土砂降りの木曜日

昨夜はサナエさんが

「鼻血が止まらない」とかで休んだ

平日は、私とヒデミさんとサナエさんの

３人で営業している

ママは、最近また週末だけしか

出なくなった

まあ、雨だしヒマだろうと

思っていたら

営業前からアベのママがドアを開ける

「看板ついてたから良いわよね～」

私とヒデミさんは化粧をしている最中だ

ウチの店は１０時開店なのだが

９時半頃から看板に灯りを入れる

「どうぞ～、入っちゃってェ～

　　　　　　　オバケから妖怪に変身しているけど

　　　　　　　　　　　　　　　　　　気にしないでね～」

　　　　　　　　　　　　　
アイラインを引きながら声をかける

お客さんも慣れたもので

勝手に水割りを作って飲んでいる

大急ぎでメイクを終えると

次のお客さんが入って来た

「あら～、ミッちゃん皆勤賞ね」

３日連続のご来店だ

今日は忙しくなるかもしれない

と思いつつヒデミさんが飲み過ぎない事を祈る

何たって酒乱だから

気が利かない上にクダまかれたら堪らない

そこへ今度はイケメンの高石さんの登場

珍しく女を連れていない

いつもは近所の店で働くアスカと来るのだが…

彼は、面識のあるミッちゃんに話しかけている

ラッキー！

スタッフの手が足りない時は

お客様同士が仲良くしてくれるのが一番だ

その間に洗い物を済ませる

アベのママが「スシ取ろうよ」と言ってくれた

近所の店から出前を頼む

そこへ今度は厄介なお客様“谷ちゃん”が来店

この人をどこへ座らせるかが問題だ

すぐ他のお客さんとトラブルのだ

更にヤスミが乱入

この女も面倒な子である

鼻っ柱が強くて男の客とよく喧嘩する

本来はサナエさんの担当なのだが

ヒデミさんとも仲が良いので彼女に任せよう

ところがヒデミさんが動かない

まさか、もう酔ってるのか？

谷ちゃんがヤスミに話しかける

この２人を一緒にしたら絶対にヤバイ

だがこの際仕方ない

少し様子を見よう

ヤスミは職場の鬱憤をまくしたてる

「アタシが目の上のタンコブみたいで

　　　　　　　使えない男のスタッフから
　
　　　　　　　　　　　　やっかまれているのよ～」

谷ちゃんは最初はウンウンと黙って聞いていたが

その内ヤスミがカチンと来る様なツッコミを入れだした

始まってしまった

ハブとマングースの戦い

もう好きにしな！

敢えて放っておく

あと１時間の辛抱だ

電話が鳴る

「小田だけど、今日何時まで？」

アスカと一緒に来るから

閉店時間を延ばして欲しいと言う

アスカは高石さんの彼女だ

「店には出ていない」はずなのに…

小田ちゃんは、以前

高石さんと一緒に飲んでいたアスカに一目惚れして

彼女が働いている店に行った様だ

こりゃバッティングしたら修羅場かも

酔っ払いのヒデミに耳打ちして

あした仕事の早い高石さんに

やんわりと帰宅を促してもらった

「やべえ、こんな時間かよ！」

そう言って支払いを済ませてくれた

ヤスミと谷ちゃんは凄い事になっている

小田ちゃん達のテーブルをセッティングする

外は雨が強くなっている

どうしてこんな日に限って忙しいのだろう


サナエさん、明日は鼻血止めてよ