雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺の才能なし俳句「夏から秋へ」

2017-08-28 | 日記
   ◇干天や 鍋で煮ている 淡路島

   ◇雷(いかづち)や 雨のにおいが 寄す木立

   ◇枕辺へ 青き夜蝉の 身投げかな

   ◇久々の晴れ間 木槿の花白し

 盆は過ぎ、つくつく法師が鳴くなど秋の気配はあるものの依然暑さは衰えない。猫爺、体はグッタリしているものの、寝付けぬ夜を脳は元気で空想に励む。

 -空想-

 仮題は「短編小説・三国峠で出会った亡霊」

 越後の国は長岡藩の下級武士「坂崎伊玖磨」の長子千太郎は、十五歳となったある日突然に旅に出ると言い出した。父は驚き、「嫡子たる身で何故の旅か」と訊き質すと、武士が嫌で後継ぎは弟に譲りやくざになるのだと言う。
 激しい口論の末、父は激怒して千太郎に「二度と敷居を跨ぐな」と勘当を言い渡した。義母の宮は成り行きを静観し、止めるでもなく陰でほくそ笑みさえしていた。千太郎は先妻の子であり、宮が産んだ二歳違いの弟林太郎に家督を継がせたいと常々思っていたからである。

 千太郎の実母は、彼が三歳の時に流行り病で他界した。父はその半年の後に上司に勧められて上司の末娘宮を後添えにもらった。千太郎は宮に懐かず、宮もまた千太郎を毛嫌いして、やがて宮に子が生まれると、宮は疎ましく思っている千太郎への虐めが始まった。

 父もまた千太郎には厳しかったが、その厳しさには愛があった。父は千太郎を道場に通わせることはなかったが、暇を作っては千太郎に剣道の手解きを怠らなかった。父の剣は無手勝流ではあったが、千太郎は着々と腕をあげていった‥‥。

 千太郎はやがてやくざへと身を持ち崩して行く。だが、命を繋ぐための博打はするが、「義理と人情」からは一線を置いていた。それは、決して人を斬らぬとこころに決めていたからである。どんなに落ちぶれようとも、父や弟に迷惑をかけないためである。
 
 いつか、「斬れずの千太郎」と嘲笑されるようになり、五年の歳月がながれた。千太郎は矢も楯もたまらず、冬が来て越後路が雪で閉ざされぬ間に国の父や兄弟が恙(つつが)無く暮らしている様子をひと目見たくて、忍びの旅に出る。そこで陰から立派な若侍になった林太郎の姿を見て、自分も江戸に出てまっとうに生きて行こうと草鞋を返すが、日暮の三国峠にさしかかった時、白い羅(うすもの)を纏って時雨に佇む女と出会う。

   「このような人けの無い場所で、どうなされました?」

 千太郎が声をかけた瞬間、女の姿は掻き失せた。


 続きは、今夜空想しようと思う‥‥。(猫爺)


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