雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のミリ・フィクション「美的感覚」

2015-03-14 | ミリ・フィクション
 身長165センチだった男が、三十六歳にもなっているのに短い期間に185センチと、ぐんと伸びていた。
  「桑田君、君身長が伸びたねぇ、何をやってそんなに伸びたのだ」
 友人の田澤に声をかけられた。田澤は、漫画誌の載っている広告に、身長が伸びるサプリだの、身長が伸びるストレッチのCDだの、酷いものになれば、体を引っ張って寝るゴムのロープなどもある。その中のどれかが功を奏したのかと思った訳だ。

  「田舎の実家からの帰り道、宇宙人に出会っちゃったんだ、車ごとUFOに連れ込まれたよ」
  「うわ! 生きた心地がしなかっただろ?」
  「目玉の大きな、タコみたいな宇宙人の男女が近寄ってきて、俺をジロジロ観察するんだ」
  「ありきたりの宇宙人の風体だなぁ、でもよく無事で戻れたねぇ。怖かったろう?」
  「それが、丁重に扱われてミトコンドリアのサンプルを採取されただけで、お礼に何がいいかと聞かれた」
  「わたしゃも少し背が欲しい と答えたのか」
  「そんな漫才みたいな答え方はしないよ」
  「どう言ったのだ?」
  「具体的に『背を185センチにして欲しい』と言った、ついでに3人の息子たちも頼んでやった」
  「奥さんのことは頼まなかったの?」
  「女房は、身長は今のままでいいから、美人にしてやってくれと頼んだ」
  「欲張ったねぇ、宇宙人怒ったろ」
  「いや、快く引き受けてくれた」

 翌朝、桑田が目が覚ましたら、本人と3人の男達は身長185センチになっていた」
  「それは良かった。子供たち喜んだろう」
  「バスケ部の高1の長男と、野球部の中二の二男は大喜びだった」
  「もう一人は?」
  「三男は小二なんで、背が伸びたのはよかったが、戸惑っていた」
  「何を?」
  「形は子供のまんまで、大きさはおっさんになったって」
  「何のことかな?」
 首を傾げる田澤を無視して、
  「さすがお兄ちゃんだ、長男が説得していたよ」
  「ほう?」
  「今に良かったと思うようになるよとか言って」 
  「よく解らんが、それで三男は納得したんだな」
  「うん、三男はそれでよかったのだが、女房が不服そうだった」
  「どうしてだ、美人になったんだろ」
 どうやら、桑田の頼み方が悪かったらしい。
  「美人なんだろうけど、目がギロッとして、タコみたいで宇宙人の女にそっくりなんだ」

  (添削して再投稿)


最新の画像もっと見る