「カフカ小説全集6『掟の問題』
掟はカフカの父親との確執である。婚約者との関係における葛藤である。
そして、その両者についてかかわる家族や社会の構造の問題である。
またしても解説を先に読んでしまったがために、カフカの生活(父と婚約者)を中心に作品を読んでしまう。
まあ、研究者たちにしてもおそらくは同じことをしているのだろう。そして、多くはそれが無いと面白くもない。
死んだ作家の部屋のごみあさり。手稿と言われるメモ・ノート。
P94の人間の責任だの偶像だの、素朴で複雑な世界だのは宗教と社会の因果関係の逆転を言っているんだろうかね。ああ、人を救うための宗教だとすれば、罪や責任を押し付けるための発明であった。しかし、その責任を押し付けた相手から逆に縛られることになったわけだね。そんなことに気付く。(ああ、この関係が成立する過程こそ『野生の思考』じゃないかい!)
まあ、一般にも通じる悩みなどもあったりするわけで、完成作品が出ていたらと思わせるものもあるわけだ。だが、そういう部分を感じるだけならこういったノートでも中断していてもいいわけだ。だが、やっぱりそれは研究者のレベルであるべきで、ある程度ページのある「ある犬の研究」や「巣穴」「父への手紙」だけ読めれば一般人には十分だろう。ほら、他の作品の部分メモも多いわけだし。それを喜ぶのは研究者だし。
夏目漱石は「ある犬の研究」などを読んでいただろうか。
「巣穴」っていうのは人生そのものであり、何のために生きているのか、どこからきてどこへ行くのか。何から何を守るのか。これまた手段と目的の逆転を指摘していたりするように見える。これは完成した作品だろう。あ、文庫で読めるじゃないか!
ああ、カフカはこんな重い全集などではなく、文庫で読むのが正解なのかもしれない。一般人は!
とりあえず、全6巻を読み通した~ほっ。