機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

ニロチニブはパーキンソン病で低下したドーパミンを回復する

2016-07-14 06:06:40 | 
Cancer drug restores brain dopamine, reduces toxic proteins in Parkinson, dementia

July 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160712101230.htm

パーキンソン病またはレヴィ小体認知症患者での小規模な第一相試験は、FDAによって承認された白血病の薬が患者の脳のドーパミンを著しく増加させ、そして進行と関連する有害なタンパク質を減少させたという分子的なエビデンスを提供する
脳内の化学物質であるドーパミンは神経伝達物質neurotransmitterと呼ばれ、パーキンソン病などの神経変性疾患ではドーパミンを作るニューロンが死ぬために失われる

ジョージタウン大学メディカルセンター/Georgetown University Medical Center (GUMC) の研究者が2015年10月の北米神経科学学会/Society for Neuroscienceの年次総会で最初に報告し、今回Journal of Parkinson's Disease誌で発表する研究結果は、臨床的な転帰outcomeの改善を支持するものだという

この研究ではニロチニブを試験し、慢性骨髄性白血病/chronic myelogenous leukemia(CML)で使われる用量(300~400mgを1日2回)と比較してかなり少ない用量(1日150mgか300mg)を毎日6ヶ月間投与した
12人の患者が試験に登録され、うち1人は有害事象adverse eventのため打ち切られたwithdraw
研究者によると、試験を完了した残り11人の参加者ではニロチニブが安全かつ十分に忍容性well toleratedがあるようだったという

研究では安全性に加えて、認知機能、運動症状、非運動症状の改善度はもちろん、血液中ならびに脳脊髄液/cerebral spinal fluid(CSF)中の生物学的マーカーも調査され、これらの神経変性疾患の患者にニロチニブが恩恵をもたらすという顕著な徴候が観察された

「この研究は小規模であり、患者はお互いに非常に異なっていて、さらにプラセボ群も存在しないため、これらの結果は注意深く考察viewする必要があり、大規模なプラセボ対照試験/placebo controlled trialsでさらに確認validateされなければならない」
治験責任医師senior investigatorのCharbel Moussa, MD, PhDは言う
彼はGUMCトランスレーショナル神経治療プログラム/Translational Neurotherapeutics Programの科学/臨床の研究部長research directorである

※principal investigator: 治験責任者


バイオマーカーとしては以下のような状態が観察された

・ドーパミンの代謝産物であるホモバニリン酸/homovanillic acid(HVA)のレベルはドーパミン産生の指標だが、ドーパミンニューロンがほとんど失われていてさえ安定して2倍の数値を示した
研究参加者のほとんどはドーパミン補充療法replacement therapyの利用を止めるか減らすことが可能だった

・パーキンソン病と関連する酸化ストレスのマーカーであるDJ-1は、ドーパミン産生ニューロンの細胞死の指標でもあるが、ニロチニブの投与後のDJ-1レベルは50パーセント以上低下した

※DJ-1は酸化ストレスを抑制するとされ、酸化ストレスに応じて上昇するようだ。論文の本文にはこう書かれている
「酸化ストレスに応じてAblは活性化し、DJ-1は上方調節される [25–27] が、
 6ヶ月時点でベースライン時と比較して/ 6ヶ月時点で2ヶ月時点と比較して、
 CSFのDJ-1が150 mgのグループで減少の傾向を示しtrended towards a decrease、
 300mgのグループでは有意に減少したsignificantly reduced (Supplementary Table 5)」


・脳脊髄液(CSF)中の細胞死のマーカー(NSE, S100B, タウ)のレベルは著しく低下していた
これはニューロンの細胞死が減少したことを示唆する

NSE: neuron-specific enolase/神経特異性エノラーゼ

S100B: S100 Calcium Binding Protein B/ S100カルシウム結合タンパク質B


加えて、ニロチニブはCSF中のα-シヌクレイン(ニューロンに蓄積する有害なタンパク質)の喪失lossを薄めてattenuate、その結果としてパーキンソン病とレヴィ小体認知症の両方でCSFレベルは低下したようだとMoussaは付け加える

彼は薬剤に忍容性があった11人の全てが有意meaningfulな臨床的改善を報告したとも言う
全ての参加者は中度~進行したステージのパーキンソン症候群/Parkinsonismであり、彼らは全て軽度mildから重度severeの認知障害cognitive impairmentを持っていた

※mild cognitive impairment(MCI): 軽度認知障害

「パーキンソン病とレヴィ小体認知症の参加者たちの運動機能と認知機能は、薬を続けている限り徐々に改善した
ドーパミン補充療法の使用は減少したにもかかわらずである」
筆頭著者lead authorのFernando Pagan, MDは言う
彼はGUMCトランスレーショナル神経治療プログラムの医学部長medical directorで、MedStar Georgetown University Hospitalでは運動障害プログラム/Movement Disorders Program のディレクターでもある
Paganによると、薬を止めて3ヶ月後には参加者たちの認知機能、運動機能は研究開始前の低い状態に戻ったという


いくつかの深刻な副作用side effectsが報告され、一人が薬の投与から4週目で心臓発作heart attackのために中止、そして3件の尿道感染または肺炎が生じた
これらのイベントはこの患者の集団では珍しいものではなくnot uncommon、ニロチニブの使用に関連する有害事象adverse eventsなのかどうかを決定するためのさらなる研究が必要であるという

「ニロチニブの長期使用の安全性が優先であり、
パーキンソン病における最も安全で最も効果的な用量を決定するためのさらなる研究が必要だ」


研究者は臨床試験を設計する際にラボでのいくつかの注目に値する観察をトランスレートtranslateさせようとした
Moussaを中心として実施された前臨床試験では、チロシンキナーゼ阻害剤のニロチニブが効果的に血液脳関門を通過し、
ニューロンの『ゴミ処理装置/garbage disposal machinery』のスイッチを入れることにより
パーキンソン病や認知症で蓄積する有害なタンパク質を破壊することが示された

以前彼らが発表した研究では、ニロチニブがパーキンソン病とアルツハイマー病の動物モデルにおいて神経伝達物質のドーパミンのレベルを上昇させ、運動ならびに認知的な転帰outcomes を改善することも示された
ドーパミンは有害なタンパク質の蓄積でニューロンが破壊される結果として失われる化学物質である

「我々はニロチニブの患者への有益さがさらに大きく十分にコントロールされた研究で確かめられることを望んでいる
今回の結果はとても有望な一歩である」
Moussaは言う

「これらの結果が以降の研究でも持ちこたえるhold outならば、ニロチニブは約50年前のレボドパの発見以来のパーキンソン症候群の患者にとって最も重要な治療法になるだろう」

彼はさらに続ける
「加えて、もし近い将来upcomingのより大規模なプラセボ対照試験でニロチニブが認知に対して効果が確かめられれば、この薬はレヴィ小体認知症への初めての治療法の一つとなりうるだろう
現在レヴィ小体認知症や、そしておそらく他の認知症には、何ら有効な治療法が存在しない」


アルツハイマー病とパーキンソン病への2つのプラセボ対照・第二相臨床試験が、夏/秋に計画されている
GUMCトランスレーショナル神経治療プログラムでは、ALSでの小規模な試験も計画されている

ノバルティスNovartisによると(2015年10月現在as of)、1日800mgでのニロチニブによるCMLの治療にかかるコストは月当たり約10,360ドルである
今回の研究ではそれよりは低く、1日当たり150か300 mgの用量だった


http://dx.doi.org/10.3233/JPD-160867
Nilotinib Effects in Parkinson’s disease and Dementia with Lewy bodies.
パーキンソン病ならびにレヴィ小体認知症におけるニロチニブの効果


要旨Abstract

背景Background:
我々はチロシンキナーゼのAbelson (Abl) を阻害するニロチニブの低用量での影響を、安全性と薬物動態pharmacokineticsについてパーキンソン病またはレヴィ小体認知症において評価した

目的Objectives:
この研究の主要評価項目/一次転帰primary outcomesは、安全性と忍容性tolerabilityである
薬物動態、標的との結合target engagemenは副次的な評価secondaryだが、臨床的な転帰は探求するexploratory

方法Methods:
12人の被験者subjectを150mg (n = 5) または 300mg (n = 7) のグループにランダムに割り振り、ニロチニブを経口で毎日24週間投与させた

結果Results:
進行したパーキンソン病の被験者において、150mg と 300mg の用量は安全safeで、忍容性toleratedが示された
ニロチニブは脳脊髄液(CSF)で検出され、標的であるAblと結合するように思われる
運動ならびに認知的な転帰outcomesから、臨床的転帰に対する潜在的に有益な効果が示唆された
ベースライン時と24週時との間でホモバニリン酸のCSFレベルは有意に増加した
調査のためのCSFバイオマーカーを計測した


結論Conclusions:
この小規模だが概念実証proof-of-concept的な研究ではプラセボ群を欠き、参加者は均質homogenousではない
その結果としてベースライン時でのグループ間の、そしてグループ内での違いが生じた
このことはバイオマーカーならびに臨床データの解釈interpretationを制限し、どんな結論であれ注意深く引き出されるべきである/any conclusions should be drawn cautiously
にもかかわらず、今回の共通した観察は、ニロチニブの安全性と効能をさらに大規模なランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験で評価するための根拠となることを示唆する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5d4dc56fff78fde69c44dee22b3e92a6
ニロチニブがパーキンソン病の阻止に有望か



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/05/130510075623.htm
ニロチニブは細胞のごみ処理機構を活性化させて、α-シヌクレインの凝集を防ぐ



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5d4dc56fff78fde69c44dee22b3e92a6
ニロチニブはc-Ablによるα-シヌクレインのリン酸化を阻害して凝集を防ぐ



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e958b98b4fec4b934458544c642800de
PARK7(DJ-1)の欠陥は代謝を変化させて酸化ストレスを生じる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/782c1141d373ffa15bbb39b5d3795f91
活性化したc-Ablはパーキンを停止させる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/00f9bdacc5fee082eb60dda6170341fb
オリゴマーのα-シヌクレインやドーパミンで修飾されたα-シヌクレインは高い親和性でミトコンドリアのTOM20という受容体に結合し、ミトコンドリアが機能するために必要なタンパク質のインポートが損なわれ、ミトコンドリアの老化につながり、呼吸の低下と活性酸素種(ROS)の増加を示す



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160608120614.htm
フマル酸ジメチル(DMF)と代謝産物フマル酸モノメチル(MMF)はNrf2の活性を上昇させるが、DMFはグルタチオンを枯渇させて酸化ストレスを生じ、MMFはより直接Nrf2を活性化するので、パーキンソン病の治療としてはMMFの方がいいかもしれない
 

最新の画像もっと見る