議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

衆参のちょっとした違い(傍聴規則-その2)

2016-04-30 | 国会ルール
○衆議院傍聴規則第6条

児童は、特に許可があつた場合に限り、傍聴席に入ることができる。

○参議院傍聴規則第2条

10歳未満の児童は、特に許可があつた場合に限り、傍聴席に入ることができる。


衆議院傍聴規則は、昭和22年7月11日に、参議院傍聴規則は、昭和22年8月29日にそれぞれ制定・決定されています。

ただ、上記の条文もそうなのですが、最後の改正時期が衆参で大きく異なっています。

衆議院傍聴規則の直近の改正は、昭和30年3月22日、参議院傍聴規則の直近の改正は、平成13年9月27日なのです。

ちなみに、衆議院の直近改正である昭和30年3月22日以降、一度も改正されていませんでしたが、参議院は、昭和30年3月28日に改正されて以降、平成13年9月27日と二度改正されています。

では、参議院傍聴規則は、平成13年改正で何を改正したのでしょうか。

それは、傍聴規則第2条に「10歳未満の児童は」と、年齢要件を付記したことです。それまでは、衆参ともに「児童は」となっており、児童の定義が曖昧だったことから、ひとまず「10歳未満」としたのです。

衆議院では、運用で児童を10歳未満としていましたが、規則自体は昭和30年改正のままだったのです。

衆参のちょっとした違い(傍聴規則-その1)」で紹介した内容については、もちろん否定するものではありませんが、経緯については気になるところです。

衆参のちょっとした違い(傍聴規則-その1)

2016-04-28 | 国会ルール
平成28年4月28日、衆議院議院運営委員会理事会で、保護者が同伴すれば小学生以上の傍聴を認めることを決めたとする記事が配信されました。

少し気になる点がありますので、2つの配信記事を政策の是非に触れない程度で掲載したいと思います。

下記の配信記事は、二つとも「衆院規則」として紹介していますが、「衆院傍聴規則」であり、「衆院規則」ではありません。さらにいえば、「傍聴規則」の改正経緯は、衆参で異なっています。

これらに関しては、次回、紹介したいと思います。

[衆院]傍聴席、小学生から可に 子連れ親の要望で規則変更

衆院議院運営委員会は28日の理事会で、10歳未満の児童は原則として国会の傍聴席に入れないという規則を改め、保護者らが同伴すれば小学生以上の傍聴を認めることを決めた。

衆院規則は「児童は、特に許可があった場合に限り、傍聴席に入ることができる」と定めている。衆院は「児童」を10歳未満として運用してきたが、これを改める。保護者には近親者や教師、議員秘書が含まれる。

衆院事務局によると、本会議の傍聴は年間5,000~8,000人台で推移している。今年は4月28日までに3,362人が傍聴した。参院では今のところ運用見直しの動きはない。

衆院の傍聴、小1から可能に=子育て世代に配慮

衆院は28日の議院運営委員会理事会で、特別な許可がなくても衆院本会議の傍聴を認める対象年齢について、従来の「10歳以上」から「小学1年以上」に引き下げることを決めた。

衆院規則は「児童は、特に許可があった場合に限り、傍聴席に入ることができる」と定めている。運用により、これまでは小学校高学年を念頭に10歳以上のみ「許可不要」としていたが、今後は対象を小学1年にまで広げる。ただし、保護者の同伴が必要だ。

院内の服装等に関する申合せ(クールビズ)

2016-04-27 | 国会ルール
○参議院先例録444

議員は、議場においては必ず上着を着用する

議員は、議場においては必ず上着を着用する。
(注)第10回国会閉会後昭和26年8月10日の議院運営委員会において、議員は議場においては夏季であっても必ず上着を着けることとする従来の慣行を確認した。

第162回国会平成17年5月31日の議院運営委員会理事会において、地球温暖化防止対策等の観点から、夏季の期間中(毎年6月1日から9月30日まで)、院内(委員会室を含む)においては上着、ネクタイを着用しないことを可とするが、議場においては従来のとおり必ず上着を着用する旨の申合せを行った。

第177回国会平成23年4月27日の議院運営委員会理事会において、今般の電力需給逼迫に対応するため、5月1日から10月31日まで、院内(委員会室を含む)においては上着、ネクタイを着用しないことも可とするが、品位ある服装を心がけるものとし、議場においては従来のとおり必ず上着を着用する旨の申合せを行った。

平成28年4月26日、環境省は今年のクールビズの期間を従来どおりの5月1日から9月30日までとすることを発表しました。
           
                環境省Webページ(平成28年4月26日報道発表)よりキャプチャ

東日本大震災以降、電力需給逼迫に対応するため、その期間は、5月1日から10月31日までとされていました。
           
             環境省Webページ(平成27年4月24日報道発表)よりキャプチャ

国会においても衆議院、参議院ともに5月1日から10月31日まで、議場(本会議場)以外は、上着・ネクタイを着用せずとも可とする申し合わせを行ってきたところです。

今年から、1か月短縮となりますが、定着したものをあえて1か月短縮する必要があったのかどうか、運用で対応できたのではないか、と疑問は尽きませんが決まったことです。

というわけで、5月以降は、委員室や委員会室では、上着・ネクタイを着用していない議員の姿が散見されるようになることと思います。

議院の品位

2016-04-21 | 憲法
○国会法第119条

各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。

○衆議院規則第211条、参議院規則第207条

議員は、議院の品位を重んじなければならない。


日本国憲法第41条は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と定め、日本国憲法第51条は、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と定めています。

憲法は、議員が議院で行った演説や討論、表決について院外で責任を問われることはないとする「免責特権」を認めています。

これは、議員の演説等については、院内における言論の自由を特に保障することによって、議員の自由な活動を確保するとともに議会制度の適正を確保しようとするものです。

他方、憲法第51条は「院外」での免責を認めるものであって、議員には法規に従う義務がある以上、院内においては本条と無関係に懲罰事犯の対象となり得るのです。

よって、日本国憲法第58条の2では、「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。」と規定しています。

残念なことに、衆議院の委員会において、特定の議員による「無礼の言」が繰り返されているようです。

議会制民主主義は、数えきれないほどの多くの先人が、その実現を目指して奔走した結果、勝ち取ってきたものであるということは、改めて確認しておきたいと思います。

国会同意人事-その3

2016-04-20 | 国会ルール
平成28年4月19日11時、衆参同時に議院運営委員会理事会が開会され、国会同意人事の内示がありました。

今国会において、3回目の提示で会期内においては最後の提示です。日本放送協会経営委員など、7機関13名が提示されました。

国会同意人事は、議院運営委員会理事会、つまり国会への内示前にマスコミ等に事前報道されることにより、混乱することが度々あります。

今国会において、2回目の提示は3月4日のことですが、当日の日本経済新聞に事前報道としか思えない人事報道が出て、衆参の議院運営委員会理事会で多少議論になったようです。

このときは、当該機関から2名の人事案の提示を受ける予定でしたが、うち1名について事前報道らしきものが出ました。偶然にも、2名中1名の任期が6月だったこともあり、3月4日の議院運営委員会理事会においては、急きょ、1名だけの人事案の提示となったのです。

平成19年、国会同意人事の在り方について衆参両院の議院運営委員長間で「両院合同代表者会議」(衆参の議運委員長と与野党議運理事1名ずつの計6名)が設置され、事前報道があれば、原則当該者の提示は受けないことで合意しました。

ただ、平成25年には、衆参議運委員長合意で情報管理の徹底と、事前報道の場合は、内示後に政府に情報漏洩の調査と報告を求めることになっています。

「公示」と「告示」の違い

2016-04-12 | 憲法
○日本国憲法第7条

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。(以下略)

平成28年4月12日、北海道5区と京都3区の衆議院補欠選挙が「告示」されました。4月24日の投開票日まで、当該地域では選挙戦が繰り広げられることとなります。

今回は、天皇陛下の国事行為である選挙の「公示」と、そうではない選挙の「告示」の違いについて紹介したいと思います。

天皇陛下の国事行為のひとつである国会議員の総選挙の施行の「公示」は、全国一斉に行われる国政選挙の期日(投票日)を公的に告知するものであり、衆議院総選挙と参議院通常選挙のことを指しています。

よって、国会議員の補欠選挙の場合は、全国一斉に行われる選挙ではありませんので「公示」ではなく「告示」となります。

では、どの選挙が「告示」なのでしょうか。

上記の「公示」以外は、すべて「告示」となりますが、衆参両院の国政選挙の再選挙・補欠選挙と、地方の首長選や都道府県議会・市区町村議会選挙などであり、選挙事務を担当する各選挙管理委員会が行います。

「公示」と「告示」の違いについては、一旦理解すると分かりやすいのですが、混同して使用されている例もあるようですので、憲法と絡めて紹介しました。

衆参のちょっとした違い(議院運営委員会-その2)

2016-04-11 | 国会ルール
○衆議院規則第67条の2

議院運営委員長は、特に緊急の必要があるときは、会期中、何時でも、委員会を開くことができる。但し、議院の会議中は議長の許可を要する。

前回「衆参のちょっとした違い(議院運営委員会-その1)」で、本会議前の衆議院議院運営委員会は参議院と異なり、暫時休憩とせずに、散会することを紹介しました。

平成20年1月29日には、衆議院議院運営委員会の委員長が委員会散会を宣言し、委員会が散会されたにも関わらず、衆議院規則第67条の2に基づき、同日中に再度、議院運営委員会が開会されたという珍しい例があります。

           

ちなみに、参議院で類似の規則は以下のとおりですが、一部内容が異なっています。

○参議院規則第74条の5

議院運営委員会は、議院及び国立国会図書館の運営に関しては、会期中、何時でも、これを開くことができる。

衆議院TPP特別委混乱の影響

2016-04-11 | ひとこと
4月8日、衆議院TPP特別委員会で大きな混乱が起き、その影響は参議院を含め国会全体に及んでいます。

当該衆議院TPP特別委員会の審議日程が未だ決まらないばかりか、参議院も下記のような影響が出ています。

まず、4月11日に予定されていた参議院決算委が取りやめとなり、さらに、4月12日に参議院で予定されていた総務委・法務委・厚生労働委・環境委が取りやめとなりました。

与野党合意のうえでの委員会取りやめですが、会期末までの委員会や本会議の定例日を考えると、色々と悩ましい日が続きますね。

ただ、決算重視の参議院ですから、4月13日に予定されている決算委員会は、きっと開会されることでしょう。
           
               衆議院TPP特別委員会が行われる衆議院第一委員室

衆参のちょっとした違い(議院運営委員会-その1)

2016-04-10 | 国会ルール
○参議院先例録218

議事の順序等については、議院運営委員会において協議する

会議当日の議事の順序、発言者、発言時間、採決の方法その他必要と認める事項については、議院運営委員会において協議する。また、会議中、議事につき協議すべき事項が生じたときは、議院運営委員会理事が議場内において協議することがある。


議事の順序等については、機会を見て、どんな議事が優先するかについて別途紹介したいと思いますが、今回はその協議の場の在り方について紹介します。

第100回国会まで議長主宰の議事協議会において協議が行われてきましたが、第101回国会以降は議事協議会を設置せず、議院運営委員会において、会議当日の議事に関し協議しています。

このような背景もあり、本会議前に行われる参議院議院運営委員会は、委員長が下記のように宣言する場合がほとんどです。

なお、予鈴は午前○○時○○分、本鈴は午前○○時でございます。
暫時休憩いたします。
午前○○時○○分休憩
〔休憩後開会に至らなかった〕


委員長が「暫時休憩いたします」として、休憩を宣言し、その後何もなければ、〔休憩後開会に至らなかった〕と、会議録に記録が残されます。

他方で、本会議前に行われる衆議院議院運営委員会は、委員長が下記のように宣言する場合がほとんどです。

次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。
(次回の本会議が決まっている場合は、本会議の日時と議運理事会・委員会の日時を宣言する)
本日は、これにて散会いたします。
午後○○時○○分散会

委員長は、「本日は、これにて散会いたします」として散会しているのです。これも、衆参のちょっとした違いのひとつといえるでしょう。

次回は、衆議院議院運営委員会で、委員長が「本日は、これにて散会いたします」と宣言したにも関わらず、同日に再び開会された例を紹介します。

参議院予算委の総予算審査-その2

2016-04-07 | 国会雑学
平成28年度がスタートして、はや1週間。

平成28年度予算案は、3月29日の参議院本会議で成立しましたが、衆議院と参議院、それぞれの審査日数について振り返っておきたいと思います。

[平成28年度総予算審査]
衆議院
審査日数:17日間、対政府質疑:75時間

参議院
審査日数:18日間、対政府質疑:70時間12分


参議院が衆議院の審査日数を上回ったのは、平成2年以来のことでした。

委員会提出法案(委員長提出法案)-その2

2016-04-06 | 国会ルール
○国会法第60条

各議院が提出した議案については、その委員長(その代理者を含む)又は発議者は、他の議院において、提案の理由を説明することができる。

委員会提出法案(委員長提出法案)-その1」の最後で、衆院から送られた委員会提出法案の趣旨説明は、衆院の委員長が行った旨を紹介しました。

委員会提出法案は、各党間の合意に基づいて提出されるものですから、通常は、委員会の審査を省略して、直ちに本会議にかけられたり、短期間で成立したりすることが多くあります。

今回の法案では、委員会で発議者に対する質疑が行われた後、採決されましたので、直ちに本会議にかけられたわけではありません。

しかしながら、委員会で発議者に対する質疑を行ったのは野党会派の一部でしたので、比較的短期間で成立したともいえます。

○衆議院規則第111条

委員会の審査を省略しようとする案件については、発議者又は提出者は、発議又は提出と同時に、書面でその旨を議長に要求しなければならない。(以下略)

○参議院規則第26条

発議者又は提出者が発議又は提出した議案について委員会の審査の省略を要求しようとするときは、その議案の発議、提出又は送付と同時に書面でその旨を議長に申し出なければならない。前項の要求があつたときは、議長は、これを議院に諮らなければならない。

委員会提出法案(委員長提出法案)-その1

2016-04-05 | 国会ルール
○国会法第50条の2

委員会は、その所管に属する事項に関し、法律案を提出することができる。前項の法律案については、委員長をもつて提出者とする。

久々の更新となってしまい、反省しきりです。ただ、とても嬉しかったのは、更新できなかった間も、このブログを覗いて下さる方が多かったことです。

この間、コメント欄に幾つか質問をいただきましたので、久々の更新はその回答から始めたいと思います。

委員会は、委員会として法律案を提出することができると国会法第50条の2で定めています。

これは、委員会において起草し、あるいは成案を決定し、委員会提出の法律案とすることに決すると、委員会から法律案を提出できるとするものです。

4月5日の参議院内閣委員会で審査・可決された下記の法案は、衆議院内閣委員会提出の法律案です。

○成年後見制度の利用の促進に関する法律案(衆第20号)(衆議院提出)
○成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(衆第21号)(衆議院提出)

委員会提出法案の場合、提出者は委員長がなるため、委員長提出法案ともいわれます。

というわけで、上記法案についての趣旨説明は、3月31日の参議院内閣委員会において、両法律案の提出者である衆議院内閣委員長から聴取しているのです。