夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

ハードディスクからのデータの取り出しは駄目だった

2010年06月15日 | Weblog
 壊れたハードディスクからデータの取り出しを依頼していると書いた。初期診断は無料。初期診断で復旧率90%と出た。それでそのまま依頼した。料金は成功報酬で、すなわち、欲しいデータが復旧しない限り、料金は無料になる。成功報酬の上限は見積もりでは12万円。欲しいデータは6冊分の本の原稿だから、一冊当たりにすれば決して高くはない。授業料としても高くはない。
 納期は依頼日から1週間以内となっているのだが、一向に連絡が無い。多分、難しい事になっているのだろうと思っていた。そうしたら2週間経って、残念ながら復旧は出来ないと連絡があった。思いの外、傷が深かったと言う。私も残念だが、一生懸命に作業に取り組んだ会社も残念な事になった。何しろ、ただ働きになってしまった。
 初めはあきらめていたデータだが、復旧可能と聞くと、欲が出る。そこでとても楽しみにしていた。支払いの12万円はきついけれど。だから2週間、それらの原稿にはまるで手を付けなかった。と言うのは、少々古いバージョンなら、別に保存していたデータがある。もちろん決定稿にはかなりの距離のある物だが、自分の原稿なんだから、なんとか復旧の手はある。ただ、とても時間が掛かるので、12万円と引き替えにしたのである。

 駄目だと分かった時点で、きのうから、その一つに取り組み始めた。もちろん、決定稿と同じにはならないが、実は別の大きな収穫があった。と言うのは、決定稿には遠い原稿なので、かなり手を入れなければならない。改めて見直して見ると、かなり改善すべき箇所がある。それをしてみたら、覚えている決定稿とは大きく違って来てしまった。もちろん、現在の考え方の方がずっと優れている。決定稿の不足している部分が自覚出来たから、それが分かるのである。
 つまり、A1→A2→A3→A4→A5と変化して来た内容は、前の内容を踏襲しての事だから、結果としてA1とA5はかなりよく似ている場合が多い。けれども今回はA2、A3、A4、A5が無い。特に決定稿のA5が無いのは致命的で、考え方は大きく振り出しのA1に戻るしか無い。A1とA5はよく似ているとは言ったが、A5を経た上で改めてA1を見直すと、その不完全さが分かるのである。

 何を言いたいのかと言うと、発想の転換の重要性である。初心に戻る事の大切さでもある。自分の中では順調に進んで来ていると、どうしても発想の転換や初心に戻る事とは距離が遠くなる。事故が起きれば良いと言う訳ではないが、事故はそうしたきっかけにはなる。災い転じて福と成す、のことわざがある。
 変な話、12万円掛けずに、それ以上の成果を得る事が可能になった。もちろん、どこかの出版社がこれらの原稿を認めてくれての話ではあるのだが、私なりに大きな成果だと思っている。
 私がデータ復旧の依頼をした会社は東京・銀座の日本データテクノロジー。親切な対応に感謝している。二度とデータが失われてしまうような事はすまいと、今はきちんと別の所への保存を心掛けている。途中でのこまめな保存も忘れない。
 だから再びお世話になる事は無いだろうが、私の記憶からは消えないだろう。本当はこうした仕事は無いに越した事はないのだが、不幸にして泣く人も居て、助かる場合も多いのだろうから、重要な仕事ではある。何とも複雑な気持である。