千艸の小部屋

四季折々の自然、生活の思いを、時には詩や創作を織り交ぜながら綴りたい。

六月の花

2017年06月25日 | 日記

  ほんの小さな出来事に
   愛は傷ついて
  君は部屋をとびだした
   真冬の空の下に
  あみかけていた手袋と
  洗いかけのせんたくもの
   シャボンの泡がゆれていた
                (財津和夫 歌 作詞 作曲 サボテンの花)




 六月になると咲くサボテンの花。
 今年も咲いた。
 遅かった梅雨入り・・・
 雨が少ない。
 
 今日はお昼過ぎから降り出した。
 玄関先のサボテンは雨に打たれることもなく花開いている。
 二つの鉢で、併せていくつ開花しただろうか。
 近所からの頂き物だった。
 その家はすでになく、空き地となり、道路が拡張された。
 時の経つのは早い。
 うっかりしていると自分だって除け者にされてしまう。
 アイデンティティーも見失いがち・・・
 やばいですね。
 玄関の階段を上る時、オレンジ色のサボテンの花が笑顔で迎えてくれるようだ。
 それが救いだったりして・・・


 T君の作品展


 ノートに記帳したら、家にお礼に来たのでまた出かけた。
 近所のホールが展示会場だ。

 腕が上がった。
 アケビの蔓も使うようになった。
 魚沼スカイラインで蔓を探したのだそうだ。
 四、五日水槽に浮かべて、しなやかな枝にするらしい。






 
 昨日、友の店に行った。
 お客で混んでいたので、話はあまり出来なかった。
 ミントをトッピングしたアイスクリームが美味しかった。
「T君の作品観た?」
「二回観に行った。上手くなったね」
「そうだよね」
「ホント!そう思う」


 大杉集落の名前にもなっている大杉。
 樹齢を調べても探せなかった。
 かなり古い樹のはずだ。




 ヤマアジサイが咲いている。
 一本の枝から花数が増えた。
 雨の中、様子を見に行った。



六月の詩

2017年06月03日 | 日記

 小父さんは、鳥籠を手にしたまま亡くなっていた。
 かつて、洋館のゲストハウスの管理人をしながら幼稚園の小鳥の世話をしていた小父さん。

 お兄さんは小父さんとしか意思の疎通が出来なくて、その会話は小鳥のさえずる「ポーポー語」だった。
 親や他人とは会話は出来ないけれど、小鳥のさえずりは理解できるお兄さん。
 そしてお兄さんとただ一人会話出来るのは小父さんだけだ。

 小鳥たちは兄弟の前で歌を披露し、息継ぎも惜しむくらいに一生懸命歌った。

 お兄さんは、あらゆる医療的な試みをしたにもかかわらず、人間の言葉を話せない。

 青空薬局で棒つきキャンディーを買って、
 その包み紙でことりブローチをつくって過ごす。

 やがて両親は亡くなり、お兄さんは幼稚園の鳥小屋に行き、小鳥のさえずりを聴く。

 小父さんは働きながら、夜はラジオに耳を傾けた。



 静かで温かな兄弟の生活が続いた。

 やがて時は過ぎ、お兄さんも亡くなって、

 小父さんだけの日々となる。いや、小父さんの人生が始まる・・・


 小鳥はお兄さんの言葉を運んでくれているのだ、だからか弱い体でこんなに一生懸命歌うのだ、と小父さんは思う。
 すぐに別の一羽が新しい歌をうたい出す。
 続けて二羽、三羽と歌が重なってゆく。
 うつむいたまま、いつまでも小父さんはじっとしている。

                                (小川洋子著「ことり」朝日文庫)

 淡々と静かな物語。
 だから静かなままで、時折本の存在すら忘れた・・・



 小鳥たちがさえずり、緑濃い季節になった。

 兄弟が住んでいた家・・・
 父の書斎があった離れ、イチイの木、木蓮、雪柳、木陰一面の羊歯、離れを覆う蔓・・・
 幼稚園の鳥小屋の緑・・・
 ゲストハウスの緑・・・

 何ヶ月もかかって読んだ。



 
 南魚も緑濃い季節になった。
 アヤメ科の花たちも元気いっぱい咲いている。

  ヒメアヤメ





  ヒメシャガ
       





 
 



  山々の緑が葉音を奏で
   緑の木々が詩い
   小鳥たちが詩い
   花たちが詩う
   六月の詩(うた)