夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

ローマ字入力のベテランさん、教えて下さい

2010年06月03日 | 文化
 愛用のキーボードが私の使っているマシンでは新しい方で使えなくなって困っている。私のキーボードは直接仮名を入力する親指シフトキーボード。一つのキーに二つの仮名が割り当てられていて、下段にある仮名を入れる時はそのまま素直にそのキーを押す。上段にある仮名を入れる時は、その手の親指を同時に使い、親指でJISキーボードでは変換キーになっているキーを押す。
 だから一つのキーに二つの文字があっても、その二つの文字は全く別の指の動作を必要とするから、その一つのキーは同じであって同じではない。指がすっかりそのように覚えてしまっている。
 それに対して、ローマ字入力ではそうはならないと私は思っている。と言うのは、「は」を入れる時、右手の人差し指でHを押し、左手の小指でAを押す。つまり「は」はあくまでもH+Aなのではないのか。左手の小指は単独なら「あ」だが、Hと組み合わせられる事で「は」の一部になっている。だから左手の小指は常に「あ」とそれ以外の「あ」を母音とする「か・さ・た・な・は・ま・ら・わ」のほか、拗音なども含めて、様々な仮名の一部も担っている。その点で、親指シフトキーの場合の左手の小指とは違う。親指シフトの場合には、左手の小指は単独では「う」であり、親指と同時では「を」になる。つまり、指はとても単純な事しかしていない。そうした違いは脳にとっては大きく違うのではないか、と思っている。

 そうした状況から、私はローマ字入力では、常にローマ字が頭にあるのではないか、と疑っている。「は」と思えば、瞬時に右手の人さし指と次いで左手の小指が動くのだとは思うが、それは明確に仮名の「は」ではなく、あくまでもローマ字のHAなのだろうと思っている。
 ベテランさんの答を聞く前に結論を出すのは早すぎるのだが、我々は常に漢字仮名混じりで日本語を考えている。難しい漢字が多ければ仮名の多い漢字仮名混じりで考える事になる。それはごく自然な事である。そしてローマ字では絶対に考えていないと思う。それに駅名などの表示では、例えば「東京」はTOKYOであって、TOUKYOUではない。原則として、日本語変換はTOKYOでは出来ないはずだ。同じローマ字綴りであっても、このように違いがある。それは「とうきょう」と入力してそのまま「東京」になる仮名入力とは大きな隔たりがあるはずだ。

 親指シフトでの入力では、キーボードを意識する事は絶対に無い。もちろん、それは熟達の程度によるが、私の場合、頭の中にキーボードを思い浮かべようとしても出来ない。でも指は瞬時に思ったそのキーを押している。だから常にホームポジションを守らないと、左右のどちらかに一つずつずれたキーを押してしまう事になる。指には目が無いのだから、仕方がない。
 私がお聞きしたいのは、ローマ字入力に熟達すれば、キーボードを意識する事は無くなるのかどうか、である。言い換えれば、頭の中のキーボードではアルファベットのキーの位置が分からなくなっているかどうか、である。頭では分からないが、指が覚えていると言う状況になれるのか、である。

 ただ、それが可能だとしても、私がローマ字入力に切り替える事は無い。仮名入力と両立する事は難しいだろうと思う。幸いに、マックの親指シフトキーボードは2台あるから、たとえ一つが壊れても大丈夫だ。そしてそれも壊れたら、ウインドウズに乗り換える手もある。
 だから私のために、なのではない。キーボードと言えばすっかり英文タイプライターのキーを踏襲したキーボードしか無い現状を打破したいからである。日本人に変な遠回りをした考え方を押し付ける権利は誰にも無い。日本人の圧倒的大多数は仮名タイプの代わりにパソコンを使っている。それなのに、開発者が技術バカと言うか、英語のコマンドを打ち込む必要のあったパソコン時代からちっとも進歩していないから、こうした現状に甘んじなくてはならない。
 英語のタイプライターのキーの配置はどうやって生まれたかご存じだろうか。あれはわざわざ打ちにくい配列にしてあるのだそうだ。昔のタイプライターは長い棒の先に活字が付いている方式で、早く打つとその棒がからまってしまう。それを防ぐために、わざと早くは打てない配列にしたのだと言う。
 これは英語の事情だから、日本語をローマ字にして打つ場合には事情が異なるが、「あさ」などが打ちにくいのは誰も同じだろう。日本語の事を全く考えずにここまでやって来てしまった。あまりにも経験として長いから、今さらどうにもならないのだろうが、だからと言って、これではあまりにも不毛だと私は思う。