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ニロチニブはパーキンソン病で低下したドーパミンを回復する

2016-07-14 06:06:40 | 
Cancer drug restores brain dopamine, reduces toxic proteins in Parkinson, dementia

July 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160712101230.htm

パーキンソン病またはレヴィ小体認知症患者での小規模な第一相試験は、FDAによって承認された白血病の薬が患者の脳のドーパミンを著しく増加させ、そして進行と関連する有害なタンパク質を減少させたという分子的なエビデンスを提供する
脳内の化学物質であるドーパミンは神経伝達物質neurotransmitterと呼ばれ、パーキンソン病などの神経変性疾患ではドーパミンを作るニューロンが死ぬために失われる

ジョージタウン大学メディカルセンター/Georgetown University Medical Center (GUMC) の研究者が2015年10月の北米神経科学学会/Society for Neuroscienceの年次総会で最初に報告し、今回Journal of Parkinson's Disease誌で発表する研究結果は、臨床的な転帰outcomeの改善を支持するものだという

この研究ではニロチニブを試験し、慢性骨髄性白血病/chronic myelogenous leukemia(CML)で使われる用量(300~400mgを1日2回)と比較してかなり少ない用量(1日150mgか300mg)を毎日6ヶ月間投与した
12人の患者が試験に登録され、うち1人は有害事象adverse eventのため打ち切られたwithdraw
研究者によると、試験を完了した残り11人の参加者ではニロチニブが安全かつ十分に忍容性well toleratedがあるようだったという

研究では安全性に加えて、認知機能、運動症状、非運動症状の改善度はもちろん、血液中ならびに脳脊髄液/cerebral spinal fluid(CSF)中の生物学的マーカーも調査され、これらの神経変性疾患の患者にニロチニブが恩恵をもたらすという顕著な徴候が観察された

「この研究は小規模であり、患者はお互いに非常に異なっていて、さらにプラセボ群も存在しないため、これらの結果は注意深く考察viewする必要があり、大規模なプラセボ対照試験/placebo controlled trialsでさらに確認validateされなければならない」
治験責任医師senior investigatorのCharbel Moussa, MD, PhDは言う
彼はGUMCトランスレーショナル神経治療プログラム/Translational Neurotherapeutics Programの科学/臨床の研究部長research directorである

※principal investigator: 治験責任者


バイオマーカーとしては以下のような状態が観察された

・ドーパミンの代謝産物であるホモバニリン酸/homovanillic acid(HVA)のレベルはドーパミン産生の指標だが、ドーパミンニューロンがほとんど失われていてさえ安定して2倍の数値を示した
研究参加者のほとんどはドーパミン補充療法replacement therapyの利用を止めるか減らすことが可能だった

・パーキンソン病と関連する酸化ストレスのマーカーであるDJ-1は、ドーパミン産生ニューロンの細胞死の指標でもあるが、ニロチニブの投与後のDJ-1レベルは50パーセント以上低下した

※DJ-1は酸化ストレスを抑制するとされ、酸化ストレスに応じて上昇するようだ。論文の本文にはこう書かれている
「酸化ストレスに応じてAblは活性化し、DJ-1は上方調節される [25–27] が、
 6ヶ月時点でベースライン時と比較して/ 6ヶ月時点で2ヶ月時点と比較して、
 CSFのDJ-1が150 mgのグループで減少の傾向を示しtrended towards a decrease、
 300mgのグループでは有意に減少したsignificantly reduced (Supplementary Table 5)」


・脳脊髄液(CSF)中の細胞死のマーカー(NSE, S100B, タウ)のレベルは著しく低下していた
これはニューロンの細胞死が減少したことを示唆する

NSE: neuron-specific enolase/神経特異性エノラーゼ

S100B: S100 Calcium Binding Protein B/ S100カルシウム結合タンパク質B


加えて、ニロチニブはCSF中のα-シヌクレイン(ニューロンに蓄積する有害なタンパク質)の喪失lossを薄めてattenuate、その結果としてパーキンソン病とレヴィ小体認知症の両方でCSFレベルは低下したようだとMoussaは付け加える

彼は薬剤に忍容性があった11人の全てが有意meaningfulな臨床的改善を報告したとも言う
全ての参加者は中度~進行したステージのパーキンソン症候群/Parkinsonismであり、彼らは全て軽度mildから重度severeの認知障害cognitive impairmentを持っていた

※mild cognitive impairment(MCI): 軽度認知障害

「パーキンソン病とレヴィ小体認知症の参加者たちの運動機能と認知機能は、薬を続けている限り徐々に改善した
ドーパミン補充療法の使用は減少したにもかかわらずである」
筆頭著者lead authorのFernando Pagan, MDは言う
彼はGUMCトランスレーショナル神経治療プログラムの医学部長medical directorで、MedStar Georgetown University Hospitalでは運動障害プログラム/Movement Disorders Program のディレクターでもある
Paganによると、薬を止めて3ヶ月後には参加者たちの認知機能、運動機能は研究開始前の低い状態に戻ったという


いくつかの深刻な副作用side effectsが報告され、一人が薬の投与から4週目で心臓発作heart attackのために中止、そして3件の尿道感染または肺炎が生じた
これらのイベントはこの患者の集団では珍しいものではなくnot uncommon、ニロチニブの使用に関連する有害事象adverse eventsなのかどうかを決定するためのさらなる研究が必要であるという

「ニロチニブの長期使用の安全性が優先であり、
パーキンソン病における最も安全で最も効果的な用量を決定するためのさらなる研究が必要だ」


研究者は臨床試験を設計する際にラボでのいくつかの注目に値する観察をトランスレートtranslateさせようとした
Moussaを中心として実施された前臨床試験では、チロシンキナーゼ阻害剤のニロチニブが効果的に血液脳関門を通過し、
ニューロンの『ゴミ処理装置/garbage disposal machinery』のスイッチを入れることにより
パーキンソン病や認知症で蓄積する有害なタンパク質を破壊することが示された

以前彼らが発表した研究では、ニロチニブがパーキンソン病とアルツハイマー病の動物モデルにおいて神経伝達物質のドーパミンのレベルを上昇させ、運動ならびに認知的な転帰outcomes を改善することも示された
ドーパミンは有害なタンパク質の蓄積でニューロンが破壊される結果として失われる化学物質である

「我々はニロチニブの患者への有益さがさらに大きく十分にコントロールされた研究で確かめられることを望んでいる
今回の結果はとても有望な一歩である」
Moussaは言う

「これらの結果が以降の研究でも持ちこたえるhold outならば、ニロチニブは約50年前のレボドパの発見以来のパーキンソン症候群の患者にとって最も重要な治療法になるだろう」

彼はさらに続ける
「加えて、もし近い将来upcomingのより大規模なプラセボ対照試験でニロチニブが認知に対して効果が確かめられれば、この薬はレヴィ小体認知症への初めての治療法の一つとなりうるだろう
現在レヴィ小体認知症や、そしておそらく他の認知症には、何ら有効な治療法が存在しない」


アルツハイマー病とパーキンソン病への2つのプラセボ対照・第二相臨床試験が、夏/秋に計画されている
GUMCトランスレーショナル神経治療プログラムでは、ALSでの小規模な試験も計画されている

ノバルティスNovartisによると(2015年10月現在as of)、1日800mgでのニロチニブによるCMLの治療にかかるコストは月当たり約10,360ドルである
今回の研究ではそれよりは低く、1日当たり150か300 mgの用量だった


http://dx.doi.org/10.3233/JPD-160867
Nilotinib Effects in Parkinson’s disease and Dementia with Lewy bodies.
パーキンソン病ならびにレヴィ小体認知症におけるニロチニブの効果


要旨Abstract

背景Background:
我々はチロシンキナーゼのAbelson (Abl) を阻害するニロチニブの低用量での影響を、安全性と薬物動態pharmacokineticsについてパーキンソン病またはレヴィ小体認知症において評価した

目的Objectives:
この研究の主要評価項目/一次転帰primary outcomesは、安全性と忍容性tolerabilityである
薬物動態、標的との結合target engagemenは副次的な評価secondaryだが、臨床的な転帰は探求するexploratory

方法Methods:
12人の被験者subjectを150mg (n = 5) または 300mg (n = 7) のグループにランダムに割り振り、ニロチニブを経口で毎日24週間投与させた

結果Results:
進行したパーキンソン病の被験者において、150mg と 300mg の用量は安全safeで、忍容性toleratedが示された
ニロチニブは脳脊髄液(CSF)で検出され、標的であるAblと結合するように思われる
運動ならびに認知的な転帰outcomesから、臨床的転帰に対する潜在的に有益な効果が示唆された
ベースライン時と24週時との間でホモバニリン酸のCSFレベルは有意に増加した
調査のためのCSFバイオマーカーを計測した


結論Conclusions:
この小規模だが概念実証proof-of-concept的な研究ではプラセボ群を欠き、参加者は均質homogenousではない
その結果としてベースライン時でのグループ間の、そしてグループ内での違いが生じた
このことはバイオマーカーならびに臨床データの解釈interpretationを制限し、どんな結論であれ注意深く引き出されるべきである/any conclusions should be drawn cautiously
にもかかわらず、今回の共通した観察は、ニロチニブの安全性と効能をさらに大規模なランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験で評価するための根拠となることを示唆する



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ニロチニブがパーキンソン病の阻止に有望か



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ニロチニブは細胞のごみ処理機構を活性化させて、α-シヌクレインの凝集を防ぐ



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PARK7(DJ-1)の欠陥は代謝を変化させて酸化ストレスを生じる



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活性化したc-Ablはパーキンを停止させる



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オリゴマーのα-シヌクレインやドーパミンで修飾されたα-シヌクレインは高い親和性でミトコンドリアのTOM20という受容体に結合し、ミトコンドリアが機能するために必要なタンパク質のインポートが損なわれ、ミトコンドリアの老化につながり、呼吸の低下と活性酸素種(ROS)の増加を示す



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フマル酸ジメチル(DMF)と代謝産物フマル酸モノメチル(MMF)はNrf2の活性を上昇させるが、DMFはグルタチオンを枯渇させて酸化ストレスを生じ、MMFはより直接Nrf2を活性化するので、パーキンソン病の治療としてはMMFの方がいいかもしれない
 

活性化したc-Ablはパーキンを停止させる

2016-07-06 06:06:35 | 
Parkinson's: Excess of protein suggests new target for treatment with widely used anti-cancer drug imatinib

October 4, 2010

https://www.sciencedaily.com/releases/2010/10/101001163342.htm

ジョンズ・ホプキンズの科学者は、過剰に活性化したタンパク質の一つが 脳の保護的な効果をもたらす分子を停止させ、パーキンソン病で最も広く見られるタイプを促進することを明らかにした
このメカニズムの発見により、既にそのタンパク質を阻害することが知られている薬剤を使ってアメリカの老人100万人が罹患している疾患の症状をコントロールできるようになるかもしれない


以前の研究で、パーキンというタンパク質は、有害な分子に『タグを付け』てそれを破壊させることにより脳細胞を保護することが実証されている
さらに、パーキンをコードする遺伝子の突然変異は、まれな家族性パーキンソン病を引き起こすことも知られている
しかしながら、ヒトが年を取るにつれて発症率が増加する散発性sporadicの遅発性パーキンソン病におけるパーキンの役割は不明なままである

2010年9月7日にPNAS誌オンライン速報版で発表される今回の新たな研究結果は、過剰に活性化したc-Ablというタンパク質がパーキンの活性を停止させ、脳細胞を殺してパーキンソン病を進行させる有害なタンパク質が蓄積する一因となることを示す


c-Ablは細胞死の調節に寄与し、数多くの疾患に関与している
c-Ablはイマチニブ(グリベック)のような抗癌剤の標的であることが既に証明されており、癌の増殖に不可欠なタンパク質を標的にする生化学的シグナルのスイッチを直接切るようにデザインされた初めての薬であるとTed Dawson, M.D., Ph.D.は言う
彼は神経変性疾患におけるLeonard and Madlyn Abramson Professor教授職であり、ジョンズ・ホプキンス細胞工学研究所の科学顧問scientific directorである


「我々が新たに認識した散発性パーキンソン病におけるc-Ablの役割は、脳に浸透するc-Abl阻害剤がパーキンの正常な保護的機能を維持するために使えることを示唆する」
Dawsonは言う

「既に承認されて十分な忍容性のある薬剤をパーキンソン病のニューロンを保護するという新たな治療目的のためにテストすることは、追求すべきエキサイティングな目標arcである」

※記事ではarcと書かれているが、おそらくarchのことだろう(アーチ、凱旋門triumphal arch)


研究者は初めに、培養したニューロンのようなヒトの細胞でウェスタンブロットという方法を用いて特定のタンパク質にラベルをつけて観察した
健康な状態では破壊されるタンパク質の目印となる化学的なタグtag(ユビキチン)を計測した結果、c-Ablはパーキンの活性を停止させることがわかった
この破壊されるべき『がらくた』タンパク質garbage proteinsが過剰だとニューロンにとって選択的に有害であることが以前Dawsonのラボで観察されている
c-Ablが活発化していると、そのような『がらくた』にタグを付けるパーキンの能力は著しく低下した

※パーキンはユビキチンE3リガーゼで、ユビキチンを付加する能力がある


研究チームはこれらの細胞を、c-Abl阻害剤として有名なSTI-571と共に培養した(STI-571は一般にはイマチニブ(グリベック)として販売されている)
実験の結果、STI-571を加えた培養では、STI-571を加えなかったものと比較してc-Ablによるパーキンの機能の阻害は完全に抑制されていた

c-Abl阻害剤のSTI-571は2001年には白血病の治療薬として、2002年にはまれなタイプの胃癌の治療用としてFDAによって承認されている
STI-571は通常よりも活性が高い異常なc-Ablタンパク質の活性を阻害することによって作用する
しかし、c-Abl阻害剤がパーキンソン病の治療薬として効果を発揮するためには血液脳関門を越える必要があるだろうとDawsonは言う

Dawsonたちは次にパーキンソン病のような特徴traitを引き起こす薬剤を与えたマウスを使って実験を行い、c-Ablが活性化しているとパーキンの機能は停止し、結果として『がらくた』タンパク質が蓄積して、ニューロンが著しく失われることを証明した

また、c-Ablをノックアウトするように遺伝学的に操作したマウスがニューロンの喪失から保護されることも研究チームは実証した
彼らがニューロンの喪失を数えたところ、野生型(通常の)マウスではニューロンが8000個失われたのに対して、c-Ablをノックアウトしたマウスは約半分しか失われていなかった

※数詞 + that many: そんなに多くは

最後に科学者たちはヒトの脳組織に注目し、c-Ablはパーキンの機能を調節する主要な要素かどうかの証拠を探した
パーキンソン病で亡くなった患者の脳組織を他の原因で亡くなった人たちの脳組織と比較したところ、c-Ablはパーキンを停止させ、『がらくた』タンパク質が蓄積し、結果としてニューロンが死ぬことが確かめられた


「長く生きれば生きるほど、多くのヒトがこの消耗性debilitatingの神経疾患を発症する」とDawsonは言い、60歳で100人に1人が罹患し、80歳までにはそれが4倍になることに彼は言及するcite

「そのメカニズムがわかった今重要なことは、その進行を遅くするか止めるための新しい有効な治療法を探すことである」

この研究はNational Institutes of Health(NIH)とバッハマン-シュトラウス・ジストニア&パーキンソン病財団によって出資された


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1006083107
Phosphorylation by the c-Abl protein tyrosine kinase inhibits parkin's ubiquitination and protective function.
c-Ablタンパク質チロシンキナーゼによるリン酸化は、パーキンによるユビキチン化ならびに保護的機能を阻害する


Abstract
ユビキチンE3リガーゼをコードする遺伝子であるParkin(PARK2)の突然変異は、常染色体劣性パーキンソン病を引き起こす

今回我々は非受容体チロシンキナーゼc-Ablがパーキンのチロシン143をリン酸化してパーキンのユビキチンE3リガーゼ活性ならびに保護的機能を阻害することを示す

c-Ablはドーパミン作動性ストレスdopaminergic stress、ならびにドーパミン作動性神経毒dopaminergic neurotoxinのMPP+とMPTPによってin vitroとin vivoで活性化される
c-Abl活性化の結果としてパーキンが不活化し、パーキンの基質であるAIMP2/p38/JTV-1、FBP1が蓄積され、細胞死に至る

※MPP+: 1-methyl-4-phenylpyridinium
※MPTP: 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine

AIMP2/p38/JTV-1: aminoacyl-tRNA synthetase-interacting multifunctional protein type 2
FBP1: fuse-binding protein 1


c-Ablファミリーキナーゼの阻害剤であるSTI-571はパーキンのリン酸化を阻害し、パーキンを触媒的に活性化した保護的状態に維持する
スモールヘアピンRNA(shRNA)によるパーキンのノックダウンはSTI-571による保護を抑制したので、STI-571の保護的な効果にはパーキンが必要である
神経系におけるc-Ablのコンディショナルなノックアウトもパーキンのリン酸化を阻害し、その基質の蓄積を抑制して、MPTPの中毒intoxicationに応じて起きる神経毒性も抑制された
パーキンソン病患者の死後脳においてc-Ablは活性化しており、パーキンのチロシン残基はリン酸化され、AIMP2とFBP1が黒質と線条体に蓄積していた

ゆえに、c-Ablによるパーキンのチロシン143リン酸化はパーキンの機能を阻害する主な翻訳後修飾であり、散発性sporadicパーキンソン病の病理発生pathogenesisにおそらく寄与する
さらに、c-Ablの阻害はパーキンソン病の治療において神経保護的なアプローチである可能性がある



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/05/130510075623.htm
ニロチニブは細胞のごみ処理機構を活性化させて、α-シヌクレインの凝集を防ぐ



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5d4dc56fff78fde69c44dee22b3e92a6
ニロチニブはc-Ablによるα-シヌクレインのリン酸化を阻害して凝集を防ぐ
 

スキンクリームの成分がパーキンソン病に有効

2016-07-03 06:06:38 | 
A new wrinkle in Parkinson's disease research: Skin cream ingredient may stop effects of Parkinson's on brain cells

August 15, 2013

https://www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130815161447.htm

※wrinkle: 巧妙な工夫、妙案
※wrinkle: しわ


薬局で買えるスキンクリームの有効成分active ingredientは、シワを防ぐだけではないかもしれない

ハワードヒューズ医学研究所/Howard Hughes Medical Institute (HHMI) の科学者たちは、カイネチンkinetinというスキンクリームの成分がパーキンソン病の脳細胞への影響を遅くするか止めることを発見した
彼らはこのつながりを生化学と細胞の研究を通じて明らかにしたが、現在はパーキンソン病のモデル動物でこの薬をテストしているところである
この研究結果はCell誌の2013年8月15日号で発表された


「カイネチンは追求すべき素晴らしい分子だ
なぜなら、それは既に薬局でシワ予防クリームとして買えるからである」
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHHMI investigator、Kevan Shokatは言う

「そのため薬は既に広まっていて、安全である」


パーキンソン病は脳のニューロンが死んでいく変性疾患degenerative diseaseである
初期は体の動きに影響して振戦tremo、歩行の困難、不明瞭発語slurred speechを引き起こし、後期には認知症や広範囲な健康上の問題を生じる

2004年、若年性パーキンソン病を高い頻度で発症するイタリアの家族を研究していた研究者は、PINK1というタンパク質の突然変異が遺伝性パーキンソン病と関連することを明らかにした
それ以降の研究によりPINK1は損傷したミトコンドリアの膜に固定されて留まりwedged、そこでパーキンというもう一つのタンパク質をリクルートすることが示されている
ミトコンドリアはエネルギーを作る細胞器官organelleであり、ニューロンは大量のエネルギーを必要とするので、ミトコンドリアが損傷するとニューロンの細胞死につながると考えられている

しかしながら、ダメージを受けたミトコンドリアにパーキンが存在し、ミトコンドリア表面に散らばっているstuddingと、細胞はダメージを生き残ることができる
PINK1の突然変異を遺伝で受け継いだ人はパーキンがミトコンドリアにリクルートされず、その結果として通常よりもニューロンの細胞死の頻度が高くなる


ShokatたちはPINK1の酵素のスイッチを入れるか活性化crank upするための方法を開発し、それにより遺伝性のパーキンソン病で起きているような過剰な細胞死を防ごうと考えた
しかし典型的には、変異体の活性をオンにするのは過剰な活性を阻害することよりも難しい

「我々がこのプロジェクトを始めた時、この酵素を直接オンにできるような方法は考えられうる限り本当に何も存在しないように思われた」
Shokatは言う

「疾患を引き起こすことが知られているどんな酵素に関しても、我々が知っている方法は阻害剤を作ることであり、活性を上げるための現実的な方法はまったく存在しなかった」


PINK1の活性を真似てパーキンをリクルートするためには、より直接的ではない、間接的な方法を発見しなければならないと彼のチームは予想した

PINK1がどのようにして働くのかをより完全に理解したいと考えた彼らは、PINK1がどのようにATPと結合するのかを詳しく調ベ始めた
ATPはエネルギーを蓄える分子で、PINK1をオンにするために必要である

彼らはテストの中で、ATPを加える代わりにその類似物/アナログanaloguesを加えた
アナログとは化学基chemical groupが変化したもので、元の分子とは形状がわずかに異なる

典型的には、このようなアナログを受け取ることができるようにするためには、タンパク質を新たに設計しなければならない
なぜならATPの結合箇所にぴったり一致しないからである

しかしShokatが驚いたことに、そのようなアナログの一つであるカイネチン三リン酸/kinetin triphosphate(KTP)は正常なPINK1を活性化しただけでなく、ATPには結合しないはずのPINK1変異体の活性もオンにしたのである

「この薬剤は、我々が決して考えもしないことを化学的に可能にする何かをしている」
Shokatは言う

「しかしこれは、鍵穴に合う正しい鍵を見つければドアを開くことができるということの証明である/it goes to show that」


KTPのPINK1への結合が通常のATPの結合と同じ結果になるのかどうかをテストするため、ShokatのグループはPINK1の活性を直接計測し、さらにその活性の結果として下流に生じる現象、例えばミトコンドリアの表面にリクルートされるパーキンの量や、細胞死のレベルなども調べた

彼らがKTPの前駆体であるカイネチンkinetinをPINK1変異体の細胞と生理的に正常な細胞の両方に加えたところ、PINK1の活性は増幅され、損傷したミトコンドリア上のパーキンレベルは増大し、ニューロンの細胞死のレベルは低下することが判明した

※アデニンとカイネチンの比較



「これは何なのかというと、この分子的な標的(PINK1)は、パーキンソン病のヒトでの遺伝学的研究にとって重要であることが示されてきたという実例である」
Shokatは言う

※What have we here?: 「これは何?」

「そして今や我々は、この標的に特異的に作用して疾患の細胞内の原因を一変reverseさせる薬を手に入れた」


さらに、PINK1に変異を持つ細胞と変異を持たない細胞の両方で、同様の結果が得られた
これはつまり、KTPの前駆体であるカイネチンは、PINK1の変異を持つことが知られるパーキンソン病の患者の治療に使われるだけでなく、家族歴のない患者でもニューロンの細胞死を減らすことにより疾患の進行を遅くするために使われうるということを示唆している


Shokatは現在、様々なタイプのパーキンソン病のモデルマウスに対するカイネチンの効果について実験を実施している
しかしながら、パーキンソン病の研究で動物モデルの実用性usefulnessは議論の的であり、したがって細胞実験のデータからのポジティブな結果は、動物での結果と同様にヒトのパーキンソン病も治療できる潜在性を持つという良い指標である

最初のヒトでの研究は、PINK1の突然変異を持つ患者の小さい集団に対して焦点を合わせることになりそうである
それがもし成功すれば、この薬剤はのちにパーキンソン病患者の広い範囲でテストされることになるだろう


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2013.07.030
A Neo-Substrate that Amplifies Catalytic Activity of Parkinson’s-Disease-Related Kinase PINK1.
パーキンソン病と関連するキナーゼPINK1の触媒活性を増幅する新たな基質


Highlights
・PINK1の活性は、その新たな基質であるカイネチン三リン酸(KTP)によって増幅される
・KTPは、PINK1野生型の活性と、パーキンソン病と関連するPINK1変異体(G309D)の活性を、両方とも増幅する
・カイネチンはPINK1依存的なやり方でミトコンドリアの運動性motilityを低下させる
・カイネチンはPINK1依存的なやり方でヒトニューロンのアポトーシスを阻害する


Summary
ミトコンドリアは長らくパーキンソン病の病理発生pathogenesisに関与するとされてきた
ミトコンドリアキナーゼPINK1のキナーゼ活性を低下させる突然変異は、ミトコンドリアの欠陥と関連し、そして常染色体-劣性遺伝の早発性パーキンソン病という結果になる

今回我々は代わりの戦略として、ATPアナログであるカイネチン三リン酸/kinetin triphosphate(KTP)を含む新たな基質を使ったアプローチが
パーキンソン病と関連するPINK1変異体(G309D)とPINK1野生型の両方の活性を増加させるために利用可能であることを示す

さらに、KTPの前駆体のカイネチンを細胞に投与すると、生物学的に有意なPINK1活性の増加に至ることを我々は示す
このことは、脱分極したミトコンドリアへのパーキンのリクルートのレベル上昇、軸索axonにおけるミトコンドリア運動性の低下、アポトーシスのレベル低下から一目瞭然manifestである

キナーゼの新たな基質の発見は、これまでheretofore認識されてこなかったunappreciated、キナーゼ活性を調節するための様式modalityを提供する


Results
Kinetin Increases Phosphorylation of PINK1 Substrate Antiapoptotic Protein Bcl-xL
カイネチンは、PINK1キナーゼの基質である『抗アポトーシスタンパク質』Bcl-xLのリン酸化を増大させる

Bcl-xLはBcl-2タンパク質ファミリーのメンバーであり、ミトコンドリアによって誘発されるアポトーシスにおいて鍵となる調節的な役割を演じる分子である (Adams and Cory, 1998 and Gross et al., 1999)

PINK1はミトコンドリア脱分極に応答してBcl-xLのセリン残基62番目をリン酸化し、Bcl-xLが『アポトーシスを促進する形態』へと切断されないように阻害する (Arena et al., 2013)



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1038/cdd.2013.19
PINK1 protects against cell death induced by mitochondrial depolarization, by phosphorylating Bcl-xL and impairing its pro-apoptotic cleavage
PINK1はミトコンドリアの脱分極によって誘発される細胞死から保護するが、それはBcl-xLをリン酸化してBcl-xLがアポトーシス促進的な形態に分解されるのを損なうことによる

PINK1はBcl-xLと相互作用してリン酸化する
Bcl-xLは抗アポトーシスタンパク質であり、Beclin-1と結合してオートファジーも阻害することが知られている

PINK1とBcl-xLの相互作用は、Bcl-xLからのBeclin-1の解放releaseには干渉せず、マイトファジー経路にも干渉しない
むしろその相互作用は、Bcl-xLが切断されてアポトーシス促進的になることを阻害し、細胞死から保護する

我々のデータはPINK1とBcl-xL、そしてアポトーシスとの間の機能的な関連を提供し、PINK1が細胞の生存を調節する新たなメカニズムを提案する
この経路はパーキンソン病の病理発生に関連する可能性があり、癌を含む他の疾患にも関わるかもしれない



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bad53ec660fa7909a45bd26000e982cd
PINK1→マイトフュージン2のリン酸化→パーキンのリクルート→損傷したミトコンドリアの破壊
 

パーキンソン病で明らかにされた分子は心不全にも関与する

2016-07-02 06:34:06 | 
Missing link in Parkinson's disease found: Discovery also has implications for heart failure

April 25, 2013

https://www.sciencedaily.com/releases/2013/04/130425142357.htm


(マウスの心臓(灰色)は、Mfn2を喪失しているために心不全の徴候を示している
Mfn2は不健康なミトコンドリアを細胞から選び取るプロセスにおいて新たに同定された鍵となる分子である

灰色のマウス心臓の画像に色付きで重ねられているのはショウジョウバエの心臓、heart tubeである
heart tubeも心不全の徴候を示しているが、これはパーキンの喪失によるものである

これらの心不全に関与する分子はパーキンソン病でも役割を演じる

Credit: Gerald W. Dorn II, MD)

ワシントン大学セントルイス校医学部の研究者は、細胞の発電所ことミトコンドリアへのダメージがどのようにしてパーキンソン病につながるのかを理解するためのミッシング・リンクについて説明する
そして驚くべきことに、ミトコンドリアの欠陥は特定のタイプの心不全にもつながるのだという

ミトコンドリアは細胞が多くの仕事を実行するために必要なエネルギーを製造する工場である
そして心臓と脳は形状も機能もまったく異なる組織だが、莫大なエネルギーが必要だという決定的な特徴が共通する


マウスとショウジョウバエの心臓の研究から、研究者はマイトフュージン2/mitofusin 2 (Mfn2) というタンパク質が、ミトコンドリアの品質を管理する一連のイベントにおいて長らく探し求められてきたミッシング・リンクであることを発見した
Science誌の2013年4月26日号で発表される今回の研究結果は、これまで知られていたパーキンソン病と心不全との間の疫学的な関連についていくらかの説明となるだろう


「もしあなたがパーキンソン病なら心不全を起こすリスクが2倍以上高く、心不全で死ぬリスクは50パーセント高い」
首席著者senior authorのGerald W. Dorn II, MDは言う

「このことはそれらの間に何らかの関連があることを示唆する
今回我々はこの両者をつなげる根本的なメカニズムを突き止めた」


心筋細胞と脳のニューロンは莫大な数のミトコンドリアを持ち、そしてそれは厳密に監視されなければならない
もし壊れたミトコンドリアが蓄積するのを放置するとそれは燃料を作ることを止めるだけでなく、燃料を消費して細胞に有害な分子を作り出す
このダメージが生じた臓器次第で最終的にパーキンソン病または心不全が起きる可能性がある
しかし大体の場合most of the time、健康な細胞では品質管理システムが損傷したり機能しないミトコンドリアを突き止めて、確実make sureに除去されるようにする

過去15年にわたって科学者たちはこの品質管理システムの多くについて記述してきており、
一連のイベント連鎖の最初と最後はどちらも十分に理解されている

そして2006年になるまで、科学者たちはイベントの中間部分を明らかにすべく研究を続けてきた
この部分は謎が多く、病的なミトコンドリアの内部環境から細胞のミトコンドリア以外の部分に対して「このミトコンドリアは壊す必要がある」と通信できるようにするのである

「これは大きな疑問だった」
Dornは言う

「科学者たちはこの中間部分をブラックボックスとして描いてきた
このミトコンドリア内部からの自己破壊シグナルは、どのようにして周囲の細胞の遠く離れたタンパク質と通信して、破壊の実行を指揮させるのか?」


「私の知る限り、マイトフュージン2の突然変異をパーキンソン病と結びつけた人は誰もいない」
Dornは言う

マイトフュージン2はミトコンドリア同士の融合に関与することが知られており、そうしてミトコンドリアは一種の原始的な有性生殖sexual reproductionとしてミトコンドリアDNAを交換するのかもしれない

「マイトフュージンは小さなマジックテープ/Velcro loopのように見える」
Dornは言う

「マイトフュージンはミトコンドリア外膜の融合を助け、マイトフュージン1とマイトフュージン2はミトコンドリア融合に関してはほとんど同じことをする
しかし我々が発見したのは、マイトフュージン2だけのまったく新しい機能だ」


ミトコンドリアの品質管理システムは、Dornが『デッドマン・スイッチ』と呼ぶ箇所から始まる

「ミトコンドリアが生きていれば、それはきちんと働いてスイッチを抑えた状態に維持し、自己破壊を防ぐようにする」

きちんと働いているミトコンドリアはPINKという分子を運び入れて、そのPINKを破壊する
しかしミトコンドリアが機能しなくなるとPINKを破壊できなくなり、PINKのレベルが上昇し始める

そこに今回Dornたちが明らかにした『ミッシング・リンク』の出番である
PINKのレベルが十分に高くなると、それはミトコンドリアの表面に存在するマイトフュージン2にリン酸基という化学的な変化を付け加える
そしてリン酸化されたミトコンドリア表面のマイトフュージン2には、普段は周囲の細胞質に浮いているパーキンという分子が結合できるようになる
パーキンがマイトフュージン2に結合すると、パーキンは「ミトコンドリアを破壊せよ」というラベルを付ける
このラベルが細胞内の特別な区画を引き寄せ、壊れたミトコンドリアを『食べ』て破壊させるのである

この品質管理システムquality-control systemのつながりが適切に機能する限り、細胞の損傷したパワープラントは除去され、正常なものが入れるように道をあける

「しかし、もしあなたのPINKかパーキンに突然変異があると、あなたはパーキンソン病になる
パーキンソン病の約10パーセントがPINKかパーキン、または他の遺伝子の突然変異が原因であることがわかっている」

Dornによると、今回発見されたマイトフュージン2とPINK/パーキンの関係の発見は、新たな遺伝性パーキンソン病の理解への扉を開くという
そしてそれはパーキンソン病と心不全の診断の改善を助けるかもしれないという

「私が考えるに、研究者はこれまでの既知の変異で説明できない遺伝性パーキンソン病を詳しく調べることになるだろう」
Dornは言う

「マイトフュージン2の機能喪失変異を探せば、おそらく彼らは何かを発見するはずだ」


Dornたちは既に、特定の家族性心不全を説明するように思われるマイトフュージン2の突然変異を検出している
この心不全では心臓の筋肉がだんだん弱っていき、全身への血流が損なわれる
Dornは心不全でもPINKとパーキンの突然変異を探す価値があると推測している

「この場合、心臓は我々にパーキンソン病について教えてくれている
しかし我々はパーキンソン病の心臓病との類似性analogyについても説明してきたのかもしれない」
Dornは言う

「このミトコンドリアの品質管理の一連のプロセスは心臓の専門家にとっては比較的『小さい』分野でしかないが、徐々に関心を集めている」


http://dx.doi.org/10.1126/science.1231031
PINK1-Phosphorylated Mitofusin 2 Is a Parkin Receptor for Culling Damaged Mitochondria.
PINK1によってリン酸化されたマイトフュージン2はパーキン受容体であり、損傷したミトコンドリアの選択cullingに必要である


パーキンはどこに駐車するのか
Where Parkin Parks

損傷したミトコンドリアはマイトファジーmitophagyというプロセスによって除去される
この品質管理メカニズムの失敗がパーキンソン病の一因である

損傷したミトコンドリアが膜電位を失うと、PINK1というキナーゼがミトコンドリア表面に蓄積してパーキンをリクルートし、マイトファジーを促進する

※元の記述では「ミトコンドリア膜の脱分極depolarizationを失うと」となっている。Abstractでは逆のことが書かれているので、おそらくこれは「膜電位membrane potentialを失うと」と書きたかったのではないかと思われる(ミトコンドリアが膜電位を失う/脱分極する→パーキンがリクルートされる)

今回Dornたちはこのプロセスのもう一つの要素、マイトフュージン2について記述する
マイトフュージン2は損傷したミトコンドリアの表面上でパーキンの『受容体receptor』として機能するようである


Abstract
老化したり損傷したミトコンドリアは選択的なマイトファジーにより消去され、そしてこの除去はパーキンソン病の2つの要素を必要とするメカニズムを通じて起きる
すなわち、ミトコンドリアのキナーゼであるPINK1と、細胞質に存在するユビキチンリガーゼのパーキンである

※PINK1: PTEN-induced putative kinase protein 1

PINKとパーキンの相互作用の性質、そして損傷したミトコンドリアにパーキンを向かわせるそれら2つの要素の正体/本体identityは不明である

我々はミトコンドリア外膜のグアノシントリホスファターゼ/guanosine triphosphatase(GTPアーゼ)であるマイトフュージン2(Mfn2)が 損傷したミトコンドリアへのパーキンのリクルートを仲介することを示す

パーキンは、PINK1依存的なやり方でMfn2に結合する
PINK1がMfn2をリン酸化し、そこへパーキンが結合して、パーキンを介するユビキチン化が促進される

マウスの心臓の筋細胞myocyteにおいてMfn2を除去すると、
『脱分極によって誘発されるミトコンドリアへのパーキンのトランスロケーションdepolarization-induced translocation of Parkin to the mitochondria』が阻害されて、マイトファジーが抑制される

Mfn2を欠損するマウスの胚性の線維芽細胞/心筋細胞、ならびにパーキンを欠くショウジョウバエの心血管heart tubeにおいて、形態的・機能的に異常なミトコンドリアの蓄積は呼吸の機能不全を誘発し、拡張型心筋症dilated cardiomyopathyを引き起こす

※heart tube: ショウジョウバエの心臓はheart tubeと呼ばれ、管のような形状をしている

ゆえに、Mfn2はミトコンドリアにおけるパーキンの受容体として機能し、心臓のミトコンドリアの品質管理に必要である


<コメント>
PINK1─(リン酸化)→マイトフュージン2→細胞質のパーキンがミトコンドリアにリクルートされる→欠陥ミトコンドリア除去



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a8282b7beb5c1a554fad7090b09bdf8b
PINK1はパーキンをリクルートして活性化し、Snx9をプロテオソームで分解させて自己免疫を防ぐ



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/316ad3e3c5a33ccc052a826727ddc327
ショウジョウバエのpink1とparkinはマイトフュージンの分解を助け、ERストレスを予防する



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パーキンはPINK1依存的なユビキチン様ドメインとユビキチン両方のセリン65リン酸化によって活性化される
 

白血病の治療薬がパーキンソン病の阻止に有望か

2016-06-30 06:06:55 | 
Blocking key enzyme halts parkinson's disease symptoms in mice

June 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160627214827.htm


(パーキンソン病の脳におけるα-シヌクレインの凝集塊

Credit: Donghoon Kim/Johns Hopkins Medicine)

ジョンズ・ホプキンズの研究者は、パーキンソン病との戦いで新たに2つの重要な手がかりclueを探し出したgleanedという
1つは、c-Ablというタンパク質の酵素を阻害することにより、特別に育てたマウスのパーキンソン病を防ぐことが可能だったということ
もう1つは、c-Ablが化学的な目印をつける相手のタンパク質がパーキンソン病の存在と進行を伝えるバイオマーカーとして役立つかもしれないということである
6月27日にJournal of Clinical Investigation誌で発表された今回の研究は、薬剤研究の有望な標的を提案し、そしてパーキンソン病の研究をより広範囲に推進するためのツールをもたらすだろうと彼らは言う

「c-Ablの活性がパーキンソン病につながるという兆しindicationが存在する
我々の実験はそのようなつながりの実在を示す」
Ted Dawson, M.D., Ph.D.は言う
彼は神経学の教授であり、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部の細胞工学研究所/Institute for Cell Engineeringでディレクターでもある

「白血病の治療薬としてFDAによって承認されたc-Ablの阻害剤が既に存在する
なので我々はこれがパーキンソン病に対して安全に使えるのかどうか、または他の治療を開発するための出発点として利用可能かに興味を持っている」


病理解剖autopsyの結果からパーキンソン病患者の脳内ではc-Ablが特に活性が高いことが明らかになり、
加えてパーキンソン病になりやすいマウスの研究からc-Ablを阻害することで疾患は阻止されるか進行が遅くなることが判明した

しかし、神経学の助教授assistant professorであるHan Seok Ko, Ph.D.は言う
「c-Ablを阻害するために研究で使われた薬剤は同様のタンパク質も阻害しうるため、c-Ablを阻害したことの何がどのようにしてマウスの改善につながったのかは完全には明らかではない」


今回の実験は遺伝子工学的にパーキンソン病を発症するようにしたマウスと、c-Ablをコードする遺伝子を『ノックアウト』したマウスで始まった
c-Ablをノックアウトすると疾患の症状を示す動きは減少し、逆に遺伝学的にc-Ablの量を増加させるとモデルマウスの症状は悪化して疾患の進行は早まった
さらに、通常のマウスもc-Ablの産生を増加させるとパーキンソン病を発症した

それがどのようにして起きたのかについてさらに調べるため、研究チームはc-Ablがどのようにしてα-シヌクレインという他のタンパク質と相互作用するのかを調べた
α-シヌクレインの凝集した塊clumpはパーキンソン病の特徴であることが以前から知られている

実験の結果、c-Ablはα-シヌクレインの特定の箇所にリン酸基という分子を付け加えることが明らかになった(チロシン39リン酸化)
c-Ablレベルの増加はα-シヌクレインの凝集化clumpingを促進し、症状の悪化を伴った

「c-Ablが標的とする箇所にリン酸基/phosphate groupが付け加えられたα-シヌクレインが パーキンソン病の重症度を測定する指標として使えるかどうか、我々はこれから調べる予定である」

そのような客観的objectiveで生化学的な測定方法は現在のところ存在せず、それが潜在的な治療法の研究を妨げているとDawsonは言う

DawsonとKoは、白血病の薬であるニロチニブnilotinibの使用はまだパーキンソン病への適応がないnot indicatedと警告する
今回の結果が臨床に応用できるようになるまでにはさらなる研究が必要である

Parkinson's Disease Foundationによると、毎年約6万人のアメリカ人がパーキンソン病と診断され、全世界で1000万人がこの病気に罹患しているという
特定の遺伝子変異や環境的な曝露がパーキンソン病と関連付けられているが、原因はいまだに調査中である


http://dx.doi.org/10.1172/JCI85456
Activation of tyrosine kinase c-Abl contributes to α-synuclein–induced neurodegeneration.
チロシンキナーゼc-Ablの活性化はα-シヌクレインによる神経変性の一因である


Abstract
今回我々は非受容体型のチロシンキナーゼであるc-Ablがα-シヌクレインによる神経病理neuropathologyを調節する際に決定的criticallyであることを報告する

ヒトのα-シヌクレイン病/synucleinopathyと関連する突然変異を発現するマウス(human A53T α-synマウス)において、c-Ablをコードする遺伝子の削除はα-シヌクレインの凝集を低下させ、神経病理neuropathologyならびに神経行動学的neurobehavioralな欠陥が減少した

反対に、h A53T α-synマウスにおいて構成的に活性化したc-Ablの過剰発現は、α-シヌクレイン凝集、神経病理、神経行動学的な欠陥を加速させた
さらに、c-Ablの活性化はα-シヌクレインのチロシン39残基リン酸化の加齢依存的な増大につながった

パーキンソン病患者のヒト死後脳サンプルでは、年齢的にマッチングさせた対照群と比較して、脳組織ならびにレヴィ小体にチロシン残基39のリン酸化の蓄積が見られた

さらに、in vitroの研究では、c-Ablによるα-シヌクレインチロシン残基39へのリン酸付加phosphorylationはα-シヌクレイン凝集を促進した

合わせて考えると、この研究はα-シヌクレインによる神経変性におけるc-Ablの決定的な役割を確立するものであり、c-Ablの選択的な阻害が神経保護的である可能性を実証する
さらに、この研究ではα-シヌクレインのチロシン残基39番目のリン酸化がパーキンソン病ならびに関連するα-シヌクレイン病の潜在的な指標として役立つ可能性を示す
 

パーキンソン病には自己免疫が関与するかもしれない

2016-06-28 06:06:30 | 
Researchers open new path of discovery in Parkinson's disease

Neuron cell death may be caused by overactive immune system

June 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160627095043.htm

モントリオール大学(カナダ)の科学者Michel Desjardins博士とマギル大学(カナダ)モントリオール神経学研究所病院/Montreal Neurological Institute and Hospital (MNI) のHeidi McBride博士という2人を中心とする研究チームは、パーキンソン病と関連する2つの遺伝子が免疫系にとっても鍵となる調節因子であることを明らかにした
これはパーキンソン病を自己免疫疾患と関連付ける直接的な証拠evidenceをもたらす
研究チームは細胞モデルとマウスモデルを使い、免疫系によって検出されて攻撃されないよう防ぐためにPINK1とParkinという2つの遺伝子が必要であることを示した

PINK1とParkinはパーキンソン病患者の一部で機能を失っているが、そのような状態の細胞はその表面にミトコンドリアのタンパク質の一部を『抗原』として提示するようになる
細胞表面に抗原が存在すると、T細胞という免疫細胞の活性化が起きる
T細胞は脳に入ることが可能であり、ミトコンドリアに由来する抗原を表面に表示するどんな細胞でも破壊する能力がある

パーキンソン病は脳内でドーパミンを作るニューロンの細胞死によって起きる
PINK1とParkin遺伝子の機能不全によって過剰に活性化した免疫系は、なぜドーパミン作動性ニューロンがパーキンソン病患者で死んでいくのかについての説明となるかもしれない
つまりパーキンソン病が他の多くの自己免疫疾患、多発性硬化症や1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスlupusと同じような疾患である可能性である
自己免疫疾患とは自分自身の免疫系が正常な細胞を攻撃するようになる状態である


これまで多くの研究者がミトコンドリアのパーキンソン病への関与を疑ってきた
パーキンソン病ではミトコンドリアが損傷し、壊れたミトコンドリアが蓄積してその毒性によりニューロンが死ぬことになると広く信じられてきた
しかしながら、動物モデルでそれが実際に起きているという証拠evidenceを提供するのは難しかった

Cell誌で6月23日に発表されたDesjardinsとMcBrideのチームの新たな研究結果は、有害なミトコンドリアの蓄積ではなくむしろ自己免疫的なメカニズムとパーキンソン病とを関連付けるものであり、これはPINK1またはParkinを欠損させたパーキンソン病のマウスモデルで実証された


「これまで臨床家たちはパーキンソン病患者の脳内で免疫系が活性化していることを示してきた」
モントリオール大学でpostdoctoral fellowであり論文の筆頭著者first authorであるDiana Matheoud博士は言う

「我々の研究は、免疫系による攻撃がどのようにしてドーパミン作動性ニューロンの破壊の原因となるかを説明する
今回我々は自己免疫メカニズムがドーパミン作動性ニューロンの喪失につながるかどうかをテストし、我々の研究をヒトのニューロンに拡張するためのシステムを開発した」


「抗原提示antigen presentationは、パーキンソン病に直接関与するとは考えられていない」
McBrideは言う

「研究室のほとんどが『有害なミトコンドリア』というモデルの手がかりtrailを追っているが、
免疫系を中心とするアプローチはパーキンソン病を異なる観点から観察する方向へと我々を導いた
異なる道へと導かれた我々はled us down a different road、自己免疫が疾患の進行において重要な役割を演じるようだということを発見した」


パーキンソン病の病理に関与する2つの鍵となる遺伝子と自己免疫メカニズムとの間のつながりが確認された今、次のステップはミトコンドリアの抗原提示を制限することができる薬剤の開発である

注目すべきことにremarkably、このミトコンドリアの抗原が提示されるメカニズムには小胞形成vesicle formationのプロセスが含まれており、これは元々はMcBrideのグループによって記述されたものである
これはプロセスを阻害する新たな薬剤開発のための分子的な標的を提供する


今回の研究結果は他の疾患の治療の改善にもつながるかもしれない
Desjardinsは言う
「我々はこの研究がパラダイムシフトを起こすと考えている
なぜならパーキンソン病においてミトコンドリアを免疫メカニズムへとつなげる新たな生物学的な経路を突き止めたからであり、これは免疫系の調整をベースとした治療法を使うという可能性を開く
そのような治療法は様々な疾患の治療で既に使われている」

「興味深いことに、ミトコンドリア由来の抗原提示を制限する際にPINK1とParkinが演じる役割はパーキンソン病に影響するプロセスを調節するだけでなく、
他の自己免疫疾患、例えば1型糖尿病やループスlupus、原発性胆汁性肝硬変/primary biliary cirrhosisにも影響する可能性がある
それらの疾患ではミトコンドリア由来の抗原提示へのつながりが観察されている」

原発性胆汁性肝硬変: 肝臓の胆管が炎症を起こして破壊される疾患。血清抗ミトコンドリア抗体(AMA)が患者の85%から95%にみられる


「今回の論文は遺伝によって受け継がれるこれらの劣性recessiveの突然変異がどのようにして神経変性につながるかというまったく新しいメカニズムを提案suggestする」

ブリティッシュコロンビア大学とバンクーバー・コースタルヘルス/Vancouver Coastal Healthの神経学部長headであり、以前はPacific Parkinson's Research Centre(PPRC)のディレクターであったJon Stoessl教授は言う

「パーキンソン病における炎症が潜在的に果たす役割に多くの関心が寄せられている
ParkinとPINK1に関するこれまでの研究は、ミトコンドリアの恒常的な細胞代謝的機能housekeeping functionsの乱れに焦点を合わせてきた
今回の発見は明らかな関連はあるものの、以前とは異なる標的治療targeted therapiesの開発に向けたまったく新しいアプローチを示唆する
しかしこれらはパーキンソン病の原因としてはまれなものであり、優性遺伝dominantly inheritedや散発性sporadicのパーキンソン病との関連については確定していないままであるということを記憶にとどめておかなければならない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.05.039
Parkinson’s Disease-Related Proteins PINK1 and Parkin Repress Mitochondrial Antigen Presentation.

(LPSまたは熱ストレス→

『野生型の場合』
PINK1がパーキンをリクルート,リン酸化,ユビキチン化→パーキン活性化→Snx9をプロテオソームで分解

『PINK1/パーキンが機能喪失している場合』
パーキンが活性化しない→Snx9がプロテオソームで分解されない→Snx9/Rab9によるMDVの形成→(Rab7によるMDVの輸送?)→MDVがエンドソームでプロテアーゼにより分解される→MHCクラスIへの抗原の負荷(ERが関与するかもしれない)→抗原提示→T細胞活性化)


Highlights
・パーキンソン病に関与するタンパク質であるPINK1とParkinは、適応免疫adaptive immunityを調節する
・PINK1とParkinは、ミトコンドリアからの抗原提示/mitochondrial antigen presentation (MitAP) をin vitroとin vivoで阻害する
・MitAPはミトコンドリア由来の小胞によって促進drivenされ、マイトファジーmitophagyによるものではない
・自己免疫メカニズムがパーキンソン病に関与しそうであるlikely involved


Summary
抗原提示antigen presentationは、免疫寛容の確立、感染症や癌への免疫応答、どちらにも必要である

抗原提示はオートファジーによって仲介されうるが、
今回我々は
ミトコンドリアからの抗原提示/mitochondrial antigen presentation (MitAP) が
オートファジー/マイトファジーよりもむしろ
ミトコンドリア由来小胞/mitochondrial-derived vesicles (MDVs) の形成と輸送に依存することを実証する

我々はパーキンソン病と関連付けられている2つのミトコンドリアタンパク質、PINK1とParkinが能動的activelyにMDVとMitAPの形成を阻害することを発見した

PINK1またはParkinが欠けていると、
in vitroとin vivoの両方で 炎症状態が免疫細胞におけるMitAPの引き金を引く

MitAPとMDVs形成にはRab9とSorting nexin 9(Snx9)が必要であり、それらのミトコンドリアへのリクルートはParkinによって阻害される

炎症によって引き起こされる『免疫応答を引き出す経路/immune-response-eliciting pathway』の抑制因子としてPINK1とParkinを同定したことは、パーキンソン病の病理への新たな洞察を提供する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/316ad3e3c5a33ccc052a826727ddc327
pink1とparkinはマイトフュージンの分解を助け、ERストレスを予防する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c1b52d3af3376503ff68869378ac4b96
古いミトコンドリアの除去が1型糖尿病の予防に重要



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2キナーゼは特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
Rab7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する
 

パーキンソン病の神経変性はERストレスが直接の原因か

2016-06-26 06:06:12 | 
New findings challenge current view on origins of Parkinson's disease

Researchers investigate mutant flies

June 23, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160623095246.htm


(我々の主な発見のまとめを示す図
ミトコンドリアはオレンジ色、ERは緑色で表す

Credit: University of Leicester)

遺伝性の早期発症パーキンソン病の中のいくらかは、ミトコンドリアの機能低下が原因であるとされてきた
信頼できるエネルギー源がなければニューロンは衰えてwither、やがて死んでしまうのだという
しかしこれは、パーキンソン病に冒された細胞の中で起きていることを完全には説明していないかもしれない

ロイチェスター大学MRC Toxicology Unitの研究者は、この問題を調査するためにショウジョウバエを用いた
ショウジョウバエが使われるのはそれがヒトの遺伝学的な良いモデルを提供するからである

神経変性プロセスの根底にあるシグナル伝達経路や細胞内プロセスを明らかにするためには、ヒトを対象とした研究では限界がある
その理由は、人種的、技術的な制約が遺伝子分析の範囲を限定してしまうからである

ショウジョウバエはヒトの疾患の分子的なメカニズムを理解するための十分確立された動物モデルである
それは、ヒトの疾患を引き起こす遺伝子の75パーセントが、似たような形でハエにも存在するからである
加えてハエは研究がしやすく、急速に成長し、ハエのどんな遺伝子でも操作できるツールが多数利用可能である
そしてハエでは治療の候補薬をエサに混ぜて簡単にテストできる


そのようなハエの分析で、損傷したミトコンドリアを持つニューロンへのダメージの多くは、ミトコンドリアと関係はあるものの異なる源から生じたものだと判明した
それはミトコンドリアと接している迷路のような構造物、小胞体 (ER) である

ERはタンパク質が細胞内で働けるように構造を折りたたむという重要な役割がある
折りたたみに失敗misfoldedしたタンパク質は細胞にとって危険であると認識され、
折りたたまれなかったタンパク質が多くなりすぎると細胞はタンパク質を作ることを止める
このようなストレスに対応するシステムは保護的ではあるが、重要なタンパク質の製造も停止してしまい、やがてニューロンは死ぬことになる

ERストレスがパーキンソン病に関与するのかどうかを明らかにするため、Miguel Martins博士が率いる研究チームはpink1またはparkinの遺伝子に変異を持つショウジョウバエを分析した
pink1とparkinの変異体は、欠陥のあるミトコンドリアの除去を妨げることでニューロンのエネルギーを枯渇させることが既に知られている
そしてこれらの遺伝子はヒトの遺伝性のパーキンソン病でも突然変異を起こしている

ヒトのパーキンソン病患者とほぼ同様に、どちらかの遺伝子に変異を持つショウジョウバエの動きは遅く、筋肉は弱っていた
それらのハエは飛ぶことが困難で、そして脳内のドーパミン作動性ニューロンを失っていた
これはパーキンソン病の古典的な特徴である

Miguelのチームはこれらの変異体と正常なハエとを比較し、変異体は強いERストレスを受けることを発見した
変異体は正常なハエほど早くタンパク質を製造しておらず、加えてタンパク質を折りたたむための分子であるBiPのレベルも上昇していた
これはストレスの証拠telltaleとなるサインである

pink1とparkin遺伝子の機能の一つは、 マイトフュージンmitofusinの分解を助けることである
マイトフュージンはミトコンドリアをERにつなぎ止めるタンパク質である
変異体のハエではこのタンパク質の量が多く、ミトコンドリアのERへの接着が正常のハエよりも増加することが明らかになった

このような理由から、研究者は
ERストレスがミトコンドリアの余分な結び付きと関連があり、それにより欠陥のあるミトコンドリアの除去が妨げられることを示唆している

変異体のハエはそのような接着が多くなるほどドーパミン作動性ニューロンが少なく、このニューロンの減少は脳に悪影響を及ぼしうる
そしてつなぎ止める数を減らすことにより、ニューロンの喪失を阻止できる可能性がある
研究者が実験的にマイトフュージンの量を減らしたところ、
接着の数は減少し、ニューロンの数は再び増加した
ハエの筋肉も、ミトコンドリア自体は損傷していたにもかかわらず正常なままだった
これらの結果は、パーキンソン病で見られる神経変性はミトコンドリア全般の欠陥というより、むしろERストレスの結果であることを示唆する
科学者たちはマイトフュージンを減らすだけでなく、ERストレスの影響を阻害する化学物質によっても神経変性を防ぐことが可能だった

Miguel Martins博士は言う
「この研究は現在中心的な考え方、つまりパーキンソン病はミトコンドリアの機能不全の結果であるという仮説に異を唱えるものだ
我々が疾患モデルで突き止めたERストレスを阻害することで、神経変性を防げる可能性がある
今回のようなラボの実験で、我々はERストレスがパーキンソン病に対してどのような影響を与えるのかを調べることができるようになる
今回の発見はまだショウジョウバエにしか当てはまらないが、
さらなる研究によりヒトでも同様の介入が特定のタイプのパーキンソン病の治療に役立つかもしれないと我々は考えている」


http://dx.doi.org/10.1038/cddis.2016.173
Mitofusin-mediated ER stress triggers neurodegeneration in pink1/parkin models of Parkinson’s disease.

Abstract
PINK1とPARKINの突然変異は早発性/若年性early-onsetのパーキンソン病を引き起こすが、それはミトコンドリアが有害であるためだと考えられている

今回我々はショウジョウバエdrosophilaのpink1とparkinの突然変異体mutantにおいてミトコンドリアの欠陥が小胞体(ER)ストレスのシグナル伝達も生じさせることを示す
特に、小胞体ストレス応答/unfolded protein response(UPR)の経路の一つである『PKR様小胞体キナーゼ/protein kinase R-like endoplasmic reticulum kinase(PERK)』が活性化する

pink1とparkin変異体で促進されるERストレスシグナル伝達はマイトフュージンmitofusinの橋状結合bridgesによって仲介され、この結合は欠陥ミトコンドリアとERとの間に作られることを我々は示す

マイトフュージンとERとの接触を低下させることは神経保護的であり、それはPERKシグナル伝達の抑制による
しかしミトコンドリアの機能不全は変化しないままである

さらに、ショウジョウバエのPerk(dPerk)に依存的なERストレスシグナル伝達を遺伝学的に阻害しても、
PERK阻害剤のGSK2606414を使って薬理学的に阻害しても、
どちらもpink1変異体/parkin変異体の両方に対して神経保護的だった


pink1とparkin変異体のハエでは、欠陥ミトコンドリアによるERストレスの活性化がニューロンに有害であると我々は結論する
これは欠陥ミトコンドリアには依存することなく起きる


この論文の映像による要旨がオンラインで利用可能である
http://www.nature.com/cddis/journal/v7/n6/suppinfo/cddis2016173s1.html



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4971dbae7ee0570afb2d7ba9221e765b
カロリー過剰によるERストレスは腸によるウログアニリンの産生を止める



関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%B0%8F%E8%83%9E%E4%BD%93%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9#.E3.83.91.E3.83.BC.E3.82.AD.E3.83.B3.E3.82.BD.E3.83.B3.E7.97.85
ERストレスとパーキンソン病
Parkinはユビキチンリガーゼの一種で、これまでに10種類以上の基質タンパク質が報告され、その中でもパーキンソン病の発症に関わる因子としてPeal受容体がある。Peal受容体は複数回膜を貫通するタンパク質で小胞体内の折りたたみが難しいタンパク質のひとつであると考えられている。折りたたまれないでミスフォールドされたPeal受容体はParkinによってユビキチン化され、ERADによって分解される。Parkinが欠損する患者ではミスフォールド化したPeal受容体がERADの系で分解されず、ミスフォールドのまま小胞体に蓄積し小胞体ストレスを引き起こすことが示唆されている[39]。
Peal受容体は中枢神経系ではオリゴデンドロサイトに広く分布しているが、神経細胞では黒質ドーパミンニューロンに発現している。パーキンソン病で障害を受けやすい黒質ドーパミンニューロンがPeal受容体を発現していることは、本疾患で小胞体ストレスが発症に密接に関わる重要な根拠になっている。

また、パーキンソン病患者の神経細胞内レビー小体の構成成分であるα-シヌクレイン(α-Syn)はリン酸化修飾を受けており、これによって小胞体―ゴルジ装置間輸送が抑制される[40][41]。その結果、小胞体内に未成熟なタンパク質が蓄積して小胞体ストレスを誘発する[42]。パーキンソン病はミトコンドリアの機能障害も生じているが、α-Synによる一連の反応はミトコンドリアの機能障害の発生前に起こることが示唆されている[43]。
 

トキソプラズマ感染が神経変性疾患と関連する理由

2016-06-16 06:06:27 | 
Scientists unpack how Toxoplasma infection is linked to neurodegenerative disease

New research focused on glutamate, the most important neurotransmitter in the brain

June 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160609150841.htm


(ニューロン(灰色)、アストロサイト(緑色)、血管(赤)

Credit: Wilson lab, UC Riverside.)

トキソプラズマ・ゴンディ/Toxoplasma gondiiは体長5ミクロンの原生動物門の寄生虫で、世界の人口の約3分の1に感染している
十分に加熱されていない肉やよく洗われていない野菜を食べることで感染し、アメリカでも15から30パーセントが感染、フランスとブラジルでは80パーセントまでが感染している
特に危険なのは妊娠中であり、妊娠女性における感染は深刻な先天性の障害を引き起こし、死ぬことさえある

この寄生虫の慢性的な感染には2つの要素がある
単一の細胞による寄生と、それによって引き起こされる組織の炎症である


カリフォルニア大学リバーサイド校の生物医学科学者チームは、トキソプラズマの感染が脳内の神経伝達物質の混乱につながり、それがもともと罹患しやすい傾向のある人に神経疾患を引き起こすと主張するpostulate
PLOS Pathogens誌で報告された彼らの研究はマウスで実施されたもので、他の全ての哺乳類と同様にマウスはこの寄生虫の自然宿主natural hostである

この報告で彼らはトキソプラズマ感染がグルタミン酸の著しい増加につながることを示す
グルタミン酸はニューロン間で興奮性のシグナルを伝達する脳内で最も重要な神経伝達物質である
このグルタミン酸の増加は『細胞外』つまり細胞の外で生じるもので、通常はアストロサイトという中枢神経系(脳と脊髄)の特殊specializedな細胞により厳密にコントロールされている
グルタミン酸の増加buildupは、外傷性脳損傷/traumatic brain injury(TBI)や重度の病的な神経変性疾患(てんかん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症)でも観察される

アストロサイトが果たす役割の一つは、ニューロンに有害になりうる病的なレベルまで増加しないようにlest細胞外のグルタミン酸を除去することである
これは主にグルタミン酸トランスポーターのGLT-1によって行われ、細胞外のグルタミン酸を調節する役割を担っている
GLT-1はニューロンによって放出されたグルタミン酸を取り込み、より安全な物質であるグルタミンに変換する
グルタミンは細胞がエネルギーとして使うことができるアミノ酸である


「ニューロンが発火fireする時にグルタミン酸はニューロンとニューロンの間の空間に放出される」
中心となった研究者lead researcherのEmma H. Wilsonが説明する
彼女はリバーサイド医学部の生物医科学部で助教授associate professorであり、トキソプラズマ症toxoplasmosisについて15年以上も研究している

「近くのニューロンはグルタミン酸を検出し、それがニューロンの発火を引き起こす
グルタミン酸がGLT-1によって除去されなければニューロンは適切に発火することができず、やがてニューロンは死に始める」

Wilsonと彼女のチームはトキソプラズマが感染している間のアストロサイトは膨張swellして細胞外グルタミン酸の濃度を調節することができず、GLT-1は適切に発現しないことを明らかにした
これはニューロンから放出されたグルタミン酸の蓄積buildupにつながり、ニューロンの発火は不発に終わるmisfire

「慢性的なトキソプラズマ感染が不活発quiescentで良性benignであると憶測されているのとは異なり、これらの結果は正常な神経学的経路ならびに脳の生化学的な変化に対する潜在的なリスクについて我々は知っておくawareべきであるということを示唆する」


次に研究者たちがトキソプラズマ感染マウスに抗生物質のセフトリアキソン/ceftriaxoneを投与したところ、GLT-1は上方調節された
この抗生物質はALSのマウスモデルに有益な効果をもたらし、様々な中枢神経系の損傷において神経を保護することが知られている
このGLT-1発現の回復は細胞外のグルタミン酸を病的な状態から正常な濃度まで著しく減少させ、ニューロンの機能を正常な状態まで回復した

Wikipedia(en)には「セフトリアキソンは興奮性アミノ酸トランスポーター2ポンプの発現と活性を中枢神経系で増加させ、グルタミン酸作動性の毒性glutamatergic toxicityを低下させる潜在性を持つ [30][31]
セフトリアキソンは脊髄性筋萎縮症(SMA)[32]、筋萎縮性側索硬化症(ALS)[33] など多くの神経疾患で神経保護的な性質を持つことが示されてきている」とある


「我々はトキソプラズマ感染の結果として起きる脳内の主要な神経伝達物質の直接的な破綻を初めて示した」
Wilsonは言う

「この最も一般的な病原体の実体realityを理解するため、さらに直接的で機構的な調査を実施する必要がある」

Wilsonたちの次の研究予定は、トキソプラズマ慢性感染中の何がGLT-1の下方調節を開始させるのかについてである

「グルタミン酸恒常性の維持に対するこのトランスポーターの重要性にもかかわらず、その発現を決定するメカニズムについてはほとんど理解されていない」
Wilsonは言う

「末梢の免疫細胞も含めた細胞が、どのようにして脳内の寄生虫をコントロールしているのかを我々は知りたい
トキソプラズマ感染は一生を通じてニューロンの内部に寄生虫性嚢胞/シストparasitic cystが存在することになる
我々はさらに、シストcystを殺すことに焦点を当てたプロジェクトを進めたいと考えている
寄生虫はシストにより免疫応答から隠れており、シストの除去は寄生虫の再活性化ならびに脳炎のリスクの脅威を取り除き、脳内の慢性感染を最小限に抑えることを可能にする」


奇妙なことに、この寄生虫はネコの中でしか性的な生殖ができない
この寄生虫は核を持つあらゆる哺乳類の細胞で無性生殖asexuallyで増殖し、事実この寄生虫はこれまでテストされたあらゆる哺乳類で見られる

感染後、寄生虫の再感染と脳炎を防ぐためには免疫応答能のあるcompetent免疫系が必要である
免疫系に欠陥がある人が感染すると予防薬prophylactic drugを一生続ける必要があり、さもなくばシストが再感染して死ぬ危険がある

この寄生虫は、危険を志向risk-seekingするような、特定の行動を乱す潜在性potentialを持つ脳内の領域に住み着く(感染したマウスはネコの尿から逃げず、尿に向かって走る)

トキソプラズマはかつて考えられていたほど潜伏latentしたり休止状態dormantではない
先天性の感染や網膜トキソプラズマ症の症例が増加しつつあるon the rise(脳と網膜は密接な関連がある)
統合失調症の人はトキソプラズマに感染しやすい
トキソプラズマの感染はアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんといくらかの相関が示されている

にもかかわらず、Wilsonは感染が主な心配の原因ではないことに言及する

「我々は長い間この寄生虫と生きてきた
宿主を殺したいのではなく、家を失いたいのではない
感染を防ぐ最も良い方法は肉を加熱調理し、手と野菜を洗うことだ
もしあなたが妊娠しているなら、ネコのトイレの砂litterを変えないように」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.ppat.1005643
GLT-1-Dependent Disruption of CNS Glutamate Homeostasis and Neuronal Function by the Protozoan Parasite Toxoplasma gondii.

Abstract
中枢神経系はその免疫特権的な性質immune privileged natureから慢性的かつ潜在感染に脆弱でありうる
脳の生涯感染とそれによる炎症が宿主の神経学的な健康に与える影響はほとんどわかっていない
免疫能のある人でトキソプラズマ感染はほとんど無症候性だが、最近の研究で特定の神経変性疾患ならびに精神障害との強い相関が示唆されている

今回我々は主なアストロサイトグルタミン酸トランスポーターであるGLT-1のトキソプラズマ感染後の有意な低下を実証する
我々は感染したマウスの前皮質で微量透析法microdialysisを行い、グルタミン酸の細胞外濃度が有意に増加することを観察した

グルタミン酸の調節不全と一致して、樹状突起棘dendritic spine(シナプスはここにつくられることが多い)の減少、VGlut1とNeuNの免疫反応immunoreactivityを含む形態的な変化がニューロンの分析で明らかにされた
さらに、行動的なテストならびに脳波electroencephalogram(EEG)記録では、ニューロン出力の有意な変化が示された

最後に、これらのニューロン接続の変化は、トキソプラズマ感染によるGLT-1下方調節に依存する
β-ラクタム抗生物質のセフトリアキソンceftriaxoneの投与は、細胞外グルタミン酸濃度、ニューロンの病理と機能を回復した

合わせて考えると、これらのデータはトキソプラズマ感染後にグルタミン酸のアストロサイトによる精密な調節が乱されることを実証し、慢性感染で観察される一定範囲の異常a range of deficits observed in chronic infectionの原因を説明する



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トキソプラズマはアストロサイトのアセチル化を変化させる



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グルコース蓄積とアミロペクチン分解プロセスをハイジャックして休眠中のトキソプラズマを殺す



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ヒトのアストロサイトの機能が初めて調査され、マウスとの違いが明らかにされる



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イノシン/尿酸はアストロサイトのNrf2経路を活性化し、グルタチオンの分泌を高めて神経保護効果をもたらし、パーキンソン病リスクを低下させる



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アルツハイマー病発症の20年前に脳内に炎症性の変化が見られ、アストロサイトの活性化を示す



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アルツハイマー病モデルマウスの脳では反応性アストロサイトがプトレシンからMAOBによってGABAを産生し、Bestrophin-1チャネルを通してGABAをリリースしてシナプス伝達の間の正常な情報の流れを抑制する



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特定の神経細胞が軸索を通じてアセチルコリンを海馬に放出し、それにアストロサイトが反応してグルタミン酸を出して、その結果『記憶モード』に切り替わる
 

α-シヌクレインはどのようにしてミトコンドリアを阻害するのか

2016-06-14 06:06:00 | 
Key to Parkinson's disease neurodegeneration found

June 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160608154030.htm

ピッツバーグ大学医学部の研究者は、なぜパーキンソン病と関連するタンパク質のα-シヌクレインがニューロンにとって有害なのかについての主な理由を明らかにした
α-シヌクレインはパーキンソン病の病理学的な特徴hallmarkであるレヴィ小体の成分である
Science Translational Medicine誌のオンライン版で発表された今回の発見は、この破壊的な疾患の進行を遅くするか止めうる新たな治療法につながる潜在性を持つ


パーキンソン病(PD)は振戦、緩慢な動き、歩行gaitとバランスの困難さが特徴characterizedの神経変性疾患であり、アメリカ国内では約100万人が罹患している
これらの症状は脳内のニューロンが変性するか失われることによって生じ、特に動きの開始initiationと調整coordinationに重要なニューロンが影響を受ける

「我々がこの破壊的な疾患の新たな治療法を生み出すために標的にできるメカニズムを発見したことは本当にエキサイティングだ」
中心となった研究者lead investigatorのJ. Timothy Greenamyre, M.D., Ph.D.は言う
彼はピッツバーグ医学部で神経学のLove Family Professorであり、ピッツバーグ神経変性疾患研究所(PIND)のディレクターでもある
PINDの目的goalは神経変性疾患とそのメカニズムの研究に向けて統合された学際的アプローチであり、その目標aimは一変させるtransformingような最先端の科学で神経変性疾患に罹患した個々人の直接の利益となるような新たな治療法と診断法を目指すことである

「PINDの4人の研究者が共に研究したこの研究では、この協力によるアプローチの力に焦点を当てる」
Greenamyre博士はそのように付け加えた


PDの現在の治療法は症状を減らすことはできるが、疾患の悪化は不可避で進行を遅くすることはない
進行を遅くするか止めるため、科学者たちはなぜ、そしてどのようにしてニューロンが死んでいくのかを初めて特定した

変性しているニューロンにはα-シヌクレインというタンパク質が凝集した大きな塊が存在する
細胞で作られるα-シヌクレインが多過ぎるか(PARK4)、α-シヌクレインが突然変異を起こしていると(PARK1)、このタンパク質の毒性のためにPDを発症するリスクが高いことがわかっている

科学者たちはPDにおけるα-シヌクレインの蓄積が有害である理由が ミトコンドリアの正常な機能を乱すためであることも実証してきた
ミトコンドリアは細胞のエネルギーを作り出す『小さな発電所』である

今回の新しい研究でGreenamyre博士は共著者Roberto Di Maio, Ph.D.とPaul Barrett, Ph.D.が率いるPINDのチームと共に十分に確立されたPDのげっ歯類モデルを使い、α-シヌクレインがどのようにしてミトコンドリアの機能を乱すのかを正確に示した
彼らはα-シヌクレインがTOM20というミトコンドリアのタンパク質に結合してミトコンドリアが適切に機能することを妨げ、その結果としてエネルギーの産生は減少し、有害damagingな細胞の廃棄物が増加することを明らかにした
このα-シヌクレインとTOM20との相互作用は最終的に神経変性につながるのだとGreenamyre博士は説明する

次に彼らは動物実験での結果をPD患者の脳組織で確認した

「α-シヌクレインのミトコンドリアへの影響を例えると、完全に上手くいっている石炭燃料の発電所を極端に非効率的にするようなものだ
それは十分な電力を作るのに失敗するだけでなく、有害な汚染物質も大量に作り出す」


研究チームは培養した細胞を使い、α-シヌクレインによって引き起こされる毒性を防ぐための2つの方法を発見した
1つは遺伝子治療であり、ニューロンに強制的にTOM20を多く作らせることでニューロンはα-シヌクレインから保護された
もう1つはα-シヌクレインがTOM20にくっつかないように防ぐことができるタンパク質で、これもα-シヌクレインのミトコンドリアへの有害な影響を防いだ

これらのアプローチがPD患者を助けうるかどうかを確かめるためにはさらに多くの研究が必要なものの、Greenamyre博士は楽観的であり、それらの一方、または両方が最終的には現在不可避なPDの進行を遅くするか止めるためのヒトでの臨床試験につながるだろうと考えている


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aaf3634
α-Synuclein binds to TOM20 and inhibits mitochondrial protein import in Parkinson’s disease
パーキンソン病においてα-シヌクレインはTOM20に結合し、ミトコンドリアへのタンパク質インポートを阻害する

α-シヌクレインはミトコンドリアタンパク質の『輸入業』を破綻させる
α-Synuclein disrupts the mitochondrial protein import business

α-シヌクレインの蓄積とミトコンドリアの機能障害はほとんどのタイプのパーキンソン病の病理発生にとって重要central toであって、両者は重複しているように見える
しかし、この2つがどのようにしてお互いに関連するのかはわからないままだった

今回Di Maioたちは、野生型のα-シヌクレインの特定の形態、例えばオリゴマー形態やドーパミンで修飾された形態dopamine-modified formは高い親和性でミトコンドリアのTOM20という受容体に結合するが、単一分子や繊維状の形態のα-シヌクレインはTOM20に結合しないことを報告する

※dopamine-modified alpha-synuclein: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18172548

この結果としてミトコンドリアが機能するために必要なタンパク質のインポートが損なわれ、ミトコンドリアの老化につながり、呼吸respirationの低下と活性酸素種(ROS)の増加を示す

今回の研究は、この有害な相互作用とその下流の結果を防ぐための潜在的な方法にも光を当てる


要旨
Abstract

α-シヌクレインの蓄積とミトコンドリアの機能不全はパーキンソン病(PD)の病理発生に強く関連し、そしてその2つはつながりがあるように見える
ミトコンドリアの機能不全はα-シヌクレインの蓄積とオリゴマー化につながり、増加したα-シヌクレインはミトコンドリアを損なう
しかし、この双方向の相互作用の基盤は不可解obscureなままである

今回我々は、翻訳後に修飾された特定の形態のα-シヌクレインが高い親和性でTOM20(translocase of the outer membrane 20/ミトコンドリア外膜の転送装置)に結合することを報告する
TOM20はミトコンドリアタンパク質をインポートする機構の一つで、『前駆配列presequence』の受容体である

TOM20と修飾α-シヌクレインとの結合は、TOM20とその共受容体TOM22との相互作用を妨害し、ミトコンドリアタンパク質のインポートを損なう
その結果としてミトコンドリアの呼吸に欠陥が生じ、ROSの産生が増加し、ミトコンドリアの膜電位membrane potentialが失われる

PD患者の死後の脳組織を検査したところ、黒質線条体nigrostriatalのドーパミン作動性ニューロン内のα-シヌクレインとTOM20の異常な相互作用が存在し、それがインポートされるミトコンドリアタンパク質の喪失と関連することが明らかになった
これによりヒトのパーキンソン病でもこの病原性pathogenicのプロセスを確認した

PDのin vivoモデルにおいて、内因性endogenousなα-シヌクレインの適度modestのノックダウンは、ミトコンドリアタンパク質のインポートを維持するのに十分だった

さらに、in vitro系では、TOM20の過剰発現、またはミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドは有益な効果があり、ミトコンドリアタンパク質のインポートは保持された

この研究はPDにおける病原性のメカニズムを特徴付け、野生型αシヌクレインの有害な形態を同定し、神経を保護するための潜在的かつ新たな治療戦略を明らかにした



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18172548
"Dopamine-modified α-synuclein blocks chaperone-mediated autophagy"
『ドーパミン修飾α-シヌクレイン』は『シャペロンを介するオートファジー(CMA)』を阻害する

Reference 18
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15817478
Reversible inhibition of alpha-synuclein fibrillization by dopaminochrome-mediated conformational alterations.
ドーパミンが自己酸化して形成されるドーパミノクロームdopaminochromeは、α-シヌクレインの125-129残基(YEMPS)との相互作用により立体構造を変化させて微小繊維化を可逆的に阻害し、球状のオリゴマーを形成する

Reference 19
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15790526
Synuclein, dopamine and oxidative stress: co-conspirators in Parkinson’s disease?

Reference 20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14556942
3,4-Dihydroxyphenylacetaldehyde is the toxic dopamine metabolite in vivo: implications for Parkinson’s disease pathogenesis.

※3,4-dihydroxyphenylacetaldehydeはドーパミンの代謝産物(DOPAL)

パーキンソン病を引き起こす新たな遺伝子が発見される

2016-06-11 06:06:33 | 
New gene shown to cause Parkinson's disease

Third gene definitely linked to disease in patients from North America, Asia

June 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160606115903.htm


(矢印はシナプス小胞synaptic vesicleというニューロン内の小さな袋sackを指している
シナプス小胞はドーパミンのような神経伝達物質がニューロンからニューロンへと分泌される前に貯蔵される場所である

Credit: Image courtesy of Northwestern University)

ノースウェスタン大学の科学者たちはパーキンソン病の新たな原因を明らかにした
TMEM230という遺伝子の突然変異は、この最も一般的な運動障害の確認された症例と決定的に関連する三番目の遺伝子であるようだ

彼らはNature Genetics誌で発表された研究において、北アメリカとアジアのパーキンソン病患者でTMEM230の突然変異が原因である症例についてのエビデンスを提供する
また、彼らはこの遺伝子がニューロンの神経伝達物質であるドーパミンの(シナプス小胞への)詰め込みpackagingに関与するタンパク質を産生することを実証した
ドーパミン産生ニューロンの喪失はパーキンソン病の決定的な特徴である

全体的に見て今回の研究結果は脳内でパーキンソン病がどのようにして発症するのかを説明するための新たな手がかりをもたらし、それらの手がかりは将来の治療への道しるべとなるかもしれない
現在パーキンソン病には何の治療もなく、原因もほとんど知られていない

「これまでの研究でパーキンソン病は様々な環境的な要因へと関連付けられてきたが、既知の唯一直接的な原因は遺伝である」
ノースウェスタン大学ファインバーグ・メディカルスクールのTeepu Siddique博士は言う

「多くの遺伝子がパーキンソン病を引き起こすと主張されてきたが、それらは確認validatedされていなかった
我々はこの新しい遺伝子の突然変異が病理学的かつ臨床的に証明されたパーキンソン病の症例につながることを示す」

パーキンソン病の症例の約15パーセントが遺伝的性質geneticsによって起きると考えられており、それは主にSNCA(α-シヌクレインをコードする)とLRRK2という2つの遺伝子の突然変異によるものである
Siddiqueによると、他の遺伝子はパーキンソン症候群/parkinsonism(運動症状を伴う神経学的疾患)の特徴と関連付けられているに過ぎないという

※GBA遺伝子など(http://www.nejm.jp/abstract/vol361.p1651

TMEM230の突然変異がパーキンソン病につながるというノースウェスタン医学部のチームによる証明は、世界中の協力者たちと実施された20年にも及ぶ研究の成果である


この遺伝子はどのようにして発見されたのか
How they uncovered the gene

このプロジェクトは1996年、Siddiqueと筆頭著者のHan-Xiang Deng博士がパーキンソン病の典型的な症状を示す15人を含む家族の調査を開始した時から始まった
共著者のAli Rajput(カナダ・サスカチェワン大学)によって提供されたDNAサンプルを使い、SiddiqueとDengはパーキンソン病の13人を含む家族の構成員65人に対してゲノム全体の分析を実施した
この高い罹患率を説明できる共通した変異を発見することを期待してのことである

彼らは染色体20番の遺伝子141個を含む狭い領域に研究の焦点をしぼり、全エキソンの配列を決定する技術/whole exome sequencing technologyを使って遺伝子の変異variationを比較した
科学者たちはそこに9万を越える変異体variantを発見し、その中から疾患を引き起こす変異としてTMEM230遺伝子を明らかにした

Dengが説明する
「これはまったく新しい遺伝子だったため、我々はその機能を知らなかった
そのため我々は様々な研究を実施し、この遺伝子がコードするタンパク質がどの場所に存在し、何をしているのかを解明しようとした」

研究の結果、彼らはTMEM230がニューロン内のシナプス小胞という小さな袋sackの膜を貫通していることを発見した
シナプス小胞は神経伝達物質がニューロンからニューロンへと分泌される前に貯蔵される場所である

Siddiqueは言う
「現在のパーキンソン病に対する対症療法は、シナプス小胞によって分泌される神経伝達物質ドーパミンを増加させるものが中心である
ドーパミンは脳の様々な場所に投射するニューロンに分泌され、それは運動や気分、様々な器官系organ systemを制御している
つまりパーキンソン病で影響を受ける部分である」


科学者たちはこのTMEM230というタンパク質がシナプス小胞の動きに関与するという仮説を立てた

「我々は小胞輸送の欠陥がパーキンソン病の鍵となるメカニズムであると考えており、それはこの変異を持つ症例に関してだけでなく疾患の大部分に共通する経路である
SNCAとLRRK2、そしてTMEM230という原因として証明authenticatedされた3つの遺伝子は、全てシナプス小胞に集中する」
Dengは言う

「我々の新たな研究結果は、シナプス小胞の輸送の正常化が将来の治療を開発するための戦略となる可能性を示唆している
我々はこの決定的な経路を促進する薬剤を開発できるだろう」


様々な集団でTMEM230を立証する
Verifying the gene across populations

重要なことに、研究チームは北アメリカや遠く離れた中国の別の家族の症例でもTMEM230遺伝子の変異を発見した

彼らはこれらの患者が疾患の臨床的な特徴(振戦tremor、緩慢slownessな動き、硬直stiffness)、そして脳内の病理学的なエビデンス(ドーパミンニューロンの喪失、ニューロン内部のタンパク質の異常な蓄積)、その両方を備えていることを立証verifyした

「このパーキンソン病を引き起こす遺伝子は北アメリカの一集団に限定されるものではなく世界中に及んでおり、様々な民族や環境の状態で見られる
この変異はそれほどに強力である」


SiddiqueとDengはTMEM230の変異がどのようにして疾患を引き起こすのかをマウスモデルを使って研究しようと計画している
Siddiqueはファインバーグで神経学・細胞分子生物学の教授であり、Dengは神経学の研究教授research professorである


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3589
Identification of TMEM230 mutations in familial Parkinson's disease.
家族性パーキンソン病におけるTMEM230突然変異の同定

Abstract
パーキンソン病は二番目に多い神経変性疾患であり、効果的な治療法は存在しない
その大部分は散発的sporadicで、病因etiologyは不明である
まれな家族性のタイプの遺伝学的な研究から典型的なパーキンソン病またはパーキンソン症候群と関連する複数の遺伝子における変異が明らかにされてきたが、パーキンソン病の病理発生pathogenesisはほとんど不明である

今回我々は、20番染色体短腕(20pter-p12)上に存在する、常染色体autosomal優性dominantの臨床的に典型的かつ病理学的にレヴィ小体で確認されたパーキンソン病に関する遺伝子座を報告し、TMEM230を疾患原因遺伝子として同定する

※pter: petite(短腕)+ terminal(末端)

我々はTMEM230がニューロン内のシナプス小胞を含めた分泌/リサイクル小胞の膜貫通タンパク質をコードすることを示す
疾患と関連するTMEM230突然変異体mutantは、シナプス小胞の輸送を損なう

我々の研究データはニューロン内シナプス小胞の膜貫通タンパク質突然変異体が病因としてパーキンソン病と関連するという遺伝学的エビデンスを提供する
それはパーキンソン病の病理発生メカニズムの理解ならびに合理的rationalな治療法の開発と密接な関係implicationsがある


http://www.nature.com/ng/journal/vaop/ncurrent/carousel/ng.3589-F1.jpg
Figure 1: パーキンソン病患者のTMEM230突然変異



(a)
様々な種において進化的に保存されたTMEM230タンパク質のアミノ酸を示す
ヒトTMEM230のアミノ酸と同一のアミノ酸は黒字で示し、同一ではないアミノ酸は赤字で示すdenoted



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=TMEM230
GeneCards Summary for TMEM230 Gene
>TMEM230 (Transmembrane Protein 230/膜貫通タンパク質230) はタンパク質をコードする遺伝子である

>以下、TMEM230遺伝子に関して利用できるデータは存在しない
>Entrez Gene Summary , UniProtKB/Swiss-Prot , Tocris Summary , Gene Wiki entry , PharmGKB "VIP" Summary , fRNAdb sequence ontologies , piRNA Summary



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5dc8d2df5cf3c367e14b14a84eac884e
β-グルコセレブロシダーゼをコードするGBA1遺伝子の突然変異は、α-シヌクレインのリサイクルに問題を起こす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2キナーゼは特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
RAB7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160412091004.htm
パーキンソン病のレヴィ小体型認知症を顎下腺のα-シヌクレインで診断する
 

Aβは脳内の天然の抗生物質である

2016-05-28 06:06:17 | 
Human amyloid-beta acts as natural antibiotic in the brain: Alzheimer's-associated amyloid plaques may trap microbes

May 25, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160525161351.htm


(培地でβ-アミロイド微小繊維が酵母から広がり、カンジダ・アルビカンスを捕らえている画像

Credit: D.K.V. Kumar et al. / Science Translational Medicine (2016))


マサチューセッツ総合病院(MGH)の新たな研究によると、ベータアミロイド・プラーク/beta-amyloid plaqueという形でアルツハイマー病患者の脳内に蓄積するアミロイドベータタンパク質(Aβ)は『正常な自然免疫系の一部』であるというさらなる証拠がもたらされた
自然免疫系は病原体による感染に対する人体の防御の最前線である

Science Translational Medicine誌で発表された彼らの研究はマウスと線虫、培養されたヒト脳細胞で実施されたもので、致命的となりうる感染に対してAβの発現は保護的であることが明らかになった
この研究結果は新たな治療戦略につながる可能性があり、そして同時に、患者の脳内からアミロイド・プラークを除去するようにデザインされた治療への限界を示唆する

「アルツハイマー病における神経変性は、Aβという分子の異常なふるまいによって引き起こされると考えられてきた
Aβは患者の脳内でアミロイド・プラークという微小繊維状の頑丈toughな構造へと凝集することが知られている」
論文の共責任著者であるRobert Moir, MDは言う
彼はマサチューセッツ総合病院-マサチューセッツ神経変性疾患総合研究所/MassGeneral Institute for Neurodegenerative Disease (MGH-MIND)の遺伝学加齢研究ユニットに所属している

「この支配的な見方は30年以上もの間、治療戦略と薬剤開発を導いてきた
しかし我々の研究結果は、この見方が不完全だったことを示唆している」


MoirがMGH-MIND遺伝学加齢研究ユニットのディレクターであるRudolph Tanzi, PhDと共に主導した2010年の研究(※)は、Aβが抗菌ペプチド/antimicrobial peptide (AMP) の性質qualityを多く持つというMoirの観察から生まれたgrow outものだった
AMPは広範囲な病原体から防御する自然免疫系の小分子タンパク質である

※"The Alzheimer's Disease-Associated Amyloid β-Protein Is an Antimicrobial Peptide"

彼らはその研究で、合成したAβをLL-37という既知のAMPと比較し、Aβが複数の病原体の増殖を阻害することを発見した
その効果はLL-37と同等か、LL-37よりも優れていることすらあった
アルツハイマー病患者の脳内のAβは、培養カンジダイースト菌の増殖も抑制した
その後の別のグループによる研究ではインフルエンザウイルスとヘルペスウイルスに対する合成Aβの作用も実証された

※イーストyeast: サッカロミセス科Saccharomycetaceaeの真菌類を表す一般名

今回の研究ではヒトAβの生物モデルにおける抗菌作用を初めて調査した
研究者たちは、ヒトAβを発現するトランスジェニックマウスが通常のマウスよりも脳内へのサルモネラ菌Salmonellaによる感染後も著しく長く生きることを初めて明らかにした
一方、アミロイド前駆体タンパク質/amyloid precursor protein (APP) を持たないマウスは急速に死亡した

トランスジェニックなAβ発現は、線虫であるC.エレガンスでもカンジダ菌やサルモネラ菌による感染から保護するようだった
同様に、ヒトAβの発現は培養ニューロン細胞をカンジダから保護した
事実、生きている細胞で発現させたヒトAβは、以前の研究で合成されたAβよりも感染に対して1000倍も強力であるようだ


このような優位性は、アルツハイマー病の病理pathologyの一部と考えられてきたAβの性質に関係があるように思われた
つまり、互いに結合していわゆるオリゴマーとなり、ベータアミロイド・プラークへと凝集する小分子の傾向propensityである

※オリゴマーoligomer: 少数oligo + 化合体mer

抗菌ペプチド(AMP)は複数のメカニズムを通じて感染と戦うが、基本となるプロセスの一つはオリゴマーを形成して微生物の表面に結合し、互いに凝集clumpするというものである
それにより病原体が宿主の細胞に結合するのを防ぎ、同時に、細胞膜を破綻させて微生物を殺すのである

以前の研究で使われた合成Aβの調合preparationは、オリゴマーを含んでいなかった
しかし、今回の研究ではオリゴマー状のヒトAβがさらに強い抗菌活性を示しただけでなく、ベータアミロイド・プラークを形成する微小繊維という形態への凝集が微生物を捕えて閉じ込めるentrapことがマウスと線虫モデルの両方で観察された


Tanziは次のように説明する
「抗菌ペプチド/AMPは、軽症minorから重症majorまで広範囲の炎症性疾患に関与することが知られている
例えばLL-37はAβ抗菌活性の我々のモデルだが、これは関節リウマチ、狼瘡lupus、アテローム性動脈硬化症など人生後期の複数の疾患に関与している
それらの病態ではAMP活性の調節が失われて炎症の持続を引き起こすが、そのような調節の異常dysregulationがアルツハイマー病でもAβによる神経変性作用の一因である可能性がある」


Moirがさらに付け加える
「我々の研究結果は興味深い可能性を提案する
つまりアルツハイマー病の病理は脳が病原体による攻撃を受けていると『気付く』時に始まるのかもしれない
真に感染が関与しているかどうかを決定するためにはさらなる研究が必要だが、
実際、自然免疫系の炎症性の経路は潜在的な治療標的であるようだ

もし我々のデータが立証されれば、それはベータアミロイド・プラークを完全に除去することを目指す治療法へ警告する必要性の根拠となるwarrant
ベータアミロイドを抑制dial downはするが一掃wipe outはしないことを目標とするアミロイドベース療法が、ベターな戦略であるかもしれない」


Tanziは言う
「我々のデータは全て実験モデルだが、次の重要なステップはアルツハイマー病患者の脳内の微生物を調べることである
それが保護的な応答としてアミロイド蓄積を引き起こし、後に神経細胞の死と認知症につながる
もし我々が容疑者culpritを明らかにできれば(それは細菌、ウイルス、真菌かもしれない)、我々はそれらをアルツハイマー病を初期primaryに防ぐための治療的な標的とすることができるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aaf1059
Amyloid-β peptide protects against microbial infection in mouse and worm models of Alzheimers disease.

『悪いやつ』だったβ-アミロイドの更生/復権
Rehabilitation of a β-amyloid bad boy

Aβというタンパク質はアルツハイマー病(AD)においてニューロンの細胞死を引き起こすと考えられている
AβはAD患者の脳内に、疾患の顕著な特徴である不溶性の凝集体aggregateを形成する
Aβとその凝集する傾向は本質的intrinsicallyに異常であると広く見られてきた

しかしながら、Kumarらによる新たな研究で、Aβは脳を感染から保護するための生まれつき備わった抗生物質natural antibioticsであることが示される
非常に驚くべきことに、Aβ凝集体は細菌病原体を捕えてtrap閉じ込めるimprison

ADにおいてAβが実際の感染と戦っているのか、それとも誤って感染と認識されたものと戦っているのかは不明のままである
しかしながら、いずれにしてもin any case、これらの研究結果はADを治療するための新しい潜在的な薬剤標的としての炎症性の経路を明らかにする


Abstract
アミロイド-βペプチド/amyloid-β peptide (Aβ) はアルツハイマー病の病において鍵となるタンパク質である

我々は以前in vitroでAβが抗菌ペプチドであることを示唆するエビデンスを報告した
今回我々はマウス・線虫・培養細胞ADモデルにおいてAβ発現が真菌感染と細菌感染から保護するというin vivoのデータを提供する
我々は本質的に病理的な性質であると伝統的に考えられてきた反応behaviorであるAβのオリゴマー化oligomerizationが、Aβペプチドの抗菌作用に必須である可能性を示す
まとめると、我々のデータは、可溶性のAβオリゴマーがヘパリン結合ドメインを介して微生物細胞壁の炭水化物carbohydrateに優先してfirst結合するというモデルと一致する

Aβから原繊維(プロトフィブリルprotofibril)が生じることにより、宿主細胞への病原体の接着は阻止された
β-アミロイドの微小繊維(フィブリルfibril)の広がり/増加propagateは細菌の凝集反応agglutinationを仲介し、結果として、結合していないunattached微生物は閉じ込められるentrapment

我々のモデルと一致して、トランスジェニック5XFADマウスの脳へのネズミチフス菌Salmonella Typhimuriumによる感染は結果として急速なシーディングを引き起こし、β-アミロイド沈着は加速された
β-アミロイドの沈着は、侵入したネズミチフス菌the invading bacteriaの近くで共に集中していたclosely colocalized

我々の研究結果は、β-アミロイドが自然免疫と感染において保護的な役割を演じる可能性、もしくは、病原体によるものではない/無菌のsterile炎症性の刺激がアミロイド症amyloidosisを促進するかもしれないという興味深い可能性をもたらす
これらのデータは保護的であり/有害でもあるというAβの二重の役割を示唆する
それは他の抗菌ペプチドに関してこれまで記述されてきたのと同様である



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141020104930.htm
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染はアルツハイマーのリスクが2倍



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cd647de22c38a65141f364bcf8118b36
真菌の中には血液脳関門を超えることが可能なものもある



関連サイト
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/10270
アルツハイマー病患者の脳組織が真菌に感染していた



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160223074923.htm
アルツハイマー病モデルマウスからT細胞、B細胞、NK細胞をなくすと、βアミロイドの蓄積が2倍になった
完全な免疫系のアルツハイマーマウスではB細胞の抗体が脳に蓄積し、ミクログリアによるAβの除去を助けていた



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da5b1460551c4cedbd472dd8037649d4
アルツハイマー病の3つのサブタイプ、炎症性/Inflammatory、非炎症性/Non-inflammatory、皮質性/Cortical



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する



関連サイト
http://dislocon.blog.fc2.com/blog-entry-330.html
>PLoS Oneの 「The Alzheimer's Disease-Associated Amyloid β-Protein Is an Antimicrobial Peptide」 の Discussion

>アミロイドβペプチドは、細菌性髄膜炎の主な原因であるS. pneumoniae(肺炎連鎖球菌)や中枢神経系カンジダ症の最も一般的な原因であるカンジダ・アルビカンスを含む12種類の臨床的に重要な病原体の内8種類を抑制した。
>もしアミロイドβの通常の機能が抗微生物ペプチド(AMP)として機能することにあるのなら、このペプチドの欠如は感染に対する脆弱性の増加をもたらすかも知れない。
>我々の知る限りでは、ヒトでの免疫欠乏と低いアミロイドβレべルとの関係は、これまでは検討されていない。しかし、内因性の齧歯類(本来の)アミロイドβを生成するプロテアーゼを欠いたノックアウトマウスでは、病原体に対する感染性が増加しているように思われる。
>低レベルのアミロイドβしか産生しない BACE1 ノックアウトマウスと、BACE1- と BACE2の何れも欠きアミロイドβを産生しないダブルノックアウトマウスの死亡率はそれぞれ40%と60%である。これらの動物を無菌環境で飼育すると生存率は野生型のもの(95%以上)に戻る。この免疫不全の病因をずっと調べているが、未だに確認されていない。
>つい最近、アミロイドβ42を低下させる薬剤 Tarenflurbil(Flurizan)の臨床試験では、この薬剤を投与された患者は感染率が有意に増加していた。
 

Aβによるシナプスの損傷にはPKCαが必要

2016-05-18 06:06:28 | 
Genetic variations that boost PKC enzyme contribute to Alzheimer's disease

May 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160510143654.htm


(アルツハイマー病と関連するPKCタンパク質の突然変異の一つは、PKCの活性を促進する空洞cavityを形成する
Credit: UC San Diego Health)

アルツハイマー病ではアミロイドβタンパク質のプラークが脳内に蓄積してニューロン間の接続に損傷を与える
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部とハーバードメディカルスクールの研究者は、
アミロイドβによるニューロン間接続の損傷にはタンパク質キナーゼCアルファ/Protein Kinase C alpha (PKCα) が必要であることを明らかにした
また、彼らはアルツハイマー病患者の中にPKCαの活性を促進する遺伝子多型も確認した

Science Signalin誌で5月10日に発表された今回の研究は、アルツハイマー病の新たな治療標的をもたらすかもしれない

「最近になるまで、PKCは細胞の生存を助け、過剰なPKCの活性は癌につながると考えられていた
そのような思い込みassumptionに基づいて多くの企業がPKC阻害剤を開発して癌の治療薬としてテストしたが、それらはうまくいかなかった」
UCサンディエゴ医学部で薬理学の教授で共首席著者co-senior authorのAlexandra Newton, PhDは言う7

「我々はその正反対が真実であることを発見した
PKCは細胞の増殖と生存の『ブレーキ』として働く
なのでPKCが不活化するとむしろ癌細胞にとって有利になる」

「我々の今回の研究では、PKCの過剰すぎる活性も良くないということを明らかにする
それは神経変性を促進するからだ
このことは癌の臨床試験で失敗した薬剤がアルツハイマー病の新たな治療の機会をもたらすことを意味する」


この研究は三方向からの協力によるものだった
PKCの専門家であるAlexandra Newtonと、
神経科学のRoberto Malinow, MD, PhD (UCサンディエゴ医学部で神経科学と神経生物学の名誉教授)、
そしてゲノミクスではRudolph Tanzi, PhD (ハーバードメディカルスクールで神経学の教授) が協力した

Malinowのチームは、PKCα遺伝子を失ったマウスはアミロイドβが存在していても機能的には正常であることを明らかにした
彼らがPKCαを回復させると、アミロイドβは再びニューロンの機能を低下させた
言い換えると、アミロイドβは
PKCαの活性がなければ脳機能を阻害できないのである


Tanziのチームは遅発性アルツハイマー病の患者1,345人とその家族410組のデータベースから、
Tアルツハイマー病になった患者と家族だけで見られる遺伝子の突然変異を探すべくデータベースを検索した
分析の結果、彼らは5つの家族でアルツハイマー病と関連するPKCαの3つの多型variantsを発見した
研究者たちはさらに、この3つの多型をラボの細胞系統で再現することにも成功した
それぞれの例でPKCαの活性は増大したのである

この研究ではPKCαのまれな突然変異を持つ5つの家族だけを扱ったが、PKCαの活性に影響する要因は数多くあるとNewtonは言う
間接的にPKCの活性を加速したり阻害したりする遺伝的な多型が他にも多数存在する可能性があり、したがってそれらがアルツハイマー病の発症のしやすさにも影響しうると彼女は考えている

「我々はこの病理に関与する分子をさらに多く明らかにしたいと望んでいる」
Malinowは言う

「このメカニズムで我々が理解できるステップが多くなればなるほど、
より多くのアルツハイマー病の治療標的を我々は見つけることになるだろう」


http://dx.doi.org/10.1126/scisignal.aaf6209
Gain-of-function mutations in protein kinase Cα (PKCα) may promote synaptic defects in Alzheimers disease.
PKCαの機能獲得変異はアルツハイマー病におけるシナプス欠陥を促進する


アルツハイマー病におけるPKCαバリアント
アルツハイマー病(AD)の特徴は神経変性ならびにニューロン機能の損傷であり、認知機能が徐々に失われる
早発性ADは遺伝子の突然変異と関連があるが、アミロイドβというタンパク質の蓄積は早発性ADと遅発性ADの両方で生じる

遅発性ADと診断された家族の大規模なコホートで遺伝学を調査したAlfonsoらによって、PKCαの活性化変異がアルツハイマー病と関連することが明らかにされた

薬理学的にPKCαを阻害するかPKCαをコードする遺伝子を削除すると、マウスの海馬組織のスライスにおけるアミロイドβによるシナプス活性の損傷が阻止された

我々の研究は、遅発性ADの患者の中にPKCαのバリアントvariantがアミロイドβの病理的な影響を仲介する者がいることを示唆する


Abstract
アルツハイマー病は進行性の痴呆症であり、脳内のシナプス変性とアミロイドβ(Aβ)の蓄積が特徴である

410家族中の遅発性AD(LOAD)1345人の全ゲノム配列決定を通じて、我々はPKCαをコードするPRKCA遺伝子に浸透度の高い3つのバリアントhighly penetrant variantを5家族に発見した

LOADと関連する3つのバリアント全てが、野生型PKCαと比べて触媒活性の増大を示した(genetically encoded PKC activity reporterを使い、live-cell imaging experimentsで評価した)

マウスからPRKCAを削除するか、Aβ前駆体を発現するウイルスCT100を感染させたマウス海馬スライスにPKCアンタゴニストを加えた実験により、
Aβによって引き起こされるシナプス活性の低下にはPKCαが必要であることが明らかになった

CT100を発現するPRKCA−/−のニューロンでPKCαを導入するとシナプス抑圧depressionは救済されたが、PDZドメインと相互作用する部分を欠くPKCαではそうはならなかった
これはPKCαをシナプスへと移動bringさせる足場的な相互作用が、そのAβの影響の仲介に必要であることを示唆する
したがって、PKCα活性の促進はADの一因となる可能性があり、それはおそらくAβのシナプスへの作用を仲介することによるものだろう

対照的に、PKCα活性の減少は癌と関連がある
したがって、これらの発見はPKCαの活性の注意深いバランスの維持の重要性を補強する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4caa01b42e8bf10c3f358bc8078dc647
PKCαはビタミンEの両方の種類と結合するが、オリーブ油とひまわり油に多いα-トコフェロールはPKCαの作用を阻害し、ダイズ油・キャノーラ油・トウモロコシ油に多いγ-トコフェロールはPKCαの作用を増加させる
γ-トコフェロールは肺の炎症を増大させて喘息リスクになりうる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150309082934.htm
癌で見られたPKCの突然変異のほとんどは機能喪失変異だった
患者から得られた結腸癌の細胞系統でPKCβを修正すると、anchorage-independent growthは抑制された



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150122132736.htm

PKCβは腫瘍抑制因子だった
結腸癌患者の細胞系でPKCβの機能喪失変異をCRISPRによるゲノム編集で修正すると、
異種移植モデルxenograft modelではanchorage-非依存的な増殖は抑制され、腫瘍の成長は低下した



関連サイト
http://www.ekouhou.net/
αセクレターゼは、無毒性のシナプス形成性の可溶性APP-αを生成する。蓄積された監察結果により、プロテインキナーゼCアイソザイム-αおよび-εは、直接的にAPPのα-セクレターゼ媒介性切断を直接的に活性化し、および/または細胞外シグナル調節キナーゼのリン酸化を介して間接的に活性化する。


パーキンソン病を発症する20年前から何が起きているのか

2016-05-01 06:06:02 | 
Study shows how neurons decline as Parkinson's develops

Electrical activity dwindles in cells long before movement issues become visible

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428094510.htm


(A new study shows how neurons decline as Parkinson’s develops.

Credit: Image courtesy of University of Texas Health Science Center at San Antonio)

こんなことを聞くと動揺するだろうか?

「もしあなたがパーキンソン病を発症しても、それを知ることなく20年間過ごすのかもしれない
 そしていったん症状が現れると、もう治療するには遅すぎる」

では、パーキンソン病の根本的な原因の治療を、早くから始められるとしたらどうだろう?


テキサス大学(UT)医学部保健学/Health Scienceサンアントニオ・センターの研究者たちは、パーキンソン病に冒された細胞の変化を疾患の様々な段階、特に症状が現れるずっと前の状態からの変化を研究している
その変化についての研究結果はJournal of Neuroscience誌の4月号で発表される

この研究の希望として2つの要素がある
1つは疾患を途中で止めるための薬剤を調剤formulateするために利用できる知識を得られることであり、
もう1つはパーキンソン病の患者が健康で豊かな人生を送ることができる時間を延ばす方法を知ることである


隠れた変化
Hidden changes

「パーキンソン病という疾患が確立take holdしていない間に、一体どのような変化が起きているのか?
その点を我々は初めて詳しく調べたget a look at」
首席著者senior authorのMichael Beckstead, Ph.D.は言う
彼は生理学の助教授であり、UT保健学センターBarshop加齢長寿研究所の一員でもある

パーキンソン病は黒質という中脳の一部に存在するドーパミンニューロンの変性と細胞死が特徴である
保健学センターの研究者たちは、そのニューロンだけに遺伝子の突然変異を持つマウスを研究した

この『MitoPark』というマウスは黒質のドーパミンニューロンだけでミトコンドリアmitochondrialの活性が妨げられており、
細胞のエネルギーを作り出すミトコンドリアが損なわれているためにドーパミンニューロンが十分なエネルギーを作ることができなくなっている


ヒトのパーキンソン病を真似る
Mimics human Parkinson's

マウスは最初、完全に正常である
しかし何週間か何ヶ月か経つにつれて突然変異はドーパミンニューロンを徐々に病ませていき、ニューロンはやがて死に絶える

「このマウスは変化が一夜のうちに起きるようなものとは違い、進行性のモデルprogressive modelである」
Beckstead博士は言う

「これによりマウスはヒトのパーキンソン病と似たものになる
ヒトのパーキンソン病は症状が現れるようになるまでおよそ20年ぐらいsomewhereの期間がかかるプロセスであると考えられている」

MitoParkマウスで振戦tremorのような症状が明らかになり始めるのは約20週齢からである
UT保健学センターの研究ではその前の時点でのドーパミンニューロンの機能的な状態を評価し、6~10週齢、11~15週齢、16週齢以上の機能を互いに比較した


機能低下のタイムライン
Timeline of decline

これらの比較から研究者はドーパミンニューロンの機能低下のタイムラインtimelineを構築した
彼らは以下の3つのカテゴリーで変化を観察した

・ドーパミンニューロンの大きさの縮小
・ニューロン間のコミュニケーションの減少
・ニューロンの電気活動electrical activityの低下

「我々が計測した機能の、ほとんど全てが低下した」
Beckstead博士は言う

「我々が研究した全てがどれほど変化したかというのは、本当に驚くべきことだった
それは全体的な低下で、しかもそれらの変化が生じたのはすべてマウスの症状が現れる前であり、その動きにはどんな種類の欠陥も検出できなかった」


パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたマウスには、もう一つ別の現象が観察された
ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まったのである

「これは疾患の進行では遅くに現れた
我々はこれをニューロンが低下した電気活動を補おうとしているのだと考えている
それはおそらくヒトがパーキンソン病にかかった時にドーパミンニューロンが30パーセント以上死に絶えても長い間症状が出ずに済む理由だろう」

この研究結果はすぐに臨床的な治療へと応用translateされるわけではないが、このような発見はいつかパーキンソン病の根本的な原因を理解して治療できるかもしれないという見込みをもたらす
現在の治療はすべて対症療法symptomaticであり、それらは動きにくさを改善して患者を楽にするためのものである

「疾患のプロセスに真に影響する治療は現在まったく存在しないが、その理由はこの疾患の初期に何が起きているのかを我々が理解していないからだ
我々が行ったような研究はそのような知識の不足gapを満たすのに役立つだろう」


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.1395-15.2016
Dopaminergic Neurons Exhibit an Age-Dependent Decline in Electrophysiological Parameters in the MitoPark Mouse Model of Parkinson's Disease.
パーキンソン病モデルのMitoParkマウスにおいてドーパミン作動性ニューロンは電気生理学的パラメーターの低下を加齢依存的に示す


Abstract
黒質ドーパミン作動性ニューロンは報酬と関連する行動や自発的な行動など日々の行動で重要な役割を果たしており、このニューロンの喪失はパーキンソン病の主な特徴である

長い間ミトコンドリアの機能不全がパーキンソン病と関連付けられてきており、多くの動物モデルではミトコンドリア機能を破綻させることでパーキンソン病の特徴を誘発させる

MitoParkマウスは最近開発されたパーキンソン病の遺伝学的モデルであり、ドーパミン作動性ニューロン特異的に ミトコンドリア転写因子A/mitochondrial transcription factor A(mtTFA)を欠く
このモデルは黒質ドーパミンニューロンの選択的で進行性の喪失などのパーキンソン病の多くの特徴を再現mimicする
このマウスの運動障害はl-DOPAで改善し、加えて封入体inclusion bodyの発達が見られる

今回我々は脳スライス電気生理学を用いて、MitoParkマウスの黒質ドーパミン作動性ニューロンにおける機能低下のタイムラインを構築した

MitoParkマウスの黒質ドーパミン作動性ニューロンは細胞の静電容量capacitanceの低下と入力抵抗input resistanceの上昇を示し、加齢とともに重症化する

MitoParkではペースメーカー発火の規則正しさpacemaker firing regularityが破綻disruptし、発火と関連するイオンチャネルの伝導力conductanceが低下する

加えてMitoParkマウスのドーパミン作動性ニューロンは内因性ドーパミンレベルとドーパミン分泌が進行性の低下を示し、D2ドーパミン受容体を介する外向き電流outward currentが低下していく

興味深いことに、年老いたMitoParkマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される

この結果は、運動障害が起きる前から生じ、または加齢時の運動障害と同時に起きるMitoParkドーパミン作動性ニューロンに固有intrinsicの性質かつニューロンのシナプス的な性質における変化を描写する

これらの発見は、前駆状態prodromalのパーキンソン病を標的とする治療に向けた将来の調査に知識をもたらす助けになる可能性がある



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160412091004.htm
パーキンソン病のレヴィ小体型認知症を顎下腺のα-シヌクレインで診断する
病理解剖autopsyで確認、生検biopsyでも確認する予定



関連サイト(PDF)
https://www.astellas.com/jp/byoutai/other/reports_h21/html/index_2.html
パーキンソン病原因遺伝子産物PGAM5がミトコンドリアの機能を維持する分子メカニズム

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pgen.1001229
The Loss of PGAM5 Suppresses the Mitochondrial Degeneration Caused by Inactivation of PINK1 in Drosophila




http://dx.doi.org/10.1038/ncomms5930
Genetic deficiency of the mitochondrial protein ​PGAM5 causes a Parkinson’s-like movement disorder

>Contrary to a previous study in Drosophila(26, we found ​PGAM5 protects DA neurons from degeneration, presumably by promoting ​PINK1 stabilization.
(以前のハエでの研究とは反対に、我々はPGAM5がドーパミンニューロンを変性から保護することを発見した
それはおそらくPINK1の安定化を促進することによるものだろう)

http://www.nature.com/ncomms/2014/140915/ncomms5930/fig_tab/ncomms5930_F3.html
Figure 3: Inside-out ​PINK1 translocation model.

PGAM5はミトコンドリア内膜IMMタンパク質で、PARLを含めたミトコンドリアプロテアーゼによる分解からPINK1を保護する
脱共役剤のカルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン/carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazone(CCCP)で処置した後、PGAM5によって保護された完全長full-lengthのPINK1はミトコンドリア外膜OMMに移動するが、PGAM5はIMM上に留まる
PGAM5が存在しない状態でのPINK1はPGAM5による保護を失い、切断されて分解される
CCCPはPGAM5による安定したPINK1のIMMからOMMへのトランスロケーションを引き起こしうる
PINK1はそこでパーキンと結合associateし、結果としてp62リクルートと関連するユビキチン化イベントが生じて、最終的にLC-3を介するマイトファジーmitophagyに至る



http://dx.doi.org/10.15252/embr.201540514
(Patho‐)physiological relevance of PINK1‐dependent ubiquitin phosphorylation

 



血液脳関門を突破する方法が報告される

2016-04-10 06:06:59 | 
Blood-brain barrier breakthrough reported by researchers

April 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160408132649.htm


(FDA承認薬のLexiscanはアデノシン受容体を活性化させることが明らかになった
アデノシン受容体はBBB細胞上に発現している

Credit: Dr. Margaret Bynoe, College of Veterinary Medicine at Cornell University)

コーネル大学の研究者は、血液脳関門/blood brain barrier(BBB)を突破penetrateする方法を発見した
これは近いうちにアルツハイマー病や化学療法抵抗性の癌のような疾患を治療する薬剤を脳内へ直接送り届けることを可能にするかもしれない


BBBは内皮細胞endothelial cellの層であり、脳の機能に必要な分子、例えばアミノ酸や酸素、グルコース、水などが進入することを選択的に許可し、それ以外は中に入れないようにするための関門barrierである
コーネルの研究者の報告によると、FDAに承認されたLexiscanという薬はBBB細胞上に発現するアデノシン受容体を活性化させるという

※Lexiscan: レガデノソン/Regadenoson

「これにより我々は短い時間の間だけBBBを開くことが可能である
それは治療を脳に届けるには十分長く、しかし脳を害するほどには長くない
我々はこれが将来様々な神経疾患の治療に使われることを期待している」
コーネルの獣医学大学で微生物学・免疫学部の準教授associate professorであるMargaret Bynoeは言う
BynoeはJCIで発表される今回の論文の首席著者senior authorである

論文によると、Bynoeのチームは化学療法薬をマウスの脳内に送るだけでなく、アルツハイマー病のプラークに結合する抗体のような巨大な分子すら送達可能だったという

Bynoeのラボはヒトの脳の初代内皮細胞を使ってBBBのモデルを工学的に作り上げ、Lexiscanがマウスにおける作用と同様のやり方でヒト細胞モデル上のBBBを開くことを観察した

Lexiscanは既にFDA承認薬であり、「アルツハイマー病やパーキンソン病、自閉症、脳腫瘍、化学療法抵抗性の癌のような疾患に対して薬剤を送るシステムにおける飛躍的な前進への可能性potentialは、遠い未来の話ではないnot far off」とBynoeは言う


http://dx.doi.org/10.1172/JCI76207
A2A adenosine receptor modulates drug efflux transporter P-glycoprotein at the blood-brain barrier.
アデノシンA2A受容体は血液脳関門の薬剤排出トランスポーターP糖蛋白質を調整する

Abstract
BBBは脳を末梢循環内の有害な物質から保護している
BBBは脳の恒常性を維持すると同時に、アルツハイマー病や脳腫瘍などの神経変性疾患の治療薬を中枢神経系(CNS)へ送達する際のハードルでもある
薬剤排出トランスポーターのP糖蛋白質(P-gp)は脳の内皮細胞に強く発現し、脳に送達される薬剤のほとんどの進入を妨害する

今回我々はFDA承認薬のA2Aアデノシン受容体アゴニストであるレガデノソン(Lexiscan)による受容体の活性化が、急速rapidlyかつ強力potentlyにP-gp発現と機能を低下させることを示す
これは時間依存的time-dependentで、そして可逆的なやり方reversible mannerである

我々はP-gp発現と機能の下方調整downmodulationが化学療法薬の脳内での蓄積と同時に起きることを、野生型マウス、マウスとヒトの脳の初代内皮細胞で実証する
これらの細胞はin vitroのBBBモデルとして働く

また、LexiscanはBCRP1(ABCG2)の発現を下方調節downregulateする
BCRP1はCNSの血管系vasculatureならびに他の組織で強く発現する排出トランスポーターである

最後に我々は、P-gpの下方調整を仲介するのがMMP9による切断やユビキチン化を含む複数の経路であることを特定した

これらのデータを基に、我々はBBB内皮細胞上のA2Aアデノシン受容体の活性化が治療薬を送り届ける時間帯を生じることを提案する
それは脳内への薬剤送達にとって微調整fine-tunedされたものであり、CNSへの薬剤送達技術としての潜在性を持つ


https://www.jci.org/articles/view/76207/figure/9
Figure 9
A2Aアデノシン受容体のシグナル伝達が細胞透過性を調節するメカニズム


(a) 基底状態では、脳内皮細胞の単一の層がP-gpを含む輸送体を強く発現している
(b) アデノシン受容体が、アデノシンまたはLexiscanによって活性化されると、
(c) それは脳内皮細胞上のP-gpを下方調節し、
(d) 細胞透過性を増大させてP-gpの基質を脳内へ送達する
その後P-gpの基質substrateが脳内皮細胞を越える時、最終的にどの輸送体が分子を脳内の側へ送り届けるのかは不明である



関連サイト
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2013540748
出願人 コーネルユニバーシティー
血液脳関門の透過性を調節するためのアデノシン受容体シグナル伝達の使用法



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境で、T細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される


<コメント>
カフェイン/Caffeinはアデノシン受容体(A1、A2A、A2B、A3)のアンタゴニスト

 

Aβオリゴマーが特にシナプスに有害な理由

2016-04-05 06:06:24 | 
Possibility of curbing synapse loss in Alzheimer's

Targetable immune pathway plays an early role in Alzheimer's disease models, before plaque accumulation

March 31, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160331154005.htm


(この図は、βアミロイド(Aβ)オリゴマー・補体古典経路・ミクログリアが、どのようにしてAβプラーク蓄積『前』のアルツハイマー病の脳においてシナプス喪失を誘発するのかを示す
Aβオリゴマーは補体分子C1qとC3を活性化し、C3はミクログリア(緑色)の受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むengulfように刺激する
Aβプラークと神経炎症neuroinflammation(ミクログリアの流入と補体の強い活性化を伴う)は、アルツハイマー病の後期においてのみ識別できるようになる
Hong et al., Current Opinion in Neurobiology 2016から改作adapted
Credit: Lasse Dissing-Olesen, Boston Children's Hospital)


ボストン子ども病院の研究者はアルツハイマー病の早期に脳内の接続(シナプス)がどのようにして失われるかを示し、そしてそのプロセスが脳のプラーク蓄積が明らかになる前に始まることを実証した
このプロセスは潜在的に止めることが可能でありうる
Science誌のオンライン版で3月31日に発表された彼らの研究は、アルツハイマー病の早期に認知機能を保つための新たな治療標的を示唆する

ボストン子ども病院 F.M. Kirby神経生物学センターのBeth Stevens, PhDとSoyon Hong, PhDを中心とするチームは、正常に発達中の脳で余分なシナプスを『刈り込むprune』ために使われるのと似たメカニズムが多くのアルツハイマー病マウスモデルで加齢により誤って活性化することを示した
このメカニズムを阻害することでシナプスの喪失を抑制できる可能性がある


現在アルツハイマー病の治療用としてFDAが認可した薬剤は5つ存在するが、それらは一時的に認知機能を加速するだけでアルツハイマー病における認知障害の根本的な原因に取り組んでいない
開発中in the pipelineの新しい薬の多くはアミロイドプラークの堆積depositsを除去するか脳内の炎症を抑制することを目指すものだが、
ボストン子ども病院の新たな研究によるとアルツハイマー病はそのような病的な変化が生じる前のもっと早い段階を標的にできる可能性がある

「シナプスの喪失は認知の低下と強い相関がある」
ボストン子ども病院、神経学部の助教授assistant professorであるStevensは言う

「我々は非常に早い段階にまで戻って、シナプスの喪失がどのようにして始まるのかを調べようとしている」


若い脳を調べることで老いた脳を知る
The young brain informing the old

StevensとHongたちは加齢に伴う病気であるハルツハイマー病を、通常とは異なる見方でthrough an unusual lens調べた
つまり、幼児と子供の正常な脳の発達を分析したのである

Stevensのラボは何年にも及ぶ研究を通じて、
正常に発達する脳が回路を形成する際に不必要なシナプスを『刈り込みprune』というプロセスで排除することを示してきた

「正常な発達プロセスを深く理解することは我々にまったく新しい洞察をもたらしている
それはアルツハイマー病、そして潜在的には他の疾患においても、どのようにしてシナプスを保護するのかについての洞察である」
そのようにStevensは言い、シナプスの喪失がFTDやハンチントン病、統合失調症、緑内障glaucomaなどの病態でも生じることに言及する

研究チームはアルツハイマー病のマウスモデルにおけるシナプスの喪失にはC1qというタンパク質の活性化が必要であることを示した
C1qは消去のための『目印tags』をシナプスにつけ、脳内の免疫細胞であるミクログリアがそのシナプスを『食べる』
それはちょうど正常な脳の発達中に起きることと似ているという

マウスではアミロイドプラークの堆積が観察できるようになる前に、脆弱なシナプスの周囲でC1qが増加した


治療的な潜在性
Therapeutic potential

StevensたちがC1qや下流のタンパク質C3、またはミクログリア上のC3受容体であるCR3を阻害すると、シナプスの喪失は起きなかった

「ミクログリアと補体はアルツハイマー病に関与することが既に知られているが、それらは進行したアルツハイマーの目立った特徴であるプラークと関連する神経炎症に次ぐ二番目のイベントであると広く認識されてきた」
筆頭著者のHongは言う

「我々の研究はこのような見方に異議を唱えるものであり、
疾患プロセスのもっと早くに補体とミクログリアが関わるというエビデンスを提供する
シナプスが既に脆弱な場合はもちろん健康的なシナプスを保つためにも、それらは潜在的に標的となりうる」

StevensとHongがC1qを阻害するために使ったヒトの抗体ANX-005はサンフランシスコのAnnexon Biosciencesで開発が始まったところであり、これから臨床へと進むadvanced予定である
研究者たちはこれがいつの日か様々な神経変性疾患におけるシナプス喪失から保護するために使われる潜在性があると考えている

「今回の研究が強調することの一つは、シナプスの喪失と機能不全を早くから示すバイオマーカーを探す必要性である」
Hongは言う

「癌と同様に、アルツハイマー病が進行した状態になると、治療するにはもう遅すぎるのかもしれない」


補体、ミクログリア、βアミロイド
Complement, microglia and beta-amyloid

研究者たちは、βアミロイドタンパク質とC1q、そしてミクログリアが協力して、アルツハイマー病の早期にシナプスを失わせることも明らかにした
βアミロイドのオリゴマー形態(多数のβアミロイドユニットが一緒に繋がっている状態)がシナプスに有害であり、しかもプラークが堆積する前でさえそうであることは既に知られているが、
今回の研究はこの影響にC1qが必要であることを示した

その逆も真だった
つまり、ミクログリアがシナプスを飲み込むengulfのはオリゴマーのβアミロイドが存在するときだけだった


http://dx.doi.org/10.1126/science.aad8373
Complement and microglia mediate early synapse loss in Alzheimer mouse models.
補体とミクログリアはアルツハイマー病マウスモデルにおける初期のシナプス喪失を仲介する

可溶性βアミロイド(Aβ)オリゴマーはシナプスならびに海馬の長期増強/long-term potentiation(LTP)にとって有害な影響があるが、その影響にはC1qが必須である



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/0dfe2285369e485fede543bfb29cdc04
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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a6ad95ba8371441ea0e406453e8bfaa8
活性化したミクログリアは抑制性のシナプスを引き剥がす



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a09b1b207c031eeb1a6939ed733c6f07
自閉症ではオートファジー/刈り込みが抑制されている