雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

霊媒

2012-11-22 | 日記
 霊媒者の話を聞いて、昔のテレビ番組を思い出した。 ある男と霊媒師のやりとりで、「残酷な奴や!」と思ったので薄っすらながら記憶に残ったのだ。 とは言え男が誰だったか、霊媒師が誰かも憶えていないし、両人のやりとりも定かではない。 多分こうだったと思うことを書いてみた。

 霊媒師「あなたのお名前とお年は?」
 男  「中村一郎、48才です」
 霊媒師「誰に逢いたいのか?」
 男  「3年前に交通事故を起した親父です」
 
 霊媒師は、暫くなにやら呪文を唱えていたかと思うと霊媒師の身体に降霊したのか「バタッ」と倒れた。 不意に起き上がると、「痛い、痛い」と悶えながら「お前は誰だ?」

 男  「親父? 親父、俺だ、一郎だ!」
 親父 「おお、一郎か、元気でやっとるか?」
 男  「俺は元気にやってる。 親父はあの世でどうしている?」
 親父 「のむ、うつ、かうで明け暮れておるわ」
 男  「ええっ!あの世で飲む、打つ、買う!?」
 親父 「儂らは飯を食わんでのう、阿弥陀如来様の鎮座なされる蓮池の水を飲むんや」
 男  「ほう、水だけか? なんや蛍みたいやな」「で、何を打つんや?」
 親父 「阿弥陀堂の鐘や」
 男  「親父、鐘は打つんやなくて、つくもんやないのか?」
 親父 「あの世では、そんな細かいことは言わんのや」
 男  「それで、買うのは?」
 親父 「阿弥陀様が出かける時は、牛車に乗られる。 儂は牛車の牛を引く牛飼爺をやっとる」
 男  「それで飼うか?」
 親父 「いいや、COWや」
 男  「ほんまかいな、その話」
 親父 「嘘や」
 
 みたいな、涙の感動再開があって、番組が終わるのだが、その寸前に男が言った。

 男  「そや、親父は交通事故にあったけど、生きてる。 今では怪我も治ったし、ピンピンや」

 猫爺は思うのだ。 この世に「霊」など存在しないことを一番分かっているのは、科学者や医師よりも、霊媒師ではないかと…。