千艸の小部屋

四季折々の自然、生活の思いを、時には詩や創作を織り交ぜながら綴りたい。

お話 かたつむりのマイマイくん

2015年12月26日 | 日記

 すこし寒くなってきた晩秋のことです。

 マイマイくんは、葉っぱをむしゃむしゃ食べていました。
 誰かが近づいてくる足音がします。ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・いつものおじさんの足音です。
 このところ頻繁におじさんはやってきます。
 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・
 畑の大根を抜いているようです。
 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・
「白菜も大きいぞ!」
 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・
「キャベツは虫食いだらけ」
 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・
「ネギは干したのでいいか」 何やらブツ、ブツ、ブツ・・・

 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・

「ホウレンソウ、アスパラ菜、ターサイ、チンゲンサイと・・・」ブツ、ブツ、ブツ・・・

 ドタッ、ドタッ、ドタッ・・・

 あ、大変だ。こっちにもくる。

 隠れなくちゃ。

「マイマイ、土の中にもぐりなさい」

 マイマイのお母さんが叫んでいます。

 隠れる時間がなくて、マイマイはチンゲンサイの葉と葉の間に潜り込みました。

 お家に入ったおじさんが、おばさんに何か言いました。

「向こうで洗うだろうから、ざっとでいいよ」
「そうね。そうするわ」

 おばさんは水道水で葉っぱ類を洗いました。(ボクもいるんだけど・・・)ボクは殻の中で丸くなったままです。おばさんはボクに気がつかないで、軽く水切りをしてザルに乗せました。

 重い大根、白菜から、おじさんが箱に詰めていきます。
 葉物は一番上です。

 マイマイは殻の中にとじこもったまま、じっとしていました。
 ボク、どうなるんだろう。心配になりました。ママのそばにいればよかった。だけど、もう子供じゃないんだからあっちに行きなさいって追い返しただろうな。ママは心を鬼にして、ボクたちをひとり立ちさせる。離れたところで見守ってくれているんだけど。早く成長して大人にならなくちゃ、そう思っていたところなんだ。

「柚子胡椒入れるの忘れた。ま、いいか。次ぎにしよう」おじさんの大きな声が響きます。

 すぐに、運送屋さんがやってきました。若いお兄さんだと思うけど、「野菜」と書いてあったし、扱い方は丁寧でした。
 運送会社で冷蔵車に移されました。
 翌日の午前中だったかな~。

 ピンポン!!ピンポン!!
「宅急便で~す」
「はあい。ご苦労様」

 女の人が冷蔵庫の野菜室を開けて、マイマイが隠れていたチンゲンサイや葉っぱ類を入れました。

 もうしかたがないや。どうなるかなんて考えるのよそう。
 ボクはすやすや眠ってしまいました。

 この家には、子供たちがいるようです。
 午後になって、子供たちが帰ったのか、とたんににぎやかになりました。
「手を洗ってね」
「うがいもしてね」
「はあ~い!」
「はあ~い!」
 この日は、マイマイが隠れていたチンゲンサイはそのままでした。
 ああ~、よかった。
 
 他の野菜を出して、冷蔵庫のドアは開けたり閉めたり、女の人は忙しそうでした。いい匂いもしてきます。

 子供たちの声や女の人の声、とてもにぎやかです。
 パタ、パタ、パタ。
 子供たちのスリッパの音だと分かりました。
 二階から一階へと下りたり上がったりしているようです。

 お腹空いたな~。でもまた眠ってしまいました。

 次の日、冷蔵庫の野菜室が突然開いて、ボクはびっくりしました。心臓が止まるかと思った。
 お腹が空いて、お腹が空いて、がまんできず、チンゲンサイの葉っぱをむしゃむしゃ食べていたときだったから・・・

 女の人が驚いた顔でマイマイをみつめました。

「かたつむりがおるで。びっくりポンや!」
「ママ~、どうしたの」
「かたつむりがおる~」

「あのかたつむりクンが生まれ変わったのかな~。よかった。うれしい!!」

 女の子は大喜びでした。



 女の人は棚の上からケースを下ろして、川砂と腐葉土を敷き、野菜といっしょにボクを入れてくれました。ときどき乾燥しないように霧吹きで土を湿らせてくれます。
前のかたつむりを育てたとき、いろいろ調べたようでした。ボクたちの殻の栄養には、カルシウムが欠かせないこともね。
 女の子は、ボク、マイマイがやってきたことを、神様からの贈り物だと思ったようです。

 女の子は五歳。
 小動物が大好きなようです。マイマイのボクとかこがねむしもね。

 お兄ちゃんは小学一年生。
 やっぱり同じかな~。カマキリクンとかね。

 お父さんも、いてるで。あ、やっぱ、似た親子やな~。

 そんな訳で、ボクはこうして、このお家で暮らしています。

 女の人、つまり子供たちのママですが、先日も新潟のおばさんと電話でお話ししていました。

「かたつむり元気よ。葉っぱもいっぱい食べてる。時々姿が見えなくなって、どうしちゃったのかな~って、心配になってね。そしたら土の中に潜って寝ていたみたい」

 女の人も、小さな子供のときから、小動物、小鳥、犬や猫が大好きだったようです。

 おじさん(おじいさんでは可哀想、おばさんもです)は、菜園で野菜を作っています。無農薬だから、ボクたちマイマイや青虫クンが集まります。美味しい野菜を食べさせてもらっていました。



 ボク、マイマイはとっても元気です。キャベツの葉っぱなど、野菜を食べて大きく成長しました。

 お家の子供たちとも仲良しです。

 女の子は、お母さんが編んでくれた、ファーのお帽子がお気に入りです。妖怪スィッチは女の子が作ったんだよ。メダルがセットできる仕組みなんだって。器用だな~。ボク、驚いちゃった。




     長岡市立科学博物館で、「かたつむり展」をやっています。
     開催期間は 12月27日(日) 明日迄です。

 皆様、よいお年を。


心がやさしい日

2015年12月13日 | 日記



心がやさしい日は
やさしい絵を描きたくなりました
こんな日は
ちひろみたいな
やわらかなタッチで絵を描いてみたくなりました

雨音も聞こえてこない
細やかな
冬の雨の日
心がやさしい日に
やさしさの中に小さな花がいっぱい咲きました

ちひろのような
やさしい絵を
白い紙に思い描きながら
一日を
小さな花たちに囲まれて
暮らすのです

こころがやさしい
こんな日は・・・

                    (azumi)

 ちひろのようなやさしい絵が描けるわけでもありません。
 ああいう絵がazumiさんに似合う・・・
 友にいわれたこともあります。
 そんな絵を想像では思い浮かべることができるのです。でも、だめですね。少しだけ心がやさしい日は、空想だけで心に描けるのです。
 詩もね。

 下手なイラストは、机の中から見つけました。何年前でしたっけ。


 雪が降りません。
 エルニーニョ現象で暖冬がつづくとかいわれています。
 雨になったり、曇ったり、霜が降りたり、晴れたり、また曇ったり、風が冷たかったり、こんな日々の繰り返しです。
 
朝散歩には好都合です。雨の朝以外は、夜明けの頃家を出ます。山々が目覚めるのもあっという間です。防寒具に身を包んでいるので寒くありません。霜が降りた朝は、手袋の指先がかじかむので分かります。
でも、この二、三日、寒くないです。

 と思っていたら、寒くなってきました。
 外は雨です。

 風邪が流行っているようです。
 夫は昨夜忘年会だったし、楽しかったようで、何度も同じ話しをします。
 風邪菌もらわないようにしなくちゃ・・・

 雪が降らないのが幸いしています。ここ五日間の朝散歩で撮った写真です。





 少し明るくなってきました。



 ぼんやりとした西の空です。



 霧の朝、暗くてよく見えません。



 車のライトがやさしく感じます。



 冬至の頃まで、夜明けが遅い日がつづきます。
 夜明けの頃を歩くっていいものですよ。
 さわやかな心で帰宅します。

 歩けるのは、いつまででしょうか。

 晴れた日の八海山です。

 10:45 自宅玄関テラスにて。