千艸の小部屋

四季折々の自然、生活の思いを、時には詩や創作を織り交ぜながら綴りたい。

夏物語

2013年08月25日 | 日記






 重々しい引き戸を開ける。
 玄関の上がりがまちの奥に、一目で酒蔵と思える重厚な扉と錠前。
 左手の木の階段を上がる。
 トン、トン、トン、トンと響いたスリッパの音は、広い空間を流れる音色にかき消された。

 誰の歌声か不明だったが、「アメイジング・グレイス」の美しい歌声。

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,
Was blind but now I see.

 アメイジング・グレイス
 何と美しい響きであろうか
 私のような者までも救ってくださる
 道を踏み外しさまよっていた私を
 神は救い上げてくださり
 今まで見えなかった神の恵みを
 今は見出すことができる




 雨上がりの夏の日、
誰もいなかったのが幸いした。

 外観は、まったりとした夢心地に私を誘う。



 四方を囲んだ書棚。沢山の蔵書。
 ソファに身を任せて、お気に入りの本を読んでいたい気分。




 食べられる木の実の絵。




 ガマズミ、コバノガマズミ、ナツハゼ、アケビ、ミツバアケビ、ヤマボウシ、サンカクヅル、ヤマブドウ、サルナシ、エビヅル。

 サルナシを食べてみたかった。キウイの味がして美味しいとか。
 ヤマボウシも美味しい。熟すとすぐに落下。山では滅多に出会えない。
 校庭のヤマボウシを拾ってきて、中島みゆきのCDジャケットの上に乗せ、デジカメで撮ったことがある。写真で遊ぶ面白さに気づいた頃だ。




 脱線するが、ここ何年来、好きな歌い手は中島みゆき。彼女のスローバラード・・・
 こんな空間で、一人だけで聴いていたい。

 寄り添う風

 理由もなく会いたいのに 理由を探してる
 会わなければならないのと 理由を探してる

 人恋しさは諸刃の剣
 かかわりすぎて あなたを苦しめるくらいなら

 寄り添う風 それだけでいい あなたの袖を揺らして
 寄り添う風 それだけでいい 私は彼方で泣く
 寄り添う風それだけでいい あなたの袖を揺らして
 寄り添う風それだけでいい 私は彼方で泣く



 肌寒い、夏の雨上がりの日、
口ずさむだけで、しんみりしてくる。
 よいしょと、心を持ち上げる。

 天然ドライフラワーの絵。




 ヤマユリ、サルトリイバラ、シシウド、オオウバユリ、カラスウリ、エゾアジサイ、ツルウメモドキ、ノイバラ、オヤマボクチ、ワレモコウ。
ワレモコウ・・・好きな花。

 八海醸造 八蔵資料館入り口。




 また、来たい「空間」になった。
 テーブルの上に置かれたノートに、「〈さとや〉や他の場所は教えるけど、絶対誰にも教えない私の空間になりました。大学のレポ書きや読書に来たいです」と、来訪者が書いていた。

 魚沼の里 遊歩道。






 樹木はまだ若木だが、秋もいいだろうな。ナナカマドが色づき始めたという。
 静かな秋を満喫しに来たいものだ。


chiefの思い出

2013年08月21日 | 日記

 平成15年9月26日 (日曜日)
 肌寒い雨降りの朝だったと思う。
 朝早く、Kさんから電話が来た。
「chiefが橋の下にいます。小学校の行事があるので、申し訳ないのですが迎えに行っていただけないでしょうか。お父さんしか頼む人がいないのです」
「よし、分かった。そこから離れないように言ってくれ」
 夫は「困った奴だ」と言いながらすぐ飛び出した。
 義侠心が強いというのか、こうと思ったら自分を曲げない。情けある者には倍の情けを返す。自分を嫌う人間には意地でも近づかない。
長州人だとつくづく思う。幕末だったら倒幕の血潮がみなぎったか。俺には関係ねえ、とあぐらをかいてそっぽを向いたか。余談はさておいて・・・

 全身真っ黒に汚れたchiefが車から降りた。夫が後部から古びた自転車を降ろす。
「お帰りなさい」
 声をかけると、彼は照れた表情で頭を下げた。髪はボサボサ、着ている半袖の Tシャツは素材も色も判別出来ないほど。そして強い臭いが鼻先をかすめた。


 朝食はKさんからコンビニ弁当の差し入れがあって、車中で食べた。
 遠慮してシャワーだけ浴びている間に、夫から彼の顛末を聴いた。
 新宿の公園のホームレスとなった現在、同じ仲間同士でトラブルがあって、大宮近辺で放置自転車に飛び乗り17号線をひた走って来たらしい。真夜中に湯沢に着いて、雨を避けるため橋の下にいた。布袋に入っていたありったけの衣類と新聞紙を被って夜を明かした。寒さに震えていたという。話に涙ぐんでしまった。
 結局帰って来たのは私たちの家だった。
 前回も前々回も、その前も、行き詰まってやって来た。

 まともな人生を歩んでいたはずの彼が、何かのはずみで道をはずした。
 浅草某ホテルの料理長にまで出世して、クラブのホステスをしていた女性と結婚。高級マンションに住み、娘が生まれ順風満帆だったはず。
 夫に話した事と私が聞いた話とは多少の食い違いがあるが。
 結婚は破局、ホテルも辞めた。
 そして軽井沢で再起。2度目の結婚。私たち夫婦と同じ教会で挙式したらしい。
 だがまた離縁することになる。流れ流れて・・・という歌の文句があるが、どうやって上越沿線にやって来たのか、そこまでは私は聞かなかった。
 スキー場のペンションでコックとして働くようになる。
 私たちの娘と、後に娘婿になるT君、そしてKさんとは仕事を通しての知り合いだった。働いていたペンションが倒産して途方に暮れていたとき、私たちの家にやって来た。
 料理人らしく自分の包丁を布にくるみ大切そうにしていた。
 私たちも仕事場を自宅に移したので、彼にはずいぶん世話になった。
 まず料理である。少ない経費で食材を生かした美味しい料理を作ってくれる。 勿論料理人だから手洗いは丁寧にする。レシピは頭に積み込まれている。
 そして驚くほどの器用さ。大工仕事も出来る。ちゃんと計って材木を切る。寸分違わない仕事場の完成。サッシの戸も難なくコンクリート壁に収まった。
 chief様、様だった。人柄がいい。いつもニコニコしていた。ただ飲み過ぎるといけない。押さえつけられた諸々の恨み辛みが出てしまう。実直な のに処世術が下手。結局あちこちと職場を変えることになったようだ。はけ口をパチンコに求めてしまう。20万円も稼いだと言っては、また手を出すからいつのまにかそのお金も無くなる。何度かそのあぶく銭で私たち家族にご馳走をしてくれた。

 彼は、私たちのことを
「お父さん、お母さん」と呼んだ。現在44、5歳だろうか。
 岩手県平泉から田野畑村近辺の生まれ。両親も他界して、故郷も縁遠くなったと、詳しいことは語りたがらなかった。
 東北岩手・・・「姫神」の旋律が浮かんでくる。
 オーム真理教に名前を悪用された苦い経験もある。そのため警察の事情聴取を何度も受けた。語る彼の顔に悲愴感はなかったが、彼が私たちを慕っていることを快く受け止めてあげようと思った。
 彼は、私の身体をいつも気遣ってくれた。
 chief、みんながそう呼んでいたニックネームである。



 春は山菜、山わさび採り。笹の葉に鋏を入れて、器用に刺身皿に敷く様々な形を作る。
 秋、キノコ採りの名人。食べられるキノコをなんでも知っている。
 私たち夫婦、娘と娘婿、軽井沢にも行ったし、裏巻機渓谷、大源太、湯沢高原と、アウトドアを満喫する。



 一週間居候をしては、また新たな職場を探し、また戻って来る。
 夫は言う。
「いつまでも居座るのはよくない。その腕をもっと活かさなきゃいけない」
 そして新たな伝手を求めて、意気揚々と帰って行く。




 娘たちが結婚、孫が生まれた頃から彼の足が遠のき始めた。
 新宿の居酒屋を任されて、腕を振るっている。その店に偶然立ち寄った湯沢の知人から聞いた話だとKさんが伝えてくれた。


 Chiefは一ヶ月我が家にいた。家業を少し手伝わせ、いくばくかの現金を渡す。一週間は食べていけるだろうと。
 私は、「もう二度とホームレスにならないで」と彼に切望した。
 請負人の「先生」が面倒を見てくれると約束してくれた。年が明けたら必ず電話する、と彼は明るく言った。
 平成15年10月27日(月) 午前中 駅まで夫が送った。

 一年後、中越地震が起きた。

 「chiefはどうしているだろう」

 私たち家族はことある毎に口にした。
 そんな会話も途切れて・・・

 「chief 今どこにいるの」  心の中で呟いてみる。

             (2008・10・28 書く)




 先日、帰省中の娘が部屋の整理をしていて写真があったと、私に手渡した。
 若いchifと、私たち夫婦が食事をしている写真だった。

 あれから、chiefは何度か湯沢に来た。
 まともな職についたようだった。
 娘婿がいるアルプの里にもやって来た。
 電話で話もした。
 私は声がつまって、「今度はこっちに必ず来てね」と言うのがやっとだった。


 そして、またぷっつんと消息が途絶えた。



 Chief、元気でいてくれるといい・・・



五十沢キャンプ場へ

2013年08月17日 | 日記

 8月16日。
 娘家族、その友だち家族、総勢13人で五十沢キャンプ場に出かけた。

 オートキャンプ場は満杯状態。
 どうにか場所をゲットできた。
 車3台で出かけたが、確保した場所に赤ちゃんがいる友だち家族の車を置いた。
 日帰りオート使用料、なんだかんだと高くついた。

 2011・7・26~7・30
 H23年7月 新潟福島豪雨で、ここ五十沢キャンプ場も大被害を受けた。
 復興費用が莫大なものだったと聞く。
 新たなキャンプ場として、再建、施設の整備も整っていた。



 日よけ用の仮テントを設置。
 早速、生後7ヶ月のジュウ君がハイハイを始めた。



 バーベキューの始まり。
 炭を熾し、鉄板で焼く作業。



 孫は明日が3歳の誕生日。



 ジュウ君、いいところに入れてもらったね。



 五十沢川。遊泳場所はこの上の方。



 子供たちと父親が水遊び。



 森林公園天竺の里案内図。
 裏巻機トレッキングコースを歩いたのが懐かしい。



 ナラ枯れで無惨だったが、カシノナガキクイムシを退治したり、ナラの木を伐採、あるいは途中から切断することで食い止めることが出来たようだ。枝々から葉が茂っていた。



 16:43 夕陽が染まっている。そろそろ家に帰る時間だ。



 オートキャンプは、1台あたり4人までの宿泊料が含まれている。5人目から規定の料金が必要。
 テント、タープ、スノコ、シュラフ、AC電源、テーブルセット、BBQコンロ、レンタルで借りられる。勿論お高くつくが、アウトドアっていいな~。

 孫のバースディパーティーは夜にやった。
 みんな!みんな!お疲れ様!の一日だった。

 大阪の家族は、今日の午後帰って行った。
 残りの家族は明日・・・

 気が抜けてしまうのはいつものことだ。



雪室へ

2013年08月13日 | 日記

 7日にも訪れたが、
娘2人そろったので、孫たちと再度雪室へ出かけた。娘婿2人は明日、14日にやって来る。

 駐車場から雪室へ。




 魚沼の里 開拓中 何が出来るのだろう。




 雪の重みで折れた桜の枝。雪室で保存。花が開いた。この暑さで、桜の花も驚いているだろう。雪室で根がつく工夫ができればもっといい。




 雪室内okatte

 まな板から器までをテーマに、料理したくなる生活を豊かにするキッチン雑貨の店。

 私には手の出ない価格だが、娘たちは手にとって念入りに見ていた。ブランド名も詳しい。さすがだ。




 幼児から、小3まで、子供たちはじっとしていられない。













 TV放映、帰省などで来訪者が多く、午前中の「雪室」見学は出来なかった。
先日は、写真は撮らなかった。

 7月6日、「八海山雪室」オープン前特別招待会での写真。




 雪深い魚沼の地で育まれた知恵の結晶を現代に再現。
 1000トンの雪を貯蔵することで、年間を通じて約5度に保たれた天然の冷蔵庫から生まれる新たな食のカタチをお楽しみください、と書かれてあった。

 スノーエイジング
 雪室熟成ケーキ (シュトーレン)
 千年こうじや   商品
 ユキナカキッチン 魚沼の食材や、千年こうじやの商品を使った簡単なレシピの実演。併設したカフェでは麹ドリンクの販売も。

 麹だけでつくったあまさけの味は絶品だ。

 メモリアル焼酎、面向未来(めんこうみらい)も楽しみな焼酎。


 駐車場への帰り道。



 雪室で身体を冷やしたせいか、帰路の足取りも軽い。

 それにしても、猛暑!猛暑!の日がつづく。
 今日になって、夜明け前からの涼しさといったら・・・
 6時に起こした小3の孫の宿題がはかどった。


ぼんぼち

2013年08月07日 | 日記

 8月もすでに7日である。

 8月4日は、菩提寺「西珠院」のぼんぼちだった。
 檀家がお布施を包んで、菩提寺の盆礼に伺うのを「ぼんぼち」と言った。
 昔のことは知らないが、8月第1日曜日と決まっているようだ。
 夫が出かけた。
 今年の盆参は大勢だった。
 法要の儀式と読経があり、参拝者は「おとき」をご馳走になる。

 おとき

 えご       (味噌だれかけ)
 野菜コロッケ   (手作り)
 ゆうごう汁(鯨汁)      (鯨の皮 夕顔の実のわたの部分を使用)魚沼の郷土料理)              

 漬物        野沢菜 沢庵
 清酒 八海山 ビール 飲み放題?

 西珠院 




 本堂(真言宗 ご本尊 阿弥陀如来 座像)



 本堂



 庭のオニユリ(ユリ科)



 夕方の八海山








 ズッキーニとサヤエンドウと豚肉の炒め煮




 朝方も雨。異常気象は朝までだったのか・・・
 昨日、新幹線を東京で乗り継いで帰郷した娘も涼しさに驚いていた。
 大阪は猛暑日が続いているようだ。
 子連れ帰郷はベビーカーが役立った。
 インターネットを活用する娘たちを、さすが子を持つ母は強いと声援を送った。

 (魚沼の里)に出かけた頃から暑くなった。
 「雪室」で冷えた身体が、たちまち真夏の暑さと湿度に順応できなくなった。

 魚沼の里




 雪室へ



 雪室内「okatte」
 料理や食卓を彩る器や道具を揃えたキッチン雑貨店




 さとや 和洋菓子とバウムクーヘンが美味しい店




 追記

 8月8日 朝
 雨が降り出して、寒いような涼しい朝になった。