雑文の旅

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猫爺のエッセイ「コラーゲンの匠」

2014-07-15 | エッセイ
 コラーゲン作りの匠、この棟梁、脂ぎった働き盛り。今日もご主人様の体の中でせっせ、せっせとコラーゲンを作り、紫外線でやられた分を修復している。
   「棟梁、精が出ますね」
   「へい、ご主人さまが若々しいのは。あっしの働きです」
 お陰で、このご主人、五十才半ばというのに、お肌つるつる、水も滴らんばかりの潤いである。
 
 江戸時代のお百姓のように、野菜と穀物ばかりの食生活であれば、コラーゲンの材料蛋白質不足と紫外線のダメージのために五十才半ばで皺だらけのお爺さん、お婆さんである。
 だが、現代人の食生活は、余程の偏食家でない限りは、材料不足ではない。

 
 しかしながら、棟梁、ここへ来て仕事の量が落ちてきた。
   「棟梁、どうしたい、精彩がなくなってきたじゃないか」
   「おう、それよ、わしもご主人様も、年をとって衰えてきたのよ」

 ところが、このご主人、馬鹿なCMに踊らされて、材料不足だと思っているらしい。棟梁の仕事場に、すっぽんコラーゲンだの、サプリだのと、山積みにしてくる。
   「材料さえ送り込めば、コラーゲンを作り出してくれると思わされているのだ」
   「毎日、毎日、コラーゲン三昧らしいね」
   「そうよ、お前、そこの積み上げた材料を捨ててくれないか」
   「捨てるのはお安い御用だが、腎臓親分が頑張っていて、中々捨てることができないのだ」
 その結果、腎臓親分自信も過労でぶっ倒れることもあるし、血中のプリン質が増えて、通風になる。

   「それでも、ご主人は、せっせ、せっせとコラーゲン三昧で明け暮れる」
 
   ◇70歳で、お肌つるつる30代の若さ◇

 テレビCMで、誇らしげに若さ見せびらかしているおばあさん。顔や体に塗り込んだものを全部洗い落とし、肌を乾かして4~5倍のルーペで肌を見れば年相応の肌であることがわかる筈だ。

   「棟梁、ご主人様に一言」
   「わしのご主人さま、あんたアホやろ」


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