フミ子が泣いていた
キャッチ中の私は枯れた女の声が遠くから聞こえて来た瞬間
すぐにフミ子だと判った
50メートル先に見える人影は2人分
フミ子が寄り添ってたのはタマちゃんだった
二人は行きつけの立ち飲み酒場で意気投合したらしい
フミ子の話はいつも同じだ
惚れた男はヤクザで浮気者だ
頼もしいのは見た目だけで単なるヤンチャ坊主
淋しがり屋で夢見る夢子のフミ子はそんな男に優しさと包容力を求めたが
男には無理な注文だった
「アイツがまた他所に女を作って帰って来ないわ」
何度聞いた台詞だろう
17の娘と暮らすフミ子のアパートに男は都合の良い時だけ転がり込むのだ
決して夫婦の契りを結んだ訳ではない
ヤクザに家庭は要らないが持論の男だったが
40を過ぎて一匹狼にもヤキがまわった様で
温かい団欒に憧れたのか
フミ子のアパートをしばらく家庭とした様だ
帰る家は私の懐と思いながらも嫉妬心の強いフミ子は
常に男に纏わり付く女の影に苛立ちを隠せなかった
何度、男を罵ったか分からない
その都度、男に殴られた
昨夜のフミ子はそれでも男を愛してたと目頭を押さえる
「アイツの荷物は相手の家に送ったわ」
男は遠い場所に女を作り出て行った
女の住む所にここよりも温かい団欒があるのだろうか
きっとその女も私と同じだろう
フミ子がタンスの中に一枚だけ残した男のセーター
娘と3人で温泉に行った時に着ていたものだ
「あれが一番楽しい思い出だったわ」
タマちゃんは横で船を漕いでいる
フミ子は鼻をすすって濃いめの焼酎をあおるのだった
キャッチ中の私は枯れた女の声が遠くから聞こえて来た瞬間
すぐにフミ子だと判った
50メートル先に見える人影は2人分
フミ子が寄り添ってたのはタマちゃんだった
二人は行きつけの立ち飲み酒場で意気投合したらしい
フミ子の話はいつも同じだ
惚れた男はヤクザで浮気者だ
頼もしいのは見た目だけで単なるヤンチャ坊主
淋しがり屋で夢見る夢子のフミ子はそんな男に優しさと包容力を求めたが
男には無理な注文だった
「アイツがまた他所に女を作って帰って来ないわ」
何度聞いた台詞だろう
17の娘と暮らすフミ子のアパートに男は都合の良い時だけ転がり込むのだ
決して夫婦の契りを結んだ訳ではない
ヤクザに家庭は要らないが持論の男だったが
40を過ぎて一匹狼にもヤキがまわった様で
温かい団欒に憧れたのか
フミ子のアパートをしばらく家庭とした様だ
帰る家は私の懐と思いながらも嫉妬心の強いフミ子は
常に男に纏わり付く女の影に苛立ちを隠せなかった
何度、男を罵ったか分からない
その都度、男に殴られた
昨夜のフミ子はそれでも男を愛してたと目頭を押さえる
「アイツの荷物は相手の家に送ったわ」
男は遠い場所に女を作り出て行った
女の住む所にここよりも温かい団欒があるのだろうか
きっとその女も私と同じだろう
フミ子がタンスの中に一枚だけ残した男のセーター
娘と3人で温泉に行った時に着ていたものだ
「あれが一番楽しい思い出だったわ」
タマちゃんは横で船を漕いでいる
フミ子は鼻をすすって濃いめの焼酎をあおるのだった