千艸の小部屋

四季折々の自然、生活の思いを、時には詩や創作を織り交ぜながら綴りたい。

ままのにおい

2011年08月02日 | 日記

     
ままのにおい
いいにおい
ままのにおい だいすき
せかいじゅうで いちばん
だいすき ままのにおい

うしろあしを ぎゅっぎゅっぎゅっ
おはなを くんくんくん

ままのにおいって そんなにいいの?
せかいじゅうで いちばん?
ままって そんなにいいにおいしているかな?

せかいじゅうで いちばん
だいすき ままのにおい

うしろあしを ぎゅっぎゅぎゅっ はがいじめ
おはなをくんくんくん まるでわんちゃんみたい


 長女三歳。
 台所で洗い物をしていた私の足に、ぎゅぎゅっと身体を押しつけて来た。
 何しているの?
 ままのにおいをかいでいるの。
 ままのにおい、いいにおいだね。
 Mちゃん、ままのにおいがだいすき。
 せかいじゅうでいちばんだいすき。

 人なつっこい子どもで、ませた言葉を口にするようになって、周囲を笑わせることも得意だったが、一歳違いの妹に母親の愛情をとられているような寂しさがあったのだと思う。甘えたいのに甘えられない。その気持ちが一挙に出たようだ。
 私も長女の立場だった。
 娘の心の内が分かって、ハッとした一瞬だった。
 ママはMちゃんに羽交い締めされたら何にもできないよ。もう少しで終わるからちょっとだけ待っていてね。感情の糸が切れたように、しがみついたままの娘、仕方がないので、そのまま作業を続けた。
 いつもお利口さんなのに、どうしたの?腰をかがめて娘を抱きしめてあげた。
 うれしそうな笑顔になった。そうか、そうか、下の娘と同じように、言葉ではない愛情表現がほしかったのだ。
 その後も何度か、私のにおいを嗅ぎにきた。横からだったり、前からだったり。したいようにさせていたが、保育所や近所の友だちとの遊びが楽しくなって赤ちゃん返りのような行動は遠のいていった。

 その娘が、子どもたちを連れて里帰りした。
 第二のふるさとと言うべき湯沢に一泊、我が家に一泊して車で帰って行った。
 小一と五歳の孫に、帰らないでここにいようよ、と言ったが首を横に振った。
 母親も仕事を持っているので、向こうのご両親が孫のめんどうを見ている。
 水泳教室に通う孫は、二ヶ月の間に五㎝も身長が伸び、利発な男の子らしい成長ぶり。
 昨日の何時間か、その孫と留守番をした。ばあば、ばあばと、私の用が済むのが待ちきれない。
 DVDを観ている孫のそばに座り、投げ出していた足を膝の上に乗せてあげたら、ニコニコと笑顔になった。

 幼い頃の娘を思い出した、母の私があった。

 ノカンゾウ(ユリ科)




 朝の田園風景。




 山のこちら側も、向こう側も、この豪雨で被害が出ている。
 あちこちの山、それも、小さな沢にあふれた鉄砲水のような水害も数知れないと聞く。

 災害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。