議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

衆参のちょっとした違い(先例冊子等の呼称)

2016-02-28 | 国会雑学
今回は、相当久々に「衆参のちょっとした違い」シリーズです。

この度、頂戴したコメントで、「先例に関して、なぜ参議院先例録等を引用するのか」という質問をいただいたことがきっかけです。

昨年6月のエントリーで一度書きましたが、せっかくですので、なぜ参議院先例録と参議院委員会先例録を引用するのか、について改めてその理由を紹介したいと思います。

国会法や衆議院規則参議院規則は、一般的に公開されていますし、衆参両院のWebページからご覧いただくことも可能です。

しかしながら、「先例」に限っていえば、参議院は一昨年から参議院Webページで公開を始めましたが、衆議院先例集等に関しては、未だ公開されていません。

よって、「先例」を紹介する場合は、一般に広く公開されている参議院先例録、参議院委員会先例録を引用しているのです。

ここで、衆参のちょっとした違いを紹介すると、主要な先例を項目ごとに分けて説明した冊子についての呼称が違います。

衆議院:衆議院先例集、衆議院委員会先例集
参議院:参議院先例録、参議院委員会先例録


衆議院は先例「集」で、参議院は先例「録」です。

ついでに、意味するものは同じ、かつ衆参で呼称がちょっとだけ違うものを、以下に幾つか挙げてみます。

衆議院:委員室、委員会議録、議席表
参議院:委員会室、委員会会議録、議席図


一見しただけではその違いを分かりづらいのですが、委員室と委員「会」室、委員会議録と委員「会」会議録、違うもんなんですよね。

[これまでの衆参のちょっとした違いシリーズ(?)]

衆参のちょっとした違い(本会議場の議席数とその配置)
衆参のちょっとした違い(本会議の出欠)
衆参のちょっとした違い(記名投票とは-その2)
衆参のちょっとした違い(総理入り委員会質疑の風景)
衆参のちょっとした違い(本会議-その1)
衆参のちょっとした違い(本会議-その2)
衆参のちょっとした違い(本会議-その3)

憲法と参議院における総予算審査の関係

2016-02-27 | 憲法
○日本国憲法第60条

予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

上記は、衆議院の予算先議権、予算議決に関する衆議院の優越を規定した条文です。

憲法は、衆議院で必ず先に予算を審議することと、参議院に送付されたのち、否決された場合や30日以内に議決しない場合は、衆議院の議決が国会の議決となることを定めているのです。

よって、予算案本体は、参議院の議決に関わらず、衆議院で議決された時点でその成立が保証されますので、参議院の30日ルールを睨みつつ、衆議院での採決日程が与野党間のせめぎ合いとなるのですが、今年は3月1日の衆議院本会議で予算案の採決をすることが既に合意されています。

30日ルールからすれば、予算案本体の年度内成立は既定路線ということになります。

つまり、現時点で、衆議院にある平成28年度予算案は、3月2日までに衆議院から参議院に送付され、参議院が受け取ってさえいれば、30日ルールに基づき、年度内に成立させることが可能だからです。

久々に想定カレンダーを作成してみましたが、今回は控えめに3月第1週分だけとしました。   

ちなみに、予算案本体は衆議院で議決されれば成立は保証されますが、予算関連法案に関しては「法律案」ですので、両議院で可決した時に「法律」となります。

ただ、昨年紹介したとおり、参議院が衆議院と異なる議決をした時や、参議院が60日以内に結論を出さない時は、憲法に衆議院の優越が規定されています・・。

衆議院予算委員会分科会

2016-02-26 | 国会ルール
○衆議院規則第97条

予算委員会及び決算行政監視委員会は、その審査の必要によりこれを数箇の分科会に分かつことができる。各分科会には主査を置き、その分科員がこれを互選する。

○参議院規則第75条

予算委員会及び決算委員会は、審査の便宜のため、これを数箇の分科会に分けることができる。(以下略)


昨日は、衆議院予算委員会の分科会が開かれました。

分科会は、予算及び決算の審査だけに認められる制度ですが、決算審査のための分科会は、衆議院では第129回国会まで設けられたことがなく、参議院では第7回国会を最後に設けられたことがありません。

予算委員会において分科会に分けて審査をするのは総予算についてであり、補正予算や暫定予算は分科会に分けないことを例としています。

ちなみに、参議院においては、総予算について委嘱審査制度が導入されてから、日程上の関係もあり、分科会は開かれていません。

衆議院予算委員会では8つの分科会に分けて審査がなされるのですが、朝8時に開会し、11時間から12時間コース(!)で質疑が行われました。

一人当たりの質疑時間は30分となっている分科会が多く、そうなると質疑者は1分科会につき20人以上・・。

同一分科会で20人以上が質問に立つということは、質問取りから答弁書作成、大臣レク、運営まで考えると関係者は大変です。

普段、委員会での質疑の機会に恵まれない与党若手議員が質疑に立つ割合が高いのも特徴の一つといえるでしょう。

国会事務局-その1

2016-02-23 | 雑感
国民の代表による議論を通して得られた結論に基づき、国の将来を決定するのが「議会制民主主義」です。

「議会制民主主義」は所与のものではなく、数えきれないほどの多くの先人が、その実現を目指して奔走した結果、勝ち取ってきたものです。

そして、国会法や議院規則はもちろん、先例はこれまでの議事運営の積み重ね、議会の先人たる諸先輩の知恵の結果ですから、これらを十分に尊重しながら、「議会制民主主義」を体現していかねばなりません。

国会事務局は、この「議会制民主主義」を支えることを使命としており、運営面から本会議・委員会をサポートする会議運営部門、内容面からサポートする調査部門、院の活動を多角的にサポートする総務部門の3部門で成り立っています。

それぞれの機能を最大限発揮し、また相互に連携することにより、院及び議員の活動を補佐し、公正かつ円滑な議会運営、充実した審議の実現を図ることを通して、「議会制民主主義」を支えるという使命を、国会事務局は果たしているのです。

かつて、議長や委員長の権限の下に明確に位置づけられていた国会事務局の補佐機能は、会派との直接的な関係の色合いが濃くなる中で、その中立性の在り方が問われる場面が増えてきたことは否めない側面です。

だからこそ、国会に身を置く者は、ひとりひとりが議会人としての矜持を持ち、法規・先例等に則り、議員に対し的確な情報提供を行うこと、そして何より大切なのは不偏不党の立場で職務を行うこと、これこそが「議会制民主主義」を守るために、今、求められていると痛感しています。

色々見えてくると、その分、あえて黙っていることも増えますが、実は知っていたり、見えていたりすることが意外と多いんですよね・・。

以前も書きましたが、どんな局面に立たされようとも、私は議会人としての矜持を持っていたいと思います。

参議院先議法案の割合-その2

2016-02-22 | 国会雑学
記録が残る中で、内閣提出法律案の数が最も少ないのが今国会であることは、先日「第190回国会における内閣提出法案(過去最少)」で紹介したところです。

あらためて、今国会の内閣提出法案数は、というと55法案です。

その要因の一つに、かねてから取り上げ続けている「束ね法案」が関係していること言うまでもありませんが、これに関しては、機会を見て(気力があれば)別途書いてみたいと思います。

それはさておき、今国会における参議院先議法案は、4法案の見込みとなりました。

昨年の今頃も、「参議院先議法案の割合-その1」として紹介しましたが、今国会の参議院先議率は、7.3%に留まってしまいました。

参議院は、会期末に衆議院から送付されてきた法案の審議が立て込み、常任委員会の定例日等の関係からどうしても審議日程が窮屈になる傾向があります。よって、予算案審議が終わって、参議院の日程に余裕がある4月頃に参議院先議法案の審議を行うこととしていますが、どうしても衆議院から送付されてくる法案が圧倒的多数を占めています。

参議院はその歴史の中で、参議院先議法案の割合を増やすべき、との議論を重ねてきただけに、今国会の先議割合は例年に比しても非常に少ないといえるでしょう。

具体的に数値で見ると、今年を除く過去10年間の常会での先議率の平均12.3%と比較すると、今年の7.3%はかなり低いのですが、今国会の内閣提出法案がそもそも過去最少の55法案であること、また前の国会の第189回国会からの参議院での継続法案が多いこと等に鑑みれば、致し方ない側面があるのかもしれません。

[第190回国会における参議院先議法案]
○文教科学委員会
国立大学法人法の一部を改正する法律案
○農林水産委員会
漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案
○経済産業委員会
中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律案
○国土交通委員会
海上交通安全法等の一部を改正する法律案

参議院における議員辞職勧告決議

2016-02-20 | 国会ルール
○参議院規則第26条

発議者又は提出者が発議又は提出した議案について委員会の審査の省略を要求しようとするときは、その議案の発議、提出又は送付と同時に書面でその旨を議長に申し出なければならない。

前項の要求があつたときは、議長は、これを議院に諮らなければならない。

○参議院先例録271

決議案は、委員会審査省略要求書を付して発議するのを例とする

前回は、衆議院における議員辞職勧告決議について概観しました。

今回は、参議院における議員辞職勧告決議案について見てみたいと思います。参議院においては、衆議院のように議員辞職勧告決議を行っていません。

そもそも、参議院本会議で扱ったこと自体、3回しかないのです。「議員○○○○君の議員辞職勧告に関する決議案」は、委員会審査省略要求事件として扱われますが、直近の例でみても、平成9年まで遡ります。

[参議院本会議で議員辞職勧告決議が議事となった例]

平成9年4月4日 議員辞職勧告決議-可決
昭和41年2月2日 議員辞職勧告決議-否決
昭和40年8月11日 委員会審査は省略しないことを決定

議員辞職勧告決議案は「決議」ですので、先例に従い、委員会審査省略要求書を付して発議することとなりますが、そのタイミングは、議院規則に従い、決議案の提出と同時に、委員会審査を省略する要求を書面で議長に申し出なければならないこととなっています。

要するに「決議」であるため、委員会審査を省略し、院の会議である本会議で扱うべきとのことであり、委員会審査省略の要求があったときは、議長は本会議でその賛否を諮ることになります。

昭和40年の例は、議員辞職勧告決議案が議事にはなったものの、委員会審査省略要求が否決された結果、実質的に扱われなかった例となっています。

衆議院における議員辞職勧告決議

2016-02-18 | 国会雑学
衆議院での議員辞職勧告決議は、これまでに12名、32件です。

人数に対して件数が多いのでは、とお感じになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。その理由は、同一人物に対して何度も辞職勧告決議が行われたケースが存在するからです。

では、誰に対して、何度行われたのかを見てみます。

8回:佐藤孝行議員
6回:田中角栄議員
4回:藤波孝生議員
3回:中村喜四郎議員、石川知裕議員
2回:竹下登議員
1回:中島議員、鈴木議員、坂井議員、松浪議員、西村議員、小林議員

ちなみに、佐藤・田中両議員はロッキード事件、藤波議員はリクルート事件、中村議員はゼネコン汚職事件、竹下議員は佐川事件と記憶に残る事件ばかりです。

議員辞職勧告決議は、議員の身分に関わることですから、よほどのことでない限り、与野党とも扱いたくないはずです。

公職選挙法の規定とダブル選の可能性

2016-02-15 | 雑感
今回は、第190回国会(平成28年/2016年)の会期と公職選挙法の関係から読み解ける、衆参ダブル選挙の可能性とその期日について見てみたいと思います。

まず、前提として、現在開会中の国会の会期末と、この夏から適用される18歳投票の適用条件、衆参議員選挙の要件を確認します。

[国会の会期末と18歳投票の適用条件]

○現在開会中の第190回国会の会期末:6月1日
○18歳投票の適用:公示が6月19日以後

[衆参議員選挙の要件]

○参議院議員選挙:公示から投票日まで17日間
○衆議院議員選挙:解散から40日以内に投票
○衆議院議員選挙:公示から投票日まで12日間

上記の点が、今回のダブル選挙の行く末を占ううえでの前提条件です。ちなみに、今年改選の参議院議員の任期満了は7月25日です。

で、ここからは、公職選挙法の規定に基づき仮定を立てます。

○公職選挙法第32条

1項 参議院議員の通常選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う。

2項 前項の規定により通常選挙を行うべき期間が参議院開会中又は参議院閉会の日から23日以内にかかる場合においては、通常選挙は、参議院閉会の日から24日以後30日以内に行う。


上記1項に基づく参院選の場合は、衆参ダブル選挙を仮定すると、会期内の衆議院の解散は、5月31日と6月1日の2日間しか選択肢がありません。

上記2項に基づく場合は、衆議院の解散は会期延長後の6月10日以降で衆参ダブル選挙が可能となります。

いずれの場合も、衆参ダブル選挙の投票日は最短で7月10日です。

ちなみに、仮に現在の第190回国会の会期が延長されたとしても、6月2日から6月9日の間に衆議院が解散された場合、公職選挙法の関係で、18歳投票の適用での衆参ダブル選挙は実施できません。

決議案単独での参本会議の回数

2016-02-14 | 国会雑学
おかげさまで2年目に入ったこのブログですが、2回目(今回)のコメント欄解放は不評だったようで、未だに1件もコメントがありません・・地味にショックです。

1回目(前回)のコメント欄解放時は、直後から激励のコメントがたくさん届いたうえ、アクセス数も、前回解放時より総じて多いだけに、今回の理由がよく分からずに、モチベーション下がり気味です。

投稿いただいても、前回と同様、公開しませんので私しか見ないのは前回と一緒なんですけどね。やはり、匿名ブログというのが良くないのでしょうか。そろそろ、色々考える時期に入ったのかもしれません。

さて、どうにか気を取り直して、1年前にも紹介しましたが、参議院が決議案のみで本会議を開会したのは過去何回でしょうか。

過去7回しかないのですが、今回の決議で今年に入ってから既に2回目です。

[1]昭和25年 第10回国会「マッカーサー元帥への感謝」
[2]昭和48年 第71回特別会「米中核実験抗議と各国の核実験反対」
[3]昭和51年 第77回国会「ロッキード問題」
[4]平成18年 第165回臨時会「北朝鮮核実験抗議と全ての核兵器・核計画放棄」
[5]平成21年 第171回国会「麻生総理問責」
[6]平成27年 第189回国会「ISILに対する非難決議」
[7]平成28年 第190回国会「北朝鮮4度目の核実験抗議」
[8]平成28年 第190回国会「北朝鮮弾道ミサイル発射抗議決議」


で、2月9日の北朝鮮への抗議の決議は、今回で12回目となりました。

ちなみに、衆議院も北朝鮮への抗議決議を同日に行いました。

ただし、衆議院の場合は、当初から重要広範議案となった「財源確保特措・公債発行特例法案」の趣旨説明と質疑のため、本会議がセットされていましたので、その冒頭に「北朝鮮によるミサイル発射に抗議する決議案」の決議を行ったのち、法案の審議に入ったため、決議案単独での本会議開会ではありませんでした。

議会雑感2年目に

2016-02-08 | ひとこと
おかげさまで、議会雑感ブログは、2年目に入りました。

ご覧いただいている皆さまのおかげで、どうにかこうにか1年続けることができました。本当にありがとうございます。

この1年間は以下の2点を大事にしつつ、このブログを通じて、政治に関心を持っていただける方が1人でもいらっしゃれば、との思いで続けました。

○国会法等を引用しつつ、時々の話題を交えながら国会のルールを紹介すること
○匿名で政策の是非には触れない範囲にとどめること

個別政策に関する記事は、検索すればすぐにたどり着けますが、国会にまつわるルール等については一般的でないため、なかなかまとめて目にすることができません。

よって、私自身の備忘録を兼ねて、思いつきで始めたのがこのブログでした。

本来であれば、国会法や議院規則を体系的に紹介するのが筋だとは思いますが、その時々の話題を交えたり、ちょっと気になることを絡めたりして話題を提供する方がご覧いただきやすいのではないか、との思いで今の形になっています。

さて、このブログは立ち上げ時から、これまでの間、コメントを受け付けない設定で続けてきました。

ただ、一度だけコメントを受け付けたことがあります。その節は、多くの激励コメントをいただいて、とても励みになりました。

というわけで、ブログ開設1年経過に際し、前回同様、事前承認制として公開しないことを前提にコメントを受け付けたいと思います。これは、コメントを頂戴しても、私しか見ないことを意味します。

何でも構いませんので、感想等をコメント欄にお寄せいただけると幸いです!
           

第190回国会における束ね法案-その1

2016-02-07 | 雑感
先日、「第190回国会における内閣提出法案(過去最少)」で、今国会の内閣提出法案数が過去最少であることを紹介しました。

今年は、第24回参議院通常選挙が予定されており、大幅延長が難しいことなども念頭にあると思いますが、過去最少となっている要因のひとつに、いわゆる「束ね法案」が関係していることも考えられます。

私は、立法府に身を置く議会人のひとりとして、行政府が法案を束ねて提出してくることにより、束ねられた中にどのような法案が含まれているか分からないことによる、国民への情報公開という観点、個々の法案の詳細な議論が制約されることによる、国会審議を形骸化しかねない観点等から、「束ね法案」について、これまで問題点を指摘してきました。

束ね法案と一括審議-その1
束ね法案と一括審議-その2
束ね法案と一括審議-その3
束ね法案と一括審議-その4
束ね法案と審議時間

今国会の内閣提出法案は、55本とされています。

うち、本則で3本以上の束ね法案は、実に20本にも上ります。

ちなみに、昨年の第189回国会の束ね法を幾つか紹介すると、「内閣の重要政策に関する総合調整等に関する機能の強化のための国家行政組織法等の一部を改正する法律」が92本、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」が19本、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」が10本、「電気事業法等の一部を改正する等の法律」が7本という具合です。

上記でいえば、前者2法は束ねざるを得ない側面を持つ法案ですが、後者2法は、束ねることによって、詳細な議論が制約され、国会審議が形骸化された側面を持つものだったと考えます。

なお、全ての束ね法案が問題なのではなく、立法府の審議を形骸化させてしまう側面を持つ束ね法案が問題なのだと考えています。機会があれば、束ね法案のルールについて紹介したいと思います。

衆議院予算委の総予算審査-その2

2016-02-04 | 国会雑学
衆議院予算委の総予算審査-その1」で、衆議院予算委員会における総予算審査に関し、審査日数と審査時間について、平成12年以降の最長・最短をそれぞれ紹介しました。

今回は、総予算の審議日数について見てみたいと思います。

ここで留意していただきたいのは、審日数と審日数の違いです。

まず、審日数とは、実際に予算委員会を開会して総予算の審査を行った日数のことをいいます。

翻って審日数とは、衆議院予算委員会で趣旨説明の聴取を行って審議入りしてから、衆議院予算委員会で議決するまでの日数のことをいいます。

これらを踏まえて、平成元年以降、衆議院予算委員会での総予算審査で一番日数がかかったのは、というと、平成8年度の第136回国会です。

この国会は、住専問題があり、趣旨説明聴取の1月26日から委員会議決の4月11日まで、実に77日間も審議に要しました。途中、委員会室封鎖等の特殊行動もありました。

今年の日切れ法案は、衆議院本会議入りのタイミングが例年と異なる様相を呈しており、年度末の参議院の状況が早くも気になる今日この頃です。

衆議院予算委の総予算審査-その1

2016-02-03 | 国会雑学
平成28年2月3日から、衆議院予算委員会で平成28年度総予算案の実質的な審査が始まりました。つまり、一問一答形式の本格論戦がスタートしたことを意味します。

そこで今回は、これまでの衆議院予算委員会における審査日数と審査時間はどのくらいだったのか、について紹介したいと思います。平成12年の国家基本政策委員会設置後で見てみます。

まず、審査日数の最長と最短です。

最長の審査日数:20日間(平成17、23、24年度)
最短の審査日数:14日間(平成12、27年度)


次に、審査時間の最長と最短です。ついでに、その次のも紹介します。

最長の対政府質疑:96時間(平成17年度)、94時間20分(平成16年度)
最短の対政府質疑:70時間(平成26年度)、72時間5分(平成21年度)


ちなみに、昨年の衆議院予算委員会での平成27年度総予算審査は、日数が15日間、対政府質疑は76時間でした。

はてさて、今年の衆議院予算委員会は、どの程度の充実(?)審査となるのでしょうか。日程が後ろにずれ込んだことも含めて、個人的に興味津々です。

決算の提出時期

2016-02-01 | 憲法
○日本国憲法第90条1項

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。

○財政法第40条1項

内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。

決算重視の参議院で、1月20日の参議院本会議で国務大臣の報告に関する件として、平成26年度の決算概要報告を聴取し、本会議で質疑が始まったことを紹介しました。

昨年「決算の審査」で、その概要について触れるとともに、審査の進め方についても紹介しましたので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。

決算は予算と異なり法規範性は有しませんが、決算審査の意義は、国会で議決された国の予算の執行実績を審査することにより、その結果を後年度の予算編成や政策遂行に反映させることにあります。

そのために、決算が早期に国会に提出されることは、審査の充実や後年度の予算編成等に反映させるにあたり、必須条件であるといえます。

財政法上の提出時期は、翌年度の常会とされていますが、平成15年1月の決算早期審査のための具体策についての参議院改革協議会の報告、平成15年5月の内閣に対する参議院議長からの要請を受けて、平成15年度決算は平成16年秋の臨時会に提出され、以後、原則として秋の臨時会への提出が定着しています。

というわけで、最近の検査報告書総理手交日と決算書の国会提出日を紹介します。

[検査報告総理手交と決算書の国会提出日の関係]

          検査報告総理手交  決算書の国会提出

平成14年度決算   15年11月28日   16年1月19日 (常会冒頭に提出)
平成15年度決算   16年11月9日   16年11月19日  約2か月前倒し

   (以降、会計年度翌年の11月20日前後に国会に提出)

平成25年度決算   26年11月7日   26年11月18日
平成26年度決算   27年11月6日   28年1月4日 (常会冒頭に提出)


平成26年度決算は、臨時会が召集されなかったために、決算書の国会提出が今年に入ってしまったということになります。