Treatment approach used in cancer holds promise for Alzheimer's disease
October 20, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020103528.htm
アルツハイマー病の発症を防ぐための新たな治療法が開発された
これは薬剤を脳に運ぶ顕微鏡レベルの脂肪滴を使うのだという
この治療法は元々は癌細胞を標的にするために使われるが、今回初めてアルツハイマー病の治療として応用し、マウスの記憶を回復することに成功した
ランカスター大学の研究者を中心とした今回の研究はアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの出資によるもので、学術誌のNanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicineで発表された
この治療法で使われる微細な脂肪滴はナノリポソームnanoliposomeと呼ばれ、低濃度のアミロイドベータでも集積してプラークになるのを止めることが可能な『タンパク質の断片』によって覆われている
アミロイドプラークは有害なペプチドが凝集したもので、アルツハイマー病患者の脳内で神経細胞を損傷させる
今回の研究では遺伝子操作によりアルツハイマー病を発生させたマウスにナノリポソームを3週間注入した
実験の結果、薬剤を投与されたマウスは長期記憶を回復し、見慣れた物体familiar objectsを24時間後も認識できた
対照的に、プラセボを注入されたマウスは前日に見せられた物体を覚えていなかった
主な研究者Lead researcherであるDavid Allsop教授は次のようにコメントする
「今年夏の成功をうけて、体内の免疫系を利用してアミロイドを標的とする抗体薬への楽観的な見方が出てきた
しかしながら、もしうまくいくことが証明されても実際の治療はクリニックで点滴/IV dripによって投与しなければならないだろうし、潜在的に有害な副作用の可能性もある」
「ナノリポソームの使用は、有害なアミロイドプラークの形成を阻害するための代替手段を提供する
そしてそれは脳内の免疫応答を活性化することはない
我々の希望は、いつの日かこれが点鼻スプレーぐらい単純で非侵襲的な方法によって、患者が家にいながらにして/in the comfort of their own home投与可能になることだ」
ナノリポソームは既に、有害な化学療法薬を癌細胞に対してうまく差し向けるbetter targetために使われている
最近の研究では脂肪滴が鼻から脳内へ直接通過することも示されており、これはアルツハイマーのような脳の疾患に点鼻スプレーを使った治療の可能性への道を開く
痴呆の治療への革新的なアプローチの必要性について、アルツハイマー協会で研究開発のディレクターであるDoug Brown博士は次のようにコメントする
「痴呆症の新しい薬は15年近く出ておらず、我々は痴呆症の研究で重要な時期にいる
脳内へ薬剤を届ける新たなアプローチを探し出すsniff-out努力を続けることが不可欠だ
現在進行中の臨床試験を我々は期待して待っているが、アルツハイマー病協会は認知症に正面からhead-on取り組む革新的な研究にこれからも出資を続けていくだろう」
「ナノテクノロジーは様々なタイプの癌の患者に大きな利益を約束するが、いつの日かそれが最も一般的な認知症の人々にも同じ希望をもたらすというのはとてもエキサイティングなことだ」
イギリスには85万人の認知症患者がおり、現在利用可能な薬は進行を遅くすることはできず、対症療法だけである
ランカスター大学の研究チームは現在、彼らの新たな治療を患者で試験するために企業からの投資を探しているところである
http://dx.doi.org/10.1016/j.nano.2016.10.006
Retro-inverso peptide inhibitor nanoparticles as potent inhibitors of aggregation of the Alzheimer's Aβ peptide.
逆向き-逆異性体ペプチドによる阻害剤のナノパーティクルはアルツハイマー病と関連するAβペプチド凝集の強力な阻害剤である

※PEG: ポリエチレングリコール
Abstract
アミロイドベータペプチド/Amyloid-β peptide (Aβ) の凝集はアルツハイマー病 (AD) の病理発生において鍵となる重要なイベントである
我々は逆向き逆異性体/retro-inversoのペプチドであるRI-OR2-TAT (Ac-rGffvlkGrrrrqrrkkrGy-NH2) で修飾されたナノリポソームがAβの凝集と毒性に与える効果を調査した
in vitroでAβのオリゴマーと原繊維の形成を阻止するために必要な『ペプチド阻害ナノパーティクル/peptide inhibitor nanoparticles (PINPs)』の濃度は顕著に低く、Aβに対するリポソーム結合RI-OR2-TATのモル比が~1:2000で50%の阻止が生じた
PINPsはAβに高い親和性で結合し (Kd = 13.2–50 nM)、
前もって凝集したAβ/pre-aggregated Aβの有害な影響からSHSY-5Y細胞を保護rescueした
PINPsはin vitroの血液脳関門モデル (hCMEC/D3 cell monolayer)
を通過し、
C57/BL6系統のマウスの脳内に入り、
新規の対象認識テスト/novel object recognition testではAPPSWEトランスジェニックマウスを記憶の喪失から保護した
これまで我々がテストしてきた中で最も強力な凝集阻害剤であることから、我々はPINPsをアルツハイマー病の疾患を調整する潜在的な治療法/potential disease-modifying treatmentとして提案する
※RI-OR2-TATについて
※OR2: アミロイドβオリゴマーの形成を阻害する配列。Aβ(16-20)、つまりKLVFFのこと。Aβによるβシート形成は16-20残基から開始されるという。KLVFFを可溶化するために末端をRG-残基と-GR残基で挟む。OR1(RGKLVFFGR)とOR2(RGKLVFFGR-NH2)があり、OR1とOR2は共に原繊維の形成を阻害するが、OR2だけがオリゴマー化も阻害し、しかそれは神経芽腫由来のSH-SY5Yのみで阻害されたと報告されている
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18189413
※RI: Retro-Invertedの略で、意味は「逆向きの逆異性体」。アミノ酸の配列の方向が逆向きで、かつ各アミノ酸残基の鏡像対称性が反転されたもの
※RI-OR2: OR2を安定させるためにRI化したもので、配列はrGffvlkGr。体内で分解されにくくなるという
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20230062
※TAT: HIVウイルスのTATタンパク質(transactivation and transcription の略)。RI-OR2にTAT配列を付け加えた
※Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQ KLVFF AEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA
※Aβ(16-20)
KLVFF
※Aβ(16-20)の逆配列
FFVLK
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ad6a0c46cb697f889d1d1df378c8058a
Aβ(25-35) はSH-SY5Y細胞にレヴィ小体の形成などパーキンソン病と関連する変化を引き起こす
October 20, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020103528.htm
アルツハイマー病の発症を防ぐための新たな治療法が開発された
これは薬剤を脳に運ぶ顕微鏡レベルの脂肪滴を使うのだという
この治療法は元々は癌細胞を標的にするために使われるが、今回初めてアルツハイマー病の治療として応用し、マウスの記憶を回復することに成功した
ランカスター大学の研究者を中心とした今回の研究はアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの出資によるもので、学術誌のNanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicineで発表された
この治療法で使われる微細な脂肪滴はナノリポソームnanoliposomeと呼ばれ、低濃度のアミロイドベータでも集積してプラークになるのを止めることが可能な『タンパク質の断片』によって覆われている
アミロイドプラークは有害なペプチドが凝集したもので、アルツハイマー病患者の脳内で神経細胞を損傷させる
今回の研究では遺伝子操作によりアルツハイマー病を発生させたマウスにナノリポソームを3週間注入した
実験の結果、薬剤を投与されたマウスは長期記憶を回復し、見慣れた物体familiar objectsを24時間後も認識できた
対照的に、プラセボを注入されたマウスは前日に見せられた物体を覚えていなかった
主な研究者Lead researcherであるDavid Allsop教授は次のようにコメントする
「今年夏の成功をうけて、体内の免疫系を利用してアミロイドを標的とする抗体薬への楽観的な見方が出てきた
しかしながら、もしうまくいくことが証明されても実際の治療はクリニックで点滴/IV dripによって投与しなければならないだろうし、潜在的に有害な副作用の可能性もある」
「ナノリポソームの使用は、有害なアミロイドプラークの形成を阻害するための代替手段を提供する
そしてそれは脳内の免疫応答を活性化することはない
我々の希望は、いつの日かこれが点鼻スプレーぐらい単純で非侵襲的な方法によって、患者が家にいながらにして/in the comfort of their own home投与可能になることだ」
ナノリポソームは既に、有害な化学療法薬を癌細胞に対してうまく差し向けるbetter targetために使われている
最近の研究では脂肪滴が鼻から脳内へ直接通過することも示されており、これはアルツハイマーのような脳の疾患に点鼻スプレーを使った治療の可能性への道を開く
痴呆の治療への革新的なアプローチの必要性について、アルツハイマー協会で研究開発のディレクターであるDoug Brown博士は次のようにコメントする
「痴呆症の新しい薬は15年近く出ておらず、我々は痴呆症の研究で重要な時期にいる
脳内へ薬剤を届ける新たなアプローチを探し出すsniff-out努力を続けることが不可欠だ
現在進行中の臨床試験を我々は期待して待っているが、アルツハイマー病協会は認知症に正面からhead-on取り組む革新的な研究にこれからも出資を続けていくだろう」
「ナノテクノロジーは様々なタイプの癌の患者に大きな利益を約束するが、いつの日かそれが最も一般的な認知症の人々にも同じ希望をもたらすというのはとてもエキサイティングなことだ」
イギリスには85万人の認知症患者がおり、現在利用可能な薬は進行を遅くすることはできず、対症療法だけである
ランカスター大学の研究チームは現在、彼らの新たな治療を患者で試験するために企業からの投資を探しているところである
http://dx.doi.org/10.1016/j.nano.2016.10.006
Retro-inverso peptide inhibitor nanoparticles as potent inhibitors of aggregation of the Alzheimer's Aβ peptide.
逆向き-逆異性体ペプチドによる阻害剤のナノパーティクルはアルツハイマー病と関連するAβペプチド凝集の強力な阻害剤である

※PEG: ポリエチレングリコール
Abstract
アミロイドベータペプチド/Amyloid-β peptide (Aβ) の凝集はアルツハイマー病 (AD) の病理発生において鍵となる重要なイベントである
我々は逆向き逆異性体/retro-inversoのペプチドであるRI-OR2-TAT (Ac-rGffvlkGrrrrqrrkkrGy-NH2) で修飾されたナノリポソームがAβの凝集と毒性に与える効果を調査した
in vitroでAβのオリゴマーと原繊維の形成を阻止するために必要な『ペプチド阻害ナノパーティクル/peptide inhibitor nanoparticles (PINPs)』の濃度は顕著に低く、Aβに対するリポソーム結合RI-OR2-TATのモル比が~1:2000で50%の阻止が生じた
PINPsはAβに高い親和性で結合し (Kd = 13.2–50 nM)、
前もって凝集したAβ/pre-aggregated Aβの有害な影響からSHSY-5Y細胞を保護rescueした
PINPsはin vitroの血液脳関門モデル (hCMEC/D3 cell monolayer)
を通過し、
C57/BL6系統のマウスの脳内に入り、
新規の対象認識テスト/novel object recognition testではAPPSWEトランスジェニックマウスを記憶の喪失から保護した
これまで我々がテストしてきた中で最も強力な凝集阻害剤であることから、我々はPINPsをアルツハイマー病の疾患を調整する潜在的な治療法/potential disease-modifying treatmentとして提案する
※RI-OR2-TATについて
※OR2: アミロイドβオリゴマーの形成を阻害する配列。Aβ(16-20)、つまりKLVFFのこと。Aβによるβシート形成は16-20残基から開始されるという。KLVFFを可溶化するために末端をRG-残基と-GR残基で挟む。OR1(RGKLVFFGR)とOR2(RGKLVFFGR-NH2)があり、OR1とOR2は共に原繊維の形成を阻害するが、OR2だけがオリゴマー化も阻害し、しかそれは神経芽腫由来のSH-SY5Yのみで阻害されたと報告されている
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18189413
※RI: Retro-Invertedの略で、意味は「逆向きの逆異性体」。アミノ酸の配列の方向が逆向きで、かつ各アミノ酸残基の鏡像対称性が反転されたもの
※RI-OR2: OR2を安定させるためにRI化したもので、配列はrGffvlkGr。体内で分解されにくくなるという
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20230062
※TAT: HIVウイルスのTATタンパク質(transactivation and transcription の略)。RI-OR2にTAT配列を付け加えた
※Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQ KLVFF AEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA
※Aβ(16-20)
KLVFF
※Aβ(16-20)の逆配列
FFVLK
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Aβ(25-35) はSH-SY5Y細胞にレヴィ小体の形成などパーキンソン病と関連する変化を引き起こす