秋を表題にすることが多くなった。
おだやかな秋。
刈り入れの済んだ田に、おだやかな秋の陽がふりそそぐ。
山を見やれば、紅葉も少しずつ始まっている。
おだやかな秋そのもの。
妹が運転するワーゲン。
田んぼの合間を走る。
西瓜畑があり、北里大学があり、アパート群があり、向こうの山の手前には、長く伸びた駅舎が迫ってくる。
上越新幹線浦佐駅。
ブログで読んだので概要は分かったけど、ボランティアで支えている店、夏はクーラーがないので休館などと、都会では絶対にあり得ない。人は来ない。この種の店はありすぎて、人が来ないでは経営が成り立たない。東京近郊に住処を持ち、東京でしか友人たちと会う場を持てない妹たちの弁。
煩雑な東京を離れて、地方で暮らす人たちもいる。
今春のトレッキングで山仲間になった女性も、東京を離れて湯沢のマンション暮らし。車を持たず、夫婦で歩く。おかげで山や野に親しむようになったと聞く。
都会には都会の良さがあることも知っている。
利便性に長けていることはこの上もない。
だが、
ビル群を見上げたら、目まいがして多分卒倒するだろう。
もちろん私のことだ。
毘沙門堂の近くに車を駐車。
銀行裏の目立たない場所に、蔵づくりのその店はある。
入り口のドアを開けたら、見覚えのある背中がそこにあった。
友人だった。
前々日はカウンターの中、この日は逆の立場か。
オーナーがいた。
先ず、オーナーに妹たちを紹介。それから友人を。
蔵造り、太い柱、白壁。趣きがあっていい店だ。
大家さんが、蔵を居酒屋風に造り替えて、人を招いた跡をそのまま使っているという。テーブルも椅子も、何もかも。それにしても粋な趣味人だったんだろう。
店の名前は伏せるが、
お茶を飲みながら のんびり おしゃべりしたり 絵を鑑賞したり 情報交換をする場所です とある。
ギャラリー作品展
日本語クラス
英語レッスン
着物を着よう会 などなど。
オーナーはすぐ帰って、友人がカウンターの中に入った。
ボランティアは何人もいるが、都合の悪い日だってある。
私はこの種の仕事は苦手。
この店も、友人がいるから来る。
すぐ下の妹は、今までのギャラリー展示作品を載せた写真集に目を通し、友人との会話はその下の妹。陽気でおしゃべり好きは友人と妹、よく似ている。
ここで3人展はいかがですか。
いいですね。
予約しておきましょうか。
待ってよ、待って。
私、自信がない。
下手くそだし、画材いっさい物置だ。絵の会にも出席できなくなった旨を報告済みだ。
前に描いた絵がいっぱいあるじゃない。
冗談はやめてよ。
あるにはあるけど、ろくな絵じゃないんだから・・・
話はつきなかったが、帰りの車中で、展示するとしてもスペースが足りない、作品が大きすぎて店の中に収まりきれない、と妹たちは言っていた。
3人展・・・
いつの日か実現するとしたら、いつもの友の店のギャラリーだろう。
で、Eメールで送ってきた妹たちの作品の一部。
陶芸歴10年は過ぎているすぐ下の妹の作品。
賞のない公募展に出展。かなり大きな器らしい。
書道師範免状を持つ妹の書と、最近やりだした表装。
これも書道展に出展した作品。
母の退院話は、引っ込んだり、また浮上して引っ込んで、来週火曜日が退院日と本決まり。
あと1ヶ月、あるいは1週間以内ということもあり得ます。
そう告げられてから1ヶ月が経過している。
寿命だから本当のところは分からないのだろう。
担当医は病室に顔を出さなくなった。
看護士長が伝えてくる。
妹たちが病室にいたとき、
老人ホームの施設長がやって来た。
母の手をさすり、足を揉み、大きな声で語りかける。
母が反応した。
大きな反応があった。
きくえさん、帰れるよ。みんなが待っているよ。
懸命にマッサージを施す姿に、私たち姉妹は涙した。
終の棲家・・・
そう思っていただきたいのです。
私たちは最後までおあずかりさせていただきます。
母の最期は、老人ホームか診療所なのか分からない。
だが、こうして生きている。
おだやかな秋、
今日は雨模様だったが、時々止み寒さもない。朝も歩き、診療所にも歩いて行った。
診療所で、昨夜の風は凄かったですね、と言われて驚いた。全然知らないで眠っていたようだ。
雨上がりの山が、ずいぶん紅く染まっていた。