議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

参議院の行政監視委員会-その2

2019-05-24 | 国会雑学
参議院の行政監視委員会-その1」において、参院の行政監視委員会は、参議院改革によって平成10年に新設されたことを紹介しました。

では、行政監視委員会の新設のほかに、どんな内容が参議院改革によって実現したのか、これまでのブログのエントリーから幾つか紹介したいと思います。
参議院改革によって実現した内容のうち、このブログで紹介したものとしては、たとえば下記があります。

〇調査会制度の発足ー「参議院における調査会-その5」平成28年10月14日

〇常任委員会の再編ー「衆参のちょっとした違い(常任委員会の名称)」平成27年3月14日

〇本会議における押しボタン式導入ー「記名投票とは-その1」平成27年4月14日

〇決算の早期審査のための具体策ー「決算の提出時期」平成28年2月1日

参議院はその独自性と機能の発揮を求めて、様々な改革に取り組んできました。

上記の中で、最も興味を持っていただきやすいのが、常任委員会の再編でしょうか。

参議院では、平成8年の参議院制度改革検討会報告書に基づき、平成10年の第142回国会から第一種常任委員会が再編されました。これまでの省庁対置ではなく、基本政策別に分類された政策別の設置となったのです。

しかし、今はまた省庁対置になっています。

衆参で名称が違う常任委員会が幾つかあるのはその名残でもあり、その理由等についても紹介しています。

いずれにせよ、参議院の行政監視委員会も参議院改革によって新設されましたが、近年の活動状況は低調です。

行政監視機能を担う委員会ですので、その調査実績を図る数字のひとつに委員会の総開会時間や決議があります。よって、次回はこれらについて概観してみたいと思います。

参議院の行政監視委員会-その1

2019-05-20 | 国会雑学
○日本国憲法第90条

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。(以下略)


日本国憲法第90条に基づき、毎会計年度の決算は、内閣から衆議院、参議院の両院に同時に提出され、それぞれの院で審査が行われます。

決算は、予算と異なり法規範性は有しませんが、決算審査の意義は、国会で議決された国の予算の執行実績を審査することにより、その結果を後年度の予算編成や政策遂行に反映させることにあります。

つまり、国の活動、国の予算を事後的に監督することで、国の予算が適法に目的どおり使用されたか、行政が適正に行われたかどうかを監視する重要な意味を持つのが決算審査なのです。

衆議院では、委員40人からなる決算行政監視委員会を、参議院では、委員30人からなる決算委員会が常任委員会として設置されています。

なお、参議院の場合は、行政監視を別の委員会で行うこととしており、行政監視委員会が設置されています。

では、なぜ、行政監視委員会が新設されたのでしょうか。

参議院改革の中で設置に至りました。

平成7年8月(第133回国会)に設置された行財政機構及び行政監察に関する調査会は、「時代の変化に対応した行政の監査の在り方」をテーマとして調査を進めた結果、参議院に期待される行政監視機能を向上させるため、オンブズマン的機能を備えた行政監視のための第二種常任委員会を設置する旨の中間報告が取りまとめられました。

平成9年6月9日に、調査会長がこの中間報告を議長に提出し、6月18日に議長は中間報告の取り扱いを各会派代表者懇談会に諮り、その後、議長は行政監視委員会新設のための国会法及び参議院規則の改正について、議運委員長に指示したのです。

結果、平成9年12月5日、国会法及び参議院規則の一部が改正され、行政監視委員会が新設されました。

平成10年の第142回国会の召集日に施行され、現在に至ります。設置当初は活発だった調査活動も、現在は低調と言わざるを得ません。

皇室典範特例法の審査委員会

2019-05-04 | 国会雑学
平成の30年が終わり、新たな令和の時代を迎えました。

202年ぶりの退位は、平成29年6月に成立した皇室典範特例法に依るものですが、本特例法は、衆議院では「議院運営委員会」、参議院では「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会」で審査されました。

今回は、皇室案件に関係する議論や審査が内閣委員会で扱われなかった場合、どこで行われたのかを紹介します。

衆参それぞれに、特別委員会もしくは起草委員会、議長発議などの形態、特別委等であればその規模、設置年月日と期間について記載しています。

[皇室案件に関係する国会の主な対応等]

○昭和22年8月~9月 第1回国会


衆議院:皇室経済法施行特別委員会 (20名) 昭和22年8月14日~8月29日
参議院:皇室経済法施行特別委員会 (20名) 昭和22年8月15日~9月18日

○昭和27年5月 第10回国会

衆議院:皇太后陛下崩御につき弔詞起草委員の会 (15名) 昭和26年5月19日~5月19日
参議院:弔詞案起草に関する特別委員会 (24名) 昭和26年5月19日~5月19日

○昭和27年11月 第15回国会

衆議院:賀詞案起草は衆院議長に一任 (本会議) 昭和27年11月7日
参議院:立太子の礼及び成年式につきたてまつる賀詞案起草特別委員会 (24名) 昭和27年11月8日~11月8日

○平成元年1月 第114回国会

衆議院:大行天皇崩御につき弔詞起草委員会 (24名) 平成元年1月9日~1月9日
参議院:弔詞案起草に関する特別委員会 (23名) 平成元年1月9日~1月9日

○平成2年11月 第119回国会

衆議院:即位の礼に当たり賀詞起草委員会 (25名) 平成2年11月6日~11月6日
参議院:賀詞案起草に関する特別委員会 (25名) 平成2年11月7日~11月7日

○平成3年2月 第120回国会

衆議院:賀詞案起草は衆院議長に一任 (本会議) 平成3年2月7日
参議院:賀詞案起草に関する特別委員会 (25名) 平成3年2月13日~2月13日

○平成29年5月~6月 第193回国会

衆議院:議院運営委員会 (32名)
参議院:天皇の退位等に関する皇室典範特例法案特別委員会 (25名) 平成29年5月26日~6月9日

上記をご覧いただくと第193回国会での皇室典範特例法案が、衆議院の議運委で扱われたことは異例だったといえます。