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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

鏡写しの逆向き分子を届けてAβのオリゴマーを捕捉する

2016-10-22 06:06:50 | 
Treatment approach used in cancer holds promise for Alzheimer's disease

October 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020103528.htm

アルツハイマー病の発症を防ぐための新たな治療法が開発された
これは薬剤を脳に運ぶ顕微鏡レベルの脂肪滴を使うのだという
この治療法は元々は癌細胞を標的にするために使われるが、今回初めてアルツハイマー病の治療として応用し、マウスの記憶を回復することに成功した
ランカスター大学の研究者を中心とした今回の研究はアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの出資によるもので、学術誌のNanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicineで発表された


この治療法で使われる微細な脂肪滴はナノリポソームnanoliposomeと呼ばれ、低濃度のアミロイドベータでも集積してプラークになるのを止めることが可能な『タンパク質の断片』によって覆われている
アミロイドプラークは有害なペプチドが凝集したもので、アルツハイマー病患者の脳内で神経細胞を損傷させる

今回の研究では遺伝子操作によりアルツハイマー病を発生させたマウスにナノリポソームを3週間注入した
実験の結果、薬剤を投与されたマウスは長期記憶を回復し、見慣れた物体familiar objectsを24時間後も認識できた
対照的に、プラセボを注入されたマウスは前日に見せられた物体を覚えていなかった

主な研究者Lead researcherであるDavid Allsop教授は次のようにコメントする
「今年夏の成功をうけて、体内の免疫系を利用してアミロイドを標的とする抗体薬への楽観的な見方が出てきた
しかしながら、もしうまくいくことが証明されても実際の治療はクリニックで点滴/IV dripによって投与しなければならないだろうし、潜在的に有害な副作用の可能性もある」

「ナノリポソームの使用は、有害なアミロイドプラークの形成を阻害するための代替手段を提供する
そしてそれは脳内の免疫応答を活性化することはない
我々の希望は、いつの日かこれが点鼻スプレーぐらい単純で非侵襲的な方法によって、患者が家にいながらにして/in the comfort of their own home投与可能になることだ」


ナノリポソームは既に、有害な化学療法薬を癌細胞に対してうまく差し向けるbetter targetために使われている
最近の研究では脂肪滴が鼻から脳内へ直接通過することも示されており、これはアルツハイマーのような脳の疾患に点鼻スプレーを使った治療の可能性への道を開く

痴呆の治療への革新的なアプローチの必要性について、アルツハイマー協会で研究開発のディレクターであるDoug Brown博士は次のようにコメントする
「痴呆症の新しい薬は15年近く出ておらず、我々は痴呆症の研究で重要な時期にいる
脳内へ薬剤を届ける新たなアプローチを探し出すsniff-out努力を続けることが不可欠だ
現在進行中の臨床試験を我々は期待して待っているが、アルツハイマー病協会は認知症に正面からhead-on取り組む革新的な研究にこれからも出資を続けていくだろう」

「ナノテクノロジーは様々なタイプの癌の患者に大きな利益を約束するが、いつの日かそれが最も一般的な認知症の人々にも同じ希望をもたらすというのはとてもエキサイティングなことだ」

イギリスには85万人の認知症患者がおり、現在利用可能な薬は進行を遅くすることはできず、対症療法だけである
ランカスター大学の研究チームは現在、彼らの新たな治療を患者で試験するために企業からの投資を探しているところである


http://dx.doi.org/10.1016/j.nano.2016.10.006
Retro-inverso peptide inhibitor nanoparticles as potent inhibitors of aggregation of the Alzheimer's Aβ peptide.
逆向き-逆異性体ペプチドによる阻害剤のナノパーティクルはアルツハイマー病と関連するAβペプチド凝集の強力な阻害剤である

※PEG: ポリエチレングリコール

Abstract
アミロイドベータペプチド/Amyloid-β peptide (Aβ) の凝集はアルツハイマー病 (AD) の病理発生において鍵となる重要なイベントである

我々は逆向き逆異性体/retro-inversoのペプチドであるRI-OR2-TAT (Ac-rGffvlkGrrrrqrrkkrGy-NH2) で修飾されたナノリポソームがAβの凝集と毒性に与える効果を調査した
in vitroでAβのオリゴマーと原繊維の形成を阻止するために必要な『ペプチド阻害ナノパーティクル/peptide inhibitor nanoparticles (PINPs)』の濃度は顕著に低く、Aβに対するリポソーム結合RI-OR2-TATのモル比が~1:2000で50%の阻止が生じた

PINPsはAβに高い親和性で結合し (Kd = 13.2–50 nM)、
前もって凝集したAβ/pre-aggregated Aβの有害な影響からSHSY-5Y細胞を保護rescueした

PINPsはin vitroの血液脳関門モデル (hCMEC/D3 cell monolayer)
を通過し、
C57/BL6系統のマウスの脳内に入り、
新規の対象認識テスト/novel object recognition testではAPPSWEトランスジェニックマウスを記憶の喪失から保護した

これまで我々がテストしてきた中で最も強力な凝集阻害剤であることから、我々はPINPsをアルツハイマー病の疾患を調整する潜在的な治療法/potential disease-modifying treatmentとして提案する


※RI-OR2-TATについて

※OR2: アミロイドβオリゴマーの形成を阻害する配列。Aβ(16-20)、つまりKLVFFのこと。Aβによるβシート形成は16-20残基から開始されるという。KLVFFを可溶化するために末端をRG-残基と-GR残基で挟む。OR1(RGKLVFFGR)とOR2(RGKLVFFGR-NH2)があり、OR1とOR2は共に原繊維の形成を阻害するが、OR2だけがオリゴマー化も阻害し、しかそれは神経芽腫由来のSH-SY5Yのみで阻害されたと報告されている
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18189413

※RI: Retro-Invertedの略で、意味は「逆向きの逆異性体」。アミノ酸の配列の方向が逆向きで、かつ各アミノ酸残基の鏡像対称性が反転されたもの

※RI-OR2: OR2を安定させるためにRI化したもので、配列はrGffvlkGr。体内で分解されにくくなるという
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20230062

※TAT: HIVウイルスのTATタンパク質(transactivation and transcription の略)。RI-OR2にTAT配列を付け加えた

Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQ KLVFF AEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA

Aβ(16-20)
KLVFF

Aβ(16-20)の逆配列
FFVLK



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ad6a0c46cb697f889d1d1df378c8058a
Aβ(25-35) はSH-SY5Y細胞にレヴィ小体の形成などパーキンソン病と関連する変化を引き起こす
 

Aβの断片がどのようにしてパーキンソン病を引き起こすのか

2016-10-19 06:06:40 | 
How protein fragments associated with Alzheimer's could trigger Parkinson's

October 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161012132529.htm

アルツハイマー病とパーキンソン病は異なる病態の神経変性疾患だが、時にはsometimes同じ人が両方に罹患することがある
その観察から科学者たちは二つの疾患の間にどのようなつながりがあるのかについての可能性を調査してきた
今回テキサス大学エルパソ校の研究チームは、アルツハイマー病と強い関連があるアミロイドベータというタンパク質の断片がどのようにしてパーキンソン病につながるような細胞の変化を誘発しうるのかを突き止め、ACS Chemical Neuroscience誌で報告した


これらの神経変性疾患の原因が何なのかはまだ完全には理解されていないが、調査によっていくらかの洞察が明らかになっている
例えば、これらの疾患の発症に際して、特定の分子の変化が要因として出現するemerged
そのような変化の一つに『プロテインジスルフィドイソメラーゼ/protein disulfide isomerase (PDI) 』という酵素の変化mutationがあり、PDIは通常ニューロンを保護している

そしていくつかの研究では、一方の疾患に関連するバイオマーカーが、他方の疾患につながる分子プロセスを刺激しうることが暗示されているhinted
テキサス大学エルパソ校のMahesh Narayanたちは、アミロイドベータの特定のタイプがどのようにしてパーキンソン病を誘発するような細胞の変化を引き起こすのかを調べたいと考えた

※プロテインジスルフィドイソメラーゼ: 次のような反応を触媒して分子内または分子間のS-S結合(ジスルフィド結合)の形成を促進する酵素
Pr-SH + X-S-S-X
↓↑
Pr-S-S-X + X-SH


彼らはAβ(25-35) という特定のアミロイドベータの断片をSH-SY5Yという細胞と共に培養incubateした
SH-SY5Yはしばしばパーキンソン病の研究で使われる細胞系統である(神経芽腫由来)
実験の結果、PDIの化学的な変化mutationやレヴィ小体の形成など、パーキンソン病と関連する一連の分子的変化が細胞に誘発された

この結果はアルツハイマー病の人がどのようにしてパーキンソン病にも罹患するのかに関する説明を提供する
加えて、このような状態が生じないよう防ぐための方法の発見を助けるかもしれない


http://dx.doi.org/10.1021/acschemneuro.6b00159
An 11-mer Amyloid Beta Peptide Fragment Provokes Chemical Mutations and Parkinsonian Biomarker Aggregation in Dopaminergic Cells: A Novel Road Map for “Transfected” Parkinson’s.
アミロイドベータの11分子ペプチド断片は化学的な変化ならびにパーキンソン病のバイオマーカーである凝集をドーパミン作動性細胞に引き起こす



Abstract
アミロイドベータ (Aβ) の凝集は一般にアルツハイマー病の発症と関連する
今回我々はドーパミン作動性細胞のSH-SY5YとAβペプチド断片(Aβの25番目から35番目のアミノ酸残基11からなる分子; Aβ (25–35))を共に培養し、
その結果として細胞内のニトロソ化ストレス/nitrosative stressが上昇し、
プロテインジスルフィドイソメラーゼ/protein disulfide isomerase (PDI) の化学的な変化/chemical mutationが誘発されることを実証する
PDIは小胞体/endoplasmic reticulum(ER)に局在し、
酸化還元反応を触媒する酵素のオキシドレダクターゼ・シャペロン/oxidoreductase chaperoneである

さらに、Aβ (25–35) はパーキンソン病のバイオマーカーであるシンフィリン1/synphilin-1やα-シヌクレイン/α-synucleinの凝集を両方とも刺激する

重要なことに、蛍光タンパク質を使った研究ではAβ (25–35) がこれらのパーキンソン病のバイオマーカーを共に局在colocalizationさせ、レヴィ小体様の凝集物が形成される引き金を引くことが実証された
レヴィ小体はパーキンソン病につながるニューロンの代謝カスケードneurometabolic cascadeにおいて重要かつ不可逆な節目である

加えて、蛍光アッセイではAβ (25–35) とPDI、そしてα-シヌクレインが直接の相互作用により凝集の核となることが明らかになった/direct, aggregation-seeding interactions
このことはニューロンの病理発生が プリオンと同様の『交差による移行性/cross-transfectivity』を介して生じることを示唆する

これらのデータは、ドーパミン作動性細胞におけるアルツハイマー病関連バイオマーカーの誘導が『増殖性/proliferative』であり、
浸透性の効果percolative effectを伴い、その効果は二重かつ独立したパーキンソン病の病理経路を介して行使されるexercisedことを示す
二つの内の一つはストレスに由来する経路で、もう一方はプリオン様の経路である

この結果はアルツハイマー病の負荷burdenを介するパーキンソン病の移行性transfectivityに関する新たな分子ロードマップを定義し、
アミロイドベータによって誘発されるパーキンソン病におけるPDIの関与を明らかにするものである


Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA

Aβ(25-35)
GSNKGAIIGLM


関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20568731
The oxidoreductase behavior of protein disulfide isomerase impedes fold maturation of endoplasmic reticulum-processed proteins in the pivotal structure-coupled step of oxidative folding: implications for subcellular protein trafficking.
(PDIの酸化還元酵素としての振る舞いは、その構造と連結した酸化的折りたたみの中枢段階において、ERでプロセシングを受けるタンパク質の折りたたみ成熟を妨げる: 細胞下タンパク質輸送との関連)



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15890345
Abeta(31-35) and Abeta(25-35) fragments of amyloid beta-protein induce cellular death through apoptotic signals: Role of the redox state of methionine-35.
(アミロイドベータタンパク質断片のAβ(31-35)とAβ(25-35)はアポトーシスシグナルを通じて細胞死を誘導する: 35番目メチオニン残基の酸化還元状態の役割)



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b42d9618ca1ed178759eeabb2ed70437
APPからはβ-アミロイドとη-アミロイドが切り抜かれ、前者は神経細胞を過剰に活性化し、後者はその影響と拮抗する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f45339247c461908bced75811084a23
短いAβは長いAβと比べて銅と結合する能力が1000倍も強く、フリーラジカルを生じないように包み込む



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2d16bcb0230e8b4d238eced8f25fe006
Aβ(1-42)は凝集して形を変えてから細胞内に取り込まれる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160613090719.htm
Aβ(1-42)やAβ(1-6)N末端断片と細胞膜との相互作用を調査する
 

カスパーゼによって切断されたタウが神経変性につながる

2016-10-16 06:06:13 | 
How protein tangles accumulate in brain, cause neurological disorders

The appoptosin protein initiates a path that leads to the accumulation of tau, a key component of brain lesions

September 2, 2015

https://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902134925.htm

サンフォード・バーナム・プレビス医学研究所/Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute (SBP) による新たな研究は、お互いに類似しているが遺伝学的には関連のない神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)、進行性核上性麻痺/progressive supranuclear palsy(PSP)がどのようにしてタウタンパク質によって引き起こされるのかについての理解を一歩前進させる
Neuron誌で発表された今回の研究結果は、この鍵となる重要なタンパク質を標的とするための新たな機会をもたらす
タウは運動機能の低下や認知症患者の脳の病巣lesionsで見られるタンパク質である

「我々の研究は『アポプトシンappoptosin』というタンパク質がどのようにしてタウの凝集物である『もつれtangle』を増やすのかを示す
もつれたタウは脳に有害であり、中枢神経系を徐々に劣化progressive deteriorationさせていく」
サンフォード・バーナム・プレビスで変性疾患プログラムの教授であるHuaxi Xuは言う

「アポプトシンがどのようにしてこのプロセスを促進するのかを理解することにより、プロセスを引き起こす重要なポイントを阻害するための方法を調べることができる
それはもしかするとこの種の神経変性疾患、いわゆるタウオパチーtauopathyの進行を遅くすることが可能かもしれない」


タウオパチーとは何か?
What are tauopathies?

タウオパチーは不規則irregularにもつれtangleて凝集したタウタンパク質が脳内に存在し、疾患が進行するにつれて蓄積していくことを特徴とする神経変性疾患である
タウのもつれはアルツハイマー病や進行性核上性麻痺(PSP)のような多くの疾患で現れるため、タウはニューロンや脳の機能不全を引き起こす重要な要素であるように思われる
しかしながら、PSPのような疾患がどのようにして起きるのか、そしてタウのもつれが似たような原因で生じるのかどうかはよく分かっていない

タウは微小管という中空hollowで長い筒状の構造物の完全性を維持するタンパク質であり、微小管は細胞の構造を支えるための主な構造要素major structural elementsである
ニューロンからは微小管によって軸索axonが長く突き出し、それによりニューロンは長距離のシグナルを迅速に伝えてお互いに通信することが可能になる

タウが過剰リン酸化hyperphosphorylationによって異常な修飾を受けたり、カスパーゼ3のような酵素によって切断されると(カスパーゼそれ自体が過剰リン酸化も促進しうる)、タウはその生物学的な活性を失って立体構造が変化conformational changesして、蓄積してもつれを形成するようになる

カスパーゼ3がどのようにしてもつれたタウの凝集tau aggregation in tanglesを誘発するようになるのかはほとんどわかっていなかったため、タウの切断と凝集につながる一連のイベントを特定することはタウオパチーの予防と治療にとって最も重要な目的の一つである


論文の重要な発見
Key findings of the paper

今回の論文では進行性核上性麻痺(PSP)のような神経学的なタウオパチー疾患におけるアポプトシンの全く新しい役割に光を当てている
PSPは脳内にタウが凝集する神経疾患であり、患者はバランス、眼球運動、思考に関して深刻な問題を経験する
PSPの遺伝学的、生物学的な原因は不明である

今回の研究でPSP患者を調査した結果、DNA配列の一塩基の変化、いわゆる一塩基多型/single nucleotide polymorphism (SNP) が疾患と関連し、アポプトシンのレベルの上昇と相関することが明らかになった
アポプトシンレベルの上昇はカスパーゼを介するタウ切断を増加させ、タウ凝集とシナプス機能不全を増大させた

神経変性を引き起こす要因のアポプトシンならびにカスパーゼ3によって切断されたタウはアルツハイマー病と前頭側頭型認知症(FTD)の患者の脳サンプルでも過剰に活性化していることが明らかになっており、これらの神経変性疾患でもそれらが重要な要因であるという考えを支持する


「神経原線維のもつれneurofibrillary tanglesを引き起こすメカニズムのさらなる理解は臨床的に重要であり、タウオパチーを予防し、治療するための治療戦略を開発するために役立つ」
Xuは言う

「我々の研究結果はアポプトシンとカスパーゼ3のどちらかまたは両方が、これらの神経変性疾患の治療において潜在的な標的かもしれないことを示唆している」


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.08.020
Appoptosin-Mediated Caspase Cleavage of Tau Contributes to Progressive Supranuclear Palsy Pathogenesis
アポプトシンを介してタウがカスパーゼによって切断されることは、進行性核上性麻痺の病理発生に寄与する
Yingjun Zhao et al.


Highlights
・SNP (rs1768208) のTアレルはPSPならびにアポプトシンレベル上昇と関連する
・アポプトシンレベルはカスパーゼ3活性化ならびにカスパーゼによるタウの切断と相関する
・アポプトシンの上方調節は運動障害と病理悪化につながる
・アポプトシンに依存的な病理発生は主にカスパーゼ活性とタウに依存する


Summary
進行性核上性麻痺/progressive supranuclear palsy (PSP) はタウ神経病理tau neuropathologyを特徴とする運動障害だが、その根底のメカニズムは不明である
SNP (rs1768208 C/T) はPSPの強いリスク要因であることが確認されている

今回我々はPSP患者においてTアレルの割合が著しく高いことを突き止め、アポトーシスを促進pro-apoptoticするタンパク質のアポプトシンappoptosinのレベルが上昇していることを明らかにした
アポプトシンの上昇はカスパーゼ3の活性化ならびにカスパーゼによって切断されたタウレベルと相関する
アポプトシンの過剰発現はカスパーゼを介するタウの切断とタウの凝集、シナプス機能不全を増加させた一方で、アポプトシンの欠乏はタウの切断と凝集を減少させた
アポプトシンの形質導入transductionはタウ・トランスジェニックマウスにおいて複数の運動機能を損ない、神経病理を悪化させ、それはカスパーゼ3とタウに依存的だった/in a manner dependent on caspase-3 and tau
アポプトシンならびにカスパーゼ3によって切断されたタウの増加は、アルツハイマー病とタウ封入体があるFTD患者の脳サンプルでも観察された

我々の研究結果は、タウ神経病理を持つ神経変性疾患におけるアポプトシンの新規の役割を明らかにすると共に、カスパーゼ3を介するタウ切断をシナプス機能不全ならびに行動/運動障害へとつなげるものである



関連サイト
http://www.alzforum.org/news/research-news/killer-cleavage-appoptosin-stokes-tauopathy-through-caspase-3
A Slow Death.


>In this model, increasing appoptosin expression driven by a PSP risk allele triggers a caspase cascade that promotes synaptic dysfunction and neurodegeneration through cleavage of tau.
[Courtesy of Zhao et al., Neuron, 2015.]
(このモデルでは、rs1768208のPSPリスクアレルTによって促進されるアポプトシンの増大がカスパーゼカスケードの引き金を引き、それがタウの切断を通じてシナプス機能不全と神経変性を促進する)

アポプトシンが増加→グリシンからデルタ-アミノレブリン酸(δ-ALA)が合成される→ヘムの合成が増加→アポシトクロムcにヘムが挿入されて成熟型のホロシトクロムcが増加→シトクロムcとAPAF-1が結合して七量体化したアポプトソームappoptosomeによりプロカスパーゼ3がカスパーゼ3に成熟→タウタンパク質がカスパーゼ3によって切断され、断片が凝集し、神経原線維変化(NFT)やシナプス機能不全につながる

※アポプトソーム: アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1(APAF-1)とシトクロムcの複合体が七量体化したもの。ミトコンドリアから放出されたシトクロムcとAPAF-1が結合してコンフォメーションが変化し、七量体が形成される。アポプトソームはカスパーゼ9をリクルートして活性化し、基質を切断してアポトーシスを引き起こす



関連サイト
https://pdbj.org/mom/177
シトクロムc(赤)が別のタンパク質APAF-1(青・紫)と結合し、集まって7回対称の環状構造を作る。シトクロムcはアポトソームのCARDドメイン(紫)と結合して活性化される




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f69e68999aaf91e1daa22758545d605
タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121109111509.htm
アポプトシンappoptosinはヘム合成を促進してROSを増加させ、神経変性と細胞死を促進する

http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3668-12.2012
Appoptosin is a Novel Pro-Apoptotic Protein and Mediates Cell Death in Neurodegeneration.
新規のアポトーシス促進タンパク質であるアポプトシンは神経変性における細胞死を仲介する

https://www.researchgate.net/figure/232745849_fig7_Figure-9-Scheme-of-appoptosin-mediated-apoptotic-pathway-in-neurodegeneration
アポプトシン→ミトコンドリアがグリシンを取り込む→グリシンからデルタ-アミノレブリン酸(δ-ALA)を生成→2分子のδ-ALAが脱水縮合されて最終的にプロトポルフィリンIXが作られ、フェロキラターゼによって鉄が挿入されてヘム合成→ROS↑


 

アポE4を『良い』タンパク質に変える方法

2016-10-12 06:06:18 | 
Enzyme treatment of gene may reverse effects of Alzheimer's

October 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161005162446.htm

過去20年間、研究者たちはアルツハイマー病の脳内で生まれるsproutアミロイドベータ・ペプチドと『プラーク』を研究の主な標的として焦点を当ててきた
しかし、患者を衰弱debilitatingさせていくこの神経変性疾患の治療における進歩のペースは悲惨なほどに遅く、完全な治癒などは言うまでもなくありえないことだった

先月Journal of Alzheimer's Disease誌で発表されたテルアビブ大学(TAU)の研究で、アルツハイマー病研究の新たな標的遺伝子が示された
このAPOEという遺伝子はジキル博士とハイド氏のように二つの顔を持ち、健康なタイプのアポE3遺伝子(APOE3)と、疾患と関連するアポE4遺伝子(APOE4)がある
今回の研究で彼らは『悪い』APOE4を『良い』APOE3へと変換する全く新しいメカニズムとアプローチを開発したのだという
この研究はDaniel M. Michaelson教授を中心とするもので、彼はアイヘンバウム・アルツハイマー病研究所/Eichenbaum Laboratory of Alzheimer's Disease Researchの所長directorであり、テルアビブ大学生命科学部/TAU's Faculty of Life Sciencesの神経変性分子学科/Molecular NeurodegenerationではMyriam Lebach Chairの在職者incumbentでもある


新しいアプローチに焦点を合わせる
Focus on a new approach

Michaelson教授は言う
「APOE4は非常に重要な標的であり、ずっと研究されてきている
アルツハイマー病患者の60パーセント以上がAPOE4を発現するため、APOE4に対する治療は患者に大きなインパクトがあると予想されている」

「通常のAPOE遺伝子は脂質lipidsを移動させるための相互伝達の手段/インターフェースinterfaceを提供し、自然に生じる分子、例えば脂肪、コレステロール、脂溶性ビタミンや細胞の機能に必要な要素を細胞の内外に出し入れする
健康なAPOE3はそれを効率的に行うが、悪いAPOE4ではうまくいかない」


Michaelson教授たちは以前の研究で、APOE4とAPOE3は『脂質の積荷lipid cargo』との相互作用が異なることを発見している
例えばAPOE3はAPOE4よりもかなり多くの脂質と結合するassociatedのだという

彼らはAPOE4の『悪い』特徴を計測するための実験アプローチを考案deviseし、『良い』APOEか『悪い』APOEのどちらかを発現するように遺伝子を操作したマウスを作成した
APOE4を持つマウスは学習と記憶の障害を示し、脳のシナプスが損なわれており、アルツハイマー病の病理学的な特徴であるリン酸化したタウとアミロイドベータ分子が蓄積していた


悪い遺伝子を良い遺伝子に変える
Turning a bad gene to good

「このモデルを確立してAPOE4の病理学的な影響をマウスで再現できるようにした我々は、治療アプローチをテストしてAPOE4そのものに取り組むことができるようになった」
Michaelson教授は言う

「APOE4の脂質を運ぶ量が少ないことを知っていた我々は、『脂質化の不足/lipidation deficiency』を相殺counteractするための手段を探索し、APOE4に『脂質の積荷/lipid cargo』を積み込むloadための酵素であるABCA1という酵素の仕組みに焦点を当てた
研究の結果、APOE4の脂質化の欠陥/impaired lipidationは、ABCA1を活性化することによってうまく相殺reverseできることがわかった
さらに重要なことに、APOE4の脂質化の増加/increased lipidationは、何も処置していないAPOE4マウスで観察される行動の欠陥と脳の損傷を無効化reverseすることが判明した」

実験前は失見当識な振る舞いdisoriented behaviorを示し、文字通りの意味で『迷って』いたマウスは、一連の処置の結果、人工の池の真ん中に沈んだ水中の島submerged islandを探し当てることが可能になった
APOE4マウスはありふれた物体(コカコーラのボトルのような)でも忘れてしまうが、処置後のマウスは突然物体をはっきり認識するようになった


「一つの治療でアルツハイマー病の全ての面をカバーできるような、そんな魔法の弾丸は本当に存在するのか?
そんなものはありえない」
Michaelson教授は言う

「したがって、アルツハイマー病患者の集団populationの半分以上に悪影響を与えるAPOE4のような、アルツハイマー病の遺伝的なリスク要因を持つ特定の下位集団subpopulationsを確定し、それを標的とする治療を開発する必要がある」


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27567858
ABCA1 Agonist Reverses the ApoE4-Driven Cognitive and Brain Pathologies.
ABCA1アゴニストは、アポE4によって促進される認知と脳の病理を無効化する

Abstract
アポリポタンパク質Eのɛ4アレル(apoE4)はアルツハイマー病(AD)の遺伝的なリスク要因としては最も広く見られ、したがって有望な治療の標的である

ヒトと動物モデルによる研究では、apoE4の脂質付加の低さhypolipidatedが示唆されている

我々は以前、レチノイドX受容体/retinoid X receptor (RXR) のアゴニストであるベキサロテンbexaroteneが、ABCA1を上方調節することを示した
ABCA1は apoEに脂質を付加lipidateする主なタンパク質でもある
ベキサロテンがABCA1を上方調節する結果としてapoE4の脂質付加lipidationが増加し、その後apoE4の病理学的な影響(Aβ42の蓄積と過剰リン酸化タウ、シナプス数を示すマーカーレベルの減少、認知障害)が無効化reversalされる

RXR系には多数の標的があるため、ABCA1だけを選択的に活性化する手段を編み出すdeviseことが重要である
今回我々はin vitroでABCA1を直接活性化することが示されているCS-6253というペプチドを使い、これがapoE4の脂質化の程度にどれぐらい影響し、そして関連する脳と行動の病理を相殺counteractしうるのかという範囲をin vivoで調査した
実験の結果、apoE4を標的として置き換えた若いマウス/young apoE4-targeted replacement miceに対してCS-6253を投与すると、apoE4の脂質化lipidationは増大することが明らかになった
apoE4は海馬ニューロンにおけるAβ42の蓄積とタウタンパク質の過剰リン酸化、シナプス損傷と認知障害を促進driveするが、apoE4の脂質化の増大はそれらの無効化reversalと関連した

これらの研究結果は、apoE4のin vivoでの影響は ABCA1の活性化の低下 ならびに apoE4の脂質化の欠陥 と関連することを示唆し、その下流の脳関連病理と認知障害はABCA1アゴニストのCS-6253を投与することで相殺されうることを暗示するsuggest
これらの結果には重要な臨床的副産物ramificationsがあり、apoE4と関連するAD治療にとって有望な標的としてABCA1を提唱するものである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b17271081045552783a35515421b8015
脳内のコレステロール排出が認知症に重要



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160628114612.htm
抗HIV薬のエファビレンツは低用量でCYP46A1を活性化して脳内のコレステロールを除去し、Aβによるプラーク形成をマウスで抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/39fb7580cfaf1dd51d0ac23e6cc2bd55
TREM2はアポリポタンパク質に結合し、ミクログリアによるAβの取り込みを促進する
リポタンパク質はアミロイドベータ凝集物と複合体を形成し、LDLとAPOJが存在するとミクログリアのAβを飲み込む効率はさらに上昇する
ミクログリアによるリポタンパク質-Aβ複合体の取り込みはTREM2に依存していた



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25817253
VEGF Mediates ApoE4-Induced Neovascularization and Synaptic Pathology in the Choroid and Retina.
(VEGFはアポE4による血管新生とシナプス病理を仲介する)
アポE4マウスはアポE3マウスと比べて網膜でのVEGFが低く、シナプスや機能に障害が見られる
レーザーで脈絡叢を損傷させるとアポE4マウスはE3マウスよりもVEGFが多くなり、血管新生が強く見られる



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27372644
Reversal of ApoE4-Driven Brain Pathology by Vascular Endothelial Growth Factor Treatment.
(アポE4による脳の病理はVEGF処置により覆る)
 

シナプスのストレス対処の異常がパーキンソン病につながる

2016-10-10 06:06:02 | 
Research uncovers a new disruption at the root of Parkinson's disease

October 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161007123251.htm

ルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven(KU Leuven)フランダース・バイオテクノロジー研究所/Flanders Institute for Biotechnology(VIB)のPatrik Verstreken教授(VIB-KU Leuven)の研究チームは、脳内のストレスに対処するメカニズムstress-coping mechanismsの機能不全がパーキンソン病の根本であることを最先端の研究で初めて示した
パーキンソン病を引き起こす遺伝子変異は、激しい脳の活動によるストレスにシナプスが対処するのを妨げる
これがシナプスにダメージを与え、そして脳のシグナルの伝達を中断する

彼らはこの発見を基に、機能不全を修正して正常なシナプス間コミュニケーションを再確立するための戦略を発見できるのではと考えている
今回の研究結果は一流専門誌leading trade journalのNeuron誌で発表される

※VIB: Flanders Institute for Biotechnology。Flanders = Vlaanderen。フランダース、フランドル、フランデレン

Patrik Verstreken教授は脳研究が専門で、特に興味があるのはシナプスである
シナプスはニューロン同士がお互いに接続して電気的なシグナルを通じてシグナルが伝達する場所であり、パーキンソン病など様々な脳疾患でシナプスでのコミュニケーションが損なわれる

Patrik Verstrekenは次のように説明する
「シナプスは莫大な量の電気的シグナルを伝えなければならず、ニューロンの中にはわずか1秒間の間にそのようなシグナルを800回以上も発するfireものがある
我々はシナプスの接続が そのようなシグナルの『弾幕barrage』に対処するための特別なメカニズムを発達させることを発見した
しかしながら、もしもそのメカニズムの一つが適切に機能しなければ神経細胞のストレスは蓄積し、シナプスにダメージを引き起こして最終的には神経変性につながる」


シナプス機能の維持
Maintaining synaptic function

Verstreken教授のチームは様々なタイプの対処メカニズムを調査し、その内の一つがパーキンソン病では破綻していることを明らかにした
この異常は特にシナプスに影響を与え、既知の様々な遺伝的要因を伴う

Patrik Verstreken教授が説明する
「我々の研究は、シナプスの機能不全をパーキンソン病と非常に深く関連付ける初めてのものだ
今回の研究のほとんどでは疾患メカニズムを理解するためにショウジョウバエを使った
今は同一のストレス対処メカニズムがヒトの患者でも破綻しているかどうかを調べることに興味がある
ヨーロッパ神経科学研究所/European Neuroscience Institute(ドイツ・ゲッティンゲン/Göttingen)のIra Milosevicを中心とする共同研究者たちは、既にマウスのニューロンで非常に似た発見をしている
どのケースでも、パーキンソン病の治療でシナプス機能を維持するための戦略を見つけることが決定的に重要であることを今回の研究は我々に伝えている」


将来の研究
Future research

この研究結果を基に彼らは、パーキンソン病においてストレス対処メカニズムの破綻がどれほど普遍的かということを発見したいと考えている
Patrik Verstrekenは次のように言う

「我々が次に望むのはパーキンソン病の変異によって引き起こされる機能不全を修正し、正常なシナプス間コミュニケーションを再び確立できる可能性がある戦略を突き止めることだ
例えば、対処メカニズムを再び活性化することで損傷したシナプスを修復できるかもしれない
もちろん、それにはさらなる研究が必要である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2016.09.037
http://www.cell.com/neuron/pdfExtended/S0896-6273(16)30638-9
A LRRK2-Dependent EndophilinA Phosphoswitch Is Critical for Macroautophagy at Presynaptic Terminals
LRRK2依存的なエンドフィリンAリン酸化スイッチはシナプス前終末でのマクロオートファジーにとって重要である


Highlights
・シナプスのオートファゴソームは、全く異なる形態構造morphologyを持つ
・エンドフィリンAはエンドサイトーシスで働くが、シナプスではオートファジーでも働いて、Atg3をリクルートする
・パーキンソン病の原因となるキナーゼLRRK2はエンドフィリンAの75番目のセリン残基(S75)をリン酸化し、オートファジーを促進する
・エンドフィリンAの不安定なリン酸化は、ドーパミン作動性ニューロンの変性を引き起こす


Summary
シナプスはしばしば神経細胞の本体である細胞体somaから遠く離れているため、激しいニューロン活動によって引き起こされるプロテオパチーなストレス/proteopathic stressに対して独立して対処しなければならない
しかしながら、シナプス前の区画ではどのようにしてタンパク質proteinsがターンオーバーturn overされているのかはほとんど理解されていない

我々はエンドサイトーシスで非常に研究されてきたエンドフィリンAがシナプスで豊富なタンパク質であり、シナプス前終末presynaptic terminalではマクロオートファジーを誘導することを示す
エンドフィリンAはマクロオートファジーという予想もしなかった機能を実行する際、少なくとも部分的にはシナプス小胞のエンドサイトーシスsynaptic vesicle endocytosisにおけるその役割からは独立している

エンドフィリンAによって誘導されるマクロオートファジーはLRRK2キナーゼがエンドフィリンAのBARドメインをリン酸化した時に活性化され、
エンドフィリンAがリン酸化されないようにした実験動物では阻害された

エンドフィリンAのリン酸化は高度に曲がった膜highly curved membranesの形成を促進し、この湾曲した膜が Atg3を含めたオートファジー因子autophagic factor のドッキング・ステーションとして働くことが再構築実験によって示された

機能的に見ると、エンドフィリンAのリン酸化状態の調節の異常は 神経活動に依存的な神経変性を加速する

エンドフィリンAが少なくとも3つのパーキンソン病疾患遺伝子(LRRK2, パーキン/Parkin, シナプトジャニン/Synaptojanin)と結合connectedすることを考慮すれば、エンドフィリンA依存的なシナプスマクロオートファジーの機能異常はパーキンソン病で一般的commonである可能性がある

※Synaptojanin :SYNJ1 (PARK20)


関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808172209.htm
パーキンソン病では線条体の投射ニューロンの電気活動が異常



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/review/37014
カルシウムチャネル遮断薬はパーキンソン病のリスクを低下させる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da60d798a69b4436b35dc94e20655438
変異体α-シヌクレインを過剰発現するマウスモデル(A53T-SNCA)では中脳ドーパミンニューロンにおける黒質選択的な発火頻度の増大が観察された
このA53T-SCNAを過剰発現する黒質ドーパミンニューロンの選択的かつ加齢依存的な機能獲得の表現型は、Aタイプ Kv4.3カリウムチャネルの酸化還元に依存的な損傷によって引き起こされる『ペースメーカー頻度の内因的な増加』によって部分的には仲介されていた



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/800fdf13417f9b0a80859ee62a0f6f31
パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたMitoParkマウスでは、ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まった
このマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/01/140107215351.htm
α-シヌクレインはLRRK2の除去を遅くして除去されにくくするため、LRRK2は封入体に詰め込まれる
LRRK2のキナーゼ活性ではなくLRRK2の凝集そのものが細胞死の直接の原因であり、変異体LRRK2のニューロンにおける毒性はLRRK2レベルとα-シヌクレインレベルに依存し、キナーゼ活性または封入体には依存しない



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a4902d74b36c77397faa3adba5b7717d
損傷したミトコンドリアにLRRK2がリクルートされ、Miroを除去してミトコンドリアの運動を停止させる
 


アルツハイマー病の『ミッシング・リンク』が発見される

2016-10-08 06:06:52 | 
Alzheimer's 'missing link' found: Promising target for new drugs

September 4, 2013

https://www.sciencedaily.com/releases/2013/09/130904130328.htm


(イェール大学の科学者は既存の薬剤でタンパク質を阻害することによりアルツハイマー病を模した脳障害を持つマウスの記憶を回復できることを発見した

Credit: Image courtesy of Yale University)

イェール大学医学大学院/Yale School of Medicineの研究者はアルツハイマー病につながる複雑な一連のイベントの中で見つかっていなかった『ミッシング・リンク』となるタンパク質を発見し、Neuron誌の2013年9月4日号で報告した
また、彼らは既存の薬剤でそのタンパク質を阻害することによりアルツハイマー病を模した脳の障害を持つマウスの記憶を回復できることも発見した

「今回の発見がとてもエキサイティングなのは、一連の分子的なつながりの中でこのタンパク質が非常に簡単に薬剤の標的になるかもしれないということだ」
神経学の教授職Vincent Coates Professorで首席著者のStephen Strittmatterは言う

「このことは、実際に作用してアルツハイマー病の負荷を軽くする薬剤を見つけられるかもしれないという強い希望を我々にもたらす」


科学者たちは既にアルツハイマー病がどのようにして脳細胞を破壊するのかについての分子的な概略図を、部分的にではあるが提供してきた
Strittmatterのラボは以前の研究で、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドベータのペプチドが、ニューロン表面上のプリオンタンパク質/prion protein(PrP)と結合することを示していた
この結合がFynキナーゼという細胞内の分子的なメッセンジャーを活性化させるが、そのプロセスは未知のままだった

今回のNeuron誌の論文でイェールのチームは一連のイベント中のミッシング・リンクとして、細胞膜に埋め込まれた代謝調節型の受容体metabotropic receptorの一つである『代謝型グルタミン酸受容体5/metabotropic glutamate receptor 5(mGluR5)』を明らかにした

※受容体は『代謝調節型受容体/metabotropic receptor』と『イオンチャネル型受容体/ionotropic receptor』に大きく分類される

脆弱X症候群/Fragile X syndromeのために開発された薬剤と似た化合物でこのタンパク質を阻害すると、アルツハイマー病マウスモデルの記憶と学習の障害、シナプス密度は回復した


Strittmatterは、アミロイドベータ-プリオンとmGluR5の分断disruptionをヒトのアルツハイマー病の症例で正確に標的とするには、新たな薬剤を設計しなければならないかもしれないことを強調する
彼のラボは既にそれを達成すべく新たな方法を探索し始めたところである


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2013.06.036
Metabotropic Glutamate Receptor 5 Is a Coreceptor for Alzheimer Aβ Oligomer Bound to Cellular Prion Protein.
代謝型グルタミン酸受容体5は、細胞プリオンタンパク質と結合したアルツハイマー病Aβオリゴマーの共レセプターである

Highlights
・シナプス後肥厚部/postsynaptic density(PSD)の細胞膜貫通タンパク質の内、mGluR5だけが、アミロイドベータオリゴマー(Aβo)と細胞プリオンタンパク質(PrPC)の複合体をFynキナーゼへとつなぐcouple
・mGluR5は Aβo-PrPC をカルシウムシグナル伝達ならびにタンパク質翻訳制御へとつなぐlink
・アルツハイマー病の脳の抽出物によって誘発されるニューロンカルシウムの調節異常dysregulationには、PrPC-mGluR5を必要とする
・トランスジェニックマウスの記憶障害ならびにシナプス喪失はmGluR5アンタゴニストによって覆される


Summary
可溶性のアミロイドベータオリゴマー/soluble amyloid-β oligomers (Aβo) はアルツハイマー病の病態生理pathophysiologyを引き起こし、細胞プリオンタンパク質/cellular prion protein (PrPC) に高い親和性で結合する

シナプス後肥厚部/postsynaptic density (PSD) では、脂質に固定されたlipid-anchored細胞プリオンタンパク質に対して細胞外のAβoが結合し、細胞内のFynというキナーゼを活性化してシナプスを破綻disruptさせる

Aβo-PrPCをFynへとつなげる能力に関して、細胞膜を貫通するPSDタンパク質を異種由来heterologously的にスクリーニングしたところ、
代謝型グルタミン酸受容体5/metabotropic glutamate receptor 5(mGluR5)を共に発現させた場合のみ、PrPCと結合したAβoがFynを活性化できるようになった

PrPCとmGluR5は物理的に相互作用し、細胞質のFynはmGluR5と複合体を形成する

ニューロンならびにアフリカツメガエル属Xenopusの卵母細胞において、Aβo-PrPCはmGluR5を介して細胞内カルシウムを増大させる
また、前者はヒトアルツハイマー病の脳抽出物によっても促進されたdriven

加えて、Aβo-PrPC-mGluR5複合体によるシグナル伝達は、eEF2のリン酸化ならびに樹状突起棘dendritic spineの喪失を仲介する

家族性アルツハイマー病導入遺伝子transgeneを発現するトランスジェニックマウスに関して、mGluR5への拮抗antagonismは学習障害、記憶障害、シナプス密度の低下を覆す

したがって、ニューロン表面上のAβo-PrPC複合体はmGluR5を活性化してニューロン機能を破綻させる


Rusults
▼mGluR5はAβoには結合しないが、物理的にPrPCとFynとは結合する

▼Aβoによって培養ニューロンに誘発される急速なカルシウムシグナルにはmGluR5とPrPCが必要である
mGluR5のアンタゴニストであるMPEPとMTEPは、AD脳抽出物による反応を阻害した (Figure 4I)
対照的に、mGluR1のアンタゴニストであるMPMQは、AD脳抽出物による反応を阻害しなかった (Figure 4I)

MPEP: 2-Methyl-6-(phenylethynyl)pyridine
MTEP: 3-((2-Methyl-4-thiazolyl)ethynyl)pyridine


Discussion
▼mGluRの特異性と局在
mGluR受容体の内、mGluR1とmGluR5だけがFyn・PrPCと相互作用するが、特にmGluR5だけがAβoによって誘発されるFyn刺激ならびにカルシウムシグナル伝達を仲介する


▼AD治療でmGluR5を標的にする
Aβo-PrPC-mGluR5-Fyn経路という図式delineationは、AD介入への潜在的な標的をもたらす
AβoがPrPCに結合するのを阻害する抗体は、トランスジェニックADマウスの記憶障害を覆す (Chung et al., 2010)
我々はmGluR5のネガティブなアロステリック調節因子が同様の効果を持つことを示した
しかしながら、完全にmGluR5と拮抗antagonismさせることは、ニューロンの機能に対して有害な影響があるかもしれず、基礎的な注意力baseline attentionに障害を生じる可能性がある (Lüscher and Huber, 2010, Simonyi et al., 2010)



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2eed1af5a640a3c03687d4ce78607041
アミロイドベータの蓄積とタウの病理的な変換が両方とも必要なマウスモデル



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβのオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/77f58259ab47b31eee2f0f14795b2978
Aβペプチドには抗菌作用があり、Aβのオリゴマー化はAβペプチドの抗菌作用に必須である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2d16bcb0230e8b4d238eced8f25fe006
Aβは凝集して形を変えてから細胞内に取り込まれる
 

パーキンソン病で保護的なタンパク質を突き止める

2016-10-05 06:06:00 | 
Scientists identify new lead in search for Parkinson's cure

October 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161005084313.htm


[ストレスを受けたドーパミン作動性ニューロン]
 PK2↑→細胞外へ分泌→パラクリン・オートクリンでPKR2↑
 PKR2↑→TFAM,PGC-1α→ミトコンドリア生合成↑
 PKR2↑→ERK↑→AKT↑→ニューロン生存↑
※PKR2はGPCR

(疾患早期の神経に有害なストレスの間、どのようにしてプロトキネチシン2(PK2)が急速に誘導されて細胞外の空間に分泌されるのかを示した図
アイオワ州立大学(ISU)生物医科学の研究者たちは新たな研究で、ニューロンがパーキンソン病に対処するのを助けるための保護的なメカニズムとしてPK2が作用することを突き止めた

Credit: Anumantha Kanthasamy)


アイオワ州立大学(ISU)から最近発表された研究は、パーキンソン病の新たな治療法のヒントになるかもしれない

ISUの科学者たちがオンライン学術誌のNature Communications誌で発表した論文によると、パーキンソン病の早期に高い頻度で発現し、脳細胞を保護している可能性があるタンパク質として『プロトキネチシン2/Prokineticin-2 (PK2)』 を突き止めたという

「ニューロンはストレスに対処するためにPK2を使う
これは生まれつき組み込まれたin-built保護的なメカニズムである」
Anumantha Kanthasamyは言う
彼は獣医学の特別教授職Clarence Hartley Covault Distinguished Professorであり、神経毒物学ではEugene and Linda Lloyd Endowed Chair、そしてアイオワ州立大学の生物医科学の学科長chairである
今回の研究の主な執筆者lead authorsの一人であるKanthasamyはパーキンソン病の複雑なメカニズムを理解して治療法を見つけ出すために過去20年間研究を続けてきた

研究によると、プロトキネチシン2はニューロンがミトコンドリアを生産するように刺激し、細胞のエネルギーを作り出させるのだという
結果として改善されたエネルギー産生はニューロンがパーキンソン病による損害を耐え抜くのを助ける
パーキンソン病は脳内のドーパミンレベルが不十分になる神経疾患である
この疾患は進行性で、発症するまでに何年もかかる

プロトキネチシン2をさらに理解することは、疾患の進行を遅くする手段や新たな治療法の発見につながる可能性があるとKanthasamyは言う
例えば、このタンパク質やタンパク質のアナログをもっと多く作るように刺激して、ニューロン上の受容体に結合させるような方法があるという


彼の研究チームはパーキンソン病を研究するために学際的multidisciplinaryで統合的なアプローチを選択した
研究資金はKanthasamyと彼の配偶者spouseであるArthi KanthasamyへのNational Institutes of Healthからのグラントによるものだった
Arthi Kanthasamyは生物医科学の教授である

彼らが培養した脳細胞とげっ歯類、そして患者の死後の脳を調査してパーキンソン病によってもたらされる変化を追跡したところ、それぞれの全てでプロトキネチシン2の高い発現が確認された

この発見から、研究チームはさらに徹底的に調べようという刺激を受けたprompted

「我々が実験で追跡した数千、数万という要素の中で、なぜこのタンパク質がこれほどまでに高い発現を示したのか?」
Arthi Kanthasamyは言う

その問いへの答えを見つけることはとても時間のかかるであろう難題だが、しかし潜在的な可能性は重大であるようだと彼女は言う


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12932
Prokineticin-2 upregulation during neuronal injury mediates a compensatory protective response against dopaminergic neuronal degeneration.
ニューロン損傷中のプロキネチシン2の上方調節はドーパミン作動性ニューロン変性に対する補償的な保護的応答を仲介する


Abstract
プロトキネチシン2/Prokineticin-2 (PK2) は最近発見された分泌タンパク質で、嗅覚の生合成olfactory biogenesisや中枢神経系の概日リズムcircadian rhythmsなどの重要な生理学的機能を調節する

興味深いことに、黒質系nigral systemでのPK2の発現は低いにも関わらず、その受容体は黒質線条体ニューロンnigrostriatal neuronsで構成的constitutivelyに発現する

今回我々はPK2レポーターマウスreporter miceならびにMitoParkマウスを含むパーキンソン病の複数のモデルにおいて、ニューロン変性の早期段階でPK2の発現が黒質ドーパミン作動性ニューロンnigral dopaminergic neuronsで強く誘導されることを実証する

機能的な研究functional studiesによりPK2がミトコンドリアの生合成を促進し、
ERKとAktによる生存シグナル伝達経路を活性化してそれにより神経保護を駆動することが実証された

重要なことに、PK2の過剰発現は保護的である一方で、PK2受容体への拮抗は実験的パーキンソン病においてドーパミン作動性の変性を悪化させる

さらに、パーキンソン病患者の脳で生存していた黒質ドーパミン作動性ニューロンsurviving nigral dopaminergic neuronsにおいて、PK2の発現は増大していた
このことはPK2の上方調節がヒトのパーキンソン病でも臨床的に関連があるrelevantことを示す

まとめると、我々の結果は黒質ドーパミン作動性ニューロンにおけるPK2による補償的な神経保護シグナル伝達に関する理論的枠組みparadigmを明らかにするものであり、パーキンソン病の治療に関して重要な意味を持ちうる


Introduction
ドーパミン作動性細胞/dopaminergic (DAergic) cellが死ぬ間の遺伝子発現の変化をPCRアレイを使って調査したところ、驚いたことに、TNFαによってドーパミン作動性細胞が死ぬ間、PK2のmRNAが強く誘導された(10
我々はPK2がドーパミン作動性の変性中に分泌される全く新しいシグナル伝達メディエーターであるという仮説を立てた
この考えを支持するように、我々のPDマウスモデルでは、変性する間の早期にPK2が黒質のドーパミン作動性ニューロン/nigral dopaminergic neuronsで誘導され、それは運動の欠陥が現れる前だった

また、我々はPK2の発現がPD患者の黒質/substantia nigra (SN) で上昇することを発見した
これはマウスモデルだけでなくヒトのPDでもPK2の臨床的な関連性があることを裏付けるcorroborate


Discussion
PK2のプロモーターは複数のE-ボックス配列 (CACGTG) が豊富repleteであり、ここには転写因子のbasic helix-loop-helix (bHLH) 、例えばHIF1αが結合して、血管新生angiogenesisの間のPK2発現を調節する(12
他のグループによる報告では、黒質ドーパミン作動性ニューロンならびにPDの細胞培養モデルにおいてMPTPによる酸化ストレス後にHIF1αの活性化が報告されている
このことは、PK2の転写的な上方調節が 保護的応答としての候補であるという可能性を示す(42,43,44
我々のラボは現在、ドーパミン作動性ニューロンにおけるPK2上方調節を調節する転写的メカニズムを研究中である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b649d34f25f6e9b47b023cae7fe1105a
アルツハイマー病で保護的なニューログロビンのスイッチを入れる方法



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519130242.htm
p62は、NRF2, mTORC1, c-Mycを活性化することで癌を促進する
これらはストレスのかかった細胞が生き残るのを助ける



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160418120716.htm
PI3K/AKT経路はグルタチオン産生を促進し、それにより癌は化学療法を生き残る



関連サイト
http://ytmd.blog.fc2.com/blog-entry-6.html
KRASやBRAFなどの癌遺伝子はNRF2経路を活性化して抗酸化物質を誘導する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16551619
GSK-3βは転写因子Nrf2を直接リン酸化して核から排除することにより細胞の生体異物応答xenobioticならびに抗酸化応答を阻害するが、AKTはGSK3βをリン酸化して不活性化する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25110549
アンジオテンシンIIは樹状細胞に酸化ストレスと炎症応答を引き起こすが、アトルバスタチンはPI3K/Akt/Nrf2経路を介してそれを抑制する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160608120614.htm
フマル酸ジメチル(DMF)と代謝産物フマル酸モノメチル(MMF)はNrf2の活性を上昇させるが、DMFはグルタチオンを枯渇させて酸化ストレスを生じ、MMFはより直接Nrf2を活性化するので、パーキンソン病の治療としてはMMFの方がいいかもしれない



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150901134946.htm
尿酸はアストロサイトのNrf2経路を活性化し、グルタチオンの分泌を高めて神経保護効果をもたらし、パーキンソン病リスクを低下させる
 



α-シヌクレインの凝集物が細胞間を伝わる仕組みを発見

2016-10-02 06:06:27 | 
New treatment strategy could cut Parkinson's disease off at the pass

September 29, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160929142756.htm


(α-synuclein aggregates in the brain cells of mice with (top) and without (bottom) the LAG3 protein.

Credit: Xiaobo Mao)

ジョンズホプキンスの研究者は『哺乳類の脳内で自然に生じる有害な凝集物』が細胞から細胞へと拡散することを可能にする原因のタンパク質としてLAG3を突き止めたことを報告する
また、彼らはLAG3の働きを阻害する方法も明らかにした

彼らの研究はマウスと培養細胞でのものだが、今回の結果は既に臨床試験に入っている免疫療法がパーキンソン病の進行を遅くする方法としてもテストされるに違いないことを示唆していると研究者は言う
この報告は9月30日にScience誌で発表される


研究のリーダーの一人、Ted Dawson, M.D., Ph.D.はジョンズ・ホプキンス大学医学部細胞工学研究所の科学顧問scientific directorである
彼によると、今回の新しい発見は『α-シヌクレインの凝集物』がどのようにして脳細胞の中に入るのかについて注目hinge onしたものだという
α-シヌクレインの異常な凝集はしばしばパーキンソン病患者の病理解剖autopsyで観察され、ドーパミンを産生する脳細胞が死んでいく原因と考えられている


数年前、ゲーテ大学(ドイツ)の研究者の一人がパーキンソン病の進行についての新しい理論に関するエビデンスを発表した
それによると、α-シヌクレインの凝集物は脳内の細胞から細胞へと広がり、それまで正常だったα-シヌクレインタンパク質を凝集させながら、動きと基本機能を担当する脳構造の『低いlower』場所から記憶や推論のような高度なプロセスに関与する『高い』場所へと徐々に移動していくのだという

「多くの懐疑論が出されたものの、やがて別のラボからもα-シヌクレインが細胞から細胞へと広がる可能性が示された」とDawsonは言う
興味を抱いた彼の研究グループは神経学の教授であるValina Dawson, Ph.D.と助教授のHan Seok Ko, Ph.D.らと共に、この凝集物がどのようにして細胞に入るのかについて調査を開始した

彼らは自分たちが探しているのが『膜を貫通する受容体/transmembrane receptor』という特定の種類のタンパク質であると知っていた
膜貫通受容体は細胞の外側でドアの『錠/lock』のような働きをしており、それに合う正しい『鍵/key』だけを通すのである

彼らが最初に発見したのは、α-シヌクレインの凝集物が入れない細胞だった
研究室で培養されている特定の脳腫瘍の細胞系統に凝集物は入れなかった

この細胞系統に膜貫通受容体をコードする遺伝子を一つ一つ加え、凝集物を細胞に入れるようにする受容体があるかどうかを調べたところ、3つの受容体が該当した
その内の一つのLAG3という受容体は、凝集していないα-シヌクレインよりも凝集したα-シヌクレインに結合する傾向が特に強かった


次に研究チームはLAG3を持たないマウスを育てて、α-シヌクレインの凝集物を注入した

「典型的なマウスは注入後すぐにパーキンソン病のような症状を発症し、そのマウスのドーパミンを作るニューロンの半分が6ヶ月以内に死ぬ」
Dawsonは言う
「しかし、LAG3を持たないマウスはそのような影響からほとんど完全に保護された」

培養ニューロンにLAG3を阻害する抗体を投与しても同様の保護的な効果が見られた


「α-シヌクレインの凝集物がどのようにして脳内を拡散するのかを発見しただけでなく、その進行が既存の抗体によって阻害されうるとわかったことに我々はとても興奮している」
Dawsonのラボで助教/research associateであり研究の筆頭著者のXiaobo Mao, Ph.D.は言う


Dawsonは、LAG3を標的とする抗体が既に 化学療法中に免疫系を強化できるかどうかを調べる臨床試験 に入っていることに言及する
もしそれらの試験で薬剤の安全性が実証されれば、パーキンソン病の治療薬として使うための臨床試験のプロセスが加速されるかもしれないという
さしあたって研究チームはLAG3抗体のマウスでのテストの継続と、LAG3の機能のさらなる調査を計画中である


アメリカでは100万人以上がパーキンソン病である
この疾患は徐々に運動能力を失わせ、具体的には遅くぎごちない足取りslow and awkward gait、四肢の強剛rigid limbs、振戦tremors、足の引きずりshuffling、バランスの欠如が症状として現れる
疾患の原因は十分理解されていない


http://dx.doi.org/10.1126/science.aah3374
Pathological α-synuclein transmission initiated by binding lymphocyte-activation gene 3.
病理学的なα-シヌクレイン伝達はLAG3との結合によって開始される



(LAG3の削除または抗LAG3抗体は、α-シヌクレインの『既に形成された原繊維preformed fibrils (PFF)』の伝達を遅らせる
野生型ニューロンと比較すると、抗LAG3抗体またはLAG3削除により、α-シヌクレインの既形成原繊維(PFF)の結合ならびにエンドサイトーシスは劇的に低下し、結果として病的なα-シヌクレインの伝達ならびに毒性は遅れる
Illustration credit: I-Hsun Wu)


構造化抄録/Structured Abstract


論理的根拠/RATIONALE
病的なα-シヌクレインが細胞から細胞へと伝達される原因となる根底のメカニズムならびに分子的な実在entityは知られていないが、病的なα-シヌクレインがニューロンに入ることはアクティブなクラスリン依存的なエンドサイトーシスプロセスを通じて起きると考えられている


結果/RESULTS
ミスフォールドしたα-シヌクレインのニューロン間の伝達を研究するモデル系として我々は組み換えα-シヌクレイン既形成原繊維(PFF)を使い、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ/alkaline phosphatase(AP)の検出を介して、α-シヌクレイン-ビオチンPFFとの結合候補に関して 膜貫通タンパク質をコードするライブラリをスクリーニングした

※ストレプトアビジンはビオチンに対して強い親和性を持つ

結果、α-シヌクレインPFFに結合する陽性クローンが3つ同定された
・リンパ球活性化遺伝子3/lymphocyte-activation gene 3 (LAG3)
・ニューレキシン1β/neurexin 1β
・アミロイドベータ前駆体様タンパク質1/amyloid β precursor-like protein 1 (APLP1)

これら3つの膜貫通タンパク質の内、LAG3が最も高い比率でα-シヌクレイン単量体に対するα-シヌクレインPFFへの高い選択性を持つことが実証された

α-シヌクレインPFFはLAG3に対して飽和可能であるsaturable(高濃度で飽和する)ように結合する(解離定数dissociation constant = 77 nM)
一方でα-シヌクレイン単量体はLAG3には結合しなかった

共免疫沈降では、病的なα-シヌクレインPFFは特にLAG3と結合する

タウのPFF、βアミロイドのオリゴマー、βアミロイドのPFFはLAG3には結合しない
これはLAG3がα-シヌクレインPFFに対して特異的であることを示す

α-シヌクレインPFFの取り込み/内在化internalizationにはLAG3を必要とするinvolve
なぜなら、LAG3を削除するとα-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスが減少するからだ
α-シヌクレインPFFによるLAG3への結合は、α-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスと伝達、毒性を開始させる

LAG3は、エンドソーム・グアノシントリホスファターゼのRab5とRab7と共に局在し、病的なα-シヌクレインと共にエンドサイトーシスする

病的なα-シヌクレインのニューロン間の伝達と、それに随伴するaccompanying病理かつ神経毒性は、LAG3の削除またはLAGへの抗体によって大幅に緩和される
LAG3を欠如させると、α-シヌクレインPFFによって誘発されるin vivoでのドーパミンニューロンの喪失は大幅に遅れ、生化学的な欠陥ならびに行動的な欠陥も遅れる



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嗅球の領域はα-シヌクレインの拡散に対して脆弱であり、運動症状が出る前にα-シヌクレインは嗅球に沿って移動し、結果として嗅覚が失われる
α-シヌクレインの凝集は最終的にドーパミン産生細胞の存在する脳幹など複数の脳領域に到達する
 

遺伝子の『スイッチ』はアルツハイマー病の潜在的な標的

2016-09-27 06:06:11 | 
Genetic 'switch' identified as potential target for Alzheimer’s disease

September 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160920115633.htm


(ヒトの脳内でのニューログロビンの発現。Allen Human Brain Atlasより)

インペリアル・カレッジ・ロンドンを拠点とする医学研究会議/Medical Research Council (MRC) 臨床科学センター/Clinical Sciences Centre (CSC) の研究チームは、『アルツハイマー病から保護することが知られている遺伝子』のスイッチを入れる仕組みの重要な部分を明らかにした

香港大学/Hong Kong University (HKU) とエラスムス大学/Erasmus University(オランダ・ロッテルダム)との共同研究により、CSCの準教授のRichard Festensteinはニューログロビン遺伝子が上方調節される過程を調査した(上方調節up-regulatedとは徐々にスイッチが入ることである)
ニューログロビンはアルツハイマー病に対して保護的であることが以前マウスで示されている
このマウスはニューログロビンを過剰に作るよう遺伝子操作したものだった


この遺伝子はアルツハイマー病の早期に保護的な役割を演じると考えられているが、疾患が進行するにつれて下方調節down-regulatedされていくようだ
したがって、その上方調節についての今回の研究は、アルツハイマー病を防いだり治療しようとするための新しい方法の開発において役立つことがわかるかもしれない
痴呆症の一般的な原因であるこの疾患には現在のところ治療法は存在しない

CSCのFestenstein教授とHKUのTan-Un博士はエラスムスのSjaak Phillipsen教授の助力を受けて、ニューログロビンが細胞内でどのようにして『つぶれる/fold up』のかを調査した
染色体構造捕捉/chromosome conformation capture(3C)という技術を使った分析による結果、ニューログロビン遺伝子の遺伝子コード領域の外側にある『DNAの特定の領域』が輪を描くようにループして、ニューログロビン遺伝子が始まる場所と接触していることが示された

この新たに突き止められたDNA領域が実際にニューログロビン遺伝子のスイッチを入れることができるのかどうかを確認するため、彼らは二つのアプローチを用いた
まず初めにこのDNA領域を別の遺伝子、いわゆる『リポーター遺伝子』に直接つなげたところ、上方調節を引き起こす『アップレギュレーター』として働くことがわかりやすく実証されたdemonstrated simply
次に『CRISPR』という技術を使って遺伝子を編集し、このDNA領域を細胞から完全に取り除くと、ニューログロビン遺伝子はもはやスイッチが入らなかった

これらの結果から研究チームは、この新たに突き止められたDNA領域が実際にニューログロビン遺伝子の強力なスイッチ・メカニズムであるという確信confidenceを得た

ニューログロビンはアルツハイマーで保護的であると考えられているため、将来この『スイッチ』を使った新しい治療法、例えば遺伝子治療が開発されるかもしれない
そのような治療アプローチを最も効果的にするためには、DNAがコンパクトな『かたまりchunk』である必要がある
重要なことに、研究チームはこの新たな調節領域の位置を特定し、それがニューログロビン遺伝子そのものからはいくらか離れていることを明らかにしている
治療用の効率的な遺伝子治療ユニットを形作るために、ニューログロビン遺伝子とその調節領域との間にあるDNAのあまり関係がない部分less relevant sectionsを取り除けるかもしれない
アルツハイマー病だけでなく他の神経変性疾患、例えば視神経萎縮症optic atrophyでもこの標的が有用であると判明する可能性がある


http://dx.doi.org/10.1093/nar/gkw820
Identification of a novel distal regulatory element of the human Neuroglobin gene by the chromosome conformation capture approach.

Abstract
ニューログロビン/Neuroglobin (NGB) は主に脳と網膜で発現する
過去の研究でNGBが神経細胞に保護的な効果を発揮することが示唆されており、脳卒中やアルツハイマー病の重症度の低下と関連付けられているimplicated
しかしながら、その細胞タイプ特異的な遺伝子発現のメカニズムについてはほとんど知られていない

今回の研究で我々は、NGB遺伝子の適切な発現に関与するのは遠隔調節配列/distal regulatory element (DRE) であるという仮説を立てた
我々は染色体構造捕捉/chromosome conformation captureを使い、2つの新たなDREがNGB遺伝子の-70kb上流と+100kb下流(7万塩基上流と10万塩基下流)に位置することを確認した

※kb: kilo base pair

ENCODEデータベースでは、これらの領域に『DNaseIに特に感度の高い箇所/DNaseI hypersensitive sites』と『転写因子が結合する箇所/transcription factors binding sites』の存在が示された

ルシフェラーゼリポーター/luciferase reportersとクロマチン免疫沈降/chromatin immunoprecipitationを使ったさらなる分析から、上流の−70 kb領域には『ニューロン特異的なエンハンサー』ならびに『GATA転写因子の結合箇所』が含まれることが示唆された
GATA-2のノックダウンがNGBの発現を劇的に低下させたことから、GATA-2はNGBの発現を活性化させるために必須の転写因子であることが示された

NGB発現の活性化におけるDREの決定的に重要な役割は、CRISPRを介するDRE消去後のNGBレベル低下によってさらに確認された

まとめると、NGB遺伝子はそのプロモーターと新規DREとの間に形成される細胞タイプ特異的なループによって調節されることを我々は示す



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Aβは凝集して形を変えてから細胞内に取り込まれる

2016-09-25 06:06:09 | 
Shape-shifting protein behind Alzheimer's disease

September 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160920110633.htm


(Aβペプチドはアルツハイマー病で重要な役割を演じる
ワシントン大学の新たな研究により脳細胞の内部に取り込まれるためには形状の移行shape-shiftsが必要であることが示された)


アミロイドベータというペプチドがアルツハイマー病を引き起こす要因として関与することは知られているが、それがどのようにして有害となるのかについてはいまだに研究中である

ワシントン大学セントルイス校で生物医学のエンジニアであるJan Bieschkeたちは、アミロイドベータが細胞膜の内部に吸収されて細胞に有害となるためには、その内部構造を長く平らなベータシートbeta sheetの構造に変化させなければならないことを明らかにした
9月9日にJournal of Biological Chemistry誌で発表された今回の研究結果は、ドイツ・ベルリンのマックス・デルブリュック分子医学センターとフンボルト大学との協力によるものである

Bieschkeは工学・応用科学校/School of Engineering & Applied Scienceで医用生体工学/biomedical engineeringの助教授/assistant professorである
彼らは細胞に入り込むpenetrateアミロイドベータタンパク質の構造が特定のタイプのベータシートを持つことを発見した
このベータシートは『レイヤーケーキlayer cake』のようにペプチドがお互いに何層も積み重なった状態である


「凝集する経路のどこかでsomewhereこの種の構造的な要素が形成されてから、アミロイドベータは細胞内に入る」
Bieschkeは言う

「それには二つの段階があり、アミロイドベータは膜に結合して凝集を形成する一方で、細胞の表面から内部へと凝集物が取り込まれる
アミロイドベータは細胞の発電所であるミトコンドリアに干渉し、細胞の呼吸を停止させて最終的に細胞を死に至らせる」

遅発性アルツハイマー病患者の研究では脳内の多くの神経細胞が死んでいることが明らかになっている
今回の研究から得られた知識からBieschkeたちは、いったん細胞内に入ったアミロイドベータの近くで何が起きるのか、そしてそれがどのようにしてミトコンドリアと相互作用するのかを調査することが可能である


「我々はいつか、ミトコンドリアの膜との相互作用を 観察して計測することが可能かどうかを突き止め、
そしてこれらの構造が細胞膜と相互作用するのと同じようにミトコンドリアの膜と相互作用するかどうかを明らかにするだろう」
彼は言う

「我々が問うもう一つの疑問は、次のようなものだ
『アミロイドベータにそのような構造が形成されるのを阻害したり、細胞内に取り込まれるのを操作したりすることは可能なのか?』
それは将来のアルツハイマー病患者を助けるための治療戦略につながるだろう」


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.691840
Amyloid-β(1–42) Aggregation Initiates Its Cellular Uptake and Cytotoxicity.
Aβ(1–42) の凝集は、細胞によるAβの取り込みと細胞毒性を開始させる


Abstract
AβペプチドのAβ(1–42) が細胞外プラークに蓄積することはアルツハイマー病の病理学的な特徴の一つである
そのAβ(1–42) が細胞によって再び取り込まれるreuptakeことが、その細胞毒性において重要な段階かもしれないと複数の研究で示唆されている
しかし取り込まれるメカニズムはまだ明らかではない

仮説の一つとして、Aβは細胞に取り込まれる前に、既に凝集した形態で存在するのかもしれない
または、単一のAβペプチド分子がエンドサイトーシス経路に入り、エンドサイトーシス・コンパートメントの状況が凝集プロセスを誘発するのかもしれない
我々の研究の目的は、凝集形成はAβがエンドサイトーシスされる前の『前提条件prerequisite』なのか、それともエンドサイトーシスされた『結果consequence』なのかという疑問に答えることである

我々は蛍光でラベルをつけたAβ(1–42) を使って凝集の形成を可視化し、その取り込みによる内在化internalizationを ヒトの神経芽細胞腫neuroblastomaならびにニューロンで追跡した

実験の結果、βシートが豊富なAβ(1–42) が凝集した物は Aβ(1–42) の濃度がナノモル(10億分の1モル)という低濃度でも細胞内に入った
対照的に、単一のAβ(1–42) モノマーの取り込みは 濃度のしきい値concentration thresholdに直面し、Aβ(1–42) 凝集の形成が可能な濃度ならびにタイムスケールでのみ生じた

取り込みによる内在化 と 膜への結合 をuncoupleさせることにより、Aβ(1–42) のモノマーが細胞膜へと急速に結合してそこで凝集を形成することを我々は発見した
これらの構造はその後に取り込まれ、エンドサイトーシス小胞に蓄積した

このプロセスは代謝的な阻害metabolic inhibitionと相関した

したがって、我々のデータはβシートが豊富な凝集物の形成こそがAβ(1–42) 取り込みと細胞毒性の前提条件であることを暗に示すimply



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Aβにはアミノ酸が短いAβ40と長い方のAβ42があるが、レーザーを使った分析によると『凝集しやすい長い方のAβ42』は、『凝集しにくい短い方のAβ40』よりも『のたくる/揺れ動くwiggle』速度が5倍遅い




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Aβのオリゴマーは有害で大きくなると無害になるが、その移行の間に急速に起きるβシート構造のわずかな変化を明らかにした



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Aβのオリゴマーと原繊維は構造がまったく異なり、そしてニューロンに有害なのは繊維よりもオリゴマーであるようだ
原繊維を標的とする治療がアルツハイマー病にほとんど効果がないのはそのせいかもしれない




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アルツハイマー病モデルの線虫にベキサロテンを与えると、症状が出てからは効果がないが、症状が出る前なら症状が出なくなる
ベキサロテンはアルツハイマー病と関連する有害なAβ42凝集の産生を開始する最初の『核形成』反応を抑制する



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TREM2はアポリポタンパク質に結合し、ミクログリアによるAβの取り込みを促進する
 

α-シヌクレインの凝集は脂質膜の上で始まる

2016-09-24 06:06:02 | 
Protein threshold linked to Parkinson's disease

February 2, 2015

https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150202114450.htm


(合成された脂質小胞から生じたgrow out ofα-シヌクレインからなるアミロイド原繊維を示す、原子間力顕微鏡atomic force microscopyによる画像

Credit: A.K. Buell)

パーキンソン病と密接に関連するタンパク質が脳内で機能不全を起こして凝集し始める『環境circumstances』が、ケンブリッジ大学による研究で初めて定量的に特定された

この研究ではα-シヌクレインというタンパク質の『しきい値threshold』の決定的なレベルが明らかになった
このタンパク質は正常な脳内で化学シグナルのスムースな流れに重要である

いったんしきい値を上回ると、α-シヌクレインが潜在的に有害な構造へと凝集する可能性chancesが劇的に増大する
このプロセスは『核化/nucleation』として知られ、パーキンソン病の発症につながると考えられる一連のイベントの中で最初の決定的に重要な段階である

この研究結果は、どのようにして、そしてなぜパーキンソン病を発症するのかについての理解に向けてさらに一歩前進したことを意味する
慈善団体charityのParkinson's UKによれば現在イギリスでは500人ごとに1人、推定12万7千人がパーキンソン病であり、そして治癒することはないままである

今回の研究の筆頭著者lead authorであるケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの助教/Research Associate、Celine Galvagnion博士は次のように言う
「パーキンソン病の治療法の発見はその病態の理解にかかっている
我々は最終的に疾患の発症につながりうる最初の分子レベルでのイベントについて仕組みの説明mechanistic descriptionをすることが初めて可能になった」


今回の研究では個々人のパーキンソン病発症の可能性likelihoodはα-シヌクレインとシナプス小胞の数との間の繊細なバランスと関連することが示唆されている
シナプス小胞synaptic vesiclesとはとても小さいtiny泡のような構造を持ち、神経細胞間の化学的なシグナルを伝える神経伝達物質を運ぶ
神経細胞はシグナルを伝えるために絶えず小胞を再生産している

正常な状況下でのα-シヌクレインは神経細胞の一方からもう一方に向けた神経伝達物質の放出の際に重要な役割を演じている
α-シヌクレインは自身を『脂質二重層lipid bilayer』という小胞を包む薄い膜に結合させることによってそれを行う

α-シヌクレインが脂質小胞lipid vesiclesに結合する時、らせん状の形状helical shapeへと折りたたみ方foldingが変化して機能を実行する
しかしながら、特定の状況下で小胞の表面上にあるα-シヌクレインは折りたたみに失敗misfoldし、お互いにくっつき合うstick together
この『核化/nucleation』プロセスがいったん始まると、脳細胞内のフリーなタンパク質分子が脂質表面上の『できそこないの核/misshapen nucleus』と接触する危険がある

これらが結びつくcombineにつれて糸のようにつながった形状thread-like chainsの『アミロイド原繊維/amyloid fibril』が形成され、他の細胞にとって有害になり始める
これらの凝集したα-シヌクレインのアミロイド沈着amyloid depositは『レヴィ小体/Lewy-body』として知られ、パーキンソン病の特徴である


以前の研究で脳内でのα-シヌクレインの過剰発現はどういうわけかsomehowパーキンソン病の発症と関連付けられるassociableことが示唆されており、加えてα-シヌクレインと脂質二重層との相互作用が疾患の発症の加減modulateに関与することがわかっていた
しかし、なぜα-シヌクレインが真に発症につながるのかはこれまで不明だった


今回の研究でケンブリッジのチームは合成した小胞synthetic vesiclesを実験的に作り出すことにより、α-シヌクレインタンパク質が自らを脂質に結合させるプロセスのシミュレーションを実施した
合成された小胞は、様々な量のα-シヌクレインと共にインキュベートされた

実験の結果、小胞に対するタンパク質の比率がおおよそ100のレベルを越えると(これはヒトの脳内で典型的に見られるのよりも10倍高いレベルである)、小胞周囲の脂質二重層に自己を結合させたα-シヌクレインは集中し過ぎて、表面上でお互いにまとまってしまうbunch togetherことが示された
結果として、脂質表面上でのタンパク質の核化の可能性chancesは、溶液中で2つのタンパク質がランダムに結合する可能性と比較して、驚くべきことにremarkably少なくとも数千倍にまで高まることが判明した

Galvagnionが次のように付け加える
「凝集の発生が観察される特定の状況specific conditionsが存在し、他の状況では観察されないということが我々の実験で明らかになった」

「α-シヌクレインタンパク質が核となって凝集するnucleateする能力を左右するのは、比率ratioであることが判明した
これはパーキンソン病につながる始まりの段階がどのようにして起きるのかについてのもっともらしい説明likely explanationを我々にもたらす」


合わせて考えると、今回の結果は膜とタンパク質の相互作用がパーキンソン病を含めた神経変性疾患の開始に関与しうるという重要な役割についての仕組みの説明mechanistic descriptionを初めて提供する
この報告の全体はNature Chemical Biology誌で発表される


http://dx.doi.org/10.1038/nchembio.1750
Lipid vesicles trigger α-synuclein aggregation by stimulating primary nucleation.

Abstract
α-シヌクレインはアミノ酸140残基からなる天然変性タンパク質/intrinsically disordered protein(IDP)である
α-シヌクレインはニューロンやシナプス小胞の可塑性に関与するが、凝集してアミロイド原繊維を形成することがパーキンソン病の特徴である

※天然変性タンパク質: 形状が不安定で相互作用や自己凝集などを起こしやすいタンパク質

α-シヌクレインと脂質表面との間の相互作用は正常な機能を媒介するための重要な特徴であると考えられているが、別の状況下ではアミロイド原繊維の形成を調整modulateすることが可能である

我々は実験的・理論的アプローチを組み合わせ、脂質二重層と結合する状況下でα-シヌクレインが容易に凝集を誘発されるメカニズムを同定した
加えて我々はそのような状況下では最初の核化の速度rate of primary nucleationが3ケタ以上(数千倍)by three orders of magnitude or moreも促進されうることを示す

これらの結果は、α-シヌクレインの可溶性の状態から神経変性と関連する凝集の状態への変換、そして関連する疾患の状態への変換を引き起こす際に 膜とタンパク質の相互作用が持つ重要な役割を明らかにする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1eb8a3dd9d17a598ad52ad6fc3230e38
α-シヌクレインはシナプス小胞を整理整頓する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160829163300.htm
α-シヌクレインの変異は凝集の開始initiationと核形成nucleationだけに影響し、延長elongationには影響しない

 

α-シヌクレインはシナプス小胞を整理整頓する

2016-09-23 06:06:39 | 
Parkinson's disease protein plays vital 'marshalling' role in healthy brains

September 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160919084606.htm


(α-シヌクレインは健康な脳では細胞内のトランスポーター同士をつなぎ、その流れを調節することによりシグナル伝達プロセスを制御するという役割を果たすことが研究で示唆された
この研究結果は、パーキンソン病でα-シヌクレインが機能しなくなったときに何がうまくいかなくなるのかについて重要な手がかりをもたらす

Credit: Alfonso De Simone)

※marshal「整理整頓する」「配列して結集させる」

ケンブリッジ大学の研究者たちは、パーキンソン病と密接に関連するα-シヌクレインというタンパク質が健康な脳内ではどのようにして働いているのかを立証した
このタンパク質が健康な被験者でどのようにして働くのかを示す今回の研究は、病気を発症した時に何が起きるのかについての重要な手がかりをもたらす


パーキンソン病は『タンパク質ミスフォールディング病/protein misfolding diseases』と呼ばれる疾患グループの一つであり、特定のタンパク質がねじれてdistorted機能しなくなるという特徴がある
そのようなタンパク質はやがて密集して糸threadのようにつながり、他の細胞にとっても有害となる

機能しなくなったα-シヌクレインは長い間パーキンソン病の特徴であると認識されてきたものの、その健康な脳内での役割はこれまで適切に理解されてこなかった
今回のケンブリッジ大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究は、このタンパク質が『シナプス小胞/synaptic vesicle』という細胞内のトランスポーターの流れflowを調節することを示す
これは脳内のシグナルの効率的な伝達にとって根本的なプロセスである

重要なことに彼らはパーキンソン病と関連する変異を生じたα-シヌクレインについてもテストし、それが同じメカニズムに干渉することを明らかにした
それはシナプス小胞の流れを調節するというα-シヌクレインの能力を損ない、ニューロン間のシグナル伝達を弱めていた

今回の研究を支える主な実験を実施したのは、ケンブリッジの学寮の一つであるセント・ジョンズ・カレッジの化学博士課程学生/PhD student、Giuliana Fuscoである
彼女は言う
「α-シヌクレインがシナプス小胞の流れの調節でいくらかの役割を演じることは既に明らかだったが、
我々の研究はそのメカニズムを提案し、どのようにしてそれが為されるのかを正確に説明する」

「早発性early onsetで家族性のパーキンソン病と関連するタイプの変異を持つα-シヌクレインが、このプロセスに影響することを我々は示した
この変異を持つ人々でも実際にその機能は損なわれているのかもしれない」


研究者は今回の結果を現段階では慎重に扱うべきであると強調する
その理由は特にnot least because、パーキンソン病についてはまだ多くが不可解なままだからである

研究の主な執筆者lead authorsの一人であるインペリアル生命科学部のAlfonso De Simone博士は次のように言う

「結論まで一気に飛躍しないよう注意することが重要である
パーキンソン病の発症では非常に多くのことが起きており、その原因は複合的multipleでありうる
しかし、何が起きているのかの理解において我々は一歩前進した」


α-シヌクレインの正確な機能については多くの議論があり、その理由の一部はα-シヌクレインが脳内だけでなく赤血球にすら豊富だからである
このことは、それがかなり奇妙な『変身するタンパク質/metamorphic protein』であり、潜在的に様々な複数の役割を実行していることを意味する

脳内で起きるシグナル伝達を可能にするメカニズムを調節することを今回の研究で証明したことは、大きな進歩の象徴である

「もしマシンの一部を取り除くなら、その除去の結果がどうなりそうかを理解する前に、それが何をすることになっているのかwhat is supposed to doを知る必要がある」
De Simoneは言う

「我々もパーキンソン病で似たような状況になっている
つまり我々はα-シヌクレインが実際には何をするのかを知る必要があった
パーキンソン病への治療アプローチとしてそれを標的とするための、正しい戦略を確認するために」


今回の研究ではラボをベースとした実験を実施し、脳のシナプス小胞のモデルとなる合成した小胞をα-シヌクレインにさらした
そして核磁気共鳴顕微鏡/nuclear magnetic resonance spectroscopyを用いて、このタンパク質が小胞に関してin relation to the vesiclesどのようにして自己を構造化するorganised itself structurallyのかを検討した
この研究結果を確認するため、ラットの脳から得られたサンプル上でさらなるテストを実施した


シグナルが脳を通過するための基本的なプロセスとしては神経伝達物質neurotransmitterがある
それはシナプス小胞によって運ばれ、ニューロンとニューロンの間を接続しているシナプスを通過する

シグナルが伝えられる間、小胞はシナプスの表面へと動いて膜と融合し、シナプス間に神経伝達物質が放出される
その全ては数ミリ秒の出来事であるin a matter of milliseconds

研究者はα-シヌクレインがこのプロセスの間、小胞を結集させて整理整頓するmarshalling the vesicles際に絶対必要な要素として関与することを発見した
このタンパク質には膜と結合する能力を持つ領域が2つ存在し、それはつまり自らを小胞に接着させて、小胞の固定や解放が可能だということを意味する
小胞のいくつかを保持して取っておくhold backことによりα-シヌクレインは極めて重要な調節機能を実行し、一定の期間に通過する小胞が多すぎず、また少なすぎないようにする

Fuscoは言う
「α-シヌクレインは一種の見張りshepherdのような効果を発揮する
これはシナプスそれ自体から離れた場所で生じ、一回の伝達で使われるシナプス小胞の数をコントロールする」


今回の研究は、家族性の早発性パーキンソン病の症例の中には遺伝子の変異の結果としてα-シヌクレインが機能しないためにその整理整頓の役割が弱まっている場合があることを示唆している
例えば、パーキンソン病のトレードマークの一つは脳内の過剰なα-シヌクレインである
そのような状況下ではα-シヌクレインと小胞の接着が多くなりすぎて小胞の流れが制限され、効果的な神経伝達が妨げられるだろう

最後にDe Simoneはこう付け加えた
「現時点の我々には、これらの研究結果が広範囲に関与しているかもしれないとしか考えることはできない
それらの考えのいくつかをテストするためのさらなる研究が必要である
しかしながら、これはパーキンソン病の研究における多くの生化学的なデータを実際に説明するように思われるのだ」


http://dx.doi.org/10.1038/NCOMMS12563
Structural basis of synaptic vesicle assembly promoted by α-synuclein.


Figure 3: Vesicle assembly induced by αS.


(a)
下の小胞 - N末端(赤)- リンカー(26-59,灰色)- α-ヘリックス(65-97,シアンブルー)- C末端(ピンク,98-140)- 上の小胞


Discussion
α-シヌクレインの生理的な活性は様々な脂質膜と結合するその能力と関連することが広く認識されている (48

今回の分析ではα-シヌクレインの2つの重要な領域、つまりN末端にある膜へのアンカーになる領域(アミノ酸残基1から25)と 中央にあるセグメント配列(残基65から97。ここはいわゆるNAC領域と著しく重複する)が独立した膜結合能を持ち、
したがって単一のシナプス小胞(SV)と相互作用することが可能なだけでなく、二つ同時に異なる小胞に結合することを可能にし (Fig. 3a)、それにより相互作用と組み立てを促進することが明らかになった
それはin vitroとin vivoで示された通りである (14, 15, 16

この結果として生じる『ダブル・アンカー・メカニズム』は、なぜα-シヌクレインのNAC領域内にあるセグメントの71から82残基を消去するかまたはN末端アンカー領域の膜への親和性を損なうと小胞のクラスター化に強く影響するのかについて説明する
(これはin vivoでSaccharomyces cerevisiaeの実験で示されている(16



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140929174413.htm
α-シヌクレインは通常の濃度ではマルチマーmultimerとなってシナプスに集まり、シナプス小胞のクラスター化を促進し、その動きを制限している
シナプス小胞をシナプスでクラスター化することにより、α-シヌクレインは神経伝達を根本的fundamentallyに制限する
それは信号に似ていなくもない--自動車を交差点に集めて交通の流れを遅くし、全体の流れを調節する

「通常の濃度でα-シヌクレインは神経伝達を阻害せずむしろ管理しているが、
疾患ではそのレベルが異常に上昇することにより神経伝達が強く抑制されてシナプス毒性につながる」

http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2014.08.027
α-Synuclein Multimers Cluster Synaptic Vesicles and Attenuate Recycling.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4489cc5b1e62d53015ae6308cff85370
健康な細胞内のα-シヌクレインは構造化されていない状態だった


 

全てのパーキンソン病に共通する分子メカニズムを特定

2016-09-21 06:06:13 | 
Common molecular mechanism of Parkinson's pathology discovered in study

September 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160908130556.htm


(Xinnan Wangたちは神経細胞内の欠陥がパーキンソン病に関与する可能性を発見した

Credit: Norbert von der Groeben)


スタンフォード大学医学部の研究者は、全てのタイプのパーキンソン病におそらく共通すると考えられる細胞内の欠陥defectを特定した
この病態の特徴は神経細胞の特定のグループが死んでいくことだが、この欠陥はそのような細胞死に先行して生じ、細胞の絶滅を引き起こす際に重要な役割を演じる

「我々は家族性familialのパーキンソン病だけでなく、より一般的な孤発性sporadicの病態をも特徴付ける分子的なバイオマーカーを発見した」
脳神経外科学neurosurgeryの助教授assistant professorであるXinnan Wang, MD, PhDは言う

9月8日のCell Stem Cell誌オンライン版で記述されるこの欠陥は、使い古されたwear outミトコンドリアがエネルギー供給を止めて有害な汚染物質pollutantを吐き出し始めた時に 細胞が素早くミトコンドリアを分解するdismantleのを妨げる
この発見はパーキンソン病のより早く正確な診断につながる可能性があるだけでなく、全く新しい薬理学的な治療アプローチをも指し示しうると首席著者であるWangは言う
研究の筆頭著者はpostdoctoral scholar のChung-Han Hsieh, PhDである

パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで二番目に多い神経変性疾患であり、65歳以上のアメリカ人の60人から70人に一人がパーキンソン病である
その内5パーセントから10パーセントが家族性で、大半は孤発性である


パーキンソン病で一般的な突然変異
Prevalent mutation in Parkinson's

家族性パーキンソン病の原因として最も頻繁に見られる遺伝子の突然変異はLRRK2というタンパク質をコードする遺伝子に沿った様々な箇所に起きる
そのような変異にはいくつかあるが、最も頻度が高いのはLRRK2のG2019Sという変異であることが判明している
白色人種/コーカソイドCaucasianの場合、家族性の症例では20人に1人、臨床上孤発性だった症例apparently sporadic casesでは50人に1人の割合で見られるturn up in 1 in 20

興味深いことに、アシュケナージ・ユダヤ人/Ashkenazi Jews(ドイツ・ポーランド・ロシア系ユダヤ人)では家族性パーキンソン病の40パーセント、孤発性の13パーセントでLRRK2G2019Sが見られる/show up
そして北アフリカのベルベル人/North African Berbers(北アフリカのコーカソイドでベルベル語を話す人々の総称)では家族性の39パーセント、孤発性の40パーセントである

※Sephardi Jews: セファルディ・ユダヤ人(スペイン・ポルトガル・北アフリカ系ユダヤ人)

このようなLRRK2の変異とパーキンソン病とのつながりを、明確に説明できた者は今まで誰もいなかった
パーキンソン病の患者と対照群から得られた培養細胞を使った一連の様々な実験から、Wangたちはこの謎を解明することに成功した


ミトコンドリアは脂肪やブドウ糖を他の分子、例えばエネルギーを運搬する分子に変換し、それを必要とする場所に供給する
神経細胞は一つの細胞が数百数千ものミトコンドリアを保持しているが、中脳に存在する神経細胞グループ、つまり我々の自発的な動作を常に微調整するために働く神経細胞にとって、ミトコンドリアによるエネルギーの大量供給は特に重要である

それらの細胞はドーパミンという物質を絶えず生産して分泌し(そのような細胞は『ドーパミン作動性』と呼ばれる)、それぞれがドーパミンを脳の別の場所へと『ほとばしらせるsquirting』ためのおびただしい数の腕を長く伸ばしている
それらのドーパミンを作る中脳の神経細胞が不足すると、パーキンソン病の古典的な症状、例えば振戦tremor, 硬直stiffness, 自発的動作の開始と維持の困難difficulty initiating and sustaining voluntary motion, そして時には認知の困難cognitive difficultiesが生じる

パーキンソン病患者でドーパミン作動性ニューロンの細胞死を引き起こすのは何なのかという疑問は、確たる証拠の裏付けがほとんどないbacked by little solid evidence非常に不明確な多くの推測many highly uncertain guessesをこれまで生じさせてきたoccasion
この不明確さは医療者の早期診断を制限し、効果的な治療のための薬剤開発を妨げている

機能不全を起こしたミトコンドリアは古くておんぼろの自動車/old jalopyと似ている
燃費はひどく悪い上に有害な排気ガス、つまり『腐食性の化学物質/corrosive chemicals』であるフリーラジカルfree radicalを大量に吐き出すspew out

しかし、スタンフォードの科学者たちは、欠陥のあるミトコンドリアを廃棄decommissionできるようにするにはまず細胞骨格から切り離すdetach必要があることを示した
細胞骨格とは『細い管のような繊維状の分子によるネットワーク/a network of molecular filaments and tubules』であり、細胞の中に広がって細胞の形状を決定している
ミトコンドリアは骨格から切り離されて初めて破壊が可能になるのである

しかし、ミトコンドリアを細胞骨格につなぎ留めているMiroというタンパク質が切断severedされなければ、このような切り離しdetachは起きないということをWangのチームは明らかにした


Miroを取り除く
Removing Miro

Wangたちは、LRRK2がMiroと複合体を形成した後で初めてMiroの除去が起きうることを発見した
欠陥のあるLRRK2はこの複合体の形成に失敗し、結果としてMiroの除去が著しく遅れることになる

今回の研究でWangと彼女の同僚たちは、ヒトの皮膚を培養した線維芽細胞から20の異なる系統を得た
4つは健康な被験者から、
5つは臨床上孤発性apparently sporadicのパーキンソン病患者から、
6つはLRRK2変異を持つ家族性のパーキンソン病患者から(悪名高いLRRK2G2019Sを含む)、
5つは他の変異を持つ家族性のパーキンソン病患者からだった

これらの細胞に対して生化学的にミトコンドリアへの損傷を誘発し、6時間後にそれらの細胞のいくらかをこじ開けてbreak open、Miroの分解degradationの徴候を観察した
生化学的な攻撃から14時間後、残りの細胞をこじ開けてミトコンドリアの分解breakdownを測定した

健康な被験者から得られた線維芽細胞の培養系統では、4つの全てで特に問題は観察されなかった
しかし驚いたことに、残り16の細胞系統、つまりパーキンソン病の症例から得られた細胞の全てでミトコンドリアの分離と分解は大幅に遅れていた

さらに詳細に分析すべく、彼女たちは最先端のiPSC技術を用いて皮膚の線維芽細胞のいくつかの系統からドーパミン作動性の活動が活発な神経細胞を作成した
それらに生化学的な操作を加えてそれを顕微鏡カメラによるライブイメージングで画像化したところ、健康な被験者の線維芽細胞から作成したドーパミン作動性神経細胞の中の損傷したミトコンドリアは、急速に破壊されることが示された

しかし、LRRK2G2019Sの変異を持つパーキンソン病患者の線維芽細胞に由来するドーパミン作動性神経細胞では、このプロセスとそこに至るまでの鍵となる重要な段階が大幅に遅れていた


フリーラジカル
Free radicals

研究者たちが神経細胞に対して過剰なフリーラジカル産生を生化学的に誘発すると、パーキンソン病の患者のサンプルに由来する神経細胞は全て(家族性と孤発性で等しくalike)、健康な被験者に由来する同等の細胞よりもはるかに多くの数の細胞が死んだ

「健康な細胞はより高いフリーラジカル濃度も処理することが可能だった」
Wangは言う

「しかしパーキンソン病の細胞は、同じ状況下ではるかに死にやすい
そしてそのような状況はエネルギーを集約的に用いる/多量のエネルギーを消費するenergy-intensive中脳のドーパミンを作る神経細胞で起きやすい
その細胞がまさにパーキンソン病で変性する細胞であり、エネルギーを多く消費するということはミトコンドリアも多い」


特筆すべきこととしてremarkably、科学者たちはパーキンソン病患者に由来する神経細胞の欠陥ミトコンドリアの分解の遅れを防ぐpreventことが可能であるだけでなく、それらの細胞がフリーラジカルの猛攻撃に直面しても早く死んでしまわないよう未然に防ぐforestallことも可能であることを発見した

彼女たちは生化学的な『トリック』を使い、細胞内のMiroのレベルを低下させた
このMiroレベルの低下は健康なミトコンドリアを細胞骨格から取り除くには不十分だったが、分離detachmentが起きうるポイントに近いところまで接着の強度を減少させた

彼女たちが化学的にミトコンドリアの損傷を誘発させても、健康な被験者に由来する神経細胞ではミトコンドリアの減少や分解の増大は起きなかった(分解の増大は起きなかった=通常通り分解された)

しかし同等のLRRK2G2019S神経細胞では以前観察された遅れはほとんどpretty muchが消失し、それらの細胞死ははるかに少なかった
それらの細胞においてMiro濃度の低下はMiro切断の失敗を補ったことになる


LRRK2と関連するパーキンソン病の移動運動の困難locomotion difficultiesのショウジョウバエモデルでは(げっ歯類にはこの面での良いモデルは存在しない)、Miroレベルを低下させると幼虫の這う能力が目に見えて低下するという状態が回復し、成体では上昇能力とジャンプ能力の欠陥が完全に無効化された

さらに、ミトコンドリアのストレスが生じた箇所にLRRK2がリクルートされることをWangたちは証明した

彼女たちは多くの様々な細胞内の障害が完全に正常な『LRRK2とMiroの複合体』でさえも機能不全failureに陥らせる一因になると考えており、
その結果としてMiroがグリップを解放しないという機能不全failure to release its gripは信頼できるパーキンソン病早期のバイオマーカーである可能性があり、
そしておそらくは疾患の原因となる重要なイベントかもしれないという


「パーキンソン病の既存の治療薬はその多くが『つまずいたfalteringドーパミン作動性神経細胞』がドーパミンに変換しやすい前駆体を供給することによって作用する」
Wangは言う
「しかしそれは神経細胞の死を防がず、そしていったん死んだ細胞を回復することはできない
パーキンソン病のリスクが高い人々から得られる皮膚の線維芽細胞でMiroのレベルを計測することが正確で早い診断を得る際に有益であると、いつの日か証明されるかもしれない
そして、Miroのレベルを低下させる薬剤が疾患の治療に有益であると証明される可能性がある」


この研究はスタンフォード医学部が『プレシジョン・ヘルスprecision health』に焦点を当てた一例である
その目標は健康な人の疾患を予測して予防することであり、疾患の人を正確に診断して治療することである


http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2016.08.002
http://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/S1934-5909(16)30249-1
Functional Impairment in Miro Degradation and Mitophagy Is a Shared Feature in Familial and Sporadic Parkinson’s Disease.
Miroの分解とマイトファジーにおける機能不全は家族性と孤発性パーキンソン病で共有される特徴である


※Miro(Mitochondrial Rho GTPase 1)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=RHOT1

※Milton(英国の盲目の詩人Miltonから
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=TRAK1

※KHC: Kinesin Heavy Chain「キネシン重鎖」
※KIF5B: http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=KIF5B


Highlights
・LRRK2変異体のiPSC由来ニューロンにおいて損傷したミトコンドリアは移動を続ける
・LRRK2変異体ニューロンにおいてMiroは安定stabilizedしていて、損傷したミトコンドリアに接着したままである
・Miroの部分的な減少は機能的なニューロンの欠陥をin vitroとin vivoで救出する
・孤発性パーキンソン病でも同様のMiro蓄積とミトコンドリアの欠陥が起きる


Summary
ミトコンドリアの運動movementは厳密に制御され、エネルギー恒常性を維持して酸化ストレスを防いでいる

Miroはミトコンドリアを微小管モーターmicrotubule motorへとつなぎ留めているミトコンドリア外膜タンパク質であり、
機能不全を起こしたミトコンドリアを除去clearanceする早期の段階で取り外されてremoved、ミトコンドリアの運動motilityを止める

今回我々はヒトのiPSC由来ニューロンと、そして他の補足的なモデルを使い、以前示された『パーキンソン病と関連するPINK1とParkin』からMiroへのつながりを基盤として研究をまとめた
我々は『パーキンソン病と関連する三つ目のタンパク質であるLRRK2』がMiroと複合体を形成することによりMiroの除去を促進することを示す
病原性のLRRK2 G2019SはMiroとの複合体を形成する機能を破綻させ、損傷したミトコンドリアの動作の停止を遅らせて、その結果としてマイトファジーの開始を遅くする

特筆すべきことにremarkably、LRRK2G2019Sを持つヒトニューロンとショウジョウバエパーキンソン病モデルでMiroのレベルを部分的に低下させることは神経変性をレスキューした
Miroの分解とミトコンドリアの運動は、孤発性パーキンソン病患者でも損なわれている

我々はMiroの保持の延長とそれに続いて起こるensue下流の結果がパーキンソン病の病理発生pathogenesisの中心的な要素を構成するかもしれないことを明らかにする



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2011.10.018
PINK1 and Parkin Target Miro for Phosphorylation and Degradation to Arrest Mitochondrial Motility
(PINK1とParkinはMiroをリン酸化と分解の標的にしてミトコンドリアの運動を止める)
Xinnan Wang et al.


Highlights
・PINK1またはParkinの発現はニューロンミトコンドリアの動きを止める
・PINK1とParkinはモーター/アダプターのMiroと共に脱分極depolarizedしたミトコンドリアに結合する
・PINK1はMiroをリン酸化し、プロテアソームによって分解させる
・PINK1がMiroの分解を引き起こすためにはParkinが必要である

Summary
細胞はミトコンドリアの動き、分布、除去を調節することによりエネルギーバランスを維持して酸化ストレスを回避する
我々は2つのパーキンソン病タンパク質、セリン/スレオニンキナーゼのPINK1とユビキチンリガーゼのParkinが、ミトコンドリアの動きを止めることによってそのような調節に関与することを報告する
Miroはプライマリprimaryなモーター/アダプター複合体の一要素であり、キネシンをミトコンドリア表面につなぎ留めているが、PINK1はMiroをリン酸化する
Miroのリン酸化はプロテアソームによるMiroの分解を活性化し、それはParkin依存的な方法による
Miroのミトコンドリアからの除去は、ミトコンドリアの表面からキネシンをも切り離すdetach
PINK1/Parkin経路はミトコンドリアの動きを防ぐことによって、損傷したミトコンドリアが除去される前に隔離している可能性があるmay quarantine
PINK1はParkinの上流で作用することが示されているが、この関係に相当するメカニズムは不明である
我々はPINK1による基質のリン酸化がその後のParkinとプロテアソームによる作用の引き金を引くことを提案する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19152501
Pink1 forms a multiprotein complex with Miro and Milton, linking Pink1 function to mitochondrial trafficking.
(Pink1はMiroならびにMiltonと複合体を形成してPink1機能をミトコンドリア輸送に関連付ける)



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/00f9bdacc5fee082eb60dda6170341fb
α-シヌクレインのオリゴマーやドーパミンで修飾された形態は高い親和性でミトコンドリアのTOM20に結合してタンパク質のインポートを損ない、ミトコンドリアの老化、呼吸の低下、活性酸素種(ROS)の増加を示す



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cc43532dd67385196c0da15809ea47d4
LRRK2の突然変異は微小管による軸索輸送を阻害する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2は特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
RAB7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6074
LRRK2変異体の過剰なリン酸化活性によりひき起こされるヒトの神経幹細胞における進行性の核膜異常



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160705135353.htm
尿中のエキソソーム中に含まれる自己リン酸化LRRK2を計測してパーキンソン病のバイオマーカーとして使う



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160727162452.htm
パーキンソン病のリスクとなるSNPsが実際に機能しているエンハンサーやプロモーター領域にあるかどうかを調べたところ、LRRK2は12番染色体長腕(12q12)に存在するが、H3K4me1やH3K27acなどでエンハンサーの活性があるのはB細胞であってニューロンではない
他にも脂肪組織や肝臓に特異的なSNPsが存在した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/01/140107215351.htm
α-シヌクレインはLRRK2の除去を遅くして除去されにくくするため、LRRK2は封入体に詰め込まれる
つまりLRRK2のキナーゼ活性ではなくLRRK2の凝集そのものが細胞死の直接の原因であり、変異体LRRK2のニューロンにおける毒性はLRRK2レベルとα-シヌクレインレベルに依存し、キナーゼ活性または封入体には依存しない



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808172209.htm
パーキンソン病では線条体の投射ニューロンの電気活動が異常



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/review/37014
カルシウムチャネル遮断薬はパーキンソン病のリスクを低下させる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da60d798a69b4436b35dc94e20655438
変異体α-シヌクレインを過剰発現するマウスモデル(A53T-SNCA)では中脳ドーパミンニューロンにおける黒質選択的な発火頻度の増大が観察された
このA53T-SCNAを過剰発現する黒質ドーパミンニューロンの選択的かつ加齢依存的な機能獲得の表現型は、Aタイプ Kv4.3カリウムチャネルの酸化還元に依存的な損傷によって引き起こされる『ペースメーカー頻度の内因的な増加』によって部分的には仲介されていた



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/800fdf13417f9b0a80859ee62a0f6f31
パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたMitoParkマウスでは、ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まった
このマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2011.02.010
PARIS (ZNF746) Repression of PGC-1α Contributes to Neurodegeneration in Parkinson's Disease.
(PARISによる転写因子PGC-1αの抑制はパーキンソン病の神経変性の一因である)

PARIS (ZNF746) はE3ユビキチンリガーゼparkinの基質
 

なぜ黒質のドーパミンニューロンだけが死んでいくのか

2016-09-01 06:06:44 | 
Parkinson's: How toxic proteins stress nerve cells

October 14, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141014083836.htm

パーキンソン病は神経変性疾患としては二番目に多い病気であり、ドイツだけでもほぼ50万人がパーキンソン病にかかっている
この疾患の主な病巣focusは中脳の特定の領域、つまり黒質substantia nigraであり、ドーパミンを作る神経細胞の変性が進行するprogressive degeneration

疾患の原因は折りたたみに失敗したタンパク質misfolded proteinsだが、なぜそのような損傷が特定の神経細胞に限定されるのかは最近になるまで明らかではなかった
フランクフルト市(ドイツ)の神経生理学者neurophysiologistたち率いる研究チームは、この選択的な疾患プロセスがどのようにして始まるのかをパーキンソン病のマウスモデルを使って突き止めた


パーキンソン病患者の運動障害の主な原因は、黒質substantia nigraの特定のタイプの神経細胞、ドーパミン作動性ニューロンdopaminergeic neuronsが徐々に死んでいくことである
ドーパミンの欠乏はL-dopa(エルドーパ。ドーパの左旋型)やドーパミンアゴニストの投与によってある一定の期間だけ補うことは可能だが、この治療によって進行するニューロンの細胞死が止まることはない


過去20年間で研究者たちは、α-シヌクレインタンパク質の有害な凝集aggregatesやその遺伝子の突然変異mutationsが神経変性で必須の役割を演じることを明らかにしてきた
なぜこのプロセスで黒質のドーパミン作動性ニューロンのような特定の神経細胞だけが影響を受ける一方で、すぐ近くimmediate vicinityで同じ変異体のα-シヌクレインを発現するドーパミン作動性ニューロンはほとんどダメージを受けずに生き残るのかは最近になるまで不明だった

ゲーテ大学神経生理学研究所のMahalakshmi Subramaniam博士とJochen Roeper教授が率いる研究グループは、フランクフルトの実験生理学グループ/Experimental Neurology Groupとフライブルク大学と協力の下、影響を受けやすい/感受性のあるsensitive黒質のドーパミン作動性ニューロンが有害なタンパク質に対してどのようにして機能的に応答するのかを遺伝学的なマウスモデルで初めて実証した
このマウスモデルは、ヒトにパーキンソン病を引き起こすα-シヌクレイン遺伝子の突然変異(A53T)を発現する


Journal of Neuroscience誌での彼らの報告によると、感受性のある黒質ドーパミン作動性ニューロンは、影響を受けた中脳領域では有害なタンパク質の蓄積に対して『電気活動electric activity』を著しく増加させることによって応答していた
対照的に、感受性の低いless sensitive近隣のドーパミン作動性ニューロンの電気活動は影響を受けていなかった

Jochen Roeper教授が次のように説明する
「このプロセスはドーパミン系に最初の欠陥が現れる1年も前に始まる
それはつまり、今にも起ころうとしているimpendingパーキンソン病を臨床前に検出するための機能的なバイオマーカーとして将来利用可能になるかもしれない潜在性potentialを持っている
リスクの高い人たちで臨床前から早くに検出できるという潜在性は、神経保護的な治療の開発にとって必須である」


フランクフルトのグループは調節性のタンパク質、つまりイオンチャネルも突き止めており、このイオンチャネルが電気活動を増加させ、酸化的なダメージに応じて神経細胞に関連ストレスassociated stress(訳注: 電気活動と関連するストレスのことか)を引き起こすことを明らかにした

このチャネルの発見は、ドーパミン作動性ニューロンを保護するための直接的な標的タンパク質を新たにもたらす
脳スライスの実験では、ドーパミンニューロンの『電気的なブレーキelectric brake』として働くこのイオンチャネルの機能不全は、ただ単に酸化還元の緩衝剤redox buffersを加えることによって回復可能reversibleだった

このチャネルの酸化還元への感受性redox sensitivityを治療的な薬剤によって低下させることができれば、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンdopaminergic neuronsの細胞死は防げるかもしれない
それは将来のマウスモデルでの課題である


現在彼らは同様のプロセスが他の『パーキンソン病遺伝子』や加齢そのものでも起きるのかどうかを研究中しているところである
「長期の目標としては、これらのマウスの結果がどの程度までヒトに当てはまるのかを調べることである」


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.5069-13.2014
Mutant α-Synuclein Enhances Firing Frequencies in Dopamine Substantia Nigra Neurons by Oxidative Impairment of A-Type Potassium Channels.
変異体α-シヌクレインはAタイプカリウムチャネルを酸化的に損なうことによって黒質ドーパミンニューロンの発火頻度を促進する


Abstract
パーキンソン病(PD)はα-シヌクレイノパチーであり、高度に脆弱な黒質(SN)ドーパミンニューロンが選択的に喪失していく疾患である
α-シヌクレイン遺伝子の変異(例えばA53T)はPDを引き起こすのに十分だが、それが黒質ドーパミンニューロンに対して選択的に作用するメカニズムは不明である

我々は変異体α-シヌクレインを過剰発現するマウスモデル(A53T-SNCA)を使い、中脳ドーパミンニューロンにおける黒質に選択的な発火頻度の増大をin vivoで明らかにした
これは腹側被蓋野/ventral tegmental area (VTA) のドーパミンニューロンでは観察されなかった

A53T-SCNAを過剰発現する黒質ドーパミンニューロンの選択的かつ加齢依存的な機能獲得の表現型gain-of-function phenotypeは、Aタイプ Kv4.3カリウムチャネルの酸化還元redox依存的な損傷によって引き起こされる『ペースメーカー頻度の内因的な増加/increase of their intrinsic pacemaker frequency』によって部分的には仲介されていた

この黒質ドーパミンニューロン選択的な『ストレス性のペースメーキング/stressful pacemaking』のin vivoでの促進は 変異体α-シヌクレインに対する機能的な応答を規定するdefineものであり、
『リスクの高いドーパミン系/DA system at risk』をパーキンソン病の神経変性が始まる前に発見するための新たなバイオマーカーとして有用な可能性がある



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/800fdf13417f9b0a80859ee62a0f6f31
パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたMitoParkマウスでは、ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まった
このマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15817478
ドーパミンが自己酸化して形成されるドーパミノクロームはα-シヌクレインの125-129残基(YEMPS配列)との相互作用により立体構造を変化させて微小繊維化を可逆的に阻害し、球状のオリゴマーを形成する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/00f9bdacc5fee082eb60dda6170341fb
α-シヌクレインのオリゴマーやドーパミンで修飾された形態は高い親和性でミトコンドリアのTOM20に結合してタンパク質のインポートを損ない、ミトコンドリアの老化、呼吸の低下、活性酸素種(ROS)の増加を示す



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d60d62606eaf926aade6a5e38f2dc3b8
なぜレボドパでジスキネジアが起きるようになるのか
 

α-シヌクレイン凝集物はオートファジーを阻害する

2016-08-29 06:06:00 | 
Parkinson's disease protein gums up garbage disposal system in cells

March 28, 2013

https://www.sciencedaily.com/releases/2013/03/130328125232.htm


(レヴィ小体を示す画像
茶色の染みspotは異常な形態のα-シヌクレインを認識する抗体を使った免疫染色によるもの

Credit:
Kelvin C. Luk, Ph.D.,
Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania)

神経細胞内にα-シヌクレインというタンパク質が凝集することは多くの神経変性疾患の特徴であり、それは特にパーキンソン病で顕著である


「レヴィ小体/Lewy bodyとレヴィ神経突起/Lewy neuritesはパーキンソン病の特徴的な病理だが、それらが分解可能なのかどうかは、これまで誰も明らかにすることはできなかった」
Virginia Lee, PhDは言う
彼はペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の神経変性疾患研究センター長directorである

「我々の研究室は最近パーキンソン病の病理を表す新たなニューロンモデルシステムを開発し、そのモデルを使うことによりこれら細胞内の異常な凝集物が分解に抵抗し、マクロオートファジーシステムmacroautophagy systemの機能をも損なうことを実証した
マクロオートファジーシステムは細胞内の廃棄物を処理する主なシステムの一つである」

マクロオートファジーmacroautophagyは文字通りliterally自分を食べることself eatingで、リソソームと呼ばれる細胞の一区画によって、不必要になったり機能しなくなった細胞のがらくたbits and piecesを分解する
病理・臨床検査医学/Pathology and Laboratory Medicineの教授でもあるLeeたちは、今回の研究をJournal of Biological Chemistry誌のオンライン版で発表した


α-シヌクレイン病/alpha-synuclein diseasesには全てα-シヌクレインというタンパク質の凝集があり、具体的にはパーキンソン病や他の関連する疾患、つまり痴呆症を伴うパーキンソン病、レヴィ小体認知症、多系統萎縮症が含まれる
それらのほとんどでα-シヌクレインは不溶性で繊維状の、原繊維の凝集物 insoluble aggregates of stringy fibrils を形成し、ニューロンの細胞体や突起に蓄積する

そのような望ましくないα-シヌクレインの凝集物clumpsは、多くのリン酸基や、分解の対象であることを示す目印のユビキチンタンパク質などによって異常に修飾されている
それら凝集物は中枢神経系 central nervous system に広く分布し、ニューロンの喪失と関連する


研究者たちは合成α-シヌクレイン原繊維を取り込んで細胞内に凝集物が蓄積する細胞モデルを使うことにより、α-シヌクレインの封入体inclusionsが分解できないことを示した
また、たとえそれがリソソームやプロテアソームの近くに位置していても分解はされなかった
(プロテアソームはリソソームとは別のゴミ処理法である)

このα-シヌクレインの凝集物は、
細胞内の可溶性α-シヌクレインレベルがかなり低下した後でさえも持続persistし続けた
このことが示唆しているのは、封入体がいったん形成されるとそれは除去に抵抗するということである

さらに重要なことに、α-シヌクレインの凝集物はオートファゴソームautophagosomeというオートファジー機構の成熟を遅らせることによりオートファジーの分解プロセス全体を損なうことが明らかになった
これがおそらく、凝集物でいっぱいになった神経細胞で観察される細胞死の増加の一因なのかもしれないという

α-シヌクレイン凝集物がオートファジーに与えるこのような影響を理解することは、α-シヌクレインと関連する神経変性の治療を明らかにするために役立つかもしれない


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M113.457408
Lewy body-like α-synuclein aggregates resist degradation and impair macroautophagy.
レヴィ小体様のα-シヌクレイン凝集物は分解に抵抗しマクロオートファジーを損なう

要約Capsule

背景Background:
α-シヌクレイン凝集物とマクロオートファジーは、神経変性と関連がある


結果Results:
マクロオートファジー活性の調整 modulationはα-シヌクレイン凝集レベルに影響しないが、
これらの凝集物は未成熟なオートファゴソームの蓄積を引き起こす


結論Conclusion:
α-シヌクレイン凝集物は分解に抵抗性であり、オートファゴソーム成熟を遅らせることによりオートファジーを損なう


Abstract
Here, we examined this issue
by utilizing cellular models
in which
intracellular Lewy body-like α-syn inclusions accumulate
after internalization of pre-formed α-syn fibrils
into α-syn-expressing HEK293 cells
or cultured primary neurons.



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18172548
ドーパミン修飾α-シヌクレインはシャペロンを介するオートファジー(CMA)を阻害する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15817478
ドーパミンが自己酸化して形成されるドーパミノクロームはα-シヌクレインの125-129残基(YEMPS配列)との相互作用により立体構造を変化させて微小繊維化を可逆的に阻害し、球状のオリゴマーを形成する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/00f9bdacc5fee082eb60dda6170341fb
α-シヌクレインのオリゴマーやドーパミンで修飾された形態は高い親和性でミトコンドリアのTOM20に結合してタンパク質のインポートを損ない、ミトコンドリアの老化、呼吸の低下、活性酸素種(ROS)の増加を示す