雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のミリ・フィクション(掌編小説)「書き出し集」

2016-10-01 | 掌編小説
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ミリ・フィクションとは、400字詰め原稿用紙30枚以下の掌編(しょうへん)小説です。

猫爺のミリ・フィクション「運命」2013.01.23
真夜中に浩太は目が覚めた。起き上がって水を飲んでこようと思うのだが、体を動かすことが出来ない。
「これが金縛りってやつかな?」

猫爺のミリ・フィクション「因幡の白兎」2013.01.24
隠岐の島から本州に渡りたいが、その術がわからない。 白兎のぴょん吉は考えた。思い付いたのは、ワニザメを騙して隠岐から本州まで並ばせて‥‥
猫爺のミリ・フィクション「オレオレ強盗」2013.01.25
「ピンポーン」と、インタホンのチャイムがなった。
「お婆ちゃん、ボクです」どうやら老人の一人暮らしを狙った強盗のようだ。

猫爺のミリ・フィクション「托卵王子」2013.01.25
閑静な住宅街を、学校帰りの少年が近道を通るために緑地公園に入り込んだ。その時、突然4人の男が近付いてきたので、少年は「カツアゲか?」と身構えたが、男たちは恭(うやうやし)く、跪(ひざま)づいた。
猫爺のミリ・フィクション「修行僧と女の亡霊」2013.01.26
  「もしもし、お坊様」
民家が途絶えて久しい野路を旅ゆく若い僧侶を、女の声が呼び止めた。振り返った僧の目に‥‥

猫爺のミリ・フィクション「どっちも、どっち」2013.02.01
霊界での八五郎とご隠居の会話。 
「おや?八つぁん、今年の盆は家に帰らなかったのかい」

猫爺のミリ・フィクション「蟠り(わだかまり)]2013.02.02
先生は、「ロボトミー手術」をご存知でしょうか。 これは、脳やその他の臓器の一塊を切除することを意味し、癌に冒された胃を切除することを指す場合もあります。 今、ここでお話しさせていただきますのは‥‥
猫爺のミリ・フィクション「浦 島子伝」2013.02.05
今回は、「浦島太郎」の基になった「浦 嶋子伝」を想像してみよう。想像と書いたのは、原作の「浦嶋子伝」を読んでいないからだ。浦嶋子は、浜辺でウミガメを見つける。
猫爺のミリ・フィクション「まだ生きている」2013.04020
自分の生涯に、このような恐ろしい世界が待ち受けていようとは想像さえしなかった。いや、これは生涯ではな
く、死後の世界かも知れない。亡骸から離脱した魂が、宇宙の闇を漂っているのだろうか。

猫爺のミリ・フィクション「大きな桃」2013.04.21
「この島の平和はどこへ行ってしまったのでしょう」
荒らされた田畑を眺めて、女の鬼が呟いた。 彼女の視線は、空(くう)を彷徨っている。

猫爺のミリ・フィクション「骨釣り」2013.04.27
長屋暮らしの独身もの八兵衛が、昼近くになって釣竿を持ってぶらり大川の堤へやってきます。今夜の酒肴(しゅこう)に、鰻でも釣るつもりでしょう。(落語・骨釣りから)
猫爺のミリ・フィクション「転生」2013.04.27
「俺は死んだのか?」
真っ暗な部屋の中で、泰智は目を覚ました。

猫爺のミリ・フィクション「剃毛」2013.05.04
「これっ定吉、ちょっとおいなはれ」
お家はんの呼ぶ声に、蔵の荷物整理を手伝っていた丁稚定吉は、ピクンと反応して飛び出してきた。

猫爺のミリ・フィクション「山姥(やまんば)」2013.05.04
「で、出ましたっ!」 日もとっぷり暮れて、里の家々から油灯の灯りが漏れ始める頃、村の庄屋の表戸が叩かれた。 何事かと庄屋が自ら戸を開けてみると、新田(しんでん)の爺の倅の瓢助であった。
猫爺のミリ・フィクション「葛の葉」2013.05.04
ときは村上天皇の時代、安倍保名(あべのやすな)が信太の森(しのだのもり)に出かけた折に、狐の生き肝(いきぎも)をとるために来ていた武士に追い詰められて逃げてきた白狐を、身を挺して助ける。
猫爺のミリ・フィクション「誤算」2014.02.25
佐伯叶作(きょうさく)は、若き宇宙工学博士(はくし)である。宇宙工学の大学院で研究に没頭していたが、大富豪の父親が巨万の富を遺して死んだことから、大学院を終了後、私財をなげうって研究所を設立した。
猫爺のミリ・フィクション「疑惑」2014.02.26
大川の土手沿いの道をふらふらと歩いているのは、裏山で伐採した竹を使って笊を作り、町で売って生計を立て
ている孫助である。今朝は十枚の笊を持ってきたが、全部売りさばいてほくほく顔で戻りしな‥‥

猫爺のミリ・フィクション「幽霊粒子」2014.02.27
質量ゼロである素粒子が、質量を持つ矛盾を解き明かすために、ヒッグス博士がそれまでに発見・分類された
16の素粒子の他に、もう一つそれらの素粒子に質量をもたせる素粒子がある筈だと仮説を立てた。

猫爺のミリ・フィクション「心霊写真」2014.02.28
彼は心霊写真家である。 ただし、商売上、心霊写真家と名乗る訳にいかないらしく、彼の名刺には「写真家」と印刷してある。
猫爺のミリ・フィクション「ミミズの予言」2014.06.16
真冬の河川敷に張られたテントに、初老の親父がカップ酒とカップヤキソバを持って帰って来た。
「うーっ、寒い、寒い」 なにはともあれ石油ストーブに火を入れ、水の入った薬缶を乗せた。

猫爺のミリ・フィクション「謙太の神様」2014.06.17
一人っ子の謙太は5才のお婆ちゃんっ子。 二階のお婆ちゃんの部屋に入り浸っては、本を読んでもらったり、字を教えてもらったり、時には、お婆ちゃんが祀る神棚に「なむあみだぶつ」と手を合わせたりしている。
猫爺のミリ・フィクション「汚名返上」2014.07.20
山から兎が下りてきて、亀の棲む池のほとりに立った。
「もしもし、亀さん」

猫爺のミリ・フィクション「義理堅い蛸」2014.07.22
茂九兵衛は、神戸(こうべ)は須磨の松原に掘っ立て小屋を建てて住む独身の猟師。働き者で今朝も暗いうちから漁に出かけてきた。 「今日は不漁や、雑魚ばかりしか網にかかっておらん」
猫爺のミリ・フィクション「不時着」2014.09.12
田野慶進(けいしん)は米農家である。早朝、この家へ近所の土肥暁良(あきら)が息を切らして飛び込んできた。 「大変だ、田野の田圃が大変な事になっている」
猫爺のミリ・フィクション「お化け屋敷でアルバイト」2015.03.09
村の共同墓地を見守っている墓守の達三、今朝は少し早く目が覚めた。今は盆なので入念に墓地の見回りをして、後は檀那寺へ畑で採れた野菜を届けるつもりである。
猫爺のミリ・フィクション「成仏」2015.03.10
えーっ、これから千畳谷へ下りて行きなさるのか? 悪いことは言わない、およしなさい」  峠の茶屋の婆さんが、顔の前で掌を振りながらいった。 
猫爺のミリ・フィクション「感情を持つロボット」2015.03.12
大学の若きロボット博士が死んだ。彼はまだ大学院生であったが、同輩や後輩たちは「土橋さん」と名を呼ばず、尊敬と親しみを込めて、この天才大学院生を「ロボ博士」と呼んでいた。
猫爺のミリ・フィクション「美的感覚」2015.03.14
身長165センチだった男が、三十六歳にもなっているのに短い期間に185センチと、ぐんと伸びていた。 「桑田君、君身長が伸びたねぇ、何をやってそんなに伸びたのだ」
猫爺のミリ・フィクション「葬儀屋の宣伝企画」2015.03.15
会社帰りの若いサラリーマン二人が、立ち飲み屋のおでんをつつきながら、仕事の愚痴を溢し合って居た。
そろそろ酔がまわってきたのか、取り留めの無い話になってきた。 「柳瀬君、君は幽霊と親しいのだってね?」 

猫爺のミリ・フィクション「Youは何しに天国へ」2015.03.26
若い天使たちが集まって、テレビ番組の企画を練った。
「パクリのようだが、Youは何しに天国へ というのはどうだろう」

猫爺のミリ・フィクション「たま」2015.03.28
幽霊とお化けは別のものである。 幽霊とは人間の霊魂であり、人の目には見えない。「私は見た!」と主張する人が居るかも知れないが、それは実態を見たのではなく、幻覚、錯覚の類で心に感じたものである。
猫爺のミリ・フィクション「竹取の翁」2015.03.28
月の世界から迎えが来て、かぐや姫は帰っていった。竹取の翁(おきな)は、大きなため息をつきながら言った。 「姫はとうとう帰ってしまいましたなァ」
猫爺のミリ・フィクション「幽霊峠」2015.03.29
まだ明け遣らぬタクシー会社の待機室で、真っ青な顔の三人の男がヒソヒソ話し合っていた。  男Aの話・・・   隣の県まで客をのせて行った帰りに、髪の毛が長い女が手を上げた。
猫爺のミリ・フィクション「道祖神」2015.03.29
明治もまだ浅い時代に生まれた浅吉は、既に17才になっていた。彼は熱心に道祖神(どうそしん)を信仰しており、村の外れにある道祖神の塔に、ことある毎にお参りをしていた。
猫爺のミリ・フィクション「龍神川」2015.03.30
与助の倅小吉は、五才である。嫁の滋乃は、小吉を産んで所帯窶れするどころか、相変わらず美しかった。ある日、滋乃は昨年亡くなった父親の一周忌で、小吉を連れて実家に帰って行った。
猫爺のミリ・フィクション「死神と権爺」2015.03.31
昔々、信濃の国の山奥に桑畑村という小さな集落があった。その名のごとく、桑畑が一面に広がり養蚕で栄えた富裕な村であった。 その村の外れに、死神を祀(まつ)った小さな祠(ほこら)があり‥‥
猫爺のミリ・フィクション「金の斧」2015.03.31
ある男が息子をおんぶして、川に架かる丸木橋に差し掛かった。背中の子供が恐がって暴れたために子供を川の中に落としてしまった。男は為(な)す術もなく、ただ嘆き悲しんでいると、川の水面に龍神様が現れて男に尋ねた。
猫爺のミリ・フィクション「ランナウェイ」2015.04.01
ダイアナは、生後2ヶ月、胸の毛がふさふさとした雄猫である。知り合いの家から仔猫を貰って来た飼い主は、何を血迷ったのか女の子の名前を付けてしまった。
猫爺のミリ・フィクション「太郎と蓑吉」2015.04.02
漆間太郎(うるしまたろう)は、女房に命令されて里山で茸採りをしていると、何やら五人の子供たちが寄って騒いでいた。 「君たち、何をしているのだね」 「ミノムシを捉まえたので、蓑を開いて裸にしているのだ」
猫爺のミリ・フィクション「歌を忘れたカナリア」2015.04.02
昨日までは美しい声でさえずっていた籠の中のカナリアが、今朝は全く鳴かずにぎくしゃくしている。
ここは山の手の豪邸街、このお屋敷のお嬢様が心配そうに見守っている。見かねた家政婦の三田が声をかけた。

猫爺のミリ・フィクション「父は長柄の人柱」2015.04.14
これは大阪の淀川に橋を渡す工事にまつわる物語であるが、工事が思うように捗(はかど)らない。橋杭を打ち込んでも、すぐに流されてしまうのだ。近隣の村の長が集まって対策を相談した。
猫爺の掌編小説「わが娘を恋した幽霊」2015.04.24
江戸北町奉行所同心、榊枝織之助の娘沙織は、夢枕に立った少年の幽霊を見たと言う。その幽霊熊吉は、沙織にしか意思が通じないのだ。沙織に「母を助けて欲しい」と懇願する。
猫爺の掌編小説「魔窟の亡骸」2015.10.02
「お侍様、お待ちくだせぇ」  三人の百姓衆に声をかけられた、まだ十代であろう侍、
平手徹祥(ひらて てっしょう)は、武士とは言え生まれながらの浪人である。

猫爺の掌編小説「子鬼の阿羅斯」2015.10.06
天の岩窓から、節分の人間社会を覗いていた子鬼の阿羅斯(あらし)は呟いた。 
「なんだい、なんだい、鬼を追い出すなんて!」
 
猫爺の掌編小説「リセット」2015.10.06
「人間とは何か」という学術論文の著者である人類学者、通称タコゾウ先生こと海老倉硝三(しょうぞう)博士は、その論文の中でこう仮設を立てている。 「地球上の生物のなかで人間の脳だけが高度に進化したのは‥‥
猫爺の掌編小説「孤独死」2016.02.26
与助は夢を見ていた。若い頃の夢が、いつか見た絵巻のように次から次からと現れる。外は雪が深々と降りつもっているだろう。その冷たい隙間風が、与作が寝ている煎餅布団を突き抜けて、容赦なく五臓六腑を責めている。
猫爺のミリ・フィクション「ゴンドラの唄」2016.07.15
「人生は短いものなのよ、その艶々とした真紅の唇もやがては褪せて、熱き血潮も冷める老いがくるの」老婆は目を閉じ、自身が乙女であった時代を思い浮かべているようだった。