウなどのレベルが著しく低下していた
>これはニューロンの細胞死が減少したことを示唆する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f69e68999aaf91e1daa22758545d605
タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す



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Aβの蓄積と病理学的なタウ変換が両方とも必要なマウスモデル



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160420120601.htm
Aβとリン酸化タウは両方ともアルツハイマー病の早期から代謝の低下に関与する
 

LRRK2の突然変異は微小管による軸索輸送を阻害する

2016-07-28 06:06:02 | 
Effects of high-risk Parkinson's mutation are reversible, study in animal model suggests

October 15, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141015090446.htm


(A microscope image of a cultured cell.

Credit: Image courtesy of University of Sheffield)

シェフィールド大学の研究者は、パーキンソン病の遺伝的な原因としては最も一般的なLRRK2によって引き起こされる影響についての重要な証拠を新たに発見した
今回の研究結果は、そのような影響を標的として無効化する方法を明らかにする可能性がある


LRRK2という遺伝子の突然変異はパーキンソン病のリスクをもたらすことが確立well-establishedされているが、そのつながりの根本となる部分についてはわかっていなかった

シェフィールド神経科学部のKurt De Vos博士と生物医科学部のAlex Whitworth博士を中心としたチームは Parkinson's UKの出資による研究の中で、LRRK2のRoc-CORドメインにパーキンソン病と関連する突然変異を持たせたショウジョウバエで観察される運動障害movement problemsを 特定の薬剤によって完全に回復できることを明らかにした

薬剤は脱アセチル化酵素阻害剤deacetylase inhibitorsというもので、輸送システムを標的とすることによって 神経細胞内のLRRK2変異体によって引き起こされる欠陥を回復reverseした
この研究は本日(2014年10月15日)Nature Communications誌で発表された


世界有数world-leadingの研究所、シェフィールド神経科学トランスレーショナル研究所/Sheffield Institute of Translational Neuroscience (SITraN) でトランスレーショナル神経科学の講師LecturerであるDe Vos博士は言う

「我々の研究は、
神経細胞内部の輸送の欠陥defective transportと
パーキンソン病と関連するLRRK2変異体によってショウジョウバエで起きる運動障害movement problemsとの間には
直接のつながりが存在するという説得力のあるcompellingエビデンスを提供する」


共同研究者co-investigatorのAlex Whitworth博士が次のように説明する
「我々はLRRK2変異によって起きるニューロン輸送の欠陥が可逆的reversibleであることも示す
我々は薬剤で輸送系transport systemを標的とすることにより運動障害を防ぐことができただけでなく、上昇能力ならびに飛行能力が著しく低下することを特徴とする運動障害impaired movementを既に示していたショウジョウバエにおける運動能力を完全に回復した」


LRRK2遺伝子は細胞内の数多くのプロセスに影響するタンパク質を作り出す
LRRK2は細胞の輸送路transport trackである微小管microtubuleにも結合することが知られ、この輸送システムにおける欠陥はパーキンソン病に寄与することが示唆されてきた
シェフィールドの研究者たちはこの二つのつながりを調査し、LRRK2の特定の変異が神経細胞の輸送に影響してショウジョウバエの運動障害につながるという証拠を発見した

研究チームは次に、LRRK2変異体タンパク質の微小管輸送システムへの結合associationを防ぐことによって神経細胞の輸送系の欠陥を回復rescueし、ショウジョウバエの運動障害movement deficitsから解放できることをいくつかのアプローチを用いて示した


De Vos博士は言う
「我々は脱アセチル化酵素阻害剤という薬剤を使って微小管microtubuleの中でアセチル化したα-チューブリンα-tubulinを増加させることに成功した
アセチル化したα-チューブリンはLRRK2タンパク質の変異体とは結合しない
微小管のアセチル化の増加は細胞の軸索輸送axonal transportに直接影響することを我々は明らかにした」

※軸索輸送にはATPが必要

「これらは潜在的なパーキンソン病の治療を指し示す非常に有望な結果である
しかしながら、この回復効果がヒトにも当てはまるかを確かめるためにはさらなる研究が必要である」


Beckie Port博士(出資を手助けしたParkinson's UKのResearch Communications Officer)は言う
「この研究は遺伝子に特定の変異を持つ人々にとって、いつの日かパーキンソン病の進行に介入して止める治療法の開発につながるかもしれないという希望を与える
しかし研究はショウジョウバエで実施されているに過ぎず、この発見が新たな治療のアプローチにつながりうるかどうかを知るためにはもっと多くの研究が必要である」


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6245
Increasing microtubule acetylation rescues axonal transport and locomotor deficits caused by LRRK2 Roc-COR domain mutations.


Abstract
ロイシンリッチリピートキナーゼ2/Leucine-rich repeat kinase 2 (LRRK2; ラーク2) の突然変異は、パーキンソン病の最も一般的な遺伝的原因である
LRRK2は多機能なタンパク質であり、微小管にも結合することが記述されている
微小管をベースとする軸索輸送の欠陥がパーキンソン病に寄与すると仮説が立てられているが、このプロセスにLRRK2の変異が影響して病理発生pathogenesisを仲介するのかどうかは不明である

今回我々は、Roc-CORドメインに病原性の突然変異 (R1441C, Y1699C) を持つLRRK2が優先的/選択的preferentiallyに『脱アセチル化された微小管』に結合し、初代ニューロンprimary neuronならびにショウジョウバエの軸索輸送を阻害して、in vivoで運動障害locomotor deficitsを引き起こすことを示す

in vitroでは、脱アセチル化酵素阻害剤deacetylase inhibitorsを使って微小管のアセチル化を増加させるか、チューブリンアセチル化酵素αTAT1はLRRK2変異体と微小管との結合を防ぎ、
脱アセチル化酵素阻害剤deacetylase inhibitorのトリコスタチンA/trichostatin A (TSA) は軸索輸送を回復する

in vivoでの脱アセチル化酵素deacetylasesのHDAC6ならびにSirt2のノックダウン、またはTSAの投与は、軸索輸送ならびに運動的振る舞いlocomotor behaviorを両方とも回復する

したがって、この研究はパーキンソン病の病原性メカニズムpathogenic mechanismならびに潜在的な介入法を明らかにするものである


Introducion
LRRK2で同定されている優性dominantの突然変異
・Ras of complex (Roc) GTPアーゼタンパク質ドメイン (R1441C, R1441G, R1441H)
・Rocカルボキシル末端 (COR) ドメイン (Y1699C)
・キナーゼドメイン (G2019S, I2020T)

RocドメインとCORドメインの突然変異はGTPアーゼ活性を低下させるが(6, 7、G2019Sの突然変異はキナーゼ活性を上昇させる(6, 8, 9

LRRK2の突然変異がどのようにして有害になるのかは不明だが、しかしおそらくLRRK2の生理的機能の中には軸索の完全性axonal integrityの維持が含まれる
事実、LRRK2の過剰発現は神経突起neurite(軸索と樹状突起)の短縮を引き起こす一方で、マウスニューロンにおけるLRRK2の機能喪失はニューロン突起neuronal processesの伸長ならびに分岐の増加という結果になる(10, 11, 12, 13
 

LDL/アポEとアルツハイマー病の関係が明らかにされる

2016-07-24 06:06:35 | 
Three Alzheimer's genetic risk factors linked to immune cell dysfunction

July 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160720122834.htm


(共焦点顕微鏡confocal microscopeによる画像
細胞は緑色で、それらの細胞に取り込まれたリポタンパク質は赤色で示されている
TREM2の野生型(WT)の細胞と比べて、TREM2の変異体mutantであるY38C、R47H、R62Hを持つ細胞はリポタンパク質をそれほど取り込んでいない

Credit: Felix Yeh, PhD, et al.)

TREM2に特定の変異を持つ人はアルツハイマー病を発症するリスクが高い
しかし、研究者たちはその理由を理解し始めたばかりである

Genentech社の研究によって、ある免疫細胞がどのようにして凝集したアミロイドベータの除去を助けるのかについての詳細が明らかにされた
アミロイドベータは互いに凝集し、アルツハイマー病の特徴であるプラークを形成する可能性がある


7月28日Neuron誌での彼らの報告によると、TREM2の変異は免疫細胞のプラークを除去する活性を狂わせるのだというderail
これは既にアルツハイマー病のリスクを増すことが知られている2つの遺伝子、APOEならびにAPOJ(クラステリン/clusterin)と同様である

※クラステリン/clusterin: アポリポタンパク質J(APOJ)。ヘテロ二量体の分泌型糖タンパク質。脂質輸送だけでなく、アポトーシスなど多くの生理的過程に関わる

「私はTREM2がやっていることのほんの一部に触れたに過ぎないと考えている」
論文の首席著者senior authorであり、ジェネンテック社/Genentechの神経科学で副部長Vice-PresidentのMorgan Shengは言う


健康な人の脳ではミクログリアという免疫細胞が脳内をパトロールしていて、潜在的な脅威を取り囲んで飲み込んでいる

5月に発表された研究では、TREM2遺伝子に変異を持つマウスのミクログリアはアミロイドの沈着amyloid depositsをうまく取り囲むことができないことが判明した (DOI: 10.1016/j.neuron.2016.05.003). (※)

http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2016.05.003
"TREM2 Haplodeficiency in Mice and Humans Impairs the Microglia Barrier Function Leading to Decreased Amyloid Compaction and Severe Axonal Dystrophy"

TREM2遺伝子はミクログリア細胞表面の受容体タンパク質をコードし、特定の分子がTREM2に結合するとミクログリアの活性を刺激できることが既に知られている

今回のShengたちの研究ではバイアスのないマイクロアレイによる タンパク質のスクリーニングを実施し、
1,559の細胞外タンパク質の内どれがTREM2に結合して相互作用する可能性があるのかを調査した

分析の結果、リポタンパク質の中でも特にLDL (low density lipoprotein) とアポリポタンパク質のAPOEとAPOJがTREM2に結合することが明らかになった
APOEとAPOJはどちらもアルツハイマー病のリスク因子である

「リポタンパク質は血液中に存在し、その目的はコレステロールや脂質を細胞から細胞へと運ぶことだ
そしてよく知られるように過剰なLDLは高コレステロールや、心血管疾患のリスク上昇と関連する」
Shengは言う

「リポタンパク質は脳内にも存在するが、その脳での役割についてはほとんど理解されていなかった」

マウスから精製purifiedした細胞を使ってミクログリアが様々な状況でどのようにしてアミロイドベータの凝集物に対して反応するのかを調べた結果、
LDLとAPOJが存在するとミクログリアのアミロイドベータを飲み込む効率はさらに上昇し、
その理由はリポタンパク質がアミロイドベータ凝集物と複合体を形成するためであることが明らかになった
そしてミクログリアによるリポタンパク質-アミロイドベータ複合体の取り込みは、TREM2に依存していた

「遊離した裸のアミロイドベータ凝集物よりも、リポタンパク質複合体と結合した方がはるかに効率的に飲み込まれるというのは驚きだった」
Shengは言う


別の実験で彼らはボランティアからの血液サンプルを集め、
TREM2遺伝子の多様体variantsが細胞によるリポタンパク質-アミロイドベータの扱い方をどのように変えるのかテストした
ボランティアの脳内からミクログリアは得られなかったので、研究者たちはマクロファージの細胞表面にあるTREM2について調べた
マクロファージはミクログリアと似た免疫細胞で、血液中から取り出すことが可能である

実験の結果、アルツハイマー病と関連するTREM2の多様体variantを持つ人のマクロファージは、リポタンパク質-アミロイドベータ複合体を飲み込む能力が低いことが明らかになった
さらに、この能力低下にはTREM2遺伝子の多様体のコピーが(2つではなく)1つだけで十分だということも判明した


「全体的に見て、これらの研究結果は、アルツハイマー病の病理発生においてミクログリアが重要な役割を演じるという方向性をさらに指し示すものだ」
Shengは言う

Shengは、TREM2のリポタンパク質-アミロイドベータを除去する作用が今回のような培養皿での実験を越えて将来の研究で確認されることを望んでいる


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2016.06.015
TREM2 Binds to Apolipoproteins, Including APOE and CLU/APOJ, and Thereby Facilitates Uptake of Amyloid-Beta by Microglia.
TREM2はAPOEとCLU/APOJを含めたアポリポタンパク質に結合し、それによってミクログリアによるアミロイドベータの取り込みを促進する


Video Abstract
http://www.cell.com/cms/attachment/2062189975/2063774068/mmc4.mp4



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2016.05.003
Haplodeficiency in Mice and Humans Impairs the Microglia Barrier Function Leading to Decreased Amyloid Compaction and Severe Axonal Dystrophy
マウスとヒトにおいてTREM2ハプロ不全はミクログリアのバリア機能を損ない、アミロイド圧縮の減少ならびに重度の軸索萎縮につながる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7c164e3a90679c635d0d2d5aaf92717a
ミクログリアは放出された脂質をTREM2によって感知してAβの周りに集まる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b17271081045552783a35515421b8015
脳内のコレステロール排出が認知症に重要



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/adac22c976bba78be3239de9833a3cbf
アポE4は転写因子として働き、その標的はサーチュイン、加齢、インスリン抵抗性、炎症と酸化によるダメージ、アミロイドプラークの蓄積、タウのもつれと関連する遺伝子である
 

LRRK2の突然変異は封入体の形成を促進する

2016-07-22 06:06:08 | 
Discovery may lead to a treatment to slow Parkinson's disease

July 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160719173458.htm


(Primary hippocampal neurons from mice express G2019S-LRRK2. The neurons were treated with alpha-synuclein fibrils,
and 18 days later immunofluorescence was performed.

The magenta shows phospho-alpha-synuclein inclusions in the cell bodies and throughout the axons, which are visualized as green.

Credit: UAB)

アラバマ大学バーミングハム校の研究者たちは、しっかりしたrobustパーキンソン病モデルを使ってニューロンの中の相互作用を明らかにした
その相互作用はパーキンソン病の一因となるもので、研究者らは現在開発中の薬剤がそのプロセスを停止させる可能性を示した
研究の中心となったのは責任著者corresponding authorのLaura A. Volpicelli-Daley, Ph.D.と首席著者senior authorのAndrew B. West, Ph.D.で、
彼らはUAB神経学部の神経変性実験治療学センター/Center for Neurodegeneration and Experimental Therapeuticsのメンバーである

研究チームは、パーキンソン病で最も一般的に見られる遺伝的な原因であるLRRK2キナーゼの変異体がニューロンの封入体形成の一因であることを示した
この封入体はパーキンソン病で観察される特徴の一つに似たものだった

封入体は凝集したα-シヌクレインタンパク質からできており、その形成は2つのLRRK2キナーゼ阻害剤によって阻止が可能であることを研究者は示した
それらは臨床での利用を目指して現在開発されている薬剤である


「LRRK2キナーゼの変異体とα-シヌクレインとの間の相互作用を突き止めることは、神経を保護するための新たなメカニズムと標的を明らかにするかもしれない」
最近Journal of Neuroscience誌で発表された論文で研究者らは言う

「今回の研究結果は、ニューロンのα-シヌクレイン封入体形成が阻止可能であり、このプロセスを標的とする新規の治療用化合物がLRRK2キナーゼ活性を阻害することによりパーキンソン病と関連する病理の進行を遅くする可能性を実証する」


LRRK2と関連するパーキンソン病において新しい神経保護戦略を潜在的に臨床応用するには、パーキンソン病の他の前臨床モデルでテストされる必要があると研究者は言う

「これらのデータは我々にLRRK2阻害剤がパーキンソン病の効果的な治療法としての臨床的な潜在性を持つという希望を与える」
Volpicelli-Daleyは言う

「LRRK2キナーゼ阻害剤は、LRRK2に突然変異を持つ患者だけでなくすべてのパーキンソン病患者で病的なα-シヌクレインの拡散を阻害するかもしれない
しかしながら、ヒトの臨床試験で阻害剤をテストする前に、LRRK2阻害剤の安全性と効能を確認するための研究が将来必要だろう」

α-シヌクレインはパーキンソン病だけでなくレヴィ小体認知症や多系統萎縮症で重要な役割を演じ、アルツハイマー病など他の神経変性疾患にも関与する


研究の詳細
Research Details

Volpicelli-Daleyによって開発されたパーキンソン病モデルに対して、既に形成されたα-シヌクレインの原繊維fibrilsを非常に低濃度で in vitroまたはin vivoで ニューロンに投与した
これにより修飾modifiedされたα-シヌクレイン封入体が形成され、この封入体はパーキンソン病患者の死後の脳で見られるものと形態と構造morphologyを共有する

彼らはこのモデルを使い、LRRK2キナーゼ変異体(G2019S-LRRK2)をニューロンに発現させ、封入体病理形成に対する影響をテストした

発見された内容は以下のようなものだった

・脳の海馬領域から得られた海馬ニューロンの初代培養において、
正常なLRRK2を過剰発現する海馬ニューロンと比較して G2019S-LRRK2のニューロンは 原繊維にさらしてから18日後のα-シヌクレイン封入体形成を促進した

・原繊維にさらされたニューロンにおけるG2019S-LRRK2発現の影響は、LRRK2キナーゼを阻害する強力かつ選択的な前臨床薬剤を非常に低濃度で投与することにより 減少した
このことは タンパク質にリン酸基を付加するG2019S-LRRK2のキナーゼ活性は 病理学的pathologicなα-シヌクレイン封入体の より早い形成の根底にあることを示唆する

・G2019S-LRRK2の発現は 黒質緻密部/substantia nigra pars compactaと呼ばれる脳領域から得られたドーパミンニューロンにおいて α-シヌクレインの封入体形成を促進した
黒質緻密部はパーキンソン病で細胞が死んでいく領域であり、今回の実験はG2019S-LRRK2の変異とパーキンソン病の病理発生pathogenesisとの間の関連をさらに支持するものだ

対照群controlとして、G2019S-LRRK2を発現するニューロンでアンチセンスオリゴヌクレオチドanti-sense oligonucleotideを使って内因性endogenousのα-シヌクレインをノックダウンしたところ、やはり封入体の形成は阻害された


蛍光退色回復法/fluorescence recovery after photobleaching(FRAP)の実験を実施したところ、
G2019S-LRRK2を発現するニューロンでは 膜に固定されたα-シヌクレインとは反対opposedに 移動性mobileのα-シヌクレインの大きなよどみ/プールpoolが存在することを発見した

他のグループによる最近の研究では移動性のα-シヌクレインは折りたたみに失敗misfoldingして凝集aggregationしやすいことが既に示されており、
研究者たちはG2019S-LRRK2の変異がニューロンの移動性α-シヌクレインの量を引き上げるboostことによってパーキンソン病の感受性に寄与するという仮説を立てている


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3642-15.2016
G2019S-LRRK2 Expression Augments α-Synuclein Sequestration into Inclusions in Neurons.

病理学的な封入体はパーキンソン病(PD)を含めたα-シヌクレイノパチー/α-synucleinopathyの顕著な特性であるdefine
そしてPDの最も一般的な遺伝的原因はLRRK2キナーゼ活性を上方調節するG2019S LRRK2突然変異だが、α-シヌクレインとLRRK2、そしてα-シヌクレイン封入体形成との間の相互作用の詳細はいまだに不明である

今回我々は 培養ニューロンならびにラット黒質緻密部ドーパミン作動性ニューロンの両方で G2019S-LRRK2発現が α-シヌクレイン原繊維への曝露に応じて 内因性α-シヌクレインの封入体へのリクルートを増加させることを示す
これはG2019S-LRRK2変異体の発現によって生じたものであり、野生型-LRRK2を過剰発現させても封入体の形成は増加しなかっただけでなく、封入体の量は減少した

加えて、初代マウスニューロンにLRRK2キナーゼ阻害剤のPF-06447475ならびにMLi-2を投与したところ、G2019S-LRRK2の影響は阻止された
このことは、G2019S-LRRK2による封入体形成の増強potentiationがそのキナーゼ活性に依存することを示唆する

G2019S-LRRK2の過剰発現はα-シヌクレインの総レベルtotal levelをわずかslightlyに増加させたが、野生型-LRRKでは減少した

G2019S-LRRK2を発現するニューロンにおいて 強力なアンチセンスオリゴヌクレオチドにより全てtotalのα-シヌクレインをノックダウンすると 封入体形成は大幅にsubstantially減少した
これはLRRK2がα-シヌクレインレベルを変えることによりα-シヌクレイン封入体形成に影響することを示唆する

これらの研究結果は、G2019S-LRRK2が α-シヌクレイン病理が最初に形成された後に 封入体を形成されやすくするsusceptible to forming inclusionsようなα-シヌクレインのプールpoolを増加させることにより 病理学的なα-シヌクレイン封入体の進行を増大させる可能性があるという仮説を支持する


SIGNIFICANCE STATEMENT
今回我々はG2019S-LRRK2の発現がα-シヌクレインの移動性/流動性mobilityを増大させて、
初代培養ニューロンならびにPDで影響を受けやすいsusceptible脳領域である黒質緻密部のドーパミン作動性ニューロンにおいてα-シヌクレインの凝集を促進することを示す



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160705135353.htm
尿中のエキソソーム中に含まれる自己リン酸化LRRK2を計測してパーキンソン病のバイオマーカーとして使う



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2キナーゼは特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
Rab7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ebf906f9e93b0a48796e5407ef8438b3
ニューロンのシナプス小胞の膜を貫通してその動きに関与するTMEM230の変異はパーキンソン病の原因となる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/03/110325102145.htm
LRRK2は14-3-3に結合するが、突然変異によって結合は破綻してパーキンソン病につながる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d767e31c42120fa516d441dc31ab0e33
ウルソデオキシコール酸は、LRRK2に変異があるパーキンソン病患者のミトコンドリア機能を改善する



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/40655
パーキンソン病と関連するLRRK2のG2019S変異を持つニューロンは核膜に重大な異常が見られる




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f69e68999aaf91e1daa22758545d605
アルツハイマー病患者の脳細胞の核には正常な脳細胞には見られないトンネルが発見された

 

タンパク質凝集はどのようにして急速に進行するようになるのか

2016-07-20 06:06:20 | 
Scientists discover how proteins in the brain build-up rapidly in Alzheimer's

July 18, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160718133005.htm



Artist's rendering of protein fibrils (in blue) and healthy proteins from computer simulations.

Credit: Ivan Barun)

ケンブリッジ大学の研究者は、アルツハイマー病の特徴であり疾患を引き起こすとされる『斑点/プラークplaque』が急速に蓄積build-upするメカニズムを突き止め、それが制御可能であるという可能性を示した


生物学的な分子、例えばDNAのような分子が持つ自己を複製する能力は生命の基盤foundationであり、そのプロセスにはたいてい複雑な細胞機構が携わっている
しかしながら、特定のタンパク質構造の中にはそのような補助を何ら必要とせず、どうにかしてmanage自己を複製するものがある
それは例えばアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に関与するタンパク質の微小繊維(原繊維fibril)である

原繊維はアミロイドとしても知られ、お互いに絡み合ってintertwinedもつれるentangledようになり、アルツハイマー病患者の脳内で見られる『プラークplaque』が形成される
初めのアミロイド原繊維amyloid fibrilsの自発的な形成は非常にゆっくりで、典型的には数十年かかるとされ、これはアルツハイマー病にかかるのが一般に年老いた人々であることの説明になる可能性がある
しかしながら、いったん最初の原繊維が形成されると、それらは勝手にひとりでに複製して非常に急速に拡散し始める

しかし、その重要性にもかかわらずタンパク質原繊維がどのようにして何の助けも借りずに自己複製を可能にするのかという根本的なメカニズムは十分に理解されていない

本日7月18日にNature Physics誌で発表された研究でケンブリッジ大学化学部の研究者を中心とするチームは、コンピュータシミュレーションと研究室での実験を組み合わせた強力な手法により、タンパク質原繊維の自己複製に必要な条件necessary requirementsを突き止めた
原繊維の自己複製は一見すると複雑なプロセスだが、実際にはシンプルな物理学的メカニズムによって支配されていることを彼らは発見した
つまり『正常なタンパク質は既存の原繊維の表面上に蓄積build-upする』だけだという

アルツハイマー病の脳内で見られるアミロイドプラークを主に構成するアミロイドベータ(Aβ)という分子を使った研究で、既存の原繊維の上に沈着depositedする正常なタンパク質の量と
原繊維の自己複製の速度との間には関連があることを彼らは発見した
言い換えると、タンパク質が原繊維の上に蓄積すれば蓄積するほど、自己複製は速くなるのである

また、彼らは原理証明proof of principleとして、正常なタンパク質がどのようにして原繊維の表面と相互作用するのかを変化させることによって原繊維の自己複製をコントロール可能であることも示した


研究の筆頭著者であるAndela Saric博士は言う
「アミロイドプラーク形成の謎の一つは、その長くて遅い形成過程の後にどうやったら進行スピードが速くなるのかということだ
我々はその要素を突き止めたが、それは一部の要素にもかかわらず実際にはシステム全体にその自己活性を触媒させ、やがて暴走プロセスrunaway processとなる
しかし今回の発見は、もし原繊維上への正常タンパク質の蓄積build-upをコントロールできれば、プラークの凝集と拡散を制限できるのかもしれないことを示唆している」


Saric博士はこの研究結果がナノテクノロジーの分野においても非常に興味深いと論じる
「ナノテクノロジーにおいていまだ満たされていない目標の一つはナノマテリアルの製造における効率的な自己複製の獲得であり、それはまさに今回我々が原繊維上で観察した出来事である
もしこのプロセスから設計のルールを学ぶことができれば、我々は目標を達成できるのかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1038/NPHYS3828
Physical determinants of the self-replication of protein fibrils.
タンパク質原繊維の自己複製を物理的に決定する要因



Abstract
生物学的分子の自己複製能力は生命の基盤であり、それには完全な細胞機構を必要とする
しかしながら、様々な異常プロセスで そのような機構による補助をまったく必要としない、タンパク質構造の病的な自己複製を生じることがある
その例の一つは、神経変性疾患に関与するアミロイド原繊維のような、タンパク質病的凝集の自触媒的な生成autocatalytic generationである

今回我々はコンピュータシミュレーションを使い タンパク質原繊維形成の自己複製に必要な条件necessary requirementsを明らかにした
我々は このプロセスにとって鍵となる物理的な決定要因physical determinantが 原繊維表面へのタンパク質の親和性affinityであることを確証する

我々は 自己複製が 非常に狭いタンパク質間相互作用の状況regimeにおいてのみ起きることを発見した
このことはシステムのパラメーターならびに実験コンディションの高レベルな感受性を暗示する

我々は次に、我々の理論上の予測を アルツハイマー病関連のAβペプチドから形成される原繊維の動力学的な計測ならびにバイオセンサーによる計測と比較した

我々の結果は 自己複製の動力学the kinetics of self-replication と 単一分子による原繊維表面の被覆範囲the surface coverage of fibrils by monomeric proteins との間の量的なつながりを示す

※coverage: 何かの表面を占める範囲、被覆の度合い

これらの研究結果は、自己複製を可能にする 分子上位構造supra-molecular structuresが形成されるために必要な根本的な物理的条件を明らかにし、また自然のタンパク質凝集の増幅において演じられるメカニズムに光を当てるものである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4489cc5b1e62d53015ae6308cff85370
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関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160610173603.htm
Aβ42の22番目のL-グルタミン酸をD-グルタミン酸に変更すると毒性が高まる
遺伝性若年性アルツハイマー病と関連するいくつかの突然変異は22番目のグルタミン酸に影響し、他のアミノ酸に入れ替わったり消失する

※Aβ42の配列
1-DAEFR HDSGY EVHHQ KLVFF AE(※)DVG SNKGA IIGLM VGGVV IA-42



関連サイト
http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%AD
※Aβの凝集性を変化させる遺伝子変異
 Arctic変異(E693G(Aβ配列としてE22G)
 Osaka変異(ΔE693(Aβ配列としてΔE22)
 Dutch変異(E693Q(Aβ配列としてE22Q)

Arctic変異とDutch変異はともにin vitroでアミロイド線維形成能が高い[38]。
Arctic変異はAβ線維形成過程の中間段階で生じるプロトフィブリルの形成を亢進・安定化する[39]。
Osaka変異をもつAβはアミロイド線維を形成せずオリゴマーの形で留まり、シナプス毒性を示す[40]。
 

脳を透明にしてプラークを立体的に観察する

2016-07-19 06:06:21 | 
3-D imaging reveals unexpected arrangement of plaques in Alzheimer's-afflicted brains

July 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160714134750.htm


(脳内の血管、グリア細胞、プラークを三重に染色した画像

Credit: Dr. Thomas Liebmann, The Rockefeller University)

ロックフェラー大学の研究者は、最近開発された『組織を透明にする』画像化技術を使ってアルツハイマー病の脳組織を可視化し、
ベータアミロイドプラークの高度に秩序立った非ランダムな構造を明らかにしたexpose
アミロイドベータプラークはアルツハイマー病の脳内で典型的に見られ、有害なタンパク質が凝集した粘着性の塊である
この研究結果は7月14日のCell Reports誌で発表された

「今まで我々は2次元のスライスを使って脳を研究してきたが、私はそれが不適切だといつも感じていた
なぜなら脳は複雑な3次元の構造体であって、相互に連結interlockした多くの要素を持つからだ」
首席著者senior authorのMarc Flajoletは言う
彼はロックフェラーの分子細胞神経科学研究室/Laboratory of Molecular and Cellular Neuroscienceの助教授assistant professorである

「スライスには時間がかかり、それを3次元に再構築するのは骨が折れる作業だというだけではなく、
たとえ間違いはなくてもそこからは限られた視点しか得られない
どうにかして3次元構造を全ての次元から (脳をスライスするような準備をすることなく) 観察する方法が我々には必要だった」

彼らは伝統的な脳の3次元画像化(PETやfMRI)を越える方法を望んでいた
それらは脳の活動を広範囲に示すものの、全体的に解像度が低い
この問題を回避するため、研究チームは最近開発された方法の『iDISCO』に着目した
この方法は脳を溶液にひたしてsoak、脳内の脂肪に染み込ませるように電荷を付加しimbue 、次に正反対の電荷を持った電場にさらす
これが磁石のように働いて、脳内の脂肪を全て脳の外へと追い出すのである
結果として脳は硬くて透明な、ほとんど『ガラス』のようになり、アミロイドのプラークを非常に詳細にそして3次元で観察することが可能になる
マウスの脳ならば半球hemisphere全体を、ヒトでは小さいながらもブロック単位を3次元で観察可能である

「マウスモデルではプラークは少々小さく、サイズと形状は均質的homogenousで、どうやってもグループ化はされない/not grouped in any specific way」とFlajoletは言う

「しかしヒトの脳では、より不均一で、より大きなプラークが見られ、今回のような新しい複雑なパターンが観察された」

彼らはこの構造をTAPs (three dimensional amyloid patterns/3次元アミロイドパターン) と呼び、TAPsが将来アルツハイマー病の治療に役立つかもしれないという
医師からの患者の症状の報告を患者の死語の脳画像と比較することによって、アルツハイマー病を異なるカテゴリーに分類できる可能性がある

「脳内がプラークでいっぱいでも、まったく認知症にならない人たちがいる」
彼は言う

「そして、プラークが存在しないのに症状の多くを示す患者がいる」

それらを考慮すると、現在の臨床試験がアルツハイマー病を一つのカテゴリーとして見なすやり方は正しくないのかもしれないと彼は言う

おそらく既存の薬剤はアルツハイマー病患者の一部のサブセットにしか有益ではないかもしれないが、現在の我々にはそれを見分ける方法はない

Flajoletが強調するのは、我々に必要なのはプラークやアルツハイマー病の特徴の全般的な理解だということである
それらの存在と疾患の重症度との間の関係はいまだに明快ではないnot clear-cut

「そのような理解はおそらく新しく、そしてより良い標的治療や、既存の薬剤の再考につながるだろう
それこそが我々の望むものだ」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.06.060
Three-Dimensional Study of Alzheimer’s Disease Hallmarks Using the iDISCO Clearing Method.


iDISCO: immunolabeling-enabled three-dimensional imaging of solvent-cleared organs/「免疫によってラベル化することが可能な、溶剤によって透明化された臓器の三次元画像化」


Figure 5




関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2014.10.010
iDISCO: A Simple, Rapid Method to Immunolabel Large Tissue Samples for Volume Imaging




関連サイト
http://tak38waki.hatenablog.com/entry/2015/09/16/100709
各透明化手法の原理と欠点
 

Aβの蓄積と病理学的なタウ変換が両方とも必要なマウスモデル

2016-07-18 06:06:15 | 
Genetically engineered mice suggest new model for how Alzheimer's causes dementia

Experiments shed light on how 'plaques,' 'tangles' interact and take hold

July 4, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160704082655.htm

ジョンズ・ホプキンズの研究者は新たに開発したヒトのアルツハイマー病の発症を真似る全く新しいマウスモデルを使い、アルツハイマー病の特徴である認知症を引き起こすためには脳内で『ワンツー・パンチ』の重大な生物学的傷害が生じなければならないことを突き止めたと言う
彼らの実験の詳細はオンラインの学術誌Nature Communications誌上で発表される


何十年もの間、認知症の最も一般的な原因であるアルツハイマー病はいわゆる『神経原線維のもつれ/neurofibrillary tangles』の蓄積accumulationと関連することが知られてきた
このもつれは脳の神経細胞内でのタウというタンパク質の異常な凝集clumpから構成され、その神経細胞の外側の組織には『神経突起斑/neuritic plaques』というベータアミロイドタンパク質が死んだ神経細胞と共に蓄積depositする

※神経突起斑 (neuritic plaque): いわゆる典型的な老人斑 (typical plaque) の別名。アミロイド線維の芯を中心として腫大変性神経突起が周囲を環状に取り巻いたもの。neuriticはneuritis「神経炎」ではなくneurite「神経突起」の形容詞形


ジョンズホプキンス大学医学部の病理学教授であるPhilip C. Wong, Ph.D.によると、アルツハイマー病では神経細胞の内部でタウが1か所に固まりbunch up、細胞の外側にはベータアミロイドが凝集してclump up、それらが神経細胞による記憶のコントロールをめちゃめちゃにするmuck upのだという

いまだに明らかになっていないのは、一方が細胞内でもう一方が細胞外というそれら2つの凝集プロセスの『関係』であり『タイミング』であると、筆頭著者であり責任著者corresponding authorでもあるTong Li, Ph.D.は言う


早発性アルツハイマー病についての以前の研究では、ベータアミロイドの脳内での異常な蓄積accumulationはどうにかしてsomehowタウの凝集aggregationを引き起こし、認知症と脳細胞変性に直接つながることが示唆されている

しかしLiとWongたちによる今回の研究で、ベータアミロイドの蓄積は、それ自体がin itself ひとりでにof itself 蓄積したものは、タウの正常な状態から異常な状態への変換conversionを引き起こすには不十分であることが示唆された

代わりにそれは一連の化学的なシグナル伝達イベントを開始する可能性があり、そのイベントがタウの『変換conversion』につながって、その後に続けて症状の発症に至るのだという

「アミロイドプラークの蓄積だけで脳にダメージを与えることはできるが、しかしそれは実際には神経細胞の喪失を促すには十分ではなく、行動や認知の変化を引き起こすこともできないということを、我々は初めて理解したのだと考えている」
Wongは言う

「必要であると思われるのは、『二番目の原因/second insult』だ
つまりタウの変換/conversion of tauもまた必要である」


ベータアミロイドプラークの発生と脳神経細胞内でタウのもつれが生じる間の時期のずれlagは、ヒトでは10年から15年以上であるとLiは言う
しかしマウスの寿命はわずか2年から3年であり、ベータアミロイドプラークの出現をうまく真似ることに成功している現在のマウスモデルでは、タウの変化を観察するのに十分な時間がない

この問題に対処すべく、ジョンズ・ホプキンスの研究者たちは遺伝学的に操作したマウスモデルを開発し、タウタンパク質の断片を使って正常なタウタンパク質の凝集を促進させた
彼らは次に、ベータアミロイドを蓄積するように操作したマウスとタウ凝集促進マウスとを異種交配させたcross-breed
その結果、ヒトで起きるのと似たように認知症を発症するマウスモデルが生まれたとLiは言う

マウスの脳を解剖すると、次のようなことが明らかになった
・ベータアミロイドプラークが存在するだけでは、タウの生化学的な変換を引き起こすには十分ではない
・タウのリピートドメイン(正常なタウを異常な状態に変換する原因となるタウタンパク質の一部)だけでは、タウの変換には不十分である
・タウが変換されるためにはベータアミロイドプラークが脳内に存在しなければならず、そしてタウの断片は プラーク依存的なタウの病的変換の『種』となりうる


この新たな研究が暗示することの一つは、なぜ『タウの変換が起きた後に』アルツハイマー病を攻撃するように設計されたいくつかの薬剤が上手くいかなかったのかについてのおそらく説明になるだろうとWongは言う

「タイミングが外れているoffのかもしれない、」
と彼は言う

「もしタウの変換が起きる前の期間に介入できるとすれば、欠陥を修正し、脳細胞の喪失とそれに続いて起きるensuing疾患の結果を改善ameliorateする見込みは十分あるだろう」

また、この研究からは ベータアミロイドプラークの形成と病理学的なタウの変換をどちらも阻害するように設計された組み合わせ療法がアルツハイマー病にとって最適な結果をもたらす可能性が示唆されるという
彼らのマウスモデルは新たな治療法をテストするために使われる可能性がある

アルツハイマー病協会/Alzheimer's Associationの2016年の統計によると、アメリカでは推定540万人がアルツハイマー病である
治療法cureはなく、限られた時間だけ認知の安定を助けるか、疾患と関連する鬱病、不安、幻覚に役立つかもしれないといういくつかの薬物療法medicationsが存在するだけである


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12082
The neuritic plaque facilitates pathological conversion of tau in an Alzheimer’s disease mouse model.
アルツハイマー病マウスモデルにおいて神経突起斑はタウの病理学的な変換を促進する


Abstract
アルツハイマー病(AD)の中心的な疑問は、タウ病理の発症にとって神経突起斑neuritic plaqueの存在は必要かつ十分なのかということである
ADマウスモデルでは、ベータアミロイド(Aβ)の蓄積を囲んでいる変性神経突起dystrophic neuritesの内部で タウの過剰なリン酸化は観察されるが、しかし病理学的なタウの変換pathological conversion of tauは存在しない
同様に、ヒトのタウタンパク質のリピートドメインをマウスで発現させても、タウの病理学的な変換を促進するには不十分である

今回我々は、ヒトのタウタンパク質のリピートドメインを発現する Aβアミロイドーシスamyloidosisのマウスモデルを開発した
このマウスでは神経突起斑が野生型タウの病理学的な変換を促進することを我々は示す

我々はこのタウ断片が神経突起斑依存的な野生型タウの病理学的変換の種となり、
それ(病理学的変換)が 大脳皮質と海馬から 脳幹brain stemへと広がることを示す

これらの結果は、野生型タウの変換を促進するためには 神経突起斑に加えて二番目の決定要素が必要であることを確定するものである


Introduction
早発性の家族性ADはAPPやPresenilinと関連し、Aβの蓄積がタウの凝集を引き起こすという考えを支持するが、
晩発性のLOADはApoEやTrem2と関連し、Aβは認知低下を引き起こすには十分ではないという考えが強く支持される
実際、LOADではAβプラークと認知は相関せず、タウの凝集が認知低下と相関する

タウの病理の研究で使われる現在のマウスモデルは、主にFTDP-17と関連するタウ変異体を発現する導入遺伝子transgeneをベースとしている (refs 9, 10, 11, 35, 36, 37, 42)
しかし、FTDP-17と関連するタウモデルで起きる病理はAβプラークに依存せず細胞死を促進するのに十分であり、FTDP-17の良いモデルではあるかもしれないが、ADのモデルではない


http://www.nature.com/ncomms/2016/160704/ncomms12082/fig_tab/ncomms12082_F10.html
Figure 10: A multifactorial Model for LOAD.
晩発性アルツハイマー病(LOAD)の多因性モデル


タウの病理学的変換には神経突起斑は必要だが不十分であることを示した図
二番目の『ヒット』には様々なリスクアレルや要因が含まれ、それらはLOADにおける神経突起斑依存的な野生型タウの病理学的変換の促進に必要である


Reference
43 Distinct Tau Prion Strains Propagate in Cells and Mice and Define Different Tauopathies
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24857020

「プリオンprion」



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Aβとリン酸化タウは両方ともアルツハイマー病の早期から代謝の低下に関与する



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症状が出る前からPET画像化によりAβとタウの両方をステージ化して比較する



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アルツハイマー病とFTDは誤診されやすいが、FTDにはAβがまったくないので画像化して区別できる




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ノルエピネフリンを脳全体に分泌する青斑locus coeruleusには、タウのもつれによる病理が真っ先に現れ、ノルエピネフリン分泌が低下する
興奮したりチャレンジすると分泌されるノルエピネフリンはニューロンを保護する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150423125739.htm
これまでの研究ではAβが細胞外に出てからタウタンパク質に変化が生じるとされていたが、ヒトの皮膚からiPS細胞を作成してニューロンに分化させて、APPからAβを切り出すセクレターゼの速度を変化させると、それに伴ってタウタンパク質のレベルも変化した
 

タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す

2016-07-17 06:06:31 | 
Brain cell death in Alzheimer's linked to structural flaw

Study reveals multiple new leads for pursuing potential treatments

July 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160713100909.htm


(アルツハイマー病患者の脳細胞の核には、正常な脳細胞には見られないトンネルが発見された(矢印)

Credit: Image courtesy of Bess Frost, Ph.D., assistant professor, Barshop Institute for Longevity and Aging Studies, University of Texas Health Science Center at San Antonio)

テキサス大学サンアントニオ校保健学センター・バーショップ加齢長寿研究所の研究者は、アルツハイマー病に関与する新たな生物学的経路を明らかにした
ショウジョウバエを使った実験でこの経路を阻害すると脳の細胞死が減少し、この経路への干渉がヒトの患者でも脳の疾患を治療するための有望な新戦略の代表となりうることが示唆された


アメリカでは約540万人がアルツハイマー病であり、記憶と思考、そして行動に問題が生じている

アルツハイマー病の特徴の一つはタウというタンパク質が脳内で凝集する(clump/aggregate)ことである

「我々はアルツハイマー病で病的なタウpathological tauによって異常をきたす複数の細胞内プロセスを新たに明らかにした」
バーショップで助教授のBess Frost, Ph.D.は言う

「タウを細胞死へとつなげるこれらのプロセスのそれぞれは潜在的な薬剤の標的である
この新しい知識から、より多くの情報を基にした治療法の開発が可能になるだろう」

Frostは今回の発見を、オーランドでアメリカ遺伝学会/Genetics Society of Americaが主催する米国遺伝学会議/The Allied Genetics Conference(TAGC 2016)で発表する予定である


「合理的な薬剤設計のために重要なのは、細胞内の多くのイベントの中から実際に疾患を引き起こしているものを正しく識別するdiscriminateことである
それは良い薬剤の標的となりうるが、それ以外は単に疾患の付随的な影響side effectに過ぎない」
Frostは言う

「それはショウジョウバエを使うことで素早く達成することが可能となる
なぜならヒトのアルツハイマー病患者の脳内で起きる何かのプロセスを観察した際に、ハエのアルツハイマー病モデルでもそれと同様のプロセスを阻害することが可能であり、それによりハエの状態が良くなるかどうかを観察し、脳の細胞死が少なくなるかどうかを確認することができるからである」


以前Frostと彼女の同僚たちはアルツハイマー病患者の死後の脳から得られた細胞を研究し、典型的には細胞の核内で『きつく巻き取られたtightly wound』状態であるはずのDNAの領域が アルツハイマー病の脳細胞では弛緩relaxedして『巻かれていないunwound』状態であることを発見している
そしてDNAが巻かれていない状態unwoundだと、オフになっているべき遺伝子のスイッチが入ってしまう可能性がある

今回の新たな研究で彼女らはアルツハイマー病患者の脳細胞の核をさらに詳しく調べ、DNAがどのようにして巻かれていない状態unwoundになるのかを明らかにしようとした

研究者たちは非常に高解像度の顕微鏡技術を使うことで核全体entire nucleusを観察することを可能にした
その結果、驚くべきことにアルツハイマー病の脳細胞の核には通常は存在しない『トンネルtunnels』が貫通していたのである

「我々はこれらのトンネルが実際にニューロンの細胞死を引き起こすのか、それとも単にアルツハイマー病に付随する副次的な作用side effectに過ぎないのかを明らかにしたいと考えた」
Frostは言う

「ショウジョウバエのアルツハイマー病モデルを使って遺伝学的にトンネル形成プロセスを阻害した結果、実際に脳の細胞死は少なくなり、ハエの寿命は長くなった
我々は現在このプロセスを薬剤で阻害できるかについての実験もラボで実施している」


この初となる潜在的な薬剤標的を新たに突き止めた後、生物学的経路をさらに明らかにすべく研究者たちは実験を継続した

細胞の核はラミンlaminという核の骨格を形成するタンパク質によって取り囲まれ、ラミンは構造的な足場scaffoldを形成している
研究者たちはラミンの核骨格nucleoskeletonが破れてdisruptトンネルが形成されると 核内部のDNAはもはや核骨格に固定できなくなり、ほどけてしまうbecomes unraveledことを発見した
言い換えると、DNAの全体的な3次元構造を維持するためには、きつく巻かれたDNAとラミン核骨格との間の相互作用が必要だということである

※ラミン: 核ラミナを構成するラミンには3種類あり、ラミンAとラミンCはクロマチンと結合に関与し、ラミンBは核膜との結合に関与する


また、彼らはアルツハイマー病患者の脳内で凝集するタウタンパク質が
細胞核の外側の細胞質に存在するアクチン細胞骨格actin cytoskeletonを過剰に安定化overstabilizeさせることにより
ラミン核骨格lamin nucleoskeletonを混乱disruptさせることを明らかにした

これはアクチン細胞骨格とラミン核骨格との間の正常な連結couplingを妨げinterrupt、それが次に、きつく巻かれたDNAを弛緩させる
この弛緩によって想定外not supposedの遺伝子のスイッチがオンになり、結果として脳細胞は死ぬ


タウの凝集とそれによる最終的な細胞死とを連結させる細胞内プロセスを突き止めたことにより、研究者たちは治療的介入の目標となる数多くの標的への道を新しく開いた

加えて、この研究は脳がラミンの問題に脆弱であることが明らかになった初めての例の一つである

科学者たちの中には脳は加齢に対して他の組織とは異なる応答をすると考える者がいる
なぜなら、ラミンを含む遺伝子に突然変異を持つ『早老症progeria』の人々は体全体の組織に影響するように早く年老いていくが、脳だけは例外だからである


「我々は脳がラミン核骨格の機能不全に脆弱であり、その乱れは脳の細胞死を引き起こすことを発見した」
Frostは言う

「これらの研究結果は加齢の基本的なメカニズムが脳と他の組織の間で維持されていることを示唆する」


この研究はフロリダ・オーランドのオーランド・ワールド・センター・マリオットで開催されるTAGC 2016で、『ヒトの疾患のハエモデル I /Drosophila Models of Human Disease I』のセッション内、7月15日金曜日午後4時から15分間にわたって発表される

この研究は国立神経疾患・脳卒中研究所/National Institute for Neurological Disorders and Stroke(NINDS)の出資によって実施された(グラントK99NS088429)


<コメント>
タウタンパク質の凝集→アクチン細胞骨格の過剰な安定化→ラミン核骨格の破綻→ヘテロクロマチンの弛緩→遺伝子の異常発現→ニューロンの細胞死



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150217131120.htm
タウタンパク質をコードする遺伝子MAPTの多型はアルツハイマー病と関連する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150324084339.htm
アルツハイマー病で認知低下の発症年齢、疾患の期間、精神の荒廃を予測するのは、アミロイドではなくタウの蓄積度である



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150224164909.htm
アルツハイマー病とパーキンソン病の患者で皮膚の生検をしたところ、健康な人と比較してタウタンパク質のレベルが7倍高く、パーキンソン患者はα-シヌクレインのレベルが8倍高かった



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150423125739.htm
これまでの研究ではAβが細胞外に出てからタウタンパク質に変化が生じるとされていたが、
ヒトの皮膚からiPS細胞を作成してニューロンに分化させ、APPからアミロイドベータ(Aβ)を切り出すセクレターゼの速度を変化させると、それに伴ってタウタンパク質のレベルも変化した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160505133911.htm
普段は核内に存在するRNA結合タンパク質TIA1はストレス状態になると細胞質に現れ、タウタンパク質はTIA1と相互作用する
タウはストレス顆粒タンパク質を促進する一方で、TIA1はタウの折りたたみ失敗と不溶性を促進する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/088bb03d0ac98a9108ba2b4e97160585
アルツハイマー病の初期にはp300が上昇してタウタンパク質のアセチル化を引き起こし、タウの蓄積と毒性を促進するドライバとして働く
FTDのマウスモデルではタウがアセチル化するとニューロンのタンパク質を分解する能力が低下するが、サザピリンでp300を阻害してタウのアセチル化を抑制するとタウのターンオーバーが促進され、脳内のタウレベルが低下した



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfc3251679b9cb45dce66398a618c12d
マウスにヒトのFTDと関連する変異(V337M)を持つタウタンパク質を発現させると、腹側線条体(ventral striatum; 側坐核と嗅結節)ならびに島(insula)において選択的にシナプスが障害され、PSD-95が枯渇してシナプス後肥厚が縮小し、シナプスでのNMDARの局在が障害された
PSD-95はシナプス後肥厚を構成する足場タンパク質で、NMDARのカルボキシル末端に結合する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150527191647.htm
タウタンパク質は長期抑圧/long-term depression(LTD)の過程で重要な生理学的役割を持ち、タウが機能する場所はシナプスである
そしてタウは凝集してアルツハイマーの特徴である「もつれ」を形成することから、アルツハイマー病は正常なシナプスメカニズムの異常調節によって引き起こされる可能性がある
また、我々は最近、アミロイドβのシナプスに対する非常に急激な作用を突き止めた



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/04/140407090533.htm
カフェインはアデノシン受容体と拮抗し、アデノシンによって活性化される脳内の様々な受容体を阻害するが、ボン大学のMüller教授たちの研究チームは以前アデノシン受容体のサブタイプの一つであるA2Aの阻害が特に重要な役割を演ずる可能性を既に示している
今回彼女らは超高純度ultrapureで、水に可溶性のA2AアンタゴニストMSX-3を開発した
この化合物は副作用がカフェインよりも少ないが、その理由はA2Aだけを阻害し、同時にそれが著しく効率的だからである
変化したタウタンパク質を持ち、治療しなければアルツハイマー病の症状を早くに発症するよう遺伝子を操作したマウスに対して数週にわたってこのA2Aアンタゴニストを投与したところ、記憶テストではプラセボ群と比較して著しく良い結果が得られた
このA2Aアンタゴニストは空間記憶で特に良好な結果を示し、脳内で記憶を司る領域である海馬では病理発生的なプロセスの改善が実証された



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/77f58259ab47b31eee2f0f14795b2978
Aβペプチドには抗菌作用があり、Aβのオリゴマー化はAβペプチドの抗菌作用に必須である



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5cfd5661ad19c9d6936b1e337c0c95f3
マラリア原虫の遺伝子発現は細胞核内の3次元構造によって調節されている



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160204151050.htm
アルツハイマー病では核膜の裏打ちタンパク質であるラミンが消失する


http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2015.11.039
Lamin Dysfunction Mediates Neurodegeneration in Tauopathies.

Highlights
・核骨格であるラミンの崩壊は、タウオパチーtauopathyにおけるニューロン細胞死を促進する
・ラミンの機能不全はヘテロクロマチンを弛緩させ、ニューロン細胞死を引き起こす
・不適切な細胞骨格/核骨格の結合couplingは、タウオパチーにおいてラミンを崩壊させる
・ラミンの病理は、アルツハイマー患者の死後脳で保存されている

Summary
我々は以前、タウオパチーにおけるヘテロクロマチンの広範囲な弛緩を報告した
タウオパチーにはアルツハイマー病のような加齢と関連して進行する神経変性疾患が含まれ、リン酸化タウタンパク質の凝集がタウオパチーの病理的な特徴である
ここに我々は神経変性性タウオパチーにおいて/タウオパチーのin vivoモデルにおいて 細胞骨格-核骨格の異常な結合によるラミンの調節不全が ヘテロクロマチン弛緩ならびにニューロン細胞死を促進することを実証する
 

運動と報酬にはそれぞれ異なるドーパミンニューロンの集団が関わる

2016-07-16 06:06:11 | 
Scientists identify neurochemical signal likely missing in Parkinson's

Two distinct populations of dopamine neurons discovered

July 11, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160711155821.htm

パーキンソン病で失われるらしいlikely神経化学的なシグナルがノースウェスタン大学の神経科学者たちにより突き止められた
彼らは運動ならびに学習/報酬行動の両方に対応する脳の重要な領域にドーパミンを送り届ける、明確にdistinctly異なる2種類のニューロンを初めて発見した


「何十年もの間ずっと定説dogmaとされてきたのは、ドーパミンニューロンはそのすべてが、どうにかしてsomehow運動movementと報酬rewardの両方に関与するというものだった
しかしこれはまったく道理にかなっていなかった」
ノースウェスタン大学ワインバーグ教養学部/Weinberg College of Arts and Sciencesの神経学助教授assistant professorで、研究の首席著者senior authorであるDaniel A. Dombeckは言う

「今回の我々の記録では、ニューロンには異なる種類が存在することが非常に明らかである
我々は運動する動物でそれを文字通りliterally『見る』ことが可能だった
我々の研究結果はパーキンソン病や他の神経学的な疑問についての多くの疑問に対する答えの助けとなりそうだ」

今回の研究結果は運動制御と学習/報酬におけるドーパミンシステムを理解するための新しい枠組みを提供し、ドーパミンシステムの機能障害がどのようにして広範囲な神経疾患につながりうるのかを考える基盤となる
『素早い動きrapid movementに固定lockedされた脳内ドーパミンシグナル伝達』に関するエビデンスは今回の研究以前にはほとんど存在しなかった
この研究結果は本日7月11日にNature誌で発表された


ワインバーグの科学者たちはこれまで誰も見たことがないもの、つまり脳の線条体striatum領域における2つの異なるドーパミンニューロンの集団を観察するための、洗練された画像化技術を開発した
1つは『運動制御motor control and movement』のシグナルを伝え、もう1つは『思いがけない(サプライズの)報酬/unpredicted (surprise) reward』についてのシグナルを伝える
この発見はドーパミンニューロンがどのようにして行動behaviorに影響するのかについての現在のモデルを覆すものだ

「ドーパミンがどのようにして『運動movement』と『報酬を基にした行動reward-based behavior』の両方に働くのかというパラドックスはこれまで常に存在し続けていた」
ポスドクpostdoctoral fellowのMark W. Howeは言う

「我々が明らかにしたのは、ドーパミンが実際に両方で働き、そしてそれぞれを別のニューロンの集団が行うということである
さらに、運動に作用するニューロンは非常に高速なタイムスケールvery rapid timescaleでそれを行う
これらはおそらくパーキンソン病で影響を受ける動力学dynamicsであるようだlikely」


この研究は、より標的をしぼったパーキンソン病の治療を開発するための重要な情報を提供する
パーキンソン病はドーパミンニューロンの細胞死が原因となって起きる神経変性疾患である

現在の治療は脳の全体的なドーパミンの総量/ambient pools of brain-wide dopamineを補充replaceすることに焦点を合わせている
今回の研究は将来の治療が、運動の制御に最も関与するように思われる特定の細胞タイプや脳の領域、タイムスケールtimescalesを標的とすることによってさらに効率的になりうる可能性を示唆する


DombeckとHoweらの開発した高解像度の画像化ツールは、ドーパミンシステムの動力学dynamicsを前例のない詳細なレベルで、そして活動するマウスで観察することを可能にした

回し車を走っているマウス、または思いがけない報酬/unpredicted rewardを受け取ったマウスについて、それらの活動中に線条体でのドーパミンニューロンの軸索axonを画像化することによって異なるドーパミンの軸索を解きほぐすように分離しtease apart、ドーパミンニューロンには2つの異なる集団が存在することを明らかにした

彼らは幾ダースもの対となる軸索を一度に画像化し、軸索の活動がどのように見えるのかを観察した
その結果、運動やパーキンソン病に関連がある軸索はマウスが走っている時は活性化していたが、報酬を得た時には活性化していなかった

また、彼らは光遺伝学optogeneticsを使い、遺伝学的にラベルを付けた運動軸索movement axonに光を当ててマウスの運動が制御可能であることを示し、ドーパミンが移動運動locomotionの引き金を引くことが可能だと示した


「この研究は、運動movementにおけるドーパミンニューロンの役割についての我々の考え方を変化させる」
ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部/Feinberg School of Medicineで神経学の助教授associate professorであるRaj Awatramaniは言う

「これは当分野では非常に重要な研究である」

Awatramaniはドーパミンニューロンの多様性の元となる分子的な基盤についての専門家である
彼は最近Dombeckたちのグループと協力してドーパミンニューロンの機能と分子的な構造についてのさらなる研究を開始した


Nature誌での最重要点/Highlightを以下に挙げる

・運動の制御にとって重要な領域である線条体で終わるドーパミン軸索からのシグナルは、マウスが運動し始めた時に強くそして急速に活性化し、マウスが移動運動locomotionする間に加速するにつれて、進行中の活動ongoing activityがバースト発火burstを示した

・(光で活性化するイオンチャンネルを発現する)線条体のドーパミン軸索を光でオンにすると、移動運動locomotionを急速に誘発することが可能である
これは観察されるシグナルと、その運動movementを生成する機能的な役割との一致correspondenceを示す

・思いがけない報酬/unpredicted rewardをシグナル伝達する軸索は 運動movementをシグナル伝達する軸索とは大きく異なっており、線条体の異なる領域、つまり目標志向的な学習/goal-directed learningに関与する領域で主に終結していた


http://dx.doi.org/10.1038/nature18942
Rapid signalling in distinct dopaminergic axons during locomotion and reward.
移動運動の間のドーパミン作動性の軸索における高速なシグナル伝達は、報酬のシグナル伝達とは異なる


中脳を起点として線条体へとドーパミン作動性の投射をする軸索/dopaminergic projection axons from the midbrain to the striatum は運動の制御にとって重要である
なぜならパーキンソン病におけるそれらの変性は結果として深刻な運動の欠陥につながるからである

逆説的にparadoxically、ほとんどの記録方法で
思いがけない報酬unpredicted rewardsに応答して
高速で一過性のドーパミンシグナル伝達/rapid phasic dopamine signalling(100ミリ秒までのバースト発火bursts)が報告されているが、
運動と関連するシグナル伝達に関してはほとんどエビデンスが存在しない

一般に有力とされるモデルleading modelでは
線条体を標的とするドーパミンニューロンにおける一過性のシグナル伝達phasic signallingは
報酬を基にした学習reward-based learningを促進driveすると断定positされる一方で、

これらの同じニューロンにおける
発火のゆっくりとした変化/slow variations in firing (数十秒から数分/tens of seconds to minutes) は
動物を運動に向かわせるか運動から遠ざけるように偏向させるとされている/bias animals towards movement or away from movement

しかしながら、現在の方法ではこのモデルを支持または否定するエビデンスがほとんど何も提供されていない

今回我々は新しい光記録法/optical recording methodsを使い、
線条体を標的とするドーパミン作動性軸索の
高速かつ一過性のシグナル伝達/rapid phasic signallingを発見したことを報告する
このシグナル伝達はマウスの移動運動locomotionと関連し、そして移動運動を引き起こすことが可能である

これらのシグナルを示す軸索は、思いがけない報酬に応答する軸索とは大きく異なる

これらの結果は
ドーパミン作動性の神経調節/dopaminergic neuromodulationが
『1秒未満の正確さ/sub-second precision』で
運動制御と報酬学習に異なったインパクトを与えることを示唆し、

ドーパミンと関連する疾患の治療を考慮する上で
シグナルの正確なタイミングprecise signal timingとニューロンのサブタイプneuronal subtypeの両方が
重要なパラメーターであることを示す


http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nature18942_SF10.html
Extended Data Figure 10:
Dopamine axon locomotion signalling measured by fibre photometry from different striatal sub-regions.

移動運動をシグナル伝達するドーパミン軸索を、線条体の異なるサブ領域でファイバー測光する


※SNc(赤色): substantia nigra pars compacta/黒質緻密部(A9)

※VTA(青色): ventral tegmental area/腹側被蓋野(A10)

※Dorsal(赤色): dorsal striatum/背側線条体。被殻putamenと尾状核caudate nucleusからなる

※Ventral(青色): ventral striatum/腹側線条体。側坐核nucleus accumbensと嗅結節olfactory tubercleを合わせたもの

※パーキンソン病は黒質緻密部から投射されるニューロンの脱落により線条体でドパミンが低下するためとされている

jは、現在主流の同種同質homogenousなドーパミンシグナル伝達モデルを矢状sagittalに図示したもの
kは、機能的な不均質性heterogeneityを組み入れた我々の新たなモデルである



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オリゴマーのα-シヌクレインやドーパミンで修飾されたα-シヌクレインは高い親和性でミトコンドリアのTOM20という受容体に結合し、ミトコンドリアが機能するために必要なタンパク質のインポートが損なわれ、ミトコンドリアの老化につながり、呼吸の低下と活性酸素種(ROS)の増加を示す



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哺乳類のGABA作動性介在ニューロンの25パーセントがパルブアルブミン (PV) 陽性の介在ニューロン (PVI) で、その86パーセントが高速発火PVI (FS PVI)。FS PVIはγ波を生成するが、γ波の生成には高いエネルギーが必要であり、ミトコンドリア/電子伝達系複合体が多く酸化ストレスを生じやすい



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