夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

房総の山が東京のビルになる。そして高島屋は残った

2009年04月21日 | Weblog
 房総半島は関東北部から流れて来た川砂が堆積したきめ細かい粒で、良質のコンクリート骨材になるのだと言う。それがあだとなり、高度成長期時代、膨大な山砂が首都圏の開発に使われた。千葉県富津市では高さ200メートルの山が10年間で消えてしまった。そして近年は羽田航空の拡張工事で再びそれが繰り返されていると言う。
 羽田空港は別として、ここに現代の日本の浅ましい姿がありありと見える。美しい自然を破壊し、墓石(「はかいし、はかいし」の駄洒落ではありません。念のため)のような街を作り上げる愚かしさ。
 東京が金儲けの出来るメッカになっているから、カネに餓えた亡者どもが集まり、金儲けの算段をする。しかし現在は都心のオフィスビルは空き室率が更に高くなっていると言う。特に外資系企業の落ち込みが大きいそうだ。まさに金儲けのためだけに東京に進出して来たのである。ただそのためだけに、自然が壊され、街もまた無秩序になって行く。数日前の新聞にはウィーンで旧市街を環状に走る路面電車の運行が始まったとの小さなニュースが載った。そんな事、今の東京ではとても考えられない。とにかく、効率優先なのである。
 交通事故撲滅の標語で「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」だったと思うが、そうしたキャンペーンが行われたのはそんなに昔ではない。それなのに、効率の良さだけを考えている。
 そうした中で、東京の日本橋高島屋が東京都の重要文化財に指定されたニュースには希望が見える。重文指定で店側は不便な事もある。店にとって売上に影響する場合があるだろう。それでも高島屋は応諾した。本当にいい話である。
 8階建てだから、守銭奴に言わせれば、勿体ない事限り無し。すぐ目の前とも言える東京駅の西側では、重文の価値が十分あると言われている東京中央郵便局の建物が取り壊されて超高層ビルになる計画が進められていた。それに待ったが掛かっている事も影響しているのかも知れないが、何も東京を超高層だらけにする必要は無いのである。
 オフィスビルは空いているし、人気の高いのはごく一部地域に限られる。これまた金儲けの効率が良いからである。根っからの東京人を自負している私は、たとえ育った所が東京の「田舎」であっても、東京に強い愛着を持っている。超高層を美しいと感じるのは美感の違いだからしようが無いが、ヨーロッパの古都の落ち着いた美しさを写真で見るたびにため息が出てしまう。落ち着いた風情の佃島だって、超高層の乱立で見る影も無くなった。
 それが東京だよ、と言うのかも知れない。無秩序でアンバランスな街。それが東京だよと言われて、私は黙ってはいられない。高層マンションが建つのは、住宅が不足しているからだけではないだろう。土地を徹底的に利用して儲けたいのが大きな理由であろう。ペットも飼えないそんな建物ばかり増やして何になるか。
 旧丸ビルに勤務していた友人がその建物の老朽化に困っていたのは確かである。だが、それは建物の耐用年数を低く見積もって建てて来た結果である。現在のマンションの耐用年数はイギリスでは100年以上らしいのに、日本ではわずか40年だと言う。そんな短期的な建築思想で東京を、日本を駄目にされるのは許せない。造って壊してまた造って、それで儲けようなどとは浅はか過ぎる。