マニア祭り

連休明けの昨夜

案の定、店は暇だった

早い時間に久し振りに来店と言う男性を

マヤに任せて私はキャッチをしていた

店内の男性はいかにもマニアックな印象だったので

私が一緒にお邪魔するより

美形で癒し系のマヤとツーショットの方が

きっとお喋りしやすいだろうと席を外したのだ


隣の居酒屋から煮物の甘辛い匂いが漂ってくる

ママさんが検査入院して以来

マスターが独りで店を開けている

店内はカウンターにテーブル席

奥には座敷まであって

先週末などかなり忙しかった様だが

独りじゃホントに大変だろうと同情する

それにしても鶏と大根でも煮ているのだろうか

出勤前にしっかり食べて来なかったので

この匂いにお腹が反応している


向かいの不動産屋の壁掛け時計は１１時をさしている

少し肌寒くなってきた

薄いジャンパーを羽織っているが

油断していたら風邪を引いてしまいそうだ

その時である

一台の自転車が私の目の前で停まった

見覚えのある顔の中年男性だ

「久し振りだね、まだ居たの？」

失礼ね、どうせ他に行く所がないわよ

と思いながらも顔は一応営業スマイルで

「そうなのよ～、こんなご時世だから

　この店にしがみついているわ」

目の前の男性は私がこの店に入った頃からの顔見知りだ

「もう何年になる？」

「そうね、１０年近くになるわ」

彼はニューハーフが大好物の様で

特に刺激的なプレイを求めて彷徨っているのだ

私の知り合いのニューハーフが超Ｍで

彼女とビルの谷間でいかがわしい行為に及んだ事もあったそうだ


「最近マニアックな情報はないの？」

「お姐さんこそ教えてくれよ」

「そうねえ、駅のトイレで女装子が着替えていて

　ナンパされるのを待ってるみたいよ」

と出鱈目な情報を伝えると

「そうなんだよな、この町にはそう言うの多いんだよ」

エッ？そうなのと思いつつ

「この間も朝帰りの女装子を２人も見つけたわ

　その後ろにストーカーらしき男がついて来てたわ」

これはホントの話だ

日曜の朝に見かけたのだが

駅の改札を明らかにそれと判る２人の女装子が別々に出て来た

彼女たちに面識はなさそうで離れて歩いていた

新宿２丁目じゃあるまいに珍しいわと思っていたら

その後ろから男性がついて来ていたのだ

この３ショット、かなりのインパクトだった


「朝方駅の周辺をパトロールしていたら

　素敵な出会いを求めた女装子に巡り会えるかもよ」

彼は私の話を真剣に聞いている

それにしても店内にもマニア、外にもマニア

祭りだったのかしら