昨日、今日と、小春日和。
落ち葉や枯れ枝を押しのけて、芽を出し、葉を広げ、花が開いた。
可憐な花、キクザキイチゲ。
キンポウゲ科の多年草。山野草だが、我が家の庭に春を告げる花として咲く。
オオイヌノフグリよりも早く咲いた。
花言葉。静かな瞳・追憶。
花言葉のやさしさに引き寄せられるように、外気のあたたかさに誘われるように、デジカメ片手にウォーキング開始。
雪消えの早かった近所の庭のクロッカス。
黄色は幸せ色そのもの。
学校の庭。桜の枝に春陽が眩しい。
学校の裏手は、田んぼも道も一面の雪原。そして八海山。
通院する病院前で撮った八海山。昨日。
西山丘陵地は雪が深い。三月も終わるのに、まだ雪の壁が厚い。
木曜日は、院長の病室回診日だと思った。
だから外来が空いているのか。
すぐに呼ばれた。
診察室は院長だった。
あれ、と思ったがどうでもいい。
退院してから二度目の診療である。
心なしか、院長もゆったりと落ち着いている。
退院後の身体の状態とか、スポーツセンターに通っていることなどを話すことが出来た。
母が何度目かの入院・・・
あれは平成十四年頃・・・
院長が主治医だった頃・・・
病室に回診にきた医師に、ベッドから手をさしのべて抱きついた母。
先生、会いたかった。先生。
よしよし、大丈夫ですよ。早く治しましょうね。
その頃の医師は小太りで、患者受けするようには思えなかった。
母は、入院中はむろん、退院後もしばらくは医師の名を口にしていた。
あれから十年になるのに、少しも年齢を感じない。
痩せて、スリムになって若くなったのだろう。
ただそれだけのこと。
会計待ち、薬待ちの合間に文庫本に眼を通し、心の奥では、途切れた記憶が甦ったりする。
この病院の記憶ではない。
背中に、痛みを伴うおできが出来て切開してもらった医師の記憶。
私はまだ若かった。三十代だったか。
その医師も熱血医師。四十歳ぐらいだった、と思う。
切開した傷跡が治まらず、何度か通院した。
受診最後だという日、なぜか看護士も誰もいなくて、医師は湧かしていたらしいコーヒーを飲ませてくれた。
なんだか寂しくなるね。今日でお終いだと思うと。
そんなことを云った。
頭の中がかーっと熱くなったことだけ覚えている。
勿論、こんなことは他言しない。
その後、その医師は見かけなくなった。
どうでもいいこと。
人生の、塵みたいな思い出。
こんな、小さ点みたいな思い出、唐突に目の前をよぎったりする。
春。
キクザキイチゲ。
追憶。
お家ご飯。
代わりばえのしない、豆腐を使った二品。
塩麹木綿豆腐サラダ。
木綿豆腐ステーキのあんかけ。
塩麹仕込み鶏もも肉と野菜の炒め蒸し煮。