議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

委員会の開会時刻

2016-03-23 | 国会ルール
○参議院委員会先例録43

委員会の開会時刻は、午前10時又は午後1時と定めるのを例とする

委員会の開会時刻は、午前10時又は午後1時と定めるのを例とするが、議院の会議のあるときは議事散会後と、また、都合によってはその他の時刻に定めた例も少なくない。


参議院の場合、委員会の開会時刻は、委員会先例録により午前10時か午後1時と定められています。

よって、定刻に委員会をセットすることを基本としていますが、例えば今の時期のように年度末になってくると、参議院は日本国憲法第60条の規定により、衆議院から予算案送付後30日で予算案が自然成立すること、また年度末までに審議を終える必要のある日切れ法案等を抱えること等、限られた時間で審議が迫られます。

その場合、たとえば、公報上は10時にセットし、実際上の開会は10時半とか、公報上は13時にセットし、実際上の開会は13時30分とか、という事態になることもあるのです。

写真は、数年前のものですが、公報上10時にセットされたけれども、実際上の開会は、時計の12時20分より後だった例です。ただし、もうひとつの定刻である13時よりは前に開会した例です。
           

公報上10時や13時に委員会がセットされていても、しばらく開会しないことがあるのはそのためです。

インターネット審議中継で委員会を見ようとして、開会時刻になっているのになぜ始まらないんだろう、とかつて疑問に思ったことがありましたが、そういうわけでした。

ただ、平成28年3月23日の常任委員会の委嘱審査では、興味深い状態となっています。

なぜなら、水曜日は参議院本会議の定例日であり、本会議の定刻は10時だからです。さすがに同時刻に委員会を開けませんので、下記のような委員会セットとなっています。

            
                 参議院webページより平成28年3月23日にキャプチャ

ひとこと

2016-03-20 | ひとこと
晴れたり降ったり曇ったり。

各地の天気はここのところ落ち着かない。でも、それが春なのだ。春に3日の晴れなし、と昔からいう。「鳶遠き三月空のくもりかな 佐藤紅緑」

神奈川県の読者から、春の宵のこんな体験が書き送られてきた。

夫の車の助手席で信号待ちをしていると、20代半ばくらいの女性が歩道でコートを脱ぎ始めた。暑いわけでもないだろうに、とぼんやり見ていると、その人は腰をかがめて、なにやら大事そうに抱きかかえた。

猫だった。

猫はどうやら車に引っかけられたらしい。ぐったりしている。血も流している。女性は自分のコートで優しく猫をくるんだ。そしてあわてるでもなく、だれかに助けを求めるでもなく歩き出した。

病院に連れていくのに違いない。「淡々としたしぐさに私は胸が熱くなり、涙がこみ上げてきました」

人みな心優しくなる。そんな3月であってくれたらいい。
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今から18年前の3月最初の日。朝日新聞の天声人語。

すべて引用すると長くなりますので、中略していますが、当日、何紙か新聞を読んでいて、目に留まったのが上記だったのです。

当時と今、置かれた環境は全く異なりますが、3月になるとふとした時にその当時のこととあわせて思い出します。

年度末に向けて、国会も慌ただしくなりますが、心優しくありたいと思います。

衆参のちょっとした違い(常任委員会の所管)

2016-03-16 | 国会ルール
○衆議院規則第92条(該当箇所のみ抜粋)

九 経済産業委員会
 1 経済産業省の所管に属する事項
 2 公正取引委員会の所管に属する事項
 3 公害等調整委員会の所管に属する事項(鉱業等に係る土地利用に関する事項に限る。)

十一 環境委員会
 1 環境省の所管に属する事項
 2 公害等調整委員会の所管に属する事項(経済産業委員会の所管に属する事項を除く。)

○参議院規則第74条(該当箇所のみ抜粋)

九 経済産業委員会
 1 経済産業省の所管に属する事項
 2 公正取引委員会の所管に属する事項

十一 環境委員会
 1 環境省の所管に属する事項
 2 公害等調整委員会の所管に属する事項


今回の衆参のちょっとした違いは、前回「衆参のちょっとした違い(常任委員会の名称)」の続編として、常任委員会の所管の違いについて紹介します。

衆参それぞれ17ある常任委員会のうち、同じ名称ながら所管が違う常任委員会が3つもあるのです。その2つが、上記の経済産業委員会と環境委員会です。

参議院では、公害等調整委員会の所管に属する事項は、すべて環境委員会の所管ですが、衆議院では、経済産業委員会と環境委員会で所管が分かれています。

残る1つの常任委員会は、懲罰委員会です。下記に規則をお示しします。

○衆議院規則第92条(該当箇所のみ抜粋)

十七 懲罰委員会
 1 議員の懲罰に関する事項
 2 議員の資格訴訟に関する事項

○参議院規則第74条(該当箇所のみ抜粋)

十七 懲罰委員会
 1 議員の懲罰に関する事項

衆議院では、議員の資格訴訟に関する事項は懲罰委員会の所管ですが、参議院では議員の資格訴訟に関する事項はそもそも記載がありません。

では、議員の資格訴訟はどのようにして行うのでしょうか。

実は、そのための規則が別に定められています。

○参議院規則第193条

他の議員の資格について提訴しようとする議員は、訴訟の要領、理由及び立証を具える訴状及びその副本一通を作りこれに署名して、これを議長に提出しなければならない。

○参議院規則第193条の2

訴状が提出されたときは、資格訴訟特別委員会が設けられたものとする。(以下略)

というわけで、今回は規則の記載に基づく、事実の羅列となってしまいましたが、こんなところにも衆参の違いがちょっとずつ存在しているのです。

衆参のちょっとした違い(常任委員会の名称)

2016-03-14 | 国会ルール
○衆議院規則第92条

各常任委員会の委員の員数及びその所管は、次のとおりとする。ただし、議院の議決によりその員数を増減し、又はその所管を変更することができる。(以下、員数と所管は省略)

一 内閣委員会 二 総務委員会 三 法務委員会 四 外務委員会 五 財務金融委員会 六 文部科学委員会 七 厚生労働委員会 八 農林水産委員会 九 経済産業委員会 十 国土交通委員会 十一 環境委員会 十二 安全保障委員会 十三 国家基本政策委員会 十四 予算委員会 十五 決算行政監視委員会 十六 議院運営委員会 十七 懲罰委員会

○参議院規則第74条

各常任委員会の委員の数及びその所管は、次のとおりとする。(以下、員数と所管は省略)

一 内閣委員会 二 総務委員会 三 法務委員会 四 外交防衛委員会 五 財政金融委員会 六 文教科学委員会 七 厚生労働委員会 八 農林水産委員会 九 経済産業委員会 十 国土交通委員会 十一 環境委員会 十二 国家基本政策委員会 十三 予算委員会 十四 決算委員会 十五 行政監視委員会 十六 議院運営委員会 十七 懲罰委員会


先日、「委員会の理事会」で参議院の文教科学委員会の理事会だけが開かれなかった理由を紹介しましたので、今回はその繋がり(?)で、衆参のちょっとした違いを紹介したいと思います。

上記の規則をご覧いただくと、省庁対置の常任委員会で、3つだけ委員会名が異なっています。下記の写真をご覧いただくと、分かりやすいかと思います。(左が衆議院、右が参議院)
    

参議院では、平成8年の参議院制度改革検討会報告書に基づき、平成10年の第142回国会から第一種常任委員会が再編されました。これまでの省庁対置ではなく、基本政策別に分類された政策別の設置となったのです。

[参議院における第一種常任委員会の再編(平成10年常会から平成13年常会前まで)]

一 総務委員会 二 法務委員会 三 地方行政・警察委員会 四 外交・防衛委員会 
五 大蔵委員会 六 財政・金融委員会 七 文教・科学委員会 八 国民福祉委員会
九 労働・社会政策委員会 十 農林水産委員会 十一 経済・産業委員会
十二 逓信委員会 十三 交通・情報通信委員会 十四 国土・環境委員会

しかし、政策別に設置された上記の参議院常任委員会は、平成13年の第151回国会で再び再編されることとなります。最も分かりやすい理由は、省庁再編です。

半世紀ぶりに行政機構の抜本的見直しが実施され、平成13年1月6日、中央省庁が1府22省庁から1府12省庁に再編されました。これを踏まえ、同年1月31日の召集日に、衆参両院において常任委員会の再編が行われたのです。

よって、参議院においても、基本政策別の設置となっていた第一種常任委員会について、省庁対置の再編となり、現在の形となりました。

ただ、その前に使っていた名称と再編された省庁名がそれほど変わらなかった3委員会については、直前の名称を引き継ぐ形となり、結果、衆議院と委員会の名称が異なっているのです。

外交・防衛委員会 → 外交防衛委員会(衆議院:外務委員会)
財政・金融委員会 → 財政金融委員会(衆議院:財務金融委員会)
文教・科学委員会 → 文教科学委員会(衆議院:文部科学委員会)

参議院は、基本政策別の常任委員会時代、議案の付託で大変だった側面もありましたから、省庁再編での常任委員会再々編はちょうど良かったのかもしれません。

参議院予算委の総予算審査-その1

2016-03-13 | 国会雑学
日本国憲法第60条は、衆議院で必ず先に予算を審議することと、参議院に送付されたのち、否決された場合や30日以内に議決しない場合は、衆議院の議決が国会の議決となることを定めているため、参議院での審議時間は自ずと限られます。

このような制約がある中、現在、参議院で平成28年度予算案の審査が行われているのです。

ここで、平成以降、参議院での予算委員会における対政府質疑時間を見てみたいと思います。

審査時間の最長と最短です。ついでに、その次のも紹介します。

[参議院予算委員会における対政府質疑時間(平成以降)]

最長の対政府質疑:91時間3分(平成2年度)、90時間28分(平成11年度)
最短の対政府質疑:46時間48分(平成20年度)、47時間28分(平成23年度)
※天皇陛下崩御の平成元年は除く


ちなみに、昨年の参議院予算委員会での平成27年度総予算審査の対政府質疑は、69時間55分でした。

参議院の場合、30日以内という限られた制約の下で、予算案の審議時間が長いときはある意味順調、審議時間が短いときは委員会審議中断等での混乱国会ともいえるのではないでしょうか。

東日本大震災から5年

2016-03-12 | ひとこと
昨日、東日本大震災から5年を迎えました。

日本国民ひとりひとりが被災地に心を寄せ、被災地とその復興に思いを致す一日でした。議会に身を置く者のひとりとして、立法府で何ができるのかを模索しながら、微力ではありますが力を尽くしてまいります。

平成28年3月11日、東日本大震災以降、衆参両院通じて初めてこの日に本会議が開会されました。

平成28年度予算案が審議されている参議院で開会され、日切れ法案である地方税法等が審議入りしました。東日本大震災以降、これまで衆参両院で委員会は開会されていましたが、本会議は初めてとなりました。

その参議院本会議も午前中には散会し、政府主催の追悼式が行われることもあり、午後の国会日程は衆参通じてありませんでしたが、本会議では、参議院議長から冒頭に哀悼の言葉があり、議場の国旗は弔旗とされました。

○大喪中ノ国旗掲揚方ノ件(大正元年7月30日閣令第1号)

大喪中国旗ヲ掲揚スルトキハ竿球ハ黒布ヲ以テ之ヲ蔽ヒ且旗竿ノ上部ニ黒布ヲ附スヘシ其ノ図式左ノ如シ

            
            平成28年3月11日参議院本会議-インターネット審議中継よりキャプチャ

委員会の理事会-その1

2016-03-09 | 国会ルール
○参議院委員会先例録24

委員長は、委員会の運営に関し協議するため理事会を開く

委員長は、委員会の運営に関し理事と協議するため必要があるときは、理事会(委員長及び理事の打合せ会)を開く。理事会の開会は、あらかじめ参議院公報をもって通知するのを例とするが、必要に応じ随時口頭により通知した例もある。(以下略)

3月8日の国会は、衆議院では本会議、環境委員会、安全保障委員会がそれぞれ開会され、参議院では、省庁に対置して設置されている常任委員会が全て開会しました。

参議院においては、大臣所信聴取等を行うために常任1種委員会が横並びで一斉に開会されたのですが、少しおもしろい光景を目にしましたので、紹介したいと思います。

まず、国会内でチェックできる委員会・理事会表示画面をご覧いただきたいと思います。
左側が委員会表示(委員会室と開会時刻)、右側が理事会表示(理事会室と開会時刻)です。
                     

なんと、文教科学委員会だけ理事会表示ががありません。

また、先ほど紹介した委員会先例録にあるとおり、今回は通常時の委員会開会ですので、事前に公報掲載がなされていますが、文教科学委員会だけ理事会開会の記載がないのです。
               
            参議院Webページ平成28年3月7日参議院公報より抜粋してキャプチャ

これは会派人事等によって、文教科学委員会の理事が実質不在となっていたためです。

委員長に関しては、1月4日の国会召集日の本会議で選任されていますが、理事に関しては、当該委員会を開会しない限り選任できず、この間、文教科学委員会が一度も開かれていなかったのです。

よって、委員長以外が、理事予定者ばかりでは、さすがに正式な理事会と言えず、委員長及び理事予定者の打合せ会という形にしたものと考えられます。

会期途中における会派解散と結成

2016-03-06 | 雑感
今開かれている第190回国会は、今年1月4日に召集されました。

もちろん、召集にあたっては、昨年12月から議院運営委員会理事会で召集協議が行われ、その中では常会に臨むため会派を届け出の確定期限を設定するなど、常会をスムーズに迎えられるようにしてきました。

理由は、会派の陣容が確定することで、控室や常任委員等の割り振りが明確になり、一会期内での院内の活動範囲が確定することができるからです。

しかし、参議院においては、「常会冒頭における新会派結成」で紹介したとおり、常会召集から3日しか経たないにも関わらず、1月7日に新会派が結成されたのです。

そして、今度は、3月4日、新会派の結成から2か月経たずして、その新会派の解散届が出され、新会派を結成した2つの会派が元に戻るための結成届が出されました。

つまり、別々の会派が常会召集直後に統一会派を結成したものの、2か月経たずして同会期内に統一会派を解消し、元の別々の会派に戻ったということですが、結果として、様々な側面において院全体を振り回したことになり、拙速であった感は否めません。

というわけで、今回の解散・結成届出に伴う参議院の会派と所属議員数のグラフ(筆者作成)を掲載します。
             
             参議院の会派と所属議員数(平成28年3月6日現在)


衆参予算委・質疑時間の違い(参議院の片道方式)

2016-03-02 | 国会雑学
平成28年度予算案は、3月1日の衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。

憲法第60条の規定により、仮に参議院が議決せずとも年度内に平成28年度予算案は成立することが確定しています。

平成28年度予算案は、3月2日の参議院予算委員会で審議入りし、全閣僚出席、TV中継入りで総括質疑が行われています。

というわけで、「衆参の予算委員会の違い」とか「参議院の片道方式」といったキーワードで、このブログをご覧いただいた方が多かったようですので、昨年の焼き直しで恐縮ですが、衆議院と参議院の予算委員会の違いについて改めて紹介したいと思います。

参議院予算委員会独自の「片道方式」について説明します。

これは質疑時間を指すものですが、衆議院と参議院で異なった扱いをしています。衆議院では質問時間と答弁時間の両方を含む一方で、参議院では、原則として答弁時間は含まないのを例としています。

簡単に具体例を挙げてみたいと思います。

衆議院で××議員の質疑時間が30分あるとします。その場合、30分の中に××議員の質問(発言)時間と閣僚等からの答弁時間をすべて含みます。

参議院で○○議員の質疑時間が15分あるとします。その場合、15分の中に○○議員の質問(発言)時間しか含まれません。

つまり、閣僚等からの答弁時間は、○○議員の持ち時間にカウントされないので、閣僚等の答弁がどれだけ長くとも、○○議員の持ち時間には影響しないことになります。ただ、逆に、○○議員が一方的に演説調の質問を繰り広げてしまった場合、あっという間に持ち時間を消費してしまう側面もあります。

なぜ、このようになっているのでしょうか。

それは、参議院での予算案審議は衆議院から送付された後、30日で自然成立することに鑑み、議員の質疑権をしっかり確保することが目的とされているためです。

衆議院での答弁に慣れている閣僚が、参議院の方式を知らずに長々と答弁をしても議員の質疑時間は制約されませんので、充実審議を求める野党にとっては、大切なカードの一つです。

この方式は、参議院予算委員会で集中審議以外の対政府質疑で採用されていますが、例外も存在します。

国会演説-その2

2016-03-01 | 国会雑学
2月28日から3月2日の日程で、エルシーシ・エジプト大統領が来日しています。

2月29日、国会では、エルシーシ・エジプト大統領が、衆議院本会議場で国会演説を行いました。
            
                  衆議院インターネット審議中継よりキャプチャ
昨年6月に「国会演説-その1」でも紹介しましたが、国会賓客並びに国公賓等による国会演説は、今回のエジプト大統領の演説で39回目です。

平成6年以降の国会演説では、衆議院と参議院の本会議場を交互に使用して行われていますが、昨年6月の国会演説が参議院議場でしたので、今回のエジプト大統領の演説は、衆議院議場で行われました。

最初の国会演説は、昭和33年の第30回臨時会で国賓のフィリピン・ガルシア大統領夫妻で逐次通訳でした。平成2年以降は、同時通訳が主流ですが、当初は逐次通訳というのもかなりあったようです。

ちなみに、「国会演説-その1」では、国別の演説回数を紹介しましたので、今回はこれまでの種別を紹介したいと思います。

21回:国賓
8回:公賓
7回:公式実務(今回のエジプト大統領は公式実務訪問賓客です)
1回:外務省賓客、国会賓客、政府招待

エジプトからの要人の国会演説は、今回が初めてでした。日本とエジプト関係の強化、中東の安定と発展の後押しの一助になれば素晴らしいですね。