議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

議院証言法と証人喚問-その2(再掲)

2018-03-27 | 国会ルール
議院証言法と証人喚問-その1(再掲)」では、日本国憲法と議院規則との関わり、ならびに議院証言法について紹介しましたので、今回は実際の証人喚問の流れについて紹介します。

平成30年3月27日は、9時30分から参議院予算委員会、14時から衆議院予算委員会で証人喚問が行われます。

国会関係者ならずとも多くの方が関心を寄せる証人喚問を見守りたいと思います。

○平成30年3月27日(証人喚問当日)

9時30分開会
[参議院予算委員会]

1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.委員長尋問(8分)
6.各会派尋問
(自30分、民27分、公15分、共12分、維10分、希会6分、立憲6分、無ク5分)

―証言聴取の終了―
7.証人退室
11時40分散会見込み
     
14時開会
[衆議院予算委員会]


1.人定質問(委員長)
2.宣誓及び証言に関する注意事項説明等(委員長)
3.宣誓(証人)※総員起立
4.宣誓書に署名捺印(証人)

5.委員長尋問(10分)
6.各会派尋問
(自35分、公25分、立憲22分、希望21分、無会6分、共6分、維5分)

―証言聴取の終了―
7.証人退室
16時10分散会見込み

(罰則)
正当の理由がなくて宣誓又は証言を拒んだとき、虚偽の陳述をしたときは刑罰に処せられる(議証法4、6、7条)。

なお、本エントリーは、平成30年3月27日0時30分現在のものです。

議院証言法と証人喚問-その1(再掲)

2018-03-26 | 憲法
○日本国憲法第62条

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

○衆議院規則第53条

委員会は、議長を経由して審査又は調査のため、証人の出頭を求めることができる。

○参議院規則第182条

(前項略)委員会において証人の出頭を求めることを議決したときは、議長を経て、その出頭を求めなければならない。


各委員会において、案件を審査又は調査する場合、当事者等に出頭を求め、事実の陳述を聴くことが重要な手段となることがあります。

よって、衆参議院規則は、法案その他の議案を審査したり、一般的な国政に関する調査をしたりする場合に証人喚問を行うことができると定めているのです。

証人の出頭要求、あるいはその現在場所における証言要求は、委員会であればその議決に基づき、議長を経由して行うことになります。

なお、証人の発言は、その証言を求められた範囲を超えてはならないこととされています。

また、国政に関して調査権を行使するための強制的手段として、証人の出頭、証言及び記録の提出の要求について定めているのが議院証言法、正確にいえば「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」です。

そこで、議院証言法では具体的に何を定めているのか、主たる内容を見てみます。

まず、議院から要求があるときは、何人も原則として証人として出頭し、宣誓のうえ、証言しなければならず、また書類の提出をしなければならないとされています。

そして、証人に出頭要求するときは、原則として、出頭・証言すべき日の5日前までに通知することとなっており、平成30年3月27日の衆参予算委員会での証人喚問の議決は、3月20日に参議院で、3月22日に衆議院で行われたのです。

その際、具体的に記載された証言を求める事項及び正当な理由がなくて出頭しないときは刑罰に処せられる旨を併せて通知しています。

証人喚問当日は、証人に対し、宣誓前に宣誓証言拒絶権及び正当な理由がなくて宣誓又は証言を拒んだり、虚偽の陳述をしたりしたときは刑罰に処せられる旨を告げなければなりません。

なお、宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば、3月以上10年以下の懲役に処せられる規定も設けられています。

国税と地方税

2018-03-25 | 国会雑学
前回「日切れ法案」について説明しましたが、その際、国税・地方税について触れました。

今回は、日切れ法案の審査に追われるのは出口にあたる参議院ですので、参議院での国税・地方税の審査順について紹介したいと思います。

予算案審査が始まると、まず本会議で趣旨説明・質疑を行う案件は、国税と地方税になります。本会議の順番は、国の予算を決める国税を先に審議入りして、後に地方税という流れです。

ちなみに、今年は3月9日に国税、3月16日に地方税の趣旨説明・質疑を本会議で行っています。

ただ、そうではない例が参議院で過去2回あります。

昭和44年以降では、昭和45年の第63回特別会と昭和58年の第98回国会で地方税を先に審議入りした例があります。

昭和45年の時は衆院選のため暫定予算を編成、昭和58年は3月31日までに成立させないと法が失効して国民生活に重大な影響があるとして、地方税を先行して本会議で趣旨説明・質疑を行いましたが、当時は今と仕組みが少し違いましたので、現在と同じように比較することはちょっと難しいかもしれません。

で、個人的に、いつも気になっているのは、本会議での採決順です。

上記と同じ考えに立てば、本会議でも国税→地方税の順に可決・成立するのが好ましいのかもしれませんが、法案についての採決順は、委員会で採決された順という例ですので、昨年は、地方税が先に本会議で成立した例があります(といっても同じ日の成立です)。

さて、今年は国税と地方税、どちらが先に委員会採決となるのでしょうか。

日切れ法案とは

2018-03-21 | 国会雑学
参議院における予算案審査の制約(30日ルール)」の中で、「日切れ法案」について触れましたので、改めて「日切れ法案」とは何か、について紹介したいと思います。

国会では年度末が近付くと、「日切れ法案」「日切れ扱い法案」という用語が頻繁に飛び交うこととなり、3月は予算案と「日切れ法案」の扱いが日程調整を含め、国会運営上の課題となっています。

「日切れ法案」の明確な定義はありませんが、一般に国民生活等への混乱を回避する観点から、現行法の失効期限や税の軽減措置等の適用期限を延長するため、特定の時期までに成立させる必要がある法案を指して使用されています。

国の会計年度が4月1日から翌年3月31日までとなっているため、3月31日を期限とする法律や、4月1日を施行日とする法律は多く年度末までに処理しないと国民生活や国政に重大な影響を与えてしまうことになるためです。

もちろん、税法などは期限を延長すれば良いのでは、という考え方もあるのですが、その場合、改正法の施行日までだけ税の取り扱いが異なることとなり、国民生活に大きな混乱を来しますし、税務事務も煩雑になってしまいます。

このような事態を避けるために、期限までに改正法を成立させ、施行することが必要になるため、「日切れ法案」である国税・地方税法等の改正案などは年度末に審議が行われることになります。

特に、国税・地方税法等の改正案については、総予算案3案と同時に本会議の議事として採決していますので、予算案の自然成立期限(3月29日)を考えると、3月28日夕方までに予算委・財金委・総務委で採決を終える必要があります。

参議院においては、今年、特に審議日程が窮屈になっています。公文書書き換え問題の影響で国会が空転したことにより、例年と比してすべての審議が進んでいないためですが、だからといって、国民生活に大きな影響がある国税・地方税の審議をしないわけにはいきません。

よって、財金委は夜までかけて、総務委は衆参で定例日が同一のため、参予算委が開会されないタイミングで小刻みであろうとも審議を行って対応しているのです。

というわけで、参議院は3月28日(水)の夕刻以降に本会議、3月29日(木)に国税・地方税以外の日切れ法案等の委員会審査、3月30日(金)に本会議、という流れになるものと思われます。

参議院における予算案審査の制約(30日ルール)

2018-03-19 | 憲法
○日本国憲法第60条

予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

上記は、衆議院の予算先議権、予算議決に関する衆議院の優越を規定しています。

憲法は、衆議院で予算案審査を必ず先にすることと、参議院に送付されたのち、否決された場合や30日以内に議決しない場合は、衆議院の議決が国会の議決となることを定めています。

よって、予算案本体は衆議院で議決された時点でその成立が保証されますので、参議院の30日ルールを睨みつつ、衆議院での採決日程が与野党間のせめぎ合いとなりますが、今年は2月28日の衆議院本会議で総予算3案は可決されており、年度内の予算案成立は確実となっています。

予算案の自然成立30日ルールの制約を課されている参議院は、自然成立日を横目に見ながら、いかに充実した審議をするかが問われることになります。

なぜなら、仮に参議院で予算案の審議を全くしなくとも、自然成立日を迎えさえすれば予算案本体自体は成立するからです。

そういった観点からすれば、今年の参議院における予算案審査は公文書書き換え問題の余波を受け、異常な形で進んでしまったと言わざるを得ません。

国会は3月16日から正常化しましたが、自然成立日の3月29日までに参議院でどれだけ充実した審議ができるのかが大きな課題となっています。

さらにいえば、いわゆる「日切れ法案」である予算関連法案については「法律案」ですので、両議院で可決した時に「法律」となるため、予算案審査の合間を縫って3月31日までに結論を出さねばなりません。

これらは参議院の宿命であり、使命なのです。

[追記]
本日午前の参予算委における与党議員の一部質疑、いくらなんでも、あれはないでしょう。後で見て、涙が出ました。

三権分立における立法府の存在

2018-03-18 | 憲法
○日本国憲法第41条(国会の地位・立法権)

国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

○日本国憲法第65条(行政権)

行政権は、内閣に属する。

○日本国憲法第76条(司法権)

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。


三権のそれぞれの他機関への抑止について、権力分立の典型例といえるのが三権分立です。

上述の日本国憲法の規定は、国家権力である立法権、行政権、司法権の所在を明記しています。

立法権は国会に、行政権は内閣に、司法権は裁判所に属すると規定し、それぞれ別個の独立機関に専属させています。三権を別個の独立機関に専属させ、互いの抑制と均衡によって、権力の集中と濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとしているのです。
         

国会(立法権)と内閣(行政権)の関係でいえば、内閣総理大臣は、日本国憲法第67条の規定により、国会議員の中から国会の議決で選ばれますし、国会は、内閣に対して内閣不信任を提出することができ、これが可決されると、日本国憲法第69条の規定により、内閣は総辞職となります。

内閣は、国会から内閣不信任を可決されたら総辞職しなければなりませんが、一方で、衆議院を解散に追い込む権限があります。つまり、国会(立法権)と内閣(行政権)の関係は、お互いに牽制し合い、権力の暴走に歯止めをかけられるようになっているのです。

他方で、国会(立法権)と内閣(行政権)の関係は、抑制と均衡状態であるものの、議院内閣制をとる我が国にとって、日本国憲法第66条3項のとおり、近い関係でもあります。

ただ、国会(立法権)は、主権者である国民から直接選ばれた議員で構成されるため、三権の中で、国民の意思を最もよく反映している機関であり、だからこそ国の立法はすべて国会の議決で成立するのです。

三権の中で、国民の意思を最もよく反映している機関である立法権たる国会に、行政権たる内閣から書き換えられた資料が提出されていたとすれば、それは三権分立を根底から覆しかねない事態であると言わざるを得ません。

さらに言えば、国会法第105条の規定に基づき、国会の議決による検査に対する提出資料が書き換えられていたことは、言語道断であり、立法府の意思をないがしろにするものです。

立法府に身を置く議会人のひとりとして、憤りを感じています。

ただしかしながら、個人的な思いと自身の経験上、何かあったとき自分の身を守る盾ともなる公文書を、誇りを持って公務の現場で働く人が、個人的動機で書き換えるとは到底思えないのです。