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タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す

2016-07-17 06:06:31 | 
Brain cell death in Alzheimer's linked to structural flaw

Study reveals multiple new leads for pursuing potential treatments

July 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160713100909.htm


(アルツハイマー病患者の脳細胞の核には、正常な脳細胞には見られないトンネルが発見された(矢印)

Credit: Image courtesy of Bess Frost, Ph.D., assistant professor, Barshop Institute for Longevity and Aging Studies, University of Texas Health Science Center at San Antonio)

テキサス大学サンアントニオ校保健学センター・バーショップ加齢長寿研究所の研究者は、アルツハイマー病に関与する新たな生物学的経路を明らかにした
ショウジョウバエを使った実験でこの経路を阻害すると脳の細胞死が減少し、この経路への干渉がヒトの患者でも脳の疾患を治療するための有望な新戦略の代表となりうることが示唆された


アメリカでは約540万人がアルツハイマー病であり、記憶と思考、そして行動に問題が生じている

アルツハイマー病の特徴の一つはタウというタンパク質が脳内で凝集する(clump/aggregate)ことである

「我々はアルツハイマー病で病的なタウpathological tauによって異常をきたす複数の細胞内プロセスを新たに明らかにした」
バーショップで助教授のBess Frost, Ph.D.は言う

「タウを細胞死へとつなげるこれらのプロセスのそれぞれは潜在的な薬剤の標的である
この新しい知識から、より多くの情報を基にした治療法の開発が可能になるだろう」

Frostは今回の発見を、オーランドでアメリカ遺伝学会/Genetics Society of Americaが主催する米国遺伝学会議/The Allied Genetics Conference(TAGC 2016)で発表する予定である


「合理的な薬剤設計のために重要なのは、細胞内の多くのイベントの中から実際に疾患を引き起こしているものを正しく識別するdiscriminateことである
それは良い薬剤の標的となりうるが、それ以外は単に疾患の付随的な影響side effectに過ぎない」
Frostは言う

「それはショウジョウバエを使うことで素早く達成することが可能となる
なぜならヒトのアルツハイマー病患者の脳内で起きる何かのプロセスを観察した際に、ハエのアルツハイマー病モデルでもそれと同様のプロセスを阻害することが可能であり、それによりハエの状態が良くなるかどうかを観察し、脳の細胞死が少なくなるかどうかを確認することができるからである」


以前Frostと彼女の同僚たちはアルツハイマー病患者の死後の脳から得られた細胞を研究し、典型的には細胞の核内で『きつく巻き取られたtightly wound』状態であるはずのDNAの領域が アルツハイマー病の脳細胞では弛緩relaxedして『巻かれていないunwound』状態であることを発見している
そしてDNAが巻かれていない状態unwoundだと、オフになっているべき遺伝子のスイッチが入ってしまう可能性がある

今回の新たな研究で彼女らはアルツハイマー病患者の脳細胞の核をさらに詳しく調べ、DNAがどのようにして巻かれていない状態unwoundになるのかを明らかにしようとした

研究者たちは非常に高解像度の顕微鏡技術を使うことで核全体entire nucleusを観察することを可能にした
その結果、驚くべきことにアルツハイマー病の脳細胞の核には通常は存在しない『トンネルtunnels』が貫通していたのである

「我々はこれらのトンネルが実際にニューロンの細胞死を引き起こすのか、それとも単にアルツハイマー病に付随する副次的な作用side effectに過ぎないのかを明らかにしたいと考えた」
Frostは言う

「ショウジョウバエのアルツハイマー病モデルを使って遺伝学的にトンネル形成プロセスを阻害した結果、実際に脳の細胞死は少なくなり、ハエの寿命は長くなった
我々は現在このプロセスを薬剤で阻害できるかについての実験もラボで実施している」


この初となる潜在的な薬剤標的を新たに突き止めた後、生物学的経路をさらに明らかにすべく研究者たちは実験を継続した

細胞の核はラミンlaminという核の骨格を形成するタンパク質によって取り囲まれ、ラミンは構造的な足場scaffoldを形成している
研究者たちはラミンの核骨格nucleoskeletonが破れてdisruptトンネルが形成されると 核内部のDNAはもはや核骨格に固定できなくなり、ほどけてしまうbecomes unraveledことを発見した
言い換えると、DNAの全体的な3次元構造を維持するためには、きつく巻かれたDNAとラミン核骨格との間の相互作用が必要だということである

※ラミン: 核ラミナを構成するラミンには3種類あり、ラミンAとラミンCはクロマチンと結合に関与し、ラミンBは核膜との結合に関与する


また、彼らはアルツハイマー病患者の脳内で凝集するタウタンパク質が
細胞核の外側の細胞質に存在するアクチン細胞骨格actin cytoskeletonを過剰に安定化overstabilizeさせることにより
ラミン核骨格lamin nucleoskeletonを混乱disruptさせることを明らかにした

これはアクチン細胞骨格とラミン核骨格との間の正常な連結couplingを妨げinterrupt、それが次に、きつく巻かれたDNAを弛緩させる
この弛緩によって想定外not supposedの遺伝子のスイッチがオンになり、結果として脳細胞は死ぬ


タウの凝集とそれによる最終的な細胞死とを連結させる細胞内プロセスを突き止めたことにより、研究者たちは治療的介入の目標となる数多くの標的への道を新しく開いた

加えて、この研究は脳がラミンの問題に脆弱であることが明らかになった初めての例の一つである

科学者たちの中には脳は加齢に対して他の組織とは異なる応答をすると考える者がいる
なぜなら、ラミンを含む遺伝子に突然変異を持つ『早老症progeria』の人々は体全体の組織に影響するように早く年老いていくが、脳だけは例外だからである


「我々は脳がラミン核骨格の機能不全に脆弱であり、その乱れは脳の細胞死を引き起こすことを発見した」
Frostは言う

「これらの研究結果は加齢の基本的なメカニズムが脳と他の組織の間で維持されていることを示唆する」


この研究はフロリダ・オーランドのオーランド・ワールド・センター・マリオットで開催されるTAGC 2016で、『ヒトの疾患のハエモデル I /Drosophila Models of Human Disease I』のセッション内、7月15日金曜日午後4時から15分間にわたって発表される

この研究は国立神経疾患・脳卒中研究所/National Institute for Neurological Disorders and Stroke(NINDS)の出資によって実施された(グラントK99NS088429)


<コメント>
タウタンパク質の凝集→アクチン細胞骨格の過剰な安定化→ラミン核骨格の破綻→ヘテロクロマチンの弛緩→遺伝子の異常発現→ニューロンの細胞死



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アルツハイマー病で認知低下の発症年齢、疾患の期間、精神の荒廃を予測するのは、アミロイドではなくタウの蓄積度である



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アルツハイマー病とパーキンソン病の患者で皮膚の生検をしたところ、健康な人と比較してタウタンパク質のレベルが7倍高く、パーキンソン患者はα-シヌクレインのレベルが8倍高かった



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これまでの研究ではAβが細胞外に出てからタウタンパク質に変化が生じるとされていたが、
ヒトの皮膚からiPS細胞を作成してニューロンに分化させ、APPからアミロイドベータ(Aβ)を切り出すセクレターゼの速度を変化させると、それに伴ってタウタンパク質のレベルも変化した



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普段は核内に存在するRNA結合タンパク質TIA1はストレス状態になると細胞質に現れ、タウタンパク質はTIA1と相互作用する
タウはストレス顆粒タンパク質を促進する一方で、TIA1はタウの折りたたみ失敗と不溶性を促進する



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アルツハイマー病の初期にはp300が上昇してタウタンパク質のアセチル化を引き起こし、タウの蓄積と毒性を促進するドライバとして働く
FTDのマウスモデルではタウがアセチル化するとニューロンのタンパク質を分解する能力が低下するが、サザピリンでp300を阻害してタウのアセチル化を抑制するとタウのターンオーバーが促進され、脳内のタウレベルが低下した



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マウスにヒトのFTDと関連する変異(V337M)を持つタウタンパク質を発現させると、腹側線条体(ventral striatum; 側坐核と嗅結節)ならびに島(insula)において選択的にシナプスが障害され、PSD-95が枯渇してシナプス後肥厚が縮小し、シナプスでのNMDARの局在が障害された
PSD-95はシナプス後肥厚を構成する足場タンパク質で、NMDARのカルボキシル末端に結合する



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タウタンパク質は長期抑圧/long-term depression(LTD)の過程で重要な生理学的役割を持ち、タウが機能する場所はシナプスである
そしてタウは凝集してアルツハイマーの特徴である「もつれ」を形成することから、アルツハイマー病は正常なシナプスメカニズムの異常調節によって引き起こされる可能性がある
また、我々は最近、アミロイドβのシナプスに対する非常に急激な作用を突き止めた



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カフェインはアデノシン受容体と拮抗し、アデノシンによって活性化される脳内の様々な受容体を阻害するが、ボン大学のMüller教授たちの研究チームは以前アデノシン受容体のサブタイプの一つであるA2Aの阻害が特に重要な役割を演ずる可能性を既に示している
今回彼女らは超高純度ultrapureで、水に可溶性のA2AアンタゴニストMSX-3を開発した
この化合物は副作用がカフェインよりも少ないが、その理由はA2Aだけを阻害し、同時にそれが著しく効率的だからである
変化したタウタンパク質を持ち、治療しなければアルツハイマー病の症状を早くに発症するよう遺伝子を操作したマウスに対して数週にわたってこのA2Aアンタゴニストを投与したところ、記憶テストではプラセボ群と比較して著しく良い結果が得られた
このA2Aアンタゴニストは空間記憶で特に良好な結果を示し、脳内で記憶を司る領域である海馬では病理発生的なプロセスの改善が実証された



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アルツハイマー病では核膜の裏打ちタンパク質であるラミンが消失する


http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2015.11.039
Lamin Dysfunction Mediates Neurodegeneration in Tauopathies.

Highlights
・核骨格であるラミンの崩壊は、タウオパチーtauopathyにおけるニューロン細胞死を促進する
・ラミンの機能不全はヘテロクロマチンを弛緩させ、ニューロン細胞死を引き起こす
・不適切な細胞骨格/核骨格の結合couplingは、タウオパチーにおいてラミンを崩壊させる
・ラミンの病理は、アルツハイマー患者の死後脳で保存されている

Summary
我々は以前、タウオパチーにおけるヘテロクロマチンの広範囲な弛緩を報告した
タウオパチーにはアルツハイマー病のような加齢と関連して進行する神経変性疾患が含まれ、リン酸化タウタンパク質の凝集がタウオパチーの病理的な特徴である
ここに我々は神経変性性タウオパチーにおいて/タウオパチーのin vivoモデルにおいて 細胞骨格-核骨格の異常な結合によるラミンの調節不全が ヘテロクロマチン弛緩ならびにニューロン細胞死を促進することを実証する
 

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