千艸の小部屋

四季折々の自然、生活の思いを、時には詩や創作を織り交ぜながら綴りたい。

旋律のような

2012年11月10日 | 日記

 
再び
深い秋が訪れて
さまざまな色を寄せ集め
私のまわりで
旋律のような糸を紡ぎはじめる
ルン ルン ルン
ルン ルン ルラ ルラ ラ

再び
深い秋が訪れて
秋は
さまざまな色を呼び集め
私のまわりで
私の思い出までを紐解こうとする
ルン ルン ルン
ルン ルン ルラ ルラ ラ

私のまわりで
秋は
人恋しげな旋律を奏で
たった一つの思い出糸さえも
もつれさせようとする

一体何のために
そんなことは知ったことではない
とでも云うように

                        (azumi)





 一時間ほども斜面を登りつづけ、体は汗ばんでるのに震えが来た。肉体と魂が粉々になって、森の養分になっちゃいそうだ。自分がだれで、どこにいて、何を目指せばいいのかわからなくなるぐらい、俺は山の空気に圧倒されていた。
「勇気」
 と清一さんが呼びかけてきたのは、そのときだ。
「ほら、きれいだろう」
 清一さんのチェーンソーが指さしたさきを見る。大人が一抱えするのもやっと、というほど、大きな杉の切り株があった。朽ちて苔むした切り株のまわりは、森の密度が少し低い。
 切り株のそばで、二メートルほどの高さの木が枝を広げていた。細い枝はすでに葉を落とし、かわりに小さな赤い実を無数にぶらさげている。やさしい炎だ。 遠くから見る街の灯のようだ。
「マユミという木だよ」
 清一さんは言った。「山は近寄りがたくて恐ろしいばかりじゃない。だれも見ていなくも、こんなきれいなものを、毎年ちゃんと実らせる」
 清一さんは、はじめて本格的に神去山に足を踏み入れた俺を、注意深く見守っていてくれたんだろう。おかげで、落ち着きを取り戻すことができた。俺は清一さんを振り返り、「もう大丈夫です」とちょっとうなずいてみせた。
                  (三浦しをん著『神去なあなあ日常』より)

 高校を出たら、適当にフリーターでもしてと、人生の展望も持たなかった都会の若ものが、三重県の神去村に送り込まれることになってしまった。林業を生業とする過疎の村。会社組織で構成され、村じゅうから働きにくる。こんな山の中、逃げだそうとも試みた若ものが、いつか変わっていく。「なあなあ」な神去村の生活になじんでいく。

 神去の神さまを祀る四十八年に一度の大祭が今年ある。神去山の巨木を一本切り倒し、山腹まで運び下ろす。選ばれるのは千年杉。
 ふだんの祭りは樹齢百年~二百年ほどのを切り倒す。
 初冬ともいえる十一月の半ば、男たちは夜中の神去川で禊ぎをし、白装束で身を包み、山を登る。
 訳あって、晴れて大祭参加を許された若ものが、難行に耐えかねているときに背後から声をかけたのがおやかた(社長)の清一だ。

「マユミという木だよ」

 文字を追う私の涙腺が緩みだし、止まらなくなった。
 マユミの実への思いがこみあげて、最終章を一気に読んでしまった。

 千年杉が、男たちを乗せたまま加速度を増し、山腹を滑り降りるシーンは感動だ。


 マユミ(ニシキギ科ニシキギ属)




 初めて山でマユミを見たのは2007年11月5日。
 湯沢トレッキングコースを歩いていた。
 晩秋の山中。葉は落ち、丈の短い枝にくっついていた濃紅が目に入った。
 何の実だろう。分からないだけに可愛らしく、目に焼き付いた。
 帰宅してすぐに調べた。
 果実は枝にぶらさがるようにしてつき、小さく角張った四裂の姿。
 秋の果実の色は、白、薄紅、濃紅と異なるが、どれも熟すと果皮が四つに割れ、鮮烈な赤い種子が現れる。

 その後も何度か、晩秋の山をマユミを探して歩いた。
 会いたいと思うとなかなか会えない。
 一途である。
 清津峡にも紅い実をいっぱいつけた木があった。だが山中で見た可憐ではかなげな風情はなかった。

 マユミ(真弓)

 生を受けてまもなくこの世を去った私の双子の妹の名前。
 山でマユミの実に出会って以来、真弓に重ねてしまう私である。

 晩秋の山を歩きたい。


 お家ご飯。

 カキノモト。
 好みのタレでいただく。沸騰した湯に酢を入れて、さっと湯がく程度に。シャキシャキ感がいい。




 豆腐ハンバーグ。



 我が家の定番。水切りした木綿豆腐。玉ねぎ、鶏挽き肉、塩麹、いずれも少々。オリーブオイルでじっくり焼く。塩麹を加えるとふっくらやわらかハンバーグになる。醤油、味醂、水溶き片栗粉でタレをつくる。


 豚肉とピーマンの塩麹炒め。



 緑のピーマンが畑で赤くなる。色鮮やか。塩麹をまぶして少しおいて、オリーブオイルで炒めた。

 むかごご飯。




 庭の山芋のツルからむかごがたくさん採れた。
 ご飯にするのは初めてなので、レシピを検索。
むかご      百五十グラム
米            三合
昆布        十センチ片
酒          大さじ一
塩       小さじ三分の二
醤油      小さじ二分の一
 むかごは水で洗っておく。炊飯器に研いだ米三合、水も三合の目盛りに合わせる。昆布はそのまま。酒、塩、醤油、むかごを入れる。炊き終えたら昆布を取りだし、むかごを混ぜ合わせる。ふっくらとおいしいむかごご飯が炊けた。

 大根葉のふりかけ。



 大根一本分の葉。洗った葉を細かく刻んでサラダオイル(あるいはごま油)で炒める。水分を飛ばすように。醤油、みりん、和風だしで味を調える。美味しい。


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4 コメント

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珍しい (ジジコ)
2012-11-13 15:57:58
 むかご 名前は知っていましたが
食べた事無いです 食わず嫌い???
我が家では 食卓に並んだ事無いのでは、、、

大根菜は 味噌で炒め 今時よく登場していました

カキノモト 酢の物大好きですねぇー

懐かしい メニューが \(^o^)/
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旋律のような (azumi)
2012-11-14 06:57:21
ジジコさん、おはようございます。

むかごご飯ね。あこがれだったんですよ。炊いてみたいなって・・・
ミズにむかごがくっついているのをいただいたことがあって、それは量が少なくビールのおつまみにしかならなかったけど、美味しくって来年は山に採りに行こうと決意。それも自然災害で山が崩れ断念。
家の軒先のやまいもが大豊作でした。それで初めて炊いてみました。写真は炊きたての湯気で曇ってしまったけど、美味しかったんです。近くならお届けしたかったですね。
カキノモトは他のキクよりも数段の美味しさがあります。
大根葉、懐かしいでしょう。料理上手なお母さんの味ですものね。
寒くなります。
お互いに風邪に気をつけましょう。
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元気が一番 (ジジコ)
2012-11-14 13:12:00
 12月初めには 今年最後の訪問予定です
雪が降らない事 祈りつつ・・・

ヘルパーさん 「真由美」さんに
写真見せてあげました (^_-)-☆

可愛い花ですね って (^_^)/
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旋律のような (azumi)
2012-11-14 16:56:34
ジジコさん、こんにちは。

今日は「教室」の日でした。
寒くて、表にでたら北風が落ち葉を運んでいました。ブル、ブルッとしてしまいました。
まだ雪は降ってほしくないですね。
12月上旬までは降らないように祈りましょう。

私も訪れたいところがあるんです。
雪が降らなかったらですが・・・

「真由美」さんによろしくお伝え下さい。
マユミの花も実も可愛らしくて、出会ったら忘れられなくなります。
ありがとうございました。

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